ふわふわわんこ妖獣をもふも……遊ぼ……げ、撃退しよう


<オープニング>


 人里離れたその場所に。
 見渡す限りの花畑があった。
 赤や白、橙、黄色、紫――目にも鮮やかな花々が咲き乱れている。
「綺麗……」
 美しい光景に目を奪われた少女は、嬉しそうにきょろきょろ顔をめぐらせながら、ゆっくりと歩を進め。
「……あら?」
 その花畑の中心部分。
 ……なんか、いた。
 茶色いのが。
 ふわっふわした毛並みを丸まらせて。
 おっきな犬っぽい生き物が、
 花畑の中心で、
 すやすやと気持ち良さそうにお昼寝していた……!
 
「……と、いう感じですねー」
 しかつめらしく頷いてみせる羽佐蔵・しの(小学生運命予報士・bn0242)。
 反応に困っている能力者達に、しのは不思議そうにまばたきしながら。
「妖獣です」
「あ、やっぱり妖獣なんだ」
「全長3メートルですから」
「でかいな」
「外見はですねー、巨大ぬいぐるみといいますか。もふもふでー、ふわふかでー、ふわふわでー」
 凄い勢いで素敵ワードが並んでいく。
 こう、思い切り抱きしめて「うりうりうりうり〜!」と高速頬ずりしたくなるような外見らしい。
 ……想像したのか。何人かはもう「くぅ……っ!」と耐えるような表情になっている。
「茶色い毛並みに、くりっとしたつぶらな黒い瞳が特徴ですね。子犬がそのままスケールアップしたといいますか……そうですねー、トイプードルあたりを思い浮かべてみると、一番イメージが近いかもしれませんね」
 無性に保護欲をかきたてられる造詣である。
「えーと、呼び名はどうしましょうかねー……皆さんで素敵なの考えてみるのもいいかもですね」
 ちなみに、わんちゃんが寝転んでるところを中心に、周囲は花が咲いてない開けた場所なので、花を踏み荒らしたりする心配はしなくて平気らしい。
「性格はー、かなりひとなつっこ――攻撃的です。積極的にえいえいって攻撃してきます」
「いま人懐っこいって言いかけたよね?」
 いやまさかそんな、と無表情に首を振る。
「攻撃手段は?」
「機敏な動作で――飛びついてきます」
「もふもふ!」
「『遊んで、遊んで♪』という感じで尻尾を振って魅了してきます」
「なんて凶悪な……!」
「てい、ってあんまり痛ないパンチもしてきますね。吹っ飛びます」
「もふもふ!」
「ズボンのすそとかをガジガジ――この大きさだと頭とかでしょうか、甘噛みもしてきます」
「心を抉られそうだ……!」
 とまあそんな感じの極悪極まりない攻撃手段で一行を苦しめてくるとのこと。
 苦戦は必至である。ある意味。
 ところで、倒した後は花畑を眺めるのもいい。薔薇に菖蒲に杜若、わりと節操なく色んなものが咲いているとか。
 レジャーシートを敷いてのんびり休憩するのも素敵だろう。お弁当を用意してピクニック気分を満喫してもいいし、楽しみ方は皆次第だ。
「ではではー、頑張ってきてくださいねー」
 ひらひらと手を振って見送るしのに、彼らは顔を見合わせて。
 ……とりあえずマジメに戦うか魅惑のもふもふを堪能してから戦うか、少しだけ悩むのだった。

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参加者
川満・紅実(花の虹・b16707)
銀・夕祈(知識の探求者・b35730)
桜・飴璃(木漏れ日のドルチェ・b35744)
サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)
時風・華夜(宵闇の狂騒曲・b39800)
アンジェラ・ペトロッツァ(血を啜り闇を纏う・b41568)
神栖・綾(蒼穹の巫女・b47597)
真姫弥・紗耶(夢幻の魔術師・b52679)
宵闇・ちひろ(真夜中の紅い月・b56560)
川森・瞳(高校生白虎拳士・b61523)
アーリエル・ゴドフィル(小学生ヤドリギ使い・b61892)
日下・雪芽(小学生ブロッケン・b62528)



<リプレイ>


 つまりぬいぐるみだった。
 トイプードルに代表されるふわもこ系のあの子たちは……、
 デフォルメする必要なんてないくらい、初期スペックからして既にふわっふわしていやがるのである……!
