<リプレイ>
●見渡せば広がるその景色は 少し肌寒かった空気は昼前には晴れてぽかぽか陽気だ。ここ数日で一気に開花が進んだのだろう、梅も満開だ。 今日は微かに漂う梅の香を楽しみ、緑豊かな地での行楽を楽しむのだ。
摩耶は人の比較的少ない天神梅林に足を運び、静かな時を過ごす。メジロが梅の木に留まる。可愛らしい仕草に気持ちも温かくなる。 受験から解放された志津乃を労うべく、霜司が誘ったのは観梅。2月の出来事を思い出して笑い、その間の出来事を話す。距離を縮める様に。 「桜も良いが、梅の良さもあるな…ん、何か言ったか?」 日本的風景に志津乃は落ち着くのは屹度、和の雰囲気を感じる霜司に似ているからだと小声で呟くが、霜司の声に掻き消されて。暫し見つめ合うと、手を繋ぎ歩き出した。 「うわぁ」 ココナが梅に手を伸ばす。 「もっと近くで見てみっか?」 「うんっ」 ウィルはココナを肩車する。一気に高くなり、梅花が間近になる。 「梅がすごい近くで見えるんっすごいんっ背がおっきいなった感じなん〜♪」 はしゃぐココナの様子にウィルは兄妹の様で嬉しかった。 「これほどとは…やはり聞くと見るとでは違いますの」 遠くに淡い色合いで絨毯の様に広がる景色。 「梅の良い香りが致しますね。もう春もすぐそこ、ですね」 手を繋ぎ辿り着いた橋の上で、阿須波と撫子は並んで時折風に飛ばされてくる花弁を目で追いかける。 「…うわぁ、凄い…」 遥日は紅音と一緒に来られなかったのを残念だと思っていたが、純粋に綺麗だと思う感情で一杯になる。 「この梅たちはその長い間何を見てきたのでしょう」 人とは違う長い年月を思うと散人は、今そこにある奇跡に感動する。 緑と淡いピンク色の対比。V字渓谷に流れ込む川の流れ。景色を一望し、景綱は最高の一枚をファインダーに収めた。 「良く見ると、一本一本違うものですね…」 克乙は梅の枝ぶりを眺め、カメラに収める。咲き誇る梅が名所と呼ばれる迄になった出来事を蓮見から聞き、理解を深めていく。
「早起きして作ってきたんだけれど…口に合うかしら…?」 そう不安そうにオリバーを見上げる毀。炊き込みご飯は味が確りと染みて美味しい。美味しすぎて食べ過ぎない様にしなければと心の中で呟くと、素直に感想を述べる。 「普段は自炊なので、こういうのは凄く新鮮で幸せを感じますね」 「久しぶりにデートできるって思うと、嬉しくて、一寸張り切ってもた…。沢山食べて?」 「美味そうだな…いただくよ」 雪菜が笑顔で広げたお弁当に斗志朗は早速箸をつけた。独りで眺めるのもアリだが、隣に大切な人が居るのは矢張り違う。込み上げて来た思いを雪菜は斗志朗の耳元に囁くと、同じだ、と微笑みあった。 来年もまた、一緒に行こうな? と。 「綺麗ですね」 「ええ」 蓮見と氷魚は梅の平原の様に広がる景色に見とれる。 「これだけの梅を見れるなんて、良い場所ですわ」 すみれは深く呼吸して梅の香りを味わう。又来年も同じ様に花を咲かせて下さいませね、と内心話し掛けて。 「空と梅の対比が綺麗だね」 弥琴がその景色をカメラに収めた。 「梅の花の馨りが漂ってくるね! さあ、みんなでお弁当にしよう♪」 龍麻は手作り弁当を広げると、取り分けて行く。 「美味しいです」 紫貴が梅を使った料理に舌鼓を打つ。 結社Snow Dropの皆は終凪と鷸瑠の卒業祝いでやってきた。 「さて、卒業おめでとう。これからの道行きが良いものである様に祈っているよ」 蒼衣は華凛の好みの具が収められた重箱を広げる。 学校でお弁当を広げて食べられなくなるのは残念だなと、終凪は残念そうにしているのに雪那は感じたのか、反応する。 「…晩御飯? そうね、別にいいわよ。