桃花綺譚 〜花誘い〜


<オープニング>


 弥生三月は夢見月。桜の咲き始める時期ではあるけれど、今このとき雛森・イスカ(高校生魔剣士・bn0012)達の心は桃の花に占められていた。矢口桃、立源平桃、寿星桃に寒白、大正琴の音色に彩られる中を彷徨うのは夢のような一時であることだろう。
「それが一段落したら、お弁当ですね」
 お花見のお弁当はもちろん持参しても構わない。広い園内は散策やイベントなどの邪魔にならないところであれば自由にシートを敷いて楽しむことができる。
「いろいろなお祝いも兼ねてますから、頑張って作りますよ」
「皆でワイワイやりながら食べるご飯って美味しいですものね」
 治子もイスカも気合いが入っているようだ。だがこの祭りは屋台も充実しているからそれを巡るのも面白い。おにぎりや焼きそばといった定番も充実しているし、郷土料理も色々あるらしい。
「食べ歩きもいーのか?」
 目を輝かす少年にイスカも治子も深く頷き。おにぎりや焼きそばといった定番のものから郷土料理までいろいろ楽しむことができるだろう。もちろんお菓子やジュースの類もある。
「ただバーベキューとか、火を使うものはやってはいけませんよ」
 煙が花の香りを台無しにしてしまうし、何よりも危険だ。それさえ守れれば中々幅広い食事を楽しむことができるはずだ。

「お腹がいっぱいになったら、熱気球なんてのはいかがです?」
「気球?」
 イスカがパンフレットを広げると友明は目を丸くする。天候さえ良ければ当日は地上30メートルの高さまで気球があげられるのだという。その高さからならば桃の林はもちろん、桃や桜の花に満ちた町全体が見渡せるという
「地上にロープでつながれていますから、空の旅という訳にはいかないんですけど……」
 それでも鳥の気分になって街を見下ろすのは相当の快感に違いない。
「ああ、この町からなら富士山も見えるかもしれませんね」
 地図を確認していた治子もふわりと笑う。気球はパイロットを除けば3人まで乗ることができるようだから、興味があるならば仲間を誘ってみるのもいいかもしれない。
「どっちかってーと、こっちの広場は遊びたい奴向きって感じだなー」
「どちらも桃の花を楽しむことには違いないですけどね」
 しっとりと静かに花を楽しむのでも、お弁当を楽しみながらのお花見もどちらも楽しいことには違いない。
「友明君なら、食べ歩きの1日になりそうですね」
 イスカが新しいお茶をついでやると、少年は憮然としてそれを受取って。
「どーしてどいつもこいつも、俺と食べ物、結びつけっかなー」
 確かに食べ歩きはとても楽しみなことには違いない。だが友明としては決してそれだけではなく、桃の花も楽しみにしているのだ。多分。
「……それが1番わかりやすいでしょう」
 だが、治子の断定には返す勇気すらなかった。もちろんココロの中の言葉をそのまま口にしていいものならば世の中もっと楽なのかもしれないが。

「……じゃ、皆誘ってクッカナー」
 旗色が悪くなったとみるや、友明はそそくさとお茶受けを片付け、腰を上げかける。沢山の誘いしてくださいね、と姉貴分達に送り出され、少年は春らしさの漂うようになった庭にかけ出していった。一路、仲間達のいる教室を目指して――。

 ――それは春の中の春がもうすぐそこまでやってきているかのような午後のこと。


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参加者
NPC:雛森・イスカ(甘いもののために・bn0012)