 構ってほしそうなつぶらな黒い瞳。
 ボールを投げるとこっちが嬉しくなるくらい一生懸命に追いかけて、「褒めて褒めて!」と大はしゃぎで帰ってくるその姿。
 動くぬいぐるみ。
 歩くふわもこ!
 荒んだ心を癒してくれるこの世のオアシス――!
「な、なんて恐ろしい!」
 想像して、神栖・綾(蒼穹の巫女・b47597)が震えながら叫んだ。
 妖獣でなければ速攻でお持ち帰りしてもふり倒すところである。
「とってもたの……はぅ、が、頑張って退治しますよぅ」
 ぷるぷる首を振って言い直すサラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)。うん、とっても楽しみなんだね。
 それは皆も同じなようで、真姫弥・紗耶(夢幻の魔術師・b52679)も「すごく楽しみだわ」と期待の表情。
 笑顔の皆に、アンジェラ・ペトロッツァ(血を啜り闇を纏う・b41568)もぽややんと笑顔を浮かべ。
「まあ心ゆくまでもふもふを堪能したら、さっさとブチ殺してやるだけの話ですのー」
 空気が凍った。
 自分に集まる視線にはっとして。
「い、今のナシですの! 本音と建前が逆になってしまいましたの〜」
 本音らしい。
 さておき、一行は花畑へと辿り着く。
 百花繚乱の光景は、分け入るのさえ躊躇しそうになるが……、
「わんこ、楽しみですぅ」
 心配は無用だ。アーリエル・ゴドフィル(小学生ヤドリギ使い・b61892)の能力『隠された森の小路』は、花弁の海に一筋の小路を作り上げた。
 ……いた。
 茶色いふわっふわの毛並みをした、ぬいぐるみっぽい何かが。
 幸せそうにお昼寝を満喫している。
「……本当にぬいぐるみみたいね」
 見上げて日下・雪芽(小学生ブロッケン・b62528)。
 無表情ではあるのだが、心の中ではもふもふとかふわふわとか様々な素敵ワードがめまぐるしく飛び回り、彼女の胸をきゅんとときめかせている。
「素敵なのですっ」
 堪えきれず、桜・飴璃(木漏れ日のドルチェ・b35744)は声を上げた。
 そんな彼女の夢はぽかぽか、緑とわんちゃんに囲まれて眠ること。
「お花を飾って、ごろんごろんで、もふもふで〜……」
「わぁ、すごく大きな犬くんですね」
「ふわふわわんこさん……可愛いです」
 く、と堪える表情になる銀・夕祈(知識の探求者・b35730)と、もう素直に瞳を輝かせている川満・紅実(花の虹・b16707) 。
 色が白なら満点だったのだが、それでも十分可愛らしい。
 と。
 ぱちり。
『……』
「……」
 見つめあう一行と巨大わんちゃん(妖獣)。
 不思議そうにぱちくりするつぶらな瞳。
 なあに? とか字幕が入りそうな感じでちょこんと首をかしげる。
「くっ」
 一同うめく。まだ、まだ大丈夫……この程度の可愛さなど!
『わんっ♪」
 ズギューン。
 という音が聞えた、気がした。
「――か」
 胸を押さえ、よろよろと後ずさる川森・瞳(高校生白虎拳士・b61523)。
 彼女は必死に息を整えて、初めての依頼の緊張とか責任とかとりあえずそこら辺に置いといて、叫んだ。
「か、可愛い……!!」
「はわ〜。大きいッすねぇ〜」
 ハートマークを乱舞させて、楽しそうな時風・華夜(宵闇の狂騒曲・b39800)。
「もふ子よ、思いっきり遊んでやるにゃ」
 にっと笑って、指を突きつける宵闇・ちひろ(真夜中の紅い月・b56560)の言葉が伝わったのかそうでないのか。
 なんだかとっても嬉しそうに、短い尻尾をふりふりした。
 こてん、と伏せて。
 お顔、どアップ。
 遊ぶ? 遊ぶ? と瞳がきらきら。
「……」
 なんだこのぬいぐるみ!