高校で出来なかった事の代わりと言っては何だけど、手料理振舞ってあげる」 「うわ、マジで楽しみ…♪ 期待してるな♪」 同居している華凛は幸せそうな雪那の様子に嬉しく感じ乍らも、寂しいと思う複雑な気持ちだ。 ハイネは笑顔で、煮物を箸で摘んで鷸瑠の口の前まで運んであーんと言う。男女逆である様な気がしつつも、いいかと思う。 「あ、あーんで良いがか?」 「まぁ、笑顔が見たくてやってたからな」 咲乱は喜んでくれて何よりだと微笑む。衛も同様だったらしく嬉しそうだ。尊は期待していた以上だったらしく目が輝いている。早速箸を付け、美味しさに素早い箸捌きで取り皿に盛る。踊るタコさん。 「このタコさんは頂いたっ!」 「なな、記念に写真とかとっとかね?」 眞風がカメラを固定し、クラスでの思い出にと提案する。 「撮ろう!」 「クラスメイトとのイベントって、意外と少ないからね」 「あ、焼き増ししてくれな?」 食事風景から、おかしなポーズや決めた感じのポーズ等色々と収めて。 「こうして、4人で梅見が出来るとは思ってなかったですわ」 しみじみと紹が呟く。 「実家での柵も、何もかも忘れられる空間というのは貴重ですわね」 操は紹と同じ気持ちでいた。色々な出来事があったのだ。 備は操と紹が作ったお重に収まっている豪華なお弁当に吃驚しつつも、食欲が凌駕したのか、早速箸をつけている。その隣でゆっくりと味わう堅。梅もお弁当も味わいたいので、自分のペースだ。 「これは…本当に、圧巻の一言に尽きるわね。目眩がしそう…」 みのりは心が安らぐのを感じた。∀muZeの皆と一緒だからというのもあるかも知れない。 泰花特製の3重のお重にはぎっしりと詰まっている。お茶も梅昆布茶という凝り様。 皆が美味しそうに食べるのを確認すると、自分も箸をつけた。 京はぱたんとシートに寝ころぶと、 「あ、みんなみんなー、これ凄いよーっ。こうして寝転んで見てみると、梅の花が絨毯みたい」 「ほほう、確かにのぅ…京、よぅ気がついたのぅ♪」 夕香里も寝ころび、上空を埋める梅を堪能する。 「食べた後にすぐ寝ると、牛に…本当かな…私も試してみよう…」 ノアが気持ちよさそうに目を細めた。牛になっても良いかもしれない。 寛いだ様子に、泰花はとある和歌を思い出す。今では人に愛でられ、美しく咲く梅に変わっていくのだと思って。 「わぁ…凄く良い眺め! ここにしようか」 唯冬は威巫斗へと振り返る。 「うんっ! この景色を見ながら食べるのって、とても素敵だね…っ」 威巫斗がシートを広げ、お弁当を広げた。手作りだと知って唯冬は威巫斗の髪を撫でる。ありがとうの思いを込めて。 結社ファンタスティックの皆でやって来た一行は、各自持ち寄ったお弁当でシートの上を彩っている。やる事はまず自分以外のお弁当の具を食べる事だろう。 「とれーどたーいむ」 月吉が気楽な様子でハンバーグの入った箱を差し出す。ティアリスはパウンドケーキと交換すると、美味しそうに口へと運ぶ。そして柳が手にしているおにぎりに視線を落とし、小さな声で「あーん」とお願い。 柳は顔を真っ赤にして、おにぎりを近づけた。 「あ、フィオ先輩っ。焼きソバとたこさんウィンナー、交換しませんか…!?」 壱帆が目をきらきらさせて言う。その様子にフィオーレはきゅんとする。 「はいどうぞ、可愛い小鳥さん♪ あーん♪」 「フィオちゃ!」 私も私も! と亜梨も壱帆の隣に並んで雛の様に口を開く。 その様子にスバルもリネに「あーん」とねだる。 「うん、美味しい」 「リ、リネちゃん、あーんしてなのだ?」 忍が羨ましそうに見ていたが、耐えきれずリネの傍に座り大好きな梅混ぜご飯のおにぎりを差し出す。 「ああああ、あーん!」 忍の仕草に吃驚して、続いてドキドキに変わる。 「食・べ・て♪」 「って、千代子!?」 