【番長戦記】荒ぶる魂、猛る心〜花冷えのみちのくへ

<オープニング>


 4月だというのに、この地はまだ春にはほど遠い。
 いまだ冬の冷たさを持った風が、むっつりと押し黙った4人に吹き付ける。
「まだ木下たちはこないのか?」
「もうそろそろ来てもいい頃ですが……」
 中央で腕組みし、最初の問い掛けに声を発した少年に、同じ年頃の者が丁寧な答えを返す。
 その答えに低く唸りながら、少年は学帽のつばを持ち上げる。そうしたことで、強い光を宿した瞳と凛々しい顔が露になる。その瞳が見つめる先に、一つの影が現れる。
「ばん、ちょ……う……」
 よろめきながら現れた満身創痍の少年は、その一言とともに倒れ伏す。
「木下っ!」
「しっかりしろ!」
「何があったんだ、木下?」
 倒れ伏した傷だらけの少年──木下を、番長と呼ばれた少年は抱き起こす。
「やつら……途中で、待ち伏せを……高橋も、伊藤も、みんな……、ううっ、すまねぇ、番長……奴らとの決戦は、今日だってぇのに……」
「気にするな、木下。ゆっくり休め」
 番長の言葉に安心したように、木下は意識を手放す。
「奴ら、どこまで汚いんだっ!」
「番長、どうするんですか!? このままじゃ……奴らの思うつぼです」
「代表戦に出られる仲間も、オレたち以外、闇討ちに遭うか、恐れて逃げ出すか……」
 木下をそっと地面に横たえた番長は、必死の体の仲間たちを真直ぐ見つめる。
「井上、鈴木、武田……お前たち3人でなんとか初戦を突破してくれ。その次の戦いは、俺が1人で戦う。そして、勝つ。それで2勝になるだろう」
 きっぱりと言い切る番長の姿に、井上と鈴木、武田は男泣きに泣く。
「やってやりましょう!」
「盛岡の奴らには負けん!」
 井上と鈴木は番長の手を握りしめ、熱く吠える。
「くそぅ、誰でもいい、助っ人が来てくれれば……」
 そんな仲間を見つめ男泣きに泣く武田は天を振り仰ぎ、かなうべくもない希望を小さく呟く。
 
 ここで時間は少し前にさかのぼる。
 場所は、いつもの見慣れた銀誓館学園の教室。中にいるのは、8人の能力者と1人の運命予報士。
「ようこそみなさん。さっそくですが、みなさんは大いなる災いの時にともに戦ったゴーストチェイサーのみなさんのことは覚えていますか?」
 夏越・ちがや(中学生運命予報士・bn0062)は、集まった仲間たちを見つめつつ話を切り出す。
 あの苦しい戦いのことは、集まった者たちの記憶にも新しい。
 大いなる災いを倒すため戦場をともにしたゴーストチェイサーたちのことも忘れてはいない。
 彼らの助けがなければ、こうして鎌倉の地で平和な生活を送っていられるはずはないのだから。
「よかったです。実は、あの戦いで倒れた岩手総長の地元が大変なことになっているのです」
 ちがやの説明によると、現在の岩手のゴーストチェイサーたちは8つの学区を束ねる8人の番長たちの支配下に置かれており、彼らの間で争いが起きようとしているという。学区は、二戸学区、久慈学区、盛岡学区、宮古学区、気仙・釜石学区、岩手中部学区、胆江学区、両磐学区の8つ。それら全ての地区を巻き込む争いは、盛岡地区を束ねる盛岡番長が岩手統一を目指して起ったことに端を発しているということであった。
「ゴーストチェイサーのみなさんが仲間同士で争うなんて哀しすぎます。あの戦いで散った岩手総長も、そんなことは望んでいないでしょう。……そこでみなさんには、今、盛岡番長に狙われ、抗争が起こりつつある二戸学区に転校生として向かってもらいます。みなさんの力で、二戸地区を束ねる神風番長を助けてください」
 ちがやの言葉を受けた能力者たちは力強く頷くと、風雲急を告げる岩手県、二戸学区へと向かう。そして──。
 
