巻き起こる風


<オープニング>


 ある春の日の事、町はずれにある丘の上に、大きな木が立っており、数名の少女達が他愛もない話をして、楽しい時を送っていた。
 そして、夕暮れ時、突然、強風が巻き起こったかと思うと、一人の少年が木の上から降ってきた。
「え……?」
 少女達が驚いたのもつかの間……少年は体を回転させて突風を巻き起こし、あっという間に、少女達の体をズタズタに切り裂いてしまったのであった。

「今回の現場は丘の上、帽子をかぶった男の子の地縛霊が相手となるよっ」
 神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)の説明によれば、その丘は見晴らしがいいため、それなりに人がやってくる場所であるらしい。
 地縛霊が現れるのは夕暮れ時だけらしいが、それでも、このまま放っておけば、たくさんの犠牲者が出てしまう事となるだろう。
 地縛霊が現れるのは前述の通り、夕暮れ時だけであるらしい。
 現れる場所は木の上であり、彼が地面へと着地した瞬間、戦闘開始となる。
 木の上にいる間に攻撃してしまうと、警戒して降りてこなくなる可能性がある。
 格好、人数等には特に条件がないようである。
 斜面は緩やかなので、戦闘時は安心して戦う事ができるだろう。
 地縛霊は帽子を深く被った少年の姿をしており、体を駒のように回転させて風を巻き起こし、周囲の者すべてを切り裂く攻撃を行う。
 また、かなり素早いようである。
「戦闘後は、その丘でのんびりするのかもいいかもしれないね」
 と、優希は付け足した。
「じゃあみんな、怪我しないよう、頑張ってきてねっ」

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参加者
霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)
那須・聖(死の右腕・b02470)
プリンチペッサ・インノチェンテ(罪様親衛隊隊長・b04432)
支倉・朝龍(銀糸に囚われし想いの残滓・b20581)
柊・黒乃(銀鈎・b31286)
ミコメア・ナナムラ(小学生呪言士・b36903)
ポルテ・トルテ(エンドオブティアリングナイト・b37411)
瀬名・琉美(蒼き闇の剣士・b42713)
白神・楓(夜朱齎す漆黒の剣霊・b46213)
久瑠瀬・璃美(旋風ノ舞乙姫・b51595)



<リプレイ>


 町はずれにある丘の上に、10人の少年少女達が立ち尽くしていた。
 彼等はこの場所……もとい、この場所に生えている木の上に潜む地縛霊を倒すため、ここでこうして待ち伏せているのである。
「新学期一発目の依頼、頑張るですよ」
 小学2年生となったばかりの小さな能力者、久瑠瀬・璃美(旋風ノ舞乙姫・b51595)は気持ちも新たに、今回の依頼を完遂しようと気合を入れている様子。
「僕も久しぶりの依頼です〜。がんばりま〜す」
 同じく気合いを入れる霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)であったが、彼が他の能力者へ指示を出した、俊敏感覚を使用するようにという願いを実行するものはいなかった。
 そもそも、今回の依頼の場合、地縛霊を探し出す必要はないだろう。
「どんなに速くても、見えているなら必ず捕らえてみせる。死の右腕は亡者を逃しはしないわ」
 幼き仲間達に触発されたのか、那須・聖(死の右腕・b02470)もまた、表情に特に変化は見られなかったものの、その心の中では、静かな闘志を燃やしているようであった。
「長閑な丘を荒らすなんて全く無粋ですよねぇ」
 無関係な人間を殺すなんて許せない。
 地縛霊に対し、そんな嫌悪感を抱いている様子なのは中学一年生となったばかりの少年、プリンチペッサ・インノチェンテ(罪様親衛隊隊長・b04432)。
「なんか、カマイタチっていうんだっけ?こういうのって」
 もしかしてカマイタチって地縛霊なのか?と、違うとはわかっていても、ついついそんな考えを巡らせてしまうツリ目の少年、柊・黒乃(銀鈎・b31286)。
「妖怪カマイタチ少年」
 ぼそっ、と呟くミコメア・ナナムラ(小学生呪言士・b36903)であったが、ただ単に思いついた言葉を呟いただけであり、特に意味はないようだ。
 恐らくは、黒乃と同じような事を考えているのであろう。
「ズタズタに切り裂く……か。何が目的か……はたまた復讐か」
 なんにしても、それなりに人が訪れる場所である以上、きちんと退治しておかねばならない。
 支倉・朝龍(銀糸に囚われし想いの残滓・b20581)は、そう心に誓っていた。
「うーん。何者なんだろうねぇ、この子」
 放っておくわけにはいかない。
 そう頭ではわかっていても心のどこかで、相手が子供という事もあり、少し可哀想だな……と同情してしまっている様子のポルテ・トルテ(エンドオブティアリングナイト・b37411)。
「ここが最後だったのか、丘の上の木に何か執着でもあったのか……」
 土蜘蛛の少年、白神・楓(夜朱齎す漆黒の剣霊・b46213)もまた、むぅと頭を悩ませる。
「彼が何でこの場所に留まっているのか知らないけど……ゴーストであって、敵である以上、ボクたちは戦って彼を倒す……ただそれだけ」
 皆の思いを代弁するかのように、瀬名・琉美(蒼き闇の剣士・b42713)がそう言い放つ。
 皆はその言葉に頷きながら、ジッと木の上を見つめる。
 ……やがて、辺り一面が夕焼けによって真っ赤に染まる頃……ビュウウン、と、一瞬強風が吹いたかと思うと、突如として、帽子を深くかぶった少年が木の上から舞い降り……能力者達の眼前へと着地した。
『イグニッション』
 その姿を確認し、能力者達はすぐさまイグニッションカードを起動させる。
 この場所と、この場所を訪れるすべての人々の平和を守るため、能力者達は風を操る少年を相手に、壮絶な戦いを繰り広げようとしていたのであった。

