集いしものの行方


<オープニング>


 その日、御厨・杏里(高校生運命予報士・bn0177)が能力者たちを出迎えたのは、学園の屋上だった。
「いい天気だな」
 そう言って背を向け、天を仰ぐ。つられて何名かが空を見上げた。
 気温はいくぶん低めだが風はなく、柔らかな日差しが暖かい。ここで昼寝をしたら、どんなに気持ちがいいだろう。
「……ここでこうしていられるのも、あんたたちのお蔭だな」
 顔は相変わらず上に向けたままで、その表情は見えない。大きな背中が照れくさそうに揺れていたが、やがてポケットからメモ帳を取り出すと一同に向き直った。
「だがちょっとまずいことになった。もう一度あんたたちの力を借りたい」

 先日の能力者たちの死力を尽くした戦いにより『大いなる災い』は倒れ、多くの命が護られた。
 だが討ちもらした妖獣たちが、現在も伊豆山中を徘徊している。その掃討のために、すでに何組かの能力者が向かっているのだが。
 移動を続ける妖獣たちの進路の先に、人家が何軒かあるというのだ。このまま進めば、住人たちは間違いなく妖獣の餌食になってしまう。
 一団の中心にいるのは龍の体に鳥の翼、人の頭を持つ異形の怪物。爪は刃物のように鋭く、「イツマデ、イツマデ」と泣き叫ぶ声は恨みに満ちて、聞く者すべてに衝撃を与える。
「『イツマデ』という名前らしい。そいつの周りに、虫っぽいのがウジャウジャいやがるんだ」
 まずは虫とも植物ともつかないグロテスクな姿の妖獣――セミキノコが2匹。
 体にはキノコが生えていて、距離が離れていても胞子を吹き飛ばして攻撃できる。これはダメージを与えるだけでなく、ときに吸い込んだものを眠りに落とす。
 それから数え切れないほどの足が生えた妖獣――ムカデコオロギが4匹。
 無数の足による機動力で素早く移動し、強靭な顎で獲物に喰らいつく。力強く巨大な顎はそれだけでも脅威だが、その牙には毒があるという。
 最後にイノシシの上半身とアリの下半身を持つ妖獣――アリイノシシが3匹。
 体を覆う甲殻は非常に硬く体力も高い上、自己強化を兼ねた回復を使う。他の二種と違い異常状態になる攻撃はしてこないが、その分単純に戦闘力は優れているといえる。
 一直線に突進してくれば回避は難しく、もろにくらえば吹き飛ばされる。
 イツマデも含めて、合計10匹。これらを一匹残らず退治して欲しい。
 幸い人里まではかなりの距離があるので、人目や音を気にする必要はない。多少薄暗いが、照明も必要ないだろう。
 ただし戦闘が想定される場所は斜面になっていて足場は悪く、また木立に遮られて視界も良いとはいえない。
「まあ……山のど真ん中だからな」
 ただ状況は敵にとっても同じはずなので、こちらだけが不利になるということはない。また作戦によっては、有利に運べる可能性もある。
「もし万が一、全滅できなかったときだが」
 あんたたちが逃げるにしろ、ヤツらが逃げるにしろ――とにかく連中の進路を変える努力はしてくれ、と予報士は言った。
 最低限それだけでもしておけば、被害は食い止められるはずだから、と。

 説明を終え、伝え忘れたことはないかともう一度メモに目を通す。「よし」と小さくうなづくと顔を上げ、白い歯を見せた。
「遠慮はいらねえ。思いっきり暴れて来い!」

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参加者
アーデルハイド・ローゼンハイム(水銀党総統・b02347)
涼宮・杏樹(ステイゴールド・b03582)
ラッセル・グレアム(親日メリケン忍者・b14557)
シャローム・シュレスウィヒ(ナッハヴェーラー・b23389)
桂月・レイ(今日はもやしが安い・b25558)
バシリウス・ライヒ(薄暮を渡るガザル・b27195)
淵守・透(グッドセンサー・b30327)
草影・茜(茜色の唄風・b47797)



<リプレイ>


「また聞こえるねぇ……気味が悪い」
「何か悪いことでも起きなきゃいいんだけど」
 ここ数日、山から吹く風の音がまるで人の声に聞こえると、村人たちは不安顔でささやきあった。

