哀と勇気だチョコレート!


<オープニング>


「この時期は何かとチョコレートの話題が尽き無いな」
 そういうと、運命予報士はカラフルなチラシを能力者達に手渡す。
「期間限定、一口サイズのロシアンチョコレート?」
「某商店街に個性的なお菓子を専門に食べれる店ができたようで、今回は期間限定にロシアンチョコレートを販売しているらしい。
 口コミで人気もでてきた中に、その店の裏側にある路地にリビングデッドの猫が一匹棲みついてしまったので、これを倒してもらえないだろうか。
 能力は、爪による引っ掻き攻撃だけで、死後姑くたってるのもあり、動きは鈍い。
 昼間は路地の袋小路……つまり、行き止まりだな、そこで眠り込んでるようなので、そっと近付いて一斉攻撃をすれば、楽に倒せるだろう」
 
 店の方が繁盛しているので、昼間でも路地裏には人が来る事はないという。
 また、路地付近で派手な音がしても、どうせ猫が喧嘩でもしてるのだろうで済んでしまうだろう。

「依頼が済んだら、店の中で新作チョコレートを皆で楽しむといいだろう。
 良い席を予約しておいたので、いい思い出にしてくれ。大切な人と楽しみたい者、孤独を愛する者もいるとは思うが、これは皆で楽しむのが良いと思う。
 あとは……多少の勇気がいるかもしれんな」
 時期的に思う所はあると思うが、勇気を試すバレンタインも良いのではないか?
 と、運命予報士は苦笑した。
 
「ああ、店に入るのは依頼を先に片付けてからにしてくれよ。
 人気がでれば、今よりも人が多く集まるだろうからな……では、宜しく頼む」

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参加者
風見・玲樹(痛快ぼっちゃま・b00256)
氷川・玲(紅蓮・b02628)
狐火・だきに(炎の小学生・b03563)
田中・ひろみ(矢車草・b15012)
鬼虎・吉太郎(お前は虎になるのだッ・b15034)
神社・雪柳(噴雪花・b15506)
キア・リスミルト(高校生ファイアフォックス・b15763)
長谷川・柚奈(中学生青龍拳士・b18114)



<リプレイ>

「(とっとと倒して楽しみに行くとするか…)」
 商店街に張られたチラシを気にしつつも鬼虎・吉太郎(お前は虎になるのだッ・b15034)が、怪しまれないように路地裏へと入る。ひっそりと静まりかえった路地裏は居心地が良い場所なのだろうか、無造作に置かれているゴミの上で腐りかけたお腹を上に出し、猫……もといリビングデッドが寝ていた。猫リビングデッドの上に一つ、そしてまた一つと影が差し、妙な気配がヒゲをくすぐったのか、何事ニャ?と猫がただれた目をあけた瞬間、7つの影が一気に襲い掛かった。

「あ、終わった?」
「はい、埋葬の方も無事に済みました」
 路地裏での戦闘中、ただ1人ド派手な格好をして店の表側でジャグリングを披露し、人目を引いていた風見・玲樹(痛快ぼっちゃま・b00256)が、芸をしたまま見知った顔を見かけて声をかけると、キア・リスミルト(高校生ファイアフォックス・b15763)が返事を返した。初めての依頼が半分無事に終えた事と、玲樹のジャグリングを少し見れたのもあってその声は明るい。
「人気が無い公園がー…近くにあったからー…木の下に埋めてきたー…」
「次に生まれてくる時は幸せになって欲しい…です」
 狐火・だきに(炎の小学生・b03563)が呟き、田中・ひろみ(矢車草・b15012)は、公園がある方に向けて、そっと目を閉じる。
「遂にお楽しみのチョコだー♪ あ、いや、別に浮かれてないからっ」
 神社・雪柳(噴雪花・b15506)にとっても初めての依頼、浮かれて失敗しないように!と、最後まで集中しようと思っていたものの、やはり甘いものの魅惑にはかなわなかったようで。べ、別にチョコに惹かれて依頼を受けたんじゃねーからなっ!とさりげなく、フォローをいれるが、その足は誰よりも先に店の扉の方を向いていた。
「僕もロシアンチョコを頂くとするよ。ここで漢を見せなきゃバレンタインは乗り切れない!」
 玲樹は道具をしまい、派手な格好のまま店の中へと足を踏み入れた。

