今も変わらない大好き。伝えたい事は沢山。 星の世界を旅した6年と、更にそこから遡る事3年分。 逢えずにいた時間の分だけ膨らむ気持ちと、相反する躊躇いがある。 ただ逢いに行きたい。ただいま、と。それから――。 ――ずっと居なくてごめんね。
「もし一人で行けないでいる所があったら、一緒に行こうね」 いつかの彼の誕生日にそう言った事を星影・ルシエラ(a03407)は思い出す。 それなのに、自分は一人でずっと冒険していて、果ては星の世界に飛び出して行ってしまった。 『星影』の異名をとる自分だから行ってみたくて、そして、珍しい音楽や楽器があればお土産にしたくて。 沢山見てみたくて。見つけたくて。 気が付くと10年近くも会ってない。 ……それでもあの人は「お帰り」と言ってくれるだろうか。 返事は何でも良い。かけた言葉に返って来る顔が見たい。それは、昔から変わらないものの一つ。 思わず抱きついてしまったら、ごめんって言って逃げれば良いかな? 謝らなきゃいけない事は沢山あるから、そのついで。 惑星リランの銀海鯨の琴、そこで教えてもらったお祭りの曲を聞かせたい。彼にも何か教えてもらおう。いつか一緒に奏でたくて冒険中に覚えた楽器演奏も、少しは板についている、筈。 綺麗な音が鳴る実の話もしたい。それから勿論、この場所にも誘って――。 それから、それから。 「お出かけ終わったから、沢山会いに来ていい? って訊きたいな――」 とめどなく湧き出す想いは迷いと共に。 友人達はそれを笑顔で受け止めて、そっと背中を押してくれた。 絶品ソースとハーブが効いたローストのお肉がとても美味しかった。 野菜たっぷりのシチューと、煌く様なフルーツサラダも。蜜入り林檎の目が醒める様な甘さも。 そして、食後に出された温かい紅茶が、友人達がくれた言葉が、彼女の迷いを溶かして行く。
途切れた時間を繋ぎに行く。 会いに行けるのは幸せな事なのだから。 会いに行けなかった分も合わせて全部、伝えて来れば良い。 きっと、彼は酒場にいるから。――もし、いなかったら。その時は『あの日』みたいに。 言われて思い出すのは随分前のこんな季節、秋の日に彼の後を隠れて追った懐かしくも楽しいお祭りの日の出来事。 「――そうだよね。うん。見つけてくるねー!」 今回は一人。でも、彼女自身も送り出す友人達も、心配はしていない。 話を聞いてくれた事、背中を押してくれた事――ごめんね、ありがとう。みんなも大好き。 輝く笑顔。全身で叫んで、彼女は飛び出した。 「いってきまーす!」 ラベンダーセージの道しるべを逆に辿る星空の下。 隠れ家的レストランの風情漂う『猫迷宮園』――それぞれの思い出と今を持ち寄る優しい時間に包まれたこの場所から、踏み出す一歩が新たな時を刻み始める。
【マスター候補生:宇世真】
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