「助けが欲しいって?」
「なら、私たち『転校生』が力になりますよ」
 神風番長を筆頭とする二戸地区の4人のゴーストチェイサーは、辺りを領する力強い声に目を見張る。
 颯爽と現れたのは8つの人影。
 彼らの顔には、頼もしい笑みだけがある。
「番長、こいつら盛岡の手下じゃ……」
 突然の申し出に驚き、怪しむ3人の肩をなだめるように叩くと、神風番長は一歩彼らへと足を踏み出す。
「ここに転校してきたんなら、二戸の仲間だ。宜しく頼む」
 言葉少なに、信頼を込めて差し出された手に手を重ね合わせ、8人の能力者と神風番長はただ視線を交わし合うのだった。

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参加者
日生・樹(褪せた憧憬・b02924)
朱堂・椿(煉獄の守護者・b09813)
武田・由美(金色の雪妖精・b22523)
水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)
龍鬼・武蔵(陽気なアルバイター・b33414)
北條・風葉(高校生クルースニク・b51053)
フィオラ・ラダティス(星月のイルメリア・b57998)
四神門・薫(超銀河番長・b60688)



<リプレイ>

●戦い前
「あんたらの言葉に甘えさせてもらう。よろしく頼む」
 神風番長は学帽をとり、転校生と名乗る8人に頭を下げる。学帽を脱いだことで露になった顔は意志の強さを感じさせる瞳と眉が印象的な、まだ年若い少年のものである。
「そんなに気にするな。オレは龍鬼武蔵だ。こっちこそよろしくな」
 龍鬼・武蔵(陽気なアルバイター・b33414)は自分より年下だろう神風番長に笑顔で名乗る。
「俺は北條風葉、高校2年だ。よろしくな」
 北條・風葉(高校生クルースニク・b51053)も彼を安心させるように、ことのほか明るい口調で名乗る。
「俺は朱堂椿ってんだ。好きに呼んでくれな」
 固い決意を抱く朱堂・椿(煉獄の守護者・b09813)もゴーストチェイサーたちに名乗る。
「ワシは四神門薫。ワシも番長を称する者として、全力で援護してやるぞ!」
 古典的番長スタイルの四神門・薫(超銀河番長・b60688)は豪快に名乗る。
「あたしは由美って言うの。宜しくねー」
 笑顔の武田・由美(金色の雪妖精・b22523)に続き、
「わたし椎奈〜。シーナって呼んでね〜!」
「私は〜フィオラなの〜よろしくおねがいするの〜」
 と明るい水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)とおっとりしたフィオラ・ラダティス(星月のイルメリア・b57998)が名乗る。
「……ああそうだ、こちらが名乗った後は神風番長の名前も教えて貰いたいね。一緒に戦うんだ、それ位は知っておきたいだろう?」
 自分を最後にみんなが名乗ったことを確認した日生・樹(褪せた憧憬・b02924)は、神風番長の名前を尋ねる。その問いに神風番長は、
「俺のことは神風番長と呼んでくれ」
 とだけ答える。どうやら名を明かす気はないようだ。
「そこでチーム分けだけど……」
 その言葉に、神風番長とその仲間である武田、井上、鈴木と彼らは額を集める。彼らが神風番長たちに提案したのは、転校生と番長チームの混成チームを作るという案である。
 その案を提案したのには、二つの理由がある。一つは、その名からして神風番長のバイトがシルフィードだろうから。もう一つは、彼の二つ名の理由と思われるゴッドウインドアタックが失敗したときフォローが出来るからである。
 チームは、風葉と武蔵、椎奈に武田を加えたもの、椿と由美に鈴木と井上を加えたもの、最後が樹とフィオラ、薫に神風番長を加えたものである。
「ああ。良いだろう」
 神風番長は彼らの提案を快く受ける。これでチームも決まり、後は氷結番長たちが来るのを待つばかりとなった。