 毛むくじゃらな体しやがって!
 お持ち帰り厳禁なのが悔やまれて仕方がない!
 かくして、能力者一行とわんちゃん妖獣は、お花畑でこんにちはしたのであった――。


『わうっ♪』
 嬉しそうに走りよる巨大わんこに、素早く放たれる綾の導眠符、及びサラの悪夢爆弾。
「いい子ですから、眠ってくださいね」
 優しくあやすような綾の声。
 ――私達がふわもこを堪能する為に!
『……きゅぅ?』
 くあ〜、と大きくあくびをして、ぽてっとその場に丸くなった。
 ……眠った?
 恐る恐る近寄る一行。 
 そっと瞳が手を伸ばす。触れる寸前で指をおっかなびっくり躊躇わせ。
 起こさないよう気をつけながら、ゆっくりと抱きしめれば。
 ふわっ。
「……あ、あったかい、わね……」
 日向のような、優しげな温かみ。
 頬を染め、堪えきれずにぎゅっと顔を押し付けた。
「ふわふわで柔らかいです……」
 柔らかな茶色に顔を埋め、紅実はうっとりと至福の表情。
 ぎゅ、と頬を押し付ければ、ほわっとした何ともいえない幸せな感触が返ってくる。
 そーっと夕祈は尻尾に手を伸ばす。
 最初は指先でつん、と触れる。ぴく、と動いたのにちょっと驚いたけど、そっと触れると待ち望んだ感触が。
「わ、ふわふわ……」 
 抱きしめたい――いやでもぐっと我慢です……!
 ふと犬くんの顔を窺うかがう。
 すやすや絶賛お昼寝中の犬くん。垂れた耳がぱたぱたっ、と機嫌良さそうに動いた。
 ……ええいやらいでか!
 ぎゅっ。
「……」
 一瞬で相好が崩れた。なんて、なんて抱き心地良いんですかこの尻尾は……!
「もっふもふにゃふ〜♪」
 反対側から尻尾に飛びつくちひろ。
 思う存分その感触を楽しんだら、今度は肉球にむけてひた走る。
「ああ、夢の肌触り……お持ち帰りしたいにゃ……」
 本気で悩んでみたり。
 飴璃とアーリエルは頷きあい、
 ダーイブ!
 もふぅ〜っ。
 飛び込んだ飴璃の体をを受け止め、包み込むように柔らかにお腹が沈み込む。
 鼻腔をくすぐる暖かな日向の香り。
「はぁ、かぁいいですぅ」
 まるで自然がくれたベッドみたいだ。
 ベッドのスプリングを試すように、もふもふ頭を弾ませるアーリエル。
「お花とお日様の匂いがするのです〜……」
 目を閉じれば、飴璃の脳裏に急速に到来する100匹の羊さん。
 が、我慢なのですっ……でもすごくふわふわで……。
 ごしごし目を擦ってみるけど、あまりに抗いがたい犬さんベッドの甘い誘惑。
 ……ちょっと、だけなら?