●決戦
「俺、切り裂かれる系のイタイのイヤなんだケドなー」
 まあ好きなやつなんていないか、と言葉を続けつつ、黒乃は掌に水流を発生させ、手裏剣の形へと生成し、2、3歩助走をつけ、腕を思いきり振りまわしながら、地縛霊目がけてそれを投げつけた。
 放たれし水刃手裏剣はくるくると回転しながら地縛霊へと接近、見事に命中し、パーンと破裂して水滴を飛び散らせる。
 続くミコメアは敵の攻撃範囲外へと退避し、完全に回復役に徹する事としたようである。
「……ジャマダ」
 そんなミコメアなどお構いなしに、地縛霊は残った能力者達全員に狙いを定め……体を高速で回転させて竜巻を巻き起こし、それによって発生した突風で、能力者達の体を切り裂いていったのであった。
 その攻撃による傷を回復させるため、また、己の能力を強化するため、残った能力者達も各々のアビリティを発動させていく。
「何かと子供の地縛霊には縁があるなぁ……」
 ポツリとそんな言葉を呟くポルテ。
 それは、彼女がそういったゴーストを救いたいがゆえに、そういった事件と遭遇してしまうのかもしれない。
 奇妙な縁を感じつつ、彼女は微塵の隙もない構えを取る事で狼のオーラをその身に纏う。
「回復は任せてください」
 颯は傷ついた仲間達の傷を癒すため、風を巻き起こす。
 敵を傷つける地縛霊の突風とは違い、彼が巻き起こした風、浄化の風は、仲間達の体を優しく包み込み、ダメージを回復させていく。
「……痛たた……こんな攻撃を受け続けてたら身が持たない……!」
 傷が痛むのか、顔を歪める琉美であったが、その痛みをぐっとこらえ、一刻も早く攻撃に転じねば、と、宝剣【Balmung】、小刀【無明】を頭上へと持ち上げ、高速で回転させる。
 そうする事で、若干痛みは治まり、能力も向上する。
「風には風を!シルフィードに竜巻勝負とは良い度胸なのですよ!」
 璃美は地縛霊が着地した春寒を狙う……はずであったが、残念ながら地縛霊のスピードは璃美の思った以上に早かった。
 ともかく、彼女は地縛霊に対抗心を燃やしつつ、ビュゥゥンと彼の足もとに風を巻き起こしたかと思うと、それは強烈な上昇気流となって地縛霊の体を包み込み、グルグルと回転させながら、空高くその身を舞いあげたのであった。
 そして再び、水流によって作り出した手裏剣を、地縛霊目がけて放つ黒乃。
 ジェットウインドから解放され、地面へと落下した地縛霊に、再度、水刃手裏剣が命中した。
「後衛のお仕事そのにー!安全地帯から!ひたすら回復!」
 一人、安全地帯より、回復に徹するミコメア。
 古の時代の土蜘蛛の魂をこの地へと呼び寄せ、傷ついた仲間の武器にそれを宿らせる事で、その体力を回復させていく。
「ハァァァ」
 しかし、そんな彼等を嘲笑うかのように、地縛霊は突風を巻き起こし、能力者達の体を再度切り裂いていく。
 このまま回復に徹していれば、アビリティが切れてやられてしまうかもしれない。
 まだ多少は体力が持つと判断したプリンチペッサは、エネルギーを凝縮させ、光り輝く槍を作り出して握りしめる。
「ぼこぼこにしちゃいますよ」
 そして黒乃と同じく、多少助走をつけながら、地縛霊目がけて思いきりそれを放り投げた。
 放たれし光の槍は白い尾をひきながら地縛霊の体へと突き刺さり、多大なるダメージを与える。
「手ごわいな……」
 仲間の元に駆け寄り、白燐蟲を武器に宿らせて体力を回復させる朝龍。
 負傷者が多すぎるため、攻撃に転じる事ができず、歯がゆい思いをしてしまう。
「春風、にしてはおいたが過ぎたわね……あるべき場所に還りなさい」
 ギロッ、と、禍々しく、怨念に満ちた目で地縛霊を睨みつける聖。
 彼女の両目から放たれる殺気は尋常ではなく、相手に脅威を与えるとともに、その体を内部からズタズタに切り裂き、凄まじいダメージをその身へと与えたのであった。
「グゥッ……」
 さすがに対内へのダメージが効いたのか、ダメージが蓄積しすぎたのか、少年はフラフラと体を揺らし、その体力が限界に近い事が見て取れる。
「捉えた……引き裂かれろ!」
 そんな地縛霊へととどめを刺すため、漆黒に染まった自らの影を彼に向けて伸ばす楓。
 影は地縛霊へと近付きながらその姿を具現化させ、黒き掌の形となり……爪の先でひっかくかのようにして、地縛霊の体を鋭く切り裂いていった。
「グ……ァァァァァァ」
 激しい叫びごえをあげながら、仰向けに倒れていく地縛霊。
 しかし、彼は地面へと激突する事無く……その姿を消し去っていったのであった。