<リプレイ>

●空の上
 桃花の咲く小道には花の色を通した光が満ちる。顔を近づければ職人の細工のような花弁が見え、馥郁たる香りが鼻をくすぐる。そしてこの時期、街もまた桃の色に染まるのだ。そしてそれを一望できる場所といえば……。
「空に行こう!」
 識の率直な誘いに雛森・イスカ(魔剣士・bn0012)はくすりと笑う。ちょうどであった紗々と共に気球に近づけば、パイロットが笑顔で迎えてくれる。静かに上がってゆく気球、離れてゆく大地。
「本当に桃の色……」
 紗々の言葉にイスカはただ頷くだけしかできなかった。眺望絶佳――言葉はただそれに尽きて。
「お手をどうぞ、お姫様」
 カズマの差し出す手を小夏は躊躇いもなく縋る。みるみる内に小さくなっていく街も花も今は何もかもが輝いて見え。地上と繋ぐこのロープがもしなかったらとカズマは思う。
「一緒ならロープ切れて飛ばされても全然いいやっ」
 信頼の滲む言葉に彼がそっと手を引けば、最も大切なものがその腕に。
「桃色のこれ、全部花かぁ!」
 陽射しのような赤の笑顔は、こころには殊の外眩しい。地上から見れば見上げるばかりの桃の大樹も空から見ればまるで一枚の布。地上を離れる時は少し心許なかった赤だったが、今は来て良かったと心から思う。
「「……た、高い」」
 すいひと瑠姫の声がぴたりと重なる。怖くはないと思っていた筈なのに……。
「「怖いなら、手を繋いで上げよか」」
 再び重なった声に2人はどちらからともなく指を絡め合う。
 四季のある国でよかった……眼下に広がるは花雲を見下ろしながら秀一は思う。春の風情をこうして眺められる機会は滅多にない。隣では零斗が眺望と気球とを交互に眺めている。
「……凄いね」
 大きな風船みたいなものかなとジングルに問えば、彼もまた不思議そう。熱風の上昇を利用しているのだと秀一が説明すれば、零斗は感心しきり。夢みたいなものなのになあ……彼の髪を春風が撫でていく。

 気球の高さは猫の私なら何匹分? 魔弾3人娘なら? 諷は徐々広がっていく景色に目を輝かせた。
「こちら上空、こちら上空。桃の花が綺麗過ぎるのとティアとオリ子が可愛いです、どうぞー」
 彼方の実況にはティアリスも笑いだし。地上の仲間に手を振れば、小鳥達がその手をかすめて飛び去っていく。
「揺れた!? 今凄い揺れた」
 遠くの山並が視界に入る頃になれば和彦の体に震えが走る。気遣う弥琴に千羽耶はこっそりと耳打ち。和彦は高い所が苦手なのだと。3人で手を繋げば何とか態勢を整えてこうして見下ろす桃の森。それは多分木が人を見下ろす視点でもあるのだろう。
 登るにつれて顔色が悪くなったのはどうやらつづきもご同様。何で乗るかなと玲紋は呆れるが、まあこれだけの絶景ならば見てみたい気持ちも判らないでもない。漣が差し出した手を握り恐る恐る見下ろせば。
「綿飴みたいで、おいしそう」
 漣も四方をくるくると移動を繰り返し。玲紋は何だか保育士のような自分を自覚していた。
「もう一度どう?」
 ウィルの誘いを和彦が心の底から辞退したので唯とウィルとは空の旅。ちょうど同時期に上がった気球にはクガネの姿。向こうも同時に気づいたらしく大きく腕を振り合う様は地上の仲間をも笑わせた。落ちるなよと風葉は彼の服の裾を握りしめ、そんな彼の服をココナが握る。まるで金の鵞鳥だねと唯はくすくすと笑った。
「そうしてると姉妹みたいだな」
 水澄花も朱陽も銀の髪。天虹の言葉に2人の少女は涼やかに笑い、銀誓館はあっちかなと身を乗り出す。高ェなーと彼も見下ろせば真下は花桃色の海。豆粒ほどの人影がこちらに手を振っている。心に焼き付けておきますのと朱陽が笑えば、気球はゆっくりと降り始める。地上におりれば美味しい食事が待っている。