 はっと気づいて、ぷるぷる首を振る飴璃だった。
 その横で同じくお腹に抱きついていた綾も、あ〜う〜と恍惚の声。
 ぐ、とお腹を押してみる。
 ほわん、と反発が返ってくる。
 ああ〜〜。
 幸福指数の上昇が抑えられない……。
「心がとても和みますね〜。このまま埋もれたままで居たい……」
 切なる願いである。
「あぅ〜、とっても可愛いわ〜」
 色黒の肌を高揚で赤く染め、ぎゅっとわんこに抱きつく紗耶は、緩んだ頬を直しもせず、
「ずっとずっと堪能していたいわぁ」
 ぼふ、と頬を押し付けると、枕などよりも遥かにやわらかい体毛に埋まってしまう。
「……本当に素晴しいふわもふっぷりね」
 冷静そうな無表情がセリフと釣り合っていなかったりするが、雪芽の行動は『思う存分』『無我夢中』『絶対無敵』といった言葉がぴったりな感じだった。
 つまりもふもふを満喫していた。
 分かりにくいが、確かにその藍色の瞳は、至福に輝いていたのである。
「ふぁ、ものすごく柔らかくてプニプ二ですよぅ、はぅ〜♪」
 はぅはぅとご機嫌なサラは、投げ出された肉球を堪能中だ。
 ぷにっ。
「はぅ」
 ……ぷに、ぷにぷに。ぷにんっ。
「はぅ〜♪」
 キラキラキラ。輝く瞳。
 嬉しさのあまり顔が完全にとろけきっている。
「かわいいですの〜♪」
 皆がもふもふを堪能するのを、アンジェラは一歩離れてニヤニヤしながら見守っていた。
「きゃわ〜、可愛いッす! もふもふッす!!」
 がばっと抱きつき、すりすりすり〜と頬擦りしまくる華夜。
 なんという、なんというもふもふターン!
 もうずっともふもふのターンのままでいいッす!
『わう?』
「もふも……あ」
 不思議そうにこちらを見つめるわんこと目が合った。
 ……起きてた。
『わん』
 あむ、と齧られそうになったところを慌てて離れる華夜。 
「これは痛そうッすね」
「チッ、目覚めやがりましたのー」
 忌々しそうに舌打ちするアンジェラ。
 ――もふもふターン、ご好評のうちに終了。
 で、ようやく戦闘である。
「真剣に遊んでやるにゃ。カモ〜ンにゃ」
 くいくい、とちひろは指を折り曲げて挑発する。
 わんちゃん楽しそうに目を輝かせると、ふと体をかがめ。
 ――ばっ。
 飛んだ。
 子犬を飼った事がある人なら経験があるかもしれない。おいでと手招きする主人の胸に、子犬が嬉しそうに駆けて飛び込んでくるアレだ。
 ……が、それを3mの体でやると、どうなるか。
「はわー!?」
 一時的なご主人様(攻撃対象)に選ばれたのはサラだった。
 咄嗟に逃げ――ようとした彼女の目に映りこむ巨大わんこ。
 その、つぶらな愛らしい瞳が。
 うるうると潤んでいて。
『……抱きついちゃ、ダメなの?』
 という声はサラの脳内でのみ再生されたのでアテにはならないが、ともかく。
「ってサラさーん!?」
 気づいたら両手全開で思いっきり受け止め体勢に入っていたサラを強襲する巨大わんこ。どどーん。
『わうっ♪』
 わんこが退くと、慌てて仲間たちが駆け寄っていく。
「あぅぅ、とっても柔らかくて気持ち良かったのですよぅ。はぅ〜♪」
 存外平気そうだった。
「……っ。なんてふかふかななんでしょう!」
 同時に巻き添えを食らっていた綾も這い出てくる。
 ちょっとは痛かったけど、でも。
(「圧倒的に幸せ成分の方が上ですね……!」)
 柔らかくて気持ちよかったようである。
「うにゃ……攻撃をしても可愛いわねぇ」
 紗耶は見蕩れていたりした。
『わんわん!』
 可愛らしい鳴き声。
 わんこは遊んでオーラを振りまきつつ、激しく尻尾をふりふり……って。
 これはもしや、魅了――!?
「にゃ!?」
 案の定。ちひろを襲う魅了攻撃。
「……宵闇さん?」
 硬直したちひろに恐る恐る問いかける。
 と、くるりと凄い勢いで振り向いて。
「もふ子をいじめるヤツはやっつけーるのにゃ!」
「魅了されてるー!?」
 ダメだ完全に目がぐるぐる渦巻きになっている!