 戦いは能力者達の勝利に終わった。
 日は暮れてしまったものの、彼等は戦いによる疲れを癒すため、自分達の力で平和を取り戻したこの丘の上で、しばしの休憩を行う事とした。
「昼が終わり夜が訪れる……なんとももの悲しいものだね」
 と、黄昏てみるポルテであったが……似合わない台詞だなと感じ取ると、途端に恥ずかしくなったのか、少々悶絶する。
「お疲れ様なのでした。お腹空いてる人は居ないです?お弁当作って来ましたですよ」
 と、自分で作ってきたお弁当とお茶をバスケットから取り出し、皆に配って回る璃美。
 渡りに船、とばかりに、ポルテは恥ずかしさをごまかすため、お茶を受け取り口へと注いだ。
「……銀シャリは最高の贅沢なのです、よ?」
 ミコメアは、丘といえばおにぎり、と、具がなく、やたら量の多い塩むすびを頬張っていた。
 しかし、それだけでは満足できなかったのか、お肉が食べたい、と、心の中で呟いていた。
「これで憩いの場が恐怖に染まることはなくなるだろうが……」
 と、意味深な言葉を吐く朝龍であったが、彼はそれ以上何も語ろうとはせず、この丘から見える眺めをスケッチブックへと記録するため、筆を取った。
「町外れの丘の上にある木だナンテ!とっても青春なカンジ!」
 辺りの風景を見渡しながら、いいなぁ、と、思わず妄想の世界へと旅立って行ってしまう黒乃。
「あんな高いところで、一体何を想っていたのかしら……」
 皆がまったりとくつろぐ中、聖は大きな木を見上げながらそう呟き、思う。
 もしかしたら、彼があの場所から見つめていた景色は、酷く寂しいものであったのかもしれない……と。
「……これからも誰かに切られることなく伸び続けてくれるといいな」
 そしてこれからは、人々が安心して、心を落ち着かせられる場所になってほしい。
 大木に背を預けながら、そう願いを込める楓。
「きれいな夜空……」
 彼と同じように木にもたれかかりながら、その青き瞳で夜空を見つめる琉美。
 その視線の先には、彼等の勝利を祝福するかのように、一番星がキラキラと眩い輝きを放っていた。
「丘からみる夜空はいいものですね」
 琉美の言葉に答えるかのようにそう言うプリンチペッサ。
 どきどきしたけど、なんとかなって良かった良かった、と、満足げな表情。
 彼がふと、琉美の方へと視線をうつすと、彼女は静かな寝息をたてながら眠りについていた。
「うにゅ〜……Zzz……」
 疲れ果ててしまったのか、颯もまた、草むらの上に横になり、クッションを抱きしめながら夢の中。
 こうして、それぞれが思い思いの時を過ごしながら、楽しく、穏やかな時間はゆっくりと流れていくのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2009/04/15
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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