千夜子が笑顔で亜梨の口へと運ぼうとするのを寸前の所で泉美が引き止める。 「亜梨チャンはこっちを食べると良いよ」 梅の砂糖煮を放り込む。自分は、千代子の箸が摘む物体を味わう。 「匂いが甘いのに苦くて辛くて硬いとか、器用すぎるぞお前…」 一気にぐったりとする泉美。 「千夜子様は何を作ったんですか?」 不思議そうに問う紗更に、 「…あーいう感じになる物体でよければどうぞ♪」 どうしよう、かな? と悩むも折角の機会と千代子の手料理を口にするのだった。 死屍累々になっている人は月吉が声を掛け、ティアリスの紅茶を口直しに差し出す。 「たまにはこう言う風景も、いいものだ、な」 柳は鉋と並んで座り、満開を迎えている梅を見上げ微笑む。鉋は照れた表情を浮かべ、微かに頷く。団子とお茶を堪能した後は、静かな一時。鉋はそっと柳の手に自分の手を重ねた。その仕草に愛おしさを感じて、また、二人で来ようかと言った。 「とても素敵な所ねぇ、来年も一緒にきましょうね」 お弁当を食べ終わって、みやびはアルブレヒトを膝枕している。気持ちが良いのか、アルブレヒトは眠そうにしている。 「うう…ん…あったかい…な」 「約束よ」 その様子に微笑むと、みやびはキスを落とした。 約束したからと野点でお茶を点てた。最高の一杯を是空に味わって貰おうと。 静かにその様子を見守り、最後の一滴を飲み干す。 「地祇谷、味はどうだ?」 章人の言葉に是空の瞳からほろりと流れる涙。今迄紡いで来た思い出。その気持ちを優しく受け止め、章人は優しく髪を撫でた。
●清廉な空気に触れて 八幡橋を少し過ぎた所に竜王の滝がある。 流れ落ちる水で岩や岩に群生する苔、緑が濡れている。差し込む光が色を添え、美しい。 緑深い場所にあるので、滝の上部から切り取った様に青い空が覗くのは計算された一枚の絵画のよう。
滝の周辺で漂うマイナスイオンを心地よいと思い、瑞穂は手を差し伸べ、するりとした手触りを楽しむ。 「滝は後にして戻って見てこないか?」 「え、何? ストークス先輩。滝の落ちる音が大きくて聞き取れないんだけど」 みさかがちょっぴり不機嫌そうな口調でオーウェンを見る。 手は冷たい水の飛沫を浴びて、気持ちがいいのに。満足するまで遊ぶと、要望通りに行こうと踵を返した。 「写真とろー、滝をバックにして写真ねっ」 流火が猫耳と尻尾を取り出して装備し、ポーズを決めている。はしゃぐ流火の姿に皓牙は思わず和む。 「あれは、写されると魂が抜かれるというが」 戯れ言を言いながら、流火の後ろに立つ。光韻はパンフレットに目を落としている。自然を感じつつ、その謂われ等を知る知的探求。 「ポーズはどうしようかな」 リアムはVサインで滝を背景に観光客に撮影して貰う。 「にゃ〜ん♪」 「写真を撮ったのか?」 変わらずに撮影が終わったのに気づかず、光韻は顔を上げた。 宗吾は会えなかった期間に思った事を訥々と言葉にする。滝を見渡せる所に立ち、タケルを抱き寄せる。 「まあ、その…なんだ。オレも会えない間、淋しかった…」 2人の気持ちが同じだったと知ると、タケルの頬にそっと手を添え、口付けた。 リドは滝の風景をフレームに収め終えると、待っている春波の方を見て、逡巡する。 その仕草に春波が見つめ返す。 「形に残してーんだ。駄目か?」 「ん、いいけど…どうせなら一緒に撮らない?」 滝をバックに自分撮りしてしまう。 「梅も綺麗だけど滝は懐かしいな」 れいあと柚流は、よく見えるベンチに座ってお弁当を食べる。れいあの里の話を聞き乍ら、いつか言ってみたいと思う。 「柚くん、頬におべんとついてる」 「え」 「とってあげるね」 ぱくっと口にして、はっと頬を染めた。