 イツマデ……イツマデ……。

 同じころ、伊豆山中の広大な森の中で能力者たちもその声を聞いていた。
「イツマデとはこちらが尋ねたいものだよ」
 やれやれといった表情でバシリウス・ライヒ(薄暮を渡るガザル・b27195)が肩をすくめる。山中での移動に支障が出ないよう、動き易さを重視して服装を選んだのだが。
「俺の美学には反するのだがね」
 こぼしながら、ちらりと淵守・透(グッドセンサー・b30327)に視線を送った。透はすでに起動を済ませており、百獣の王を模した着ぐるみに身を包んでいる。
「……ん?」
 何か言いたげなバシリウスに向かって首をかしげた。
 シャローム・シュレスウィヒ(ナッハヴェーラー・b23389)は心配と愛情の入り混じった目で涼宮・杏樹(ステイゴールド・b03582)を見つめていた。
 かつて共に戦ったとき、力及ばず目の前で彼女が倒れるのを見てしまった。大切な人を護れなくて、一体他の何を護れるというのか――。
 前回と同じ失敗を繰り返しはしない……そんな気持ちが伝わったのだろう。
「私……未熟だから」
 心配かけてごめんね、と杏樹は背の高い恋人を見上げた。痛むのはこの身よりも彼の心。
(「だけど、私も護るから。シャロンを――そして皆を」)
「えーと……二人とも、もういいかな?」
 申し訳なさそうに声をかけたのは、ラッセル・グレアム(親日メリケン忍者・b14557)。気がつけば、彼だけでなくバリシウスと透、桂月・レイ(今日はもやしが安い・b25558)までもが出歯亀……もとい、二人を見守っていた。
 みなの視線に気づき、あわてて離れる二人。
「まずはイツマデを倒すことだね!」
 鼻歌交じりに草影・茜(茜色の唄風・b47797)が言う。その言葉に異を唱えるものはない。
「折角親玉を倒したのに、ここで一般人に被害が出ちゃ意味がないからね」
「何としてでも食い止めねばなりません」
 口々に決意を表し、戦意を高める。
(「絶対に食い止めて、これ以上の被害が出ないようにしなきゃ」)
 心の中で誓うと、レイは登山靴を履いた足で地面の感触を確かめた。

 雑草に足をとられ、積もった枯葉に滑りそうになりながら、不気味な声を頼りに道なき道を進む。音が木霊するせいで時折方向を見失ったが、やがて妖獣が通ったと思しき跡に辿り着いた。
 地面に点々と残る奇妙な穴、周囲の木々には真新しい傷。そして間違えようのない特徴のある鳴き声。
「いた、あそこだ」
 透が指差す。
 頭部から尻尾の先まで、遠目で見ても優に5メートルはあるだろう。巨体をくねらせ、木立の合間を押し進んで行く。
「それにしても……蟲っぽい妖獣サンがいっぱいですわぁ〜ん♪」
 アーデルハイド・ローゼンハイム(水銀党総統・b02347)がのほほんとした声を上げた。虫が好きで喜んでいるのか、嫌いでイヤがっているのか……口調からは今一つ読み取れないが、彼女の言うとおり、歪ながらもセミ、アリ、ムカデの特徴を持つ妖獣たちがイツマデの後を追うように付き従っている。
「イツマデ」という鳴き声もさることながら、枝をへし折り木々を揺らしながらの行軍はかなりやかましい。
 一行は騒音に紛れて敵の横腹に回り込んだ。この方向から攻撃すれば、進むにしろ引くにしろ、進路が変わるはずだ。
 とはいえ、これ以上気づかれずに近づくのは無理だろう。
「行こうか」
 杏樹がイグニッションカードを取り出す。起動していないメンバーも倣ってカードを天に掲げた。
「「イグニッション!」」