●大地の懐
「ここ! ここで食べよ、ここでーっ!」
 花の下に真っ先に飛び出していったのは未鳥。久埜はすっかり目を丸くして驚きいるばかり。シートにはラムネの瓶がころんころんと投げ出され。
「エミカ、えらい!」
 鴇に褒められてえみかは皆さんお好きでしょうと笑みを見せ、卵焼きありますかと未鳥が叫べば久埜は花よりも豪華なお弁当を披露して。花と空と美味しい食事。
「将来いいお嫁さんになれますわー!」
 賑やかな会話が弾めば時はいつしかデザートに。チョコバナナに綿菓子にと続けばお祭り気分、所在の奏でるフルートの音が風のように公園中に流れていく。
「沙羅ちゃんのお花型のおにぎり、すごく可愛い!」
 花の下広げられたお弁当箱の数々に【花桃館】の少女達は歓声を上げる。厚焼き卵、桜の塩漬けを散らした菜の花の辛子和え。春らしい献立に沙羅も溜息をつく。見ているだけで楽しくなる食事に響姫もうっとりと。花の下でこんなに楽しい食事が待っているのは贅沢の極み。
「ピーチティーと桜の緑茶もあるわ」
 アドルフィーネが香り高いお茶を振る舞えば、ユノは様々なジェラードを披露する。本物の花を見るのさえ忘れてしまいそうな食卓の花。集まった少女達の笑顔も花のよう。
「ねぇねぇ、ハンバーグ、半分貰ってもいい?」
 お母さん直伝のお料理ってどんなのかな……睡の興味をりずはすぐに満たしてくれる。桃花の下で仲良しさんと交換し合うお弁当。それを人は至福の時と呼ぶのかもしれない。
 春野菜をたっぷりの豪華絢爛な花見弁当を開けながら湊はふと呟いた。
「すげー感謝してるんだぜ、これでも」
 友明は一瞬箸を止め、つかさは目を丸くする。のみならず……。
「ちょ、おまっ。寒イボっ!」
 腕まくりしたそこには見事なまでの鳥肌。
「前から湊先輩はこうだよぅ?」
 眩暈を起こしかけた湊に無邪気な晶の一言が追い打ちを。まあ、何だと友明は湊を叩く。
「ともかく食え。弁当も郷土料理も」
 それが幸せの元なのだから。

「あのまさか……」
 悪い予感は当たるもの。那由多の懸念そのままに出された物はどろりと青い濃厚な汁。のーさんきゅうとのハユの言葉もなんのその杯は全員に……否、こっそり中身をすり替えた壱琉を除いて、素敵な杯が渡る。最早様式美とは彼らが結社長八咫の言葉である。
「ゑにし湯』と、縁で繋がった皆の前途に乾杯!」
「んー不味い! もう一杯!」
 勿論京のこれもお約束。だがそれさえ済めば食事はまさに楽園。海の料理は御握り、稲荷寿司、ハンバーグに煮物などなど豪勢だったし、デザートもみたらし団子にクレープ、大判焼きと勢ぞろい。花より団子としゃれこんで会食の時は尽きる事を知らない。壱琉はカメラにはそんな様子が幾枚となく残されて。
「お疲れ様。はい♪」
 散策と屋台巡りに火照った体にクロエのジュースは心地よく。ブリギッタの段ボール一箱分のじゃがバターは彼らを大いに驚かせ。
「ついつい作り過ぎちゃいました……どうぞ」
 目を丸くする道行く人に端から浅葱が勧めれば、花見客の顔にも笑顔が生まれ。お好み焼きに焼きそばにベビーカステラ。他愛もない食べ物に、罪のない笑い。こんな『仲間酔い』できるから、月詩はここが好きなのだ。