●のんびり足湯&自然豊かな味 温泉の入口付近にある足湯。 お風呂は男女別だから、のんびりと話をして、歩いてきた脚の疲れを癒すべく、温かな湯の流れに身を任せて。 ぐるりとひとまわりする形の足湯で、中の温泉の源泉から引いてあるのだ。 廂があるので、歩いている時に感じた日差しは遮られ、適度な明るさで脚が温まれば、眠気が襲って来そうだった。 結社空白教室エンドロールの皆と並んで脚をゆらゆらとさせている。 「足がぽかぽかして気持ちいいです〜…」 エルデは蕩けそうな表情で、声も蕩けている。 「極楽極楽〜〜〜♪」 「僕も蹴り技が多いから、足癒しておかないと」 楓の隣で蒼流が脚をゆらゆらとリラックス。楓を足湯に落っことそうとする健一から素早く回避すると、飲料用の温泉水の雫を顔に飛ばして仕返し。 「お花、綺麗だね櫻子お姉ちゃん」 「来て良かったですわね」 悠砂の言葉に櫻子は優しく微笑む。 「エルデさん、髪に花びら付いてますよ」 そう言って蒼流が優しく取り除く。とても似合っていたので名残惜しいと思い乍ら。 「なんか故郷に来たみたいだ」 遠くの視界に入るのは山々の姿。ジローにとって馴染み深い雰囲気。 雪花は目を閉じて、野鳥の囀りに耳を傾ける。続けて、自然に身を任せる様に景色に視線をやり、足湯で寛ぐ。 「足首までなのに何だかぽかぽかする♪」 「ほんとだ、暖かい…気持ちいいね♪」 太一狼は月の行動に合わせて、ゆっくりと楽しんでいる。隣に月が居るだけで十分楽しい。 「この暖かな春が終わっても、僕の暖かさはずっと月と一緒だよ♪」 そういって太一狼は月の心も温かくする。 「こーゆー梅見もあるンだネ、日本ならでは? 和むー」 初めてで時々アチチというシグナスだが、慣れてくると気持ちよさそうに表情を緩める。 指先だけ触れると、シグナスはたまての手に重ね握りしめる。一瞬驚くが、直ぐに受け入れた。顔が赤いのはまだ引かないけれど。 「…シグナスの手も、あったかい、な…」 さっきまで話して、のんびりとしていたら、アリッサの身体が微かに揺れている。 「アリッサもどう? 寛ろげて…る…?」 このままでは欅に寄りかかってきそうだ。欅は気持ちよさそうな髪をそっと撫でようとするが、はっと目が覚める。 「…? あれ? えと、す、すみません私寝てました!?」 寝顔見られたかも! とアリッサは大慌てだ。そんな仕草を可愛いと思うが口には出さない。 温泉施設の一角に設けられた食事処。千尋谷キャンパス高校2年1組の皆で十分に緑と観梅を堪能した後は食事。 貫志が音頭をとってジュースで乾杯。財布と相談して量のある料理を頼み、折角だから郷土料理を奮発して。茶そばに採れたて野菜の天ぷら、煮物に佃煮と和風な懐かしい気になる味を堪能する。アイリスは和食は余り口にしないので、箸も慣れていない。割り箸を割って、見よう見まねで茶そばに箸を付ける。空になった皿を見つめ、2人の皿を見比べて。 「いや、横から獲ったりなんてしないぞ? べ、別に欲しい訳じゃないからな!」 その様子にたつみと貫志は噴き出す。笑いつつも皿を交換。箸も進んで会話も進む。 今年一年の事を振り返り、また遊ぼうと言って。
緑と淡いピンク色の競演。 春を感じる色彩。 月ヶ瀬梅林の優しい色に癒されて、来年もその美しい姿で出迎えて欲しいと思うのだった。
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参加者:90人
作成日:2009/03/21
得票数:楽しい6
ハートフル24
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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