 能力者たちは素早く布陣を整え、妖獣に接近した。不意に現れた一同に敵が浮き足立つ。
 ラッセルの放った水刃が木々の合間を縫って飛んだ。狙うは手前のセミキノコ。同じセミ目掛けて杏樹の足元からも影が伸びる。
 更に降り注いだ光がいくつもの十字の傷を刻むと、ようやく妖獣も体勢を立て直し反撃に移り始めた。
 まずはムカデコオロギ2匹とアリイノシシが杏樹に殺到し、彼女の周りを囲む。
「杏樹!」
 思わず声を上げるシャローム。だがバシリウスの張ったフィールドの効果もあってか、杏樹は次々と攻撃をさばき、ほぼ無傷で笑顔を見せた。
 仲間の不甲斐なさに憤ったわけでもないだろうが、2匹目のアリイノシシの突撃は凄まじかった。
 まさに猪突猛進。土煙が見えたと思った次の瞬間、ラッセルは自分の体が宙に浮いているのを感じた。
「うっ……」
 背中から地面に叩きつけられ、その勢いで周囲に枯葉が舞い上がる。
「グレアム!」
「ごめん……初っ端からこれか」
 自嘲気味につぶやく。息をすると鈍い痛みが胸から背に突き抜けた。
「なーに気にすんなよ」
 透は起き上がろうとする彼に手を貸しながら、ポンと肩を叩いた。忍者刀に黒燐が宿り、淡い光を放つ。
「大丈夫、ラッセル一人で戦ってるんじゃないもの」
「ああ。俺も可能な限り盾になる」
 杏樹の声に振り向けば、バシリウスがセミキノコの胞子を叩き落とすのが見えた。仲間の存在を心強く思いながら、ラッセルは纏わりついた草を払った。
「来ます。気をつけて」
 レイが注意を促す。
 彼女の放った巨大な槍が敵陣の真ん中ではじけ、虫たちが慌てふためく中、イツマデが翼を広げ大口を開いていた。
「イツマデ……!」
 衝撃が木の葉を切り裂き、能力者たちの鼓膜と体を激しく揺さぶった。

「さあ、はじめようか? 私たちのステージを!」
 歌いながら放たれた茜の雑霊弾に合わせ、サキュバス・キュアが前に出る。
「アータンはイツマデ以外をお願い」
 命令を受け、杏樹にちょっかいを出していたムカデコオロギに絡みつき精気をすすった。
 ギチギチと怒りの声を上げるムカデの上を、ナイトメアが駆け抜けた。器用に障害となる木々を避けながら、しかし確実に数体を巻き込んで踏み荒らしていく。
 シャロームから迸る光は広く浅く、妖獣たちの体を焼く。ふと気配を感じて横を見ると、後衛にいるはずのアーデルハイドが隣にいた。
「ハイジ、下がって」
「わたくしの役目はイツマデの牽制ですもの」
 魔導書【無名祭祀書】を手に冷たい声で拒絶する彼女の佇まいは、戦闘前とはまるで別人だった。
「Blitz!!」
 掛け声も短く、雷を呼ぶ。内なる魔法陣で威力を高めた閃光は、イツマデの体を打ちすえ無数の羽を散らせた。
 執拗に牙をむくムカデたちをかわしながら、杏樹はもう一度セミを狙った。真っ黒い腕が妖獣の身を深くえぐり、無へ返す。
「まずは1体!」
 皆に知らせる声を否定するように、イツマデが再び鳴いた。先ほどとは比べ物にならない破壊の波が一同を襲った。
「くうっ……」
 アーデルハイドが苦しげにうめく。敵を射程に収めようとすれば、自らもまた敵の攻撃範囲内に入ることになる。