「こんな風に大勢でお店に来たことがありませんでした。…この学園に来て楽しいことばかりです」
 長谷川・柚奈(中学生青龍拳士・b18114)は、お菓子の家をイメージしたような内装を眺め、飴で作られたような椅子に腰をかけた。誰かと一緒にいる事が、戸惑いながらも、笑ったり、驚いたりと、少しづつ柚奈を表情を豊かにしてきたのだろう。
「隣、いいか?」
 後輩を心配したのか、氷川・玲(紅蓮・b02628)が、柚奈の隣に腰掛ける。
「何か嫌な予感がするので、注意しろな?」
「え? …でも…選べば、いいんですよね?」
 ひょっとしてロシアンの事、知らないのでは?……と、もっと心配になる玲であった。
「美味しいチョコを食べに来ました!」
「榛っちには負けないですよ!」
「内装も随分凝ってますわね」
「個性的なチョコか、どんな味か楽しみだな」
 遅れて席に着いた榛、なずな、歌戀、明彦の4人は和気藹々と座るが、その様子に不安を覚えた玲は4人に聞こえない様に、だきにと吉太郎にそっと耳打ちする。
「おい……ロシアンチョコだという事は、伝えてあるのか?」
「あー…『チョコレートを食べに行くイベント』であるということしか伝えていないー…」
「俺も」
 玲は心の奥底から4人に同情した。

●カスタードとマヨネーズ
「どの箱も、当たりは3つとなります」
 ウェイトレスが、チョコの箱をテーブルの中央へと置く。中にはトリュフのような一口サイズのチョコが可愛らしく12個分並んであった。これならいけそうだと誰もが思い……いや、思う事しか道が残されていないというべきか。どうか当たりがでませんようにと全員がチョコを手に取り、一斉に口の中に入れる。
「えへへv大丈夫でした♪」
「ほっ、でもまだまだこれからだな」
(「これは!」)
 口の中で広がるチョコを味わいつつ転がすものもいれば、その逆もいるのがロシアンである。キアは食べる瞬間、チョコの隙間から明らかに危険物がでているのを発見し、明彦の肩を軽く叩く。
「ん? 何だい?」
「禰塚さん、『マヨネーズくらいなら意外と美味かったりしてなー』っていってましたよね」
「ん? そういえば、言ったかも」
 どちらかというと好奇心が勝り、明彦は危険物ではなくチョコを受け取り、そのまま一口で食べる。
「……おっ、意外といけるんじゃーん?」
「えっ!」
「たしかにー…食えないこともー…ないー…」
「狐火さんも?! ……あっ!」
 美味しそうに食べる明彦と、当たりつつも平然なだきにに驚くキアが、ふと自分が持っている皿に重さを感じると、いつのまにか半分なマヨチョコが鎮座していた。
「キア、油断禁物だぜ」
「うぅ……」
 なすりつけに成功したものの、泣く泣く雪柳のマヨチョコを噛み締める事になったキアであった。
「だ、大丈夫ですか…?」
「…リビングデッドより、強敵ですね…」
 ひろみが心配そうにキアに水を手渡し、柚奈も背を撫でながら真面目に呟いた。まだまだ序盤だが、すでに阿鼻叫喚のヨカン♪

●抹茶と練りわさび
 チョコに絡みつく独創的な味にダウンしたキアに臆する事無く、宴は続けられる。
「辛いもの苦手なんだよね……甘い物食べて辛い物食べると、辛さが増すって知ってた?」
 思わず呟いてしまった玲樹だが、覚悟を決めて次のチョコをかじってみる……が、その願いは叶う事はなく、悲劇は起こった。
「うぎゃああああ!!」
 悲鳴をあげた玲樹が、ゴロゴロと床を転げまわったと思いきや、ピタっと何事もなく止まって起き上がる。そして……雪柳に向かって満面の笑顔で振り向いた。
「雪柳さん、このチョコを食べると幸せになれるよ♪」
「どうみたって明らかに不幸になっていたぞっ!」
「じゃあ、歯の検査をして……ぐはっ!!」
 吹き飛ばされるがごとく衝撃があった方を振り向くと、そこには鼻と口を片手で押さえ、涙ボロボロなひろみがぎゅっと玲樹の肩に捕まったまま、ごめんなさいっ!と涙目で訴えていた。
(「……ツーンってするんです。涙ボロボロです」)
 あたりの押し付け合いは『間接キス』だという思いもあって、ひろみはコップを握りしめ、異物を除去するがごとくに水と共に一気にチョコを胃の中へと押し込んだ。
「……ごめんなさい」
 ようやく落ち着いたひろみは、目にたまった涙を拭き、口直しのためにも次こそは普通のチョコが来ますようにっ!と強く願った。

