〜ファルドバール太陽系 4967年12月8日〜

 ひとつの太陽と5つの惑星からなるファルドバール太陽系。
 この地に住まう人々の高度な魔導文明は、今や惑星間を魔導船で航行可能とし、全ての惑星を高層の都市群で覆う程に、栄華を極めていた。
 されど人の心は未だ革新に至らず、人々は、その力を戦いの為に振るうことをやめなかった。
 しかし、それでも人々は、幾度かの世界大戦を経て、よりよい平和の為に進もうとしていた。昨年締結された条約により、超大国同士の戦争は無くなり、地域紛争も徐々に減少を始めたのである。
 一方で、独裁者の専横の可能性も危惧され始めてはいたのだが……。


 そうした長き歴史とは全く無関係に、『終わり』は唐突に訪れた。


邪魔だ、虫ケラ!


 宇宙の彼方より突如出現したプラネットブレイカーに、彼等の築き上げてきた魔導文明は一切通用しなかった。世界連合軍は紙屑の如く吹き飛ばされ、幾重もの魔法結界に守られた都市も瞬く間に崩れ去り、人々が祈る僅かな時間さえも許されずに、全く唐突に、ファルドバール太陽系の人類は、一人も残さず全滅したのである。


準備は整った。
生命を奪われた『星』は、『宇宙』に対抗する術を持たぬ。


 見る間に、ひとつの太陽と5つの惑星は、急激に小さく圧縮されてゆく。
 プラネットブレイカーよりも小さくなった太陽は尚も変容し、頭部が生え、翼が出現し、『ドラゴン』とでも呼ぶべき姿へと変貌していった。
 しかしその力の強大さと燃え盛る姿は、通常のドラゴンとは比較にならない。


6つのファルドバールよ、我に続け!


 プラネットブレイカーの号令と共に、かつて星であった6体のドラゴンは、目的地を目指し、星の海を飛翔するのであった。