「ふふふ、これくらいすぐに回復させてもらうわ!」
 甘いわよ! 自信満々に言い放ち、紗耶は清浄なる風を巻き起こす。
 はっとすぐさま我に返るちひろ。が、
『わふ?』
「……そ、そんな目で」
 たじろぐ雪芽。
「尻尾まで振るなんて……反則だわ」
 遊ばないの? と再びふりふり。
「…………もふもふは人類の宝だと思うの……」
「今度は日下さんが……!?」
「その意見には賛成ッすけど!」
「大惨事ですよぉ」
「ちょ、ちょっと待って! 今すぐ回復させるから!」
 次々に撃墜(魅了)されていく仲間達。
 わんこの魅力、まこと侮りがたし。
「って、きゃ!」
『わうっ』
 龍尾脚を発動しようとした瞳の頭にかぶりつくわんこ。
 獰猛なる牙が瞳の頭蓋を粉砕する!
 あむあむあむあむ♪
「い、いた――く、ない」
 くすぐったいくらいでむしろちょっと気持ちいい。……あれ?
『くぅー?』
 どうしたの? とでも言いたげなわんこ。
 ……か、可愛いなあ。
 ちょっと涎が気になるけど、まあイグニッション解いたら消えるし。
 その様子を見る紅実の顔には、どこか羨ましそうな色が混じっている。
「わ、私も一度くらいはお手を……って」
 あれ? なんかこっちに来てる……?
『きゃうっ』
 迸る黄金の右ストレート(お手)。
 ぽすんっ。
 浮遊感。瞬間的にちょっとだけ空を飛んだ紅実は痛そうな顔をすることもなく、むしろすごく満足そうで。
(「ちょっと、いえかなり柔らかかったです……♪」)
 落下。
「紅実ちゃーん!?」
「はう……ふにふにしてたのです……」
 一足先に肉球ぺちーっ、を味わっていた経験者は語る。
 飴璃はふにゃっと緩んだ表情のまま、似たような表情の新たな犠牲者を見つめていた。
 ……そんなこんなで、わんこの攻撃を一通り堪能した後。
 本気を出した能力者たちが、一斉に反撃を開始した。
「どっかーんと、かっとばすッすよ〜♪」
 華夜は光の槍を形成し、ワンコに向かって全力投球!
「あうう、ごめんなさいねぇ」
「ごめんねふわもこくん……」
 心の底から残念そうに、シューティングファンガスを放つアーリエルと夕祈。
「アンジェラの獣爪が光って唸りますのー」
 ぶんぶん右腕を振り回すアンジェラは、凶暴なる獣のオーラを漲らせ、
「どかーん♪」
 獣撃拳。
 ぴぴ……ッ。
 真っ赤な返り血を浴びた(イメージ)アンジェラは、壊れた微笑を浮かべて嗤った。
 なんか一部だけ妙に猟奇的……!
「痛みの苦しみ、ここで断ち切って差し上げます!」
 決意を込めて、綾が放った呪殺符は妖獣に直撃し、
 苦しそうな鳴き声を上げ、どうと倒れた妖獣の姿が、光となって消えていった。
「やすらかに眠ってくださいねぇ」
 手を合わせるアーリエル。
 さようなら、ふわもこわんこ。
 この美しい花畑で、安らかにお眠り。


 飴璃は花を摘み取り、せっせと何かを製作中。
 気づいた夕祈も手伝って。出来上がった花の冠をそっと置いた。
「もし生まれ変わったら、お友達になっていっぱい遊びましょうなのですよ」
「……次はぬいぐるみになればいいと思うの」
 そうしたら、また遊ぼう。
 ざぁ、と。
 応えるように、花畑を風が吹き抜けた。
 あるいはそれは、一匹の子犬が花畑を駆けていった……その名残なのかもしれない。
 瞑目し、綾は呟くように祈りを捧げる。
 それが終わると、くるりと皆を振り返って微笑んだ。
「よければ、ここでご飯を食べて行きませんか?」
 お弁当も作ってきたし、花々も綺麗だし、と。
 無論、断る理由などない。
 ちひろが持ってきたレジャーシートに腰を下ろして。
「沢山作ったので、皆さんも召し上がって下さいね」
「おお〜〜!」
 どどん。
 微笑とともに紅実が取り出した黒塗りのお弁当箱、いわゆる重箱弁当に、みんなの顔が期待に染まった。
「おにぎりがたくさんですの〜」
「これは何の具が入ってるの?」
「それはおかかですね。こっちの列