「……うっ」
 一口かじった瞬間、柚奈の口の中に広がったのは、鼻の奥までツーンとくる独特の感覚。みるみるうちに微妙な顔になり、思わず口元を押さえてうずくまる。
「大丈夫か?」
「…、…個性的な、味、です…」
「いや、無理だろ」
 少しなら手伝うぞと声をかけたいところだが、実は玲も辛いものは駄目だったり。
「食べることは義務です……最後まで……食べます」
 柚奈は顔を真っ赤にしつつ、瞳に涙を溜めても、少しづつかじって減らしていき、最後まで食べ尽くすと水を一気に飲み干した。

「絶対に来ると思ったさ!そりゃあ独り身の僕の心は、この時期は北極の様に寒くなっているけど、辛さで体を温めても心までは熱くならないよー!」
 ひろみと柚奈が完食した頃、なすりつけに失敗した玲樹は、滝のように涙を流しながら、当たりチョコと格闘していたのであった。

●苺風味と……
 食べる前からソレは存在を放っていた。チョコにカモフラージュされる事なく、匂いも味も見かけ全てを逆に染めあげてしまう。その名は……ハバネロ。
「ギャアアアアアア!」
 当たりを豪快にも一口で食べてしまった玲が断末魔のごとく咆哮をあげ、勢い良く立ち上がり……そして止まった。
(「おしっ!おーーし!!やったぜ!俺!! ……ん? ……だ…だれかやりやがったなぁ…っっ!」)
 外れたのが嬉しくて、思わず立ちあがってガッツポーズしたのが運の尽き、いつのまにか危険物になっていた事に気付いた吉太郎は、ふと歌戀と目が合ったが、歌戀は怪しく微笑んで吉太郎の目を避けた。
(「犯人は歌戀だな。熱い戦いになりそうだぜ、『必殺高速皿回しの術!』」)
 皆の意識が玲に向いていた隙に、自分の皿を掴み、目にも止まらない速さで動かす。その標的は歌戀では無く、あえて玲の皿!
「……むっ!!」
 間一髪、生死の境目から帰還した玲は脊髄反射のごとく持っていたフォークで素早く吉太郎の皿を弾く。その勢いでチョコも弾かれ、ポトンと歌戀の皿へと落ちた。
「わたくしを狙うとは……覚悟はよろしいですわね!?」
 歌戀は勢いをつけてフォークでチョコを刺し、吉太郎の口めがけて一撃を放つと、吉太郎もくらってたまるかと皿を盾にして攻撃を弾く。弾かれたチョコは今度は大きく宙を舞って……。
「わたくしが負けるなんて事、あるわけないですわ!」
 皿を握って大きく跳躍した歌戀が、卓球のスマッシュのように皿でチョコを叩きつけると、チョコは半分に割れて、真直ぐ吉太郎と玲の口に吸い込まれていった。
「ぐわあああ!!!!」
「……ぅぐっは!!!!」
 飛び散る悲鳴とチョコレート、そのまま吉太郎と玲は真っ赤になって床に倒れ伏した。
「勝利ですわね」
 歌戀は勝利の美酒を味わうかのように、吉太郎の苺チョコを口の中に放り込んだ。

(「苺味だ、すげー嬉しい♪」)
 口に広がるほろ苦チョコと甘酸っぱい苺クリーム。その絶妙なハーモニーに、雪柳の頬は思わずトロンと溶けてしまい。
「雪柳さんも……苺が好きなのですか? とても…美味しいですよ?」
 瞳を輝かせて嬉しそうにチョコを口の中に転がしていた柚奈が雪柳の顔を覗き込む。
「あ、いや、俺は、別に……ん?」
 顔にでないはずなのに、なんでバレバレなんだ!と焦る雪柳の足下に何かが当たり、ふと目線を下に移すと、連続で当たりを引いてしまった玲樹が床を転がり捲ったあげくに掃除用バケツに顔を突っ込んだ姿で涙を流していた。

