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祝
『……これを逃すといつ来られるか分からないから……』
そんな理由でピクニックがてら、ランララ会場まで物見遊山にやってきた、ふたり。
「何だか人が多いですね〜」
キョロキョロと辺りを見回しながら、エリンシアがボソリと呟いた。
セリハものほほんとした表情を浮かべ、『そうですねぇ』と彼女に答えを返す。
そんな他愛の無い会話を続けながら、のんびりまったりと雰囲気を漂わせ、エリンシアが近くの原っぱに座って、持ってきたバスケットを開く。
バスケットの中に入っていたのは、いくつかのお菓子と、白い陶器のティーセット。
折りしも自分達の誕生日は、すぐ近く。
そのため、ふたりは『せっかく綺麗な場所が開放されるのだから』という理由から、さえずりの泉のほとりで、簡単なお茶会を開いて互いの誕生日を祝う事になった。
「本当にまわりはカップルばかりですねぇ」
甘ったるい雰囲気を漂わせて、お互いの愛を語り合うカップルを見つめ、エリンシアがゆっくりと口を開く。
「ええ、今日はランララ聖花祭ですからねぇ」
のんびりとした様子でお菓子をパクつき、セリハが小さくコクンと頷いた。
まわりのカップルとは違って、ふたりの関係は……、盟友。
何に対して盟友なのかよく分からないが、ゆるりと同じ時を過ごす事が出来る大切な存在。
お互いにまったく恋心はないのだが、それ以上の繋がりがあると言っても、決して大袈裟ではない。
そんなふたりがかわす会話は、以前出かけた街の事。
次のお出かけ計画。
……最近の天気。
つぼみを開いた梅の花などなど。
話している内容は、いつもと同じような事ばかりだが、いつしか時間を忘れて、語り合っていた。
「また、来年もこうしてお祝い出来ると良いですね」
まわりの空気などまったく気にも留めていない様子で、セリハがゆっくりと紅茶を口に含む。
そのため、エリンシアも力強く頷き、『ええ、必ず……』と答えを返すのであった。
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