●第1試合
「試合は3試合で2試合先取した方が勝ちだ。全員を戦闘不能にするか、負けを宣言させた方が勝ちだ。だが決着がつかないと困るから、時間制限をつけさせてもらう。時間はボクシングの10ラウンド相当の30分。その時点で決着がついていなかった場合、引き分けとする」
 11人の仲間を引き連れて現れた氷結番長は、開口一番に試合のルールを口にする。
「いいだろう」
 その提案を神風番長はあっさり受け入れる。
「まずは第1試合だ」
 豊満な体を白い長ランに包み、長い髪を掻き払う氷結番長は、艶やかな唇で試合開始を告げる。
 それにより、学校のグラウンドをフィールドにする彼らの戦いが始まる。
 まずは風葉と武蔵、椎奈に武田、椎奈のフランケンシュタインBのゴーレムが前に進み出る。
「ゴーレム、いくよ〜!」
 椎奈の声に応えるようにゴーレムが吼える。彼女に指示された通り、ゴーレムは由美たちを守るように最前列に出る。
「さて……ひっさびさにアクセル全開で行かせてもらう」
 その宣言とともに武蔵の短髪はより固さを増して天を突き、太い二の腕や男らしい顔に虎のような縞模様が表れる。
「仲間と認められたからには信頼に応える為に全力で戦う!」
 風葉は銀の爪を備える獣爪に黒燐奏甲をかける。銀の爪は、黒燐蟲の放つ鈍い光を受けて妖しく輝く。
 相対する氷結番長の手下──便宜的に11人を手下A〜Kとする──A、B、C、Dは手に薙刀やアイスガントレット、布槍、鎖鎌を装備している。装備から見るに彼らのバイトは雪女であるらしい。
 ゴーレムのパワーナックルが手下Aの身を抉る。
「お前ら、5人がかりなんてずるいぞっ!」
「ゴーレムは私の大事な使役ゴースト。君たちが氷を使って戦うように、私にとっての戦う力なんだよ」
 椎奈の言葉に手下たちは氷結番長を振り仰ぐ。
「使役ゴースト使いは私たちの仲間にもいるだろう。そんなことでぐだぐだ言うな。馬鹿者がっ!」
 鋭い一喝に4人は揃って恍惚した表情を見せ、むきになって彼らは攻撃をかける。
 戦場を白い吹雪が吹き荒れる。
「好きなようにさせないぜ!」
 風葉の禍々しい瞳が、手下Cをひたりと睨み据える。
「ぐふっ!」
 身を中から切り裂かれ、凄まじい毒に侵された彼は膝をぐらつかせる。
 続いて畳み込むように放たれた椎奈とゴーレムの攻撃、武蔵の龍顎拳、武田のゴッドウインドアタックが手下たちに炸裂し、手下AとBを地に沈める。
 しかし4人の雪女、実情はバンカラな4人の少年たちが立て続けに放った吹雪の竜巻は、それなりのダメージを彼らにも与えている。ガードしても、息が合った彼らの攻撃はガードを通して少なくはないダメージを彼らに与えた。その上、防ぎきれずに魔氷を与えられた者もいる。
 ゴーストチェイサーの武田が、魔氷を受けたゴーレムと武蔵、自分を癒すために浄化の風を巻き起こす。柔らかな風は、彼らの身に痛みを与え続ける氷を柔らかく溶かす。しかし、それでも傷は癒しきれない。
「大丈夫か? ここはオレに任せてゴーレムと合体してろ」
 風葉は深手を負った武田を癒しつつ、椎奈にゴースト合体を促す。
「うん、わかったよ。おいで、ゴーレム」
 身の内にゴーレムを宿した椎奈の体に、新たなる力が湧いてくる。
「これでも喰らえっ!」
 手下Dの破れかぶれの一撃が、武蔵の体を薄い氷で覆う。だが、それは薄氷のように脆くも崩れ去る。
「ほう……中々やるな。オレも出し惜しみしないでおくかな」
 虎紋覚醒で回復した武蔵は、龍顎拳を振るう。
 その鋭い一撃で、ようやく最後の敵が地に倒れ伏す。

