それは、ある日の『名もなき傭兵の宿』の一日。 「いつも部屋に居ることが多いですし、宿の中を見てみるのもいいかもしれませんね」 呟きながら、コーマが宿の中を歩いている時、彼の目に飛び込んだ物があった。 「うん?」 本だった。 タイトルは『ソルレオン髭コンテスト・上位ランカー画集』 「……悩みどころですね」 一体何に対してだ。 「な、何か嫌な予感が……」 同時刻、受付に居たカラートが何かを感じたのだった。
二日酔いで頭を抱えるイヌイを階段から降りてきたヴァイヤとロザリアが見つけ、酒場と灯台の掃除を終えたアセルスとイルガが、汗を流しに浴場へと向かった所に受付へとレイがやって来た。 「少し体を動かしてきたんで、酒場で何か冷たい物を漁っても良いか?」 「ああ、いいぞ」 そう言って、カラートはワイン貯蔵庫へと向かい、レイはテーブルに座った。 「気持ち良かったね、イルガ。あ、ボクらも一緒に頂いていいかい?」 「ふー、さっぱりさっぱり。あ、あたしミルクがいいなっ」 「拒む理由がないな、それにしても2人とも良い匂いがするな、風呂上りか?」 浴場から戻ってきたアセルスとイルガもテーブルに座る。 そして、丁度良くカラートも貯蔵庫から戻ってきた。 「果実酒を発見した、甘くておいしいな」 カラートは既に酔ってしまっていた。 勢いよく振られていた尻尾が段々とゆったりとしていく。 「つまみも見つけた。毒見します……あれ、食べれない……」 フラフラとしながら、お盆をテーブルに置いたと思ったら、胡椒瓶を甘噛みして……眠った。 自室から出てきたアークが眠ったカラートを見つけ、軽く揺する。 「カラート殿、そんな所で寝ていたら風邪を引くぞ」 揺すって声をかけたが、カラートは目覚めなかった。 「……仕方ない、運ぶか」 「カラートは酔うとああなるのか」 アークに負ぶされたカラートを見ながら、レイは呟いた。
テーブルの分かりやすい場所にコーマは画集を開いて置く。 「後は団長の関係者が来るのを待てば……」 邪悪な笑みを浮かべるコーマの願いを叶えるかのように、階段からルークが降りてきた。 「カラート、私とソルレオンのどちらに献身を向けるつもりなのか今日こそはっきりしてもらおうか」 鬼の形相を浮かべ、ルークは階段を上っていった。
オレンジ・レモン・パイン3種類のジュースをカクテル用のシェーカーに注ぎ、シェイクをする。 「作ってるのはシンデレラか?」 「ご名答、酒場でジュースだけって言うのは味気ないしな」 そのノンアルコールカクテルの彩り、香りに興味をそそられた仲間たちが集まってくる。 レイは、それぞれの注文に応じたノンアルコールカクテルを作り始め、出来上がったものを思い思いに飲んでいく。 それぞれが楽しく、美味しく、甘い時間を過ごしていく。 そうして、傭兵達の日常は過ぎていくのだった。
【マスター候補生:清澄ゆかた】
|
|