 魔狼のオーラを身に宿し前線へ戻るラッセルとすれ違うように、一番遠くにいたアリイノシシが突進してきた。木立の手前で急ブレーキをかけ、大きく迂回する。それはまったく偶然の動きだったが、能力者たちの左翼に回り込む形となった。
「まずい、抜かれるぞ」
 透はアリの前に立ちはだかり、猛突進を体をはって止めた。
「残念だったねー」
 そして反対側でも、ようやく攻撃圏内に入ったムカデコオロギたちが獲物を求めて顎を鳴らしていた。杏樹が長剣ではじくたび、耳障りな金属音が響き火花が散る。
 だがすべての攻撃は防ぎきれず、太ももに、そして腕にも牙を受けてしまった。
「無理をするな、下がれ!」
 即座にバシリウスが杏樹の背後に回り、手近なムカデに仕込み杖を叩き込むと、不満そうに後退した。
 茜が風水盤を掲げた。回転動力炉が激しくうなり、周囲の雑霊を塊にして撃ち出す。気塊は大気を歪めながら一直線に妖獣の体を貫いた。
「今のうちに!」
 促され、塵と化したムカデを払いながら敵陣から抜け出す杏樹。毒を受けたのか青白い顔には玉の汗が浮き、長剣を高々と掲げた両手は小刻みに震えている。
 恋人の元へ駆け寄り抱きしめたい気持ちを抑え、シャロームは浄化の舞を舞った。レイがハートマークを空中に描くとそれは杏樹の頭上ではじけ、アーデルハイドは魔弾の射手で自らを癒す。
 回復に専念せざるを得ない能力者たちを、またも重なる衝撃が包み込んだ。
「イツマデ! イツマデ!」
「そろそろ聞き飽きたよ」
 うんざりした表情でラッセルが水刃を放つ。薄暗い森の中、木漏れ日を受けて輝きながら2体目のキノコを切り落とし、一歩遅れてセミの姿もかき消えた。
「よし……これで眠りの心配はなくなったね」
「こちらもそれなりに消耗してはいるがね」
 バシリウスが再び夢の力を開放しフィールドを張る。残る妖獣はイツマデも含めて7体。
「さて、どこまで粘れるかな」
 眼前に並ぶ不気味な姿を見やり、小さくつぶやく。
「バシル、ありがとね」
 振り向けば、すっかり顔色の良くなった杏樹が前線に戻ってきていた。闇を纏う剣が弧を描き、ムカデの命をすする。
 そんな彼女の背を見守りながら、シャロームは十字の光を降らせる。同時に後方から飛来した森王の槍が爆発した。土煙が収まると、2体のムカデが消滅していた。

 透は油断なく辺りを見回した。ラッセルの前にアリが1体、自分の前にも1体。かなり右に寄った所で杏樹とバシリウスが、アリとムカデを相手にしている。
 数で勝っていたはずの敵は次々に倒れ、味方は傷だらけだが全員自分の足で立っている。
 だが移動しながら戦ううちに隊列が崩れ、いつの間にか左翼と右翼の間にぽっかりと空間が開いていた。そこにアーデルハイドとシャロームの姿が見える。
 気をつけてはいたのだが、やはり実際の戦闘では作戦通りにいかないこともある。
(「……離れすぎたかな?」)
 軽く不安を覚えたとき、アリイノシシが突っ込んできた。獣臭ただよう熱い鼻息と牙を、痛みと共に押さえ込む。
「ブゴォッ」
「ここは通さないって言ってるだろ!」
 目の前にある醜悪な顔をにらみつけ、思いっきり殴りつけた。
 雷鳴が轟き、一瞬視界が白く染まった。その中心にはイツマデ。焦げた羽をばたつかせ、呪いの言葉を吐く。だがさすがに疲労が溜まってきているのか、声に力がない。
 弱々しい「イツマデ」と入れ替わって、馬のいななきが聞こえた。ナイトメアは一陣の風となってムカデを踏み潰し、アリの外殻に蹄の痕を残して森の奥へと消え去った。
「ブ……キッ」
 アリイノシシの動きが止まった。そのまま消えるかと思いきや、ボコボコに凹んだ殻が修復していき、目に見えない鎧がその身を覆った。
「回復と強化か……めんどくさいなぁ」
 アータン! と茜が相棒に一声かけると、サキュバスは優雅とも言える動きで妖獣を翻弄した。そこへ撃ち込まれる無形の弾丸。
 抜群のコンビネーションの前になすすべなく、アリイノシシは高めた力をふるうこともできずに崩れ落ちた。