●再び空へ
 ずらりと並ぶ屋台には人を誘う匂いがある。ロマンにとっては屋台こそが桃源郷。歩いてはよい匂いに足を止め、時に紅の花など眺めたりして。蛸焼だよね、とはしゃぐ聖子に紗更。違う種類が売ってたら何を買おうか、そんな相談も一番美味しそうな店を探すのも全部が楽しい。お気に入りの花の下、木漏れ日の中で食べるのは何よりも素敵な時間。
 今日は自分が財務省という彰人も、花から花への蝶々のように屋台を飛び回る凛子には笑いも零れ出る。勿論そんな彼女が愛しくて、彼は凛子の頬に唇を寄せた。甘いジャムの香りのするキスだった。
 食事といえば【タケミカヅチ】も大団円。怪我を抱える者もいたけれどならば一層の休憩をという訳で。亜璃砂とユリアは抱えきれない程の食べ物を屋台で買い込み、蒼玄はいつものように腕によりをかけて弁当を用意している。タラの芽のテンプラに土筆の卵とじは春ならではの食材だ。
「長い間団長職、ご苦労だったな……」
 乾杯の杯を掲げると仲間達も一斉に労いの言葉を宗吾にかける。お疲れ様とこれからも宜しく、と。彼の脳裏にも来し方の思い出は巡り。
「……これからも頼む」
 万感の思いは全てこの一言に。アウラは屋台の料理を給仕し、花と食事とを楽しむ一時が始まる。こうして皆でお出かけする時がまた巡ってくるように。花に願いと祈りをこめて宴は続く。

「な、何でみんな降りていく?!」
 乗った時は確かに3人。だが直前にジャトと人魚はさらりと飛び降りて。
「行ってらっしゃい。花の種をつけた風船みたい」
 ええーっと叫ぶ圭吾に手を振って、2人は屋台巡りへと。気球はみるみる内に小さくなっていく。今頃彼の眼下にはどんな景色が広がっている事だろう。
 つい先日の戦争が嘘のようだと聖雪は隣に佇む神凪・円に囁く。これを守る為だったんだよね……返ってきた答えに2人はしばし言葉もなく絵のような地上に見惚れていた。
「……綺麗だな」
 言葉にすればこんなに他愛ないのが不思議だが、世界はそんなささやかな日常でできているのだ。もう片方の組は小3コンビが大騒ぎ。すげーきれーと繰り返す歳宗の隣で、鋭司は初めて見る富士山に息を飲む。
「勢い余って落ちるなよ?」
 まるで父親のような諭しぶりに誰もが笑いをかみしめた。空の上での写真にはどんな笑顔が写る事になるのだろう。
 飛行機とは全然違うねとリオートが言えば、りぃんは街がまるで玩具のようと笑う。
「このまま風になって、遠くへ行けたら良いのに」
 2人ならこのまま空を飛べるような気さえして。彼らはそっと風の音に耳をすませた。いつも見上げるばかりだった空にいる事にシェンナは不思議な感覚を覚えた。
「太陽、眩しい……手、届くかな?」
 手を伸ばせば本当に届きそうな気がして、ソーマも彼も高みへと手を伸ばす。下には桃色の林が広がり、街の桃はまるでピンク色のブロッコリー。
「一年間楽しかったよ。サンキュ!」
 陽菜のお礼は空の上。翼も由良も同じ千尋谷キャンパス2‐Aで学んだ仲だ。最後の最後にこうして空からの花見ができるのは望外の出来事だ。遠くの景色も近くの花も眺めていれば飽く事を知らない。
「二人と一緒で退屈しなかったっていうか……」
 由良はわざと目をそらし、そして一気に続けた。
「ああ、もう! 一緒のクラスで嬉しかったって事よ! 以上!」
 空の上、弾ける笑い。それは金の欠片となって地上に降っていくかのようだった。

 空へと向かう籠の中兇の腕に縋りながら瑞鳳は徐々に離れてく桃色を見つめて。
「あんな風に幸せの色に染めたいな」
 お前を――瑞鳳の言葉に彼はそっと恋人の頬をつつく。椛のようなその色こそが彼にとっての幸せの色だと彼女は気づいているのだろうか。
 高さに震えるアリアの耳に章の歌声が聞こえてくる――このまま宇宙の果てまで飛んで行っても、ずっと君といる。背中を包む暖かさにアリアは小さく応えた。
「一緒にいたい」
 気球が雲を乗り越えても、見下ろす景色に体が震えても、隣に君がいてくれるなら……。空はどこまでも広く、思いはどこまでも深い。