●第2試合
 第1試合は辛くも勝利を収めることが出来た。
 それを励みにする椿と由美、鈴木、井上が続いて前に進む。彼に対する者は、手下E、F、G、Hの4人である。
「これ以上、私に不甲斐ないざまを見せるな」
 氷結番長の冷たい眼差しと言葉に、手下E、F、G、Hはいきり立つ。
「てめぇら、無事で済むと思うなよ!」
「オレたちを舐めるんじゃねぇ!」
 柄の悪いチンピラ風の4人は、唾を飛ばして大声でわめく。
「さーて、いっくよー!」
 試合開始の合図とともに、由美がサイコフィールドをかける。
「さぁ、Let's battleとしゃれ込もうじゃねぇか!」
 椿は柄に龍が絡み付く宝刀を頭上で回す。
「いくぜっ!」
「おうっ!」
 息が合った様子の鈴木と井上は、並んで前列に走り出る。
 すぐさま、鎬を削りあう激しい戦いが始まる。
 由美と椿は相談で決めていた通り、井上と鈴木が狙った者に攻撃を集中させ、手下Eを倒すことに成功する。
「鳳凰……一閃!」
 椿から立ち上る鳳凰の炎が、手下Hを包み込む。続く由美の氷の吐息が、彼に魔氷を与える。
「ここだっ!」
 それを好機と見た鈴木が、風を纏う一撃を手下Hに放つ。しかし、
「避けるなあっ!」
「そんなの知らんわっ!」
 攻撃を華麗に躱された鈴木の叫びにそう応えた手下Hは、魔炎の効果で地に倒れ伏す。
 これで2人を倒したのだが、ゴッドウインドアタックを躱された鈴木を庇いつつフェニックスブロウを放つ椿に、残る手下F、Gの攻撃が集中する。
「お前ら、こっちに来んかっ!」
「ああっ! だめだよっ!」
 由美の制止の声が聞こえなかったのか、鈴木と椿の姿を目にする井上までもゴッドウインドアタックで特攻する。その結果は──。
「ううっ……すまん……」
 あっけなく回避されてHPが1になる井上の姿が、そこにあった。
 椿と由美の心に、何ともいえないものが湧き上がる。
 試合開始前、由美は井上と鈴木にゴッドウインドアタックはここぞという時に使えと助言していた。その言葉を彼らは受け入れてくれたし、助言どおり彼らなりの決め時に使ったのかもしれないが……。
 彼らが浄化の風で自らを癒しても、それはたかが知れている。由美もサイコフィールドをかけるのだが、体力が少なくなっている2人は残る手下F、Gの全体攻撃で、すぐにじり貧になる。
 ここぞという決め手がないまま、手下2人を残してタイムアップを迎えることになる。

●第3試合
 樹とフィオラ、薫、神風番長は最後の戦い、氷結番長との試合に臨む。
「お前たちゴミ虫どもに期待した私が愚かだった。せいぜいお前たちは足を引っ張るな」
 氷結番長の言葉に、これから戦いに赴く手下I、J、Kが恍惚とした表情を見せる。
「神風の、戦い前に話があるんじゃが」
「なんだ」
「おぬしの名にもあるように、ゴッドウインドアタックはおぬしが好む攻撃なんじゃろう。だが、好むからと使っておっては、先ほどのようになりかねん。ワシの知り合いにもおぬしと同じ戦い方を好む者がおるが、彼らは強い。なぜなら、切り札は最後までとっておくからじゃ」
 薫の言葉に、神風番長は目を見開く。
「うん。さっきの戦いみたいになったら大変だよ」
 戦いを終えたばかりの由美も、薫の言葉を後押しする。
「わかった」
 彼らの言葉と眼差しを受け、神風番長は小さく頷く。
「こいっ!」
「いくぜっ!」
 氷結番長の言葉に、彼らは臨戦態勢をとる。
「ワシが超銀河番長じゃ! 恐れを知らぬ者からかかってこんかい!!!」
 神風番長と肩を並べて前衛に立つ薫の咆哮に、手下I、J、Kが一瞬だけ怯えを見せる。
「チェリオ君は〜フィオラと一緒に〜後衛から射撃で攻撃してね〜」
 フィオラの言葉にケットシー・ガンナーのチェリオが頷く。
「こういう喧嘩が好きな訳じゃないけれど……折角の勝負、楽しんで行こうか。美人が相手なら文句は無いよ。勿論、勝たせて貰うけどね?」
 怜悧な美貌の持ち主である氷結番長をからかうように、樹は軽口を唇に乗せる。
「そんな軽口をいつまでも叩けると思うな」
「こわいね」
 穏やかな笑みを浮かべて肩を竦める樹は、黒燐蟲を纏い、黒銀の爪を備える獣爪をかざす。その行動に応えるように彼の身から湧き出た黒燐蟲が、氷結番長たちを食い荒らすために塊となって襲いかかる。
「くっ」
 黒燐蟲の力によってより攻撃力を増した暴走黒燐弾が、氷結番長たちの体力を削ぐ。
「くらえっ!」
「ワシの一撃も重いぞ」
 突撃槍を振るう神風番長に続き、虎紋を纏う薫の龍顎拳が手下の1人を地に沈める。
 氷結番長を守ろうとしてか、それとも彼女から離れたくないからか、手下たちは常に暴走黒燐弾の範囲に居続けるために、樹は攻撃をし放題である。
 徐々に手下たちは、樹と薫、チェリオ、神風番長の攻撃に押され始める。
 氷結番長たちに与えられる仲間のダメージをヤドリギの祝福で癒していたフィオラは、その様子を見てある攻撃をする。
「みんな〜うごけなくなって〜」
 地から這い上がる茨の蔦が、氷結番長と残る手下たちを絡めとる。
「くっ。こんなもの!」
 もがく氷結番長と違い、マゾ性質持ちの手下たちは満面の笑みを浮かべてフィオラを見つめ、強い締め付けに合えなく果てる。
 思いがけなく茨の領域が決まった瞬間は、小さな女王様誕生の瞬間でもあったのかもしれない。
「今じゃ! 神風の!!!」
「おうっ!」
 薫の言葉に神風番長が笑顔で応える。
 荒れ狂う暴風を纏う彼の一撃が、氷結番長に炸裂する。
 それは、戦いの雌雄が決された瞬間でもあった。