「うっし、残り3体だ。全部まとめてぶっ倒そう!」
 左の後方から透の声が聞こえる。
 杏樹は両足に力をこめた。もはや彼女の目の前に邪魔をするものはない。一息でイツマデの懐に飛び込み、黒く尾を引く長剣で薙ぎ払った。
「……浅い?!」
 胴を両断するはずだった剣が空を切る。あざけるような老人の顔が彼女の目をのぞき込み……その顔面に矢が突き立った。
「離れろ! 下衆!」
 破魔矢にこめられた聖なる力に、もがき苦しむ異形の怪物。だがいまだ倒れる様子はない。
「イツマデェェエ!」
 この耳障りな声を聞くのは何度目だろうか。目には見えないのに、確かな質量を持った波が能力者たちの体力を容赦なく奪っていく。
「ああっ」
 アーデルハイドの悲痛な叫びが聞こえた。
「今行く!」
 回復に向かおうと振り向いた透の背に何かが当たった。イツマデのものとは違うドン! という衝撃が透を跳ね上げ、突き飛ばし、叩きつける。
 くらくらする頭を振り、草と土の混ざった血を吐き出した。心配そうに見下ろすレイの視線を受け、自分が後衛まで吹き飛ばされたことを知った。
 幸い、アーデルハイドはまだ無事のようだ。頭上でハートマークがきらめき、彼女に再び立ち上がる力を与えた。
「トール、大丈夫かい」
「うん、どうにかね」
 ラッセルが肩越しに声をかける。答えながら透は魔法陣を描くアーデルハイドの隣に立ち、痛む肩を押さえて自らに奏甲を施した。
 たった今不意打ちを喰らわせてきたアリイノシシが、満足そうに鼻を鳴らしているのが見えた。もう1匹はラッセルが牽制してくれているが、そのせいで彼は動けない。
 夢幻のフィールドと赦しの舞を受けて、杏樹は再び黒い剣を振るった。その軌跡を追うように、紫電が風を切って飛来した。
 老人の顔が苦痛に歪み、最後の力を振り絞って一際高く鳴いた。
「うっ……」
 アーデルハイドが再び膝をついた。すぐさま黒燐の力を分け与える透。しかしホッとしたのも束の間、先ほどのアリイノシシが突っ込んできた。
「ハイジ、避けて!」
 叫びもむなしく、彼女の体がぐらりと傾く……そしてそのまま動かなくなった。
「このッ」
 茜の放った雑霊弾は、黒光りする甲冑にはじかれた。
 バシリウスが最後のナイトメアを呼び出した。イツマデに向かって一直線に駆ける。その顔に浮かぶのは恐怖だろうか?
 だが見分ける間もなく、断末魔の叫びだけを残してあの世へと旅立った。

 イツマデの消滅を見届け、杏樹が後衛のフォローに向かう。だが仲間のもとへ辿り着かないうちに敵が動いた。
 1匹はラッセルに牙を突きたて、もう1匹が障害物を避けて向かった先には――
「嘘?!」
 茜を跳ね飛ばし、なおも前進することをやめない。
「こいつは俺が抑えるから!」
 みんなはもう1匹を頼む、とラッセルが叫ぶ。
 透は残っていたダークハンドを叩き込んだ。引き裂かれたイノシシの毛皮が毒で変色する。
「せっかくイツマデを倒したのに……!」 
 レイは植物を編み上げ巨大な槍となした。もろに爆風を受け、もんどりうって痙攣するアリに止めを刺したのは、魔を払う聖なる矢だった。
「ラスト1匹!」
 ここまできて負けるわけにはいかない――いや、負けるはずがなかった。
 畳み掛ける怒涛の攻撃に、妖獣は回復に徹することで耐えた。だがそれはいたずらに苦しみを長引かせただけだった。ようやく最後のときを迎えた瞬間、おそらく一番安堵したのは妖獣自身ではあるまいか。


 こうして、山中に穏やかな時間が戻った。
「じゃあ、カラオケボックスでもいこっか?」
 仲間の肩を借り、痛みに顔を歪めながら茜が言った。
 それだけの元気があれば大丈夫だと、能力者たちは顔を見合わせて笑う。
 山を降りていく一同を鳥たちがさえずりながら見送った。

 集いしものの行方――それは、彼ら8名の能力者のみが知る。


マスター:秀翠 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/03/01
得票数:楽しい1  泣ける1  カッコいい17  知的1  ハートフル1 
冒険結果:成功!
重傷者:アーデルハイド・ローゼンハイム(水銀党総統・b02347)  草影・茜(茜色の唄風・b47797) 
死亡者:なし
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