飛び交う炎と破砕音。 辺りに充満した熱気に当てられ、人々の額からは汗が滝のように流れ落ちる。 「ゼハーゼハーゼハー……し、死ぬかと思うた。い、一応完成やな」 「フフフ、これがボクの本気さ!」 丸焦げになった尻尾を労わる白髭男爵カ・ネール13世ことシャルと、白塗り笑顔が不気味なド・ナルドことウィルダントが、それぞれ自慢の料理を審査員達の前へと掲げる。 「さて、審査員の皆さんどうですか?」 料理が行き渡ったことを確認し、それぞれの評価を問い始めるのは解説ことフォッグ。その問いに一番に答えたのは、もそもそと両者の料理を食らっていたジュダスである。 「……カさん辛い、0点。……ドさん普通、1点」 「なんでやあああぁぁ!」 あまりの辛口な評価に頭を抱えるシャル。シャルの作った料理である鳥の丸焼きは、自身の特製の香辛料を使った辛さがウリであったのだから、その全てを否定されたようなものなのだろう。 「燃ゆるような辛さ、カ・ネールさん2点ですね。そして味は簡素でありながらとても食べやすい一品であったド・ナルドさん、1点です」 「瑠っ瑠々ゥー!?」 食べやすいといいつつこの点の低さはなんなのか。ヴェスレーナの採点に、叫び声をあげながら転がるウィルダント。最高点5点というルールである割に、審査員達の採点はなかなかに厳しい。 「カ・ネールの方はつまみというにはちとヘビーだが、スパイスの効いた肉はビールが進むな。肉好きってのもあって4点だ。ド・ナルドの方は……つまみとして最初に食う分には丁度いいな、意外に見た目も悪くない。3点」 「カ・ネールの料理は『主役』のお料理ですね。対してド・ナルドの作った料理は『主役を引き立てるお料理』。今回のお題はお酒の肴。その点を鑑みて、カ・ネール4点、ド・ナルド5点という採点に致します」 先ほどの2人よりは良心的な点数を打ち出すングホールと、まだまだ言いたいことはあるんです! という様子のシャルロッテが採点を終え、結果は――両者共に10点という接戦! しかし真の勝負はここから……審査委員長であるフエンテと、ランティには最高10点までの評価が可能となっているのだ! 「カ・ネールさんの料理は……ん、辛い物好きな私にはたまらない1品ですのね。燻製風味が加わってなければ……7点といたします、ですの! そしてド・ナルドさんの方は、一撃のインパクトには欠けるものの、それを補って余りある丁寧な料理ですのね。ピーナッツに加点して……8点といたしますですのよ」 「お肉が好きなので、ちょっぴり辛かったけどカ・ネールさんのは8点、ド・ナルドさんのは少しあっさりし過ぎてたので7点です!」 両審査委員長の点数を加えると……両者共に25点の引き分け!? 「次や、次こそは決着つけたるわ!」 「瑠ゥー♪ 次こそ勝つのはボクさ!」 果たして本当に次で決着がつくのだろうか。 ――それは神のみぞ知る所である。
【マスター候補生:原人】
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