●戦い終えて
「やったぜ!」
 快哉の叫びとともに風葉が突き出した拳に、仲間たちも拳を突き合わせ勝利を祝う。
「そんな、ばかな……」
 神風番長が放った最後の一撃によって地に倒れ伏した氷結番長は、唇をわななかせて空を仰ぐ。
 鈴木、井上、武田を労っていた神風番長は、彼らに向き直り深く頭を下げる。
「ありがとう。あんたらには感謝してもしきれん」
 その言葉に、彼らは照れたように顔を見合わせ、仲間なのだからそんなに畏まらなくていいと告げる。
「そう言えば、聞きたいことがあるんだが……」
「俺に答えられることなら、何でも聞いてくれ」
 その言葉に彼らは顔を見合わせる。
「他の県や他の地区のゴーストチェイサーもこんな感じなのか? ちょっとばかし気になったんだが……できれば教えてほしい」
 真っ先に質問したのは武蔵だった。
「俺は他の県のことまではよくわからんが、おおむね県を纏める総長の方針によるな」
「総長といえば、ゴーストチェイサー全部を纏めるリーダーはいないのか?」
 その答えを耳にした風葉が、そんなことを問い掛ける。
 それに神風番長は、全国の番長の力を集めなければならない時は、集まった総長の中からリーダーを決める事があるが、基本的にはいないと応えた。
「……そういえば、相手さんの番長とは知り合いなのか?」
「盛岡番長か? ああ、知っている」
 椿の問いに、彼は苦々しげに応える。
「それにしても、前の岩手総長がいなくなった途端に岩手統一なんて、盛岡番長ってよっぽど野心家なんだね〜。それに、岩手総長はもっと強かったんだ〜」
 椎奈が感心していると神風番長が、
「それは違う。もともと暴力で岩手を統一しようとしていた盛岡番長を、岩手めんこい番長がそのカリスマ性で従えて総長の地位についたんだ。力が勝っていたわけではない」
 と応える。
 その答えの中に、こんな殺伐とした場に相応しくない単語があったため、彼らは顔を見合わせる。
 氷結番長の動向をうかがっていた風葉とゴーストチェイサーたちの動きや表情に気を配っていた樹までも、ぽかんと口を開く。
「めんこい番長?」
「ああ。何かおかしいか?」
 真面目に聞き返す彼の様子に、彼らはそれ以上突っ込むのを止める。
「そういえば、本当に神風番長の仲間たちを闇討ちにしたの?」
 フィオラは項垂れる氷結番長に問い掛ける。
「闇討ち? 私は知らんが、そんなことで討たれ力弱き者が残っていても助力になどならんだろう」
 力こそ正義。
 そのような考えを持つだろう盛岡番長配下の者として相応しい言葉に、彼らは溜め息を吐く。
「嫌な風が吹きおるのう……」
 天を見上げる薫は吹き抜ける生温い風に眉をよせ、ぽつりと呟く。

 その頃、岩手県内某所。
「氷結番長が破れたようだな」
 濃く落ちる影のせいで顔は判別しがたい、巌のような巨体を持つ男の言葉に、線の細い男が縮み上がる。
「ふっ、奴など、我ら四天王の中でも1番の小物」
「番長がお気を煩わすまでもありますまい」
 いつの間にか現れた者たちの声が室内に響く。
「策は施してあります。結果をお待ちください」
 集った面々の口々から高笑いが漏らされ、それは室内に谺のように響き渡る。
 いまだ岩手を包む暗雲は、晴れる気配を見せていないようだった。


マスター:縞させら 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/04/22
得票数:楽しい16  笑える48  カッコいい106  怖すぎ1  知的2  せつない1  えっち1 
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