●空から空へ
「わ、すごい……! 花が」
 眞風は言葉を失った。足元遥かに1枚の絵のように広がる街に桃色。思わず噴き出した壱球も、確かにこんな風に世界が色に溢れている事になかなか気づく事はないと壱球も思う。但し眞風が小さな子供に見えてしまった事は地上に降りるまでは秘密だけれど。
 脩は果てなく広がる大地に目をやった。鳥はこんな風に花を見ているのだろうかと、結梨を見れば彼女の眼は微かに哀しみを湛え。春が深まれば2人の道は離ればなれ。でも目指すものがあるならと背中を押してくれた結梨に彼は小さく呟いた。ありがとうと。
 空と大地に無我夢中の洽の脇を千夜子の指が急襲する。くすぐったさに身を捩れば気球の真下を覗き込む事になり。
「落ちるかと思った〜」
 半ば涙目の所をパチリとやられれば、泣き面に蜂という所か。
「気球に乗って桜ってのもいいもんだな」
 少々誤魔化された気がしないでもないが、今いるここが絶景なのは紛れもない事実。
 イスカもまた何度目かの空の風に身を委ねた。草壁・那由他とイスカが地上に手を振る様をレイジは暖かな微笑みで見守った。ピンク色の花の波は風が行く度に色を変え、萌え始めた緑の香りは空まで登ってくるかのよう。
「手ぐらい繋……握手しても良いですか」
 つい先程まではしゃいでいたニルの声が急にかすれた。歩いてもいないのに……と首をかしげかけて航汰はふと気付く。今日は彼女の誕生日。差し出された手を彼は一気に引き寄せる。すっぽりと腕の中に収まった華奢な少女に腕を回して。2つの温もりは空の上で1つになる……。

「地上がジオラマみたいだ!」
 陸が叫べば、ここからエアライド決めたら気持ちよさそうだなあと霧人も笑う。クラスメイトとして最後の遠出。それが空の上とは面白い。
「ボクは良き友人で居られたかな?」
 あったり前の事聞くなよなと友明が笑い、陸はそんな彼に犬耳を。
「やっぱりこれは外せないよね」
 遠く富士山を望む空の上。3人の犬耳少年の笑顔が1枚の写真に収まった。
「すっげー眺めだな……」
 ジークヴァルトの声に流火はスケッチブックとクレヨンを構え。さらさらと描いた絵は遠くの富士と赤いライオン。描きあげてジークヴァルトのスケッチを覗いてみれば。
「これって、流火ー?」
 彼の絵には気球の中を駆け回る少年が思いきり笑っている。
「あれが富士山?」
 ルナの高い歓声に苺花もイシャも手摺につかまって背伸びをする。空も大地もこんなに広い物だとは思わなかった。籠が揺れる度にルナは真っ青になってしまったけれど、2人が繋いでくれる手が暖かい。菊組の最後の思い出に少女達は写真を撮って貰う。クラスが変わっても友達でいよう。そんな約束の印に。
「渓さん見て見て凄く綺麗ですの!」
 満面の笑顔で振り返るファルチェをカメラで捉え、渓もまた笑う。上空から写す花の波も遠くに見える若葉の山も、そしてお互いの笑顔も綺麗なものは花の数程。無限の空のその中で腕を組んで撮った写真はきっと一生の宝となる事だろう。
「見ろよ、円兄ィ」
 地上30メートルでも友明少年は相変わらず。溜息をつく治子に苦笑しつつ巴衛・円も少年のいる方へ向かった。
「風がちと冷たいが、やはり気持ちいいなぁ」
 空に上がると悩みも吹き飛ぶようですよね、と治子も笑い。尤も何もかも吹っ飛ばす少年については何やら心配そうなのだが。
「大丈夫だ。あいつはもっと強くなる」
 俺もな。治子はゆっくりと微笑んだ。

 気球は何度も乗降を繰り返す。その度に夢を乗せて昇り、歓声を空に残して降りてくる。見上げる桃花も見下ろす桃花も、同じ花には違いない。だが、今日彼らが見た花はたぶん、今日だけの特別の花――。


マスター:矢野梓 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:116人
作成日:2009/04/08
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冒険結果:成功!
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