●生チョコと漢方風味
(「これはー…だめだー…色々とー…」)
 嵐のごとく口の中に広がった中国四千年な味に、だきには微妙な表情をしつつも軽く室内を見渡す。先程の死闘とは違って驚く程静かになった室内、どちらかと言うと疲労困憊な者が増えてきたのが一番の理由なのかもしれないが。
「なず姉ー…」
「ん? だきにっち、どうし……!!!」
 なずなが振り向いたところにあったのは、だきにの口、そして……(ズギュウウン!! 効果音)
(「いまのは、キス……ですよね」)
 一部始終を見てしまい、耳まで真っ赤になったひろみに気付く事無く、『口移し』でなすりつけただきには、いろんな意味で放心気味のなずなの前に今度はチョコの箱をどんと置く。
「まだ3つ残っているー…なず姉のー…ちょっといいとこ見てみたいー…イッキイッキイッキー…」
「とっても変な匂いがするけど、だきにっちにこれ以上、外れを引かせるわけにはいかん!」
 大好きなだきにに煽てられてテンションが上がったのか、物凄い速さで残ったチョコを一気に食べるなずなを見て、生チョコを口に転がしていたキアはふと思う。
(「当たりはまだ箱の中にあるのでしょうか…… あ!!」
 ふと自分が持っている皿に重さを感じると、薬のような異臭を放っている個性的なチョコがほぼ丸々と皿の上に追加されていた。
「神社さんっ?」
「これ、かなり苦手だから。ほら、無理して食べてひろみに心配かけたくないしな」
「うぅ……」
 またもや泣く泣く雪柳の当たりチョコを噛み締める事になったキアでした。

●ナッツでスペシャル
「なず姉はー…もう駄目だなー…榛ー…残りは任せた」
「え……あたしは美味しいチョコを食べに来ましたのですが」
 だきにの一言に固まる榛。もはや一部は屍の状態、誰もが最後の希望を託すように期待の眼差しで榛を見つめる。
「榛のー…ちょっといいとこも見てみたいー…」
「……食べます、全力で戦います」
 熱い視線に負け、榛は当たりっぽいのを掴み、覚悟決めて口に放り込む。
(「当たりはどんな味だ??」)
(「まさか、なっと……じゃないよね?」)
 床に這いつくばりながらも、吉太郎も真剣な眼差しで榛を見つめ、玲樹は何かを想像したらしく視線を逸らす。
「だ、…大丈夫ですか?」
 柚奈が心配そうに訪ねると、くるりと榛が般若顔状態で振り向いて。
「いや、この、ね。とろりとした舌触りと濃厚な風味が。ね?」

 沈黙……そして。

「納豆、でしたああ!!!」
「「やっぱり納豆か!!!」」
 ちゃぶ台返しのごとく榛がテーブルを揺らし、その勢いで皿もコップも宙に飛び、テーブル上の全てのチョコがシャッフルされる。そして、榛が倒れ伏して再び静寂が戻った時には、各々の皿の上は……渾沌と化していた。
「…ん?この俺の皿に乗っかってるのはなんだ」
「何、この豆は! ねとねとしてるし、気持ち悪いんだから!」
「この赤いのは……嫌という程、見覚えが」
「これは……新たな残留思念でしょうか」
「………」
 あるものはミックスされていたり、あるものは割れて中身がねばーっと見えてしまったり。
「……食べることは義務……ですよね?」
 頑張ろうとする柚奈の言葉に、誰もが沈黙を返した。


 大波乱の末、うつ伏したまま動かない者、床にひたすら転がっている者、うなされる者。辺りはほんとに死屍累々。
「ナッツスペシャルは……何か意味が……あったのでしょうか。あっ」
 ひろみが口直しにと、手に取ったナッツチョコを注意深く観察すると、その中のアーモンドの表面に、小さく文字が彫ってあった。

 『HAPPY VALENTINE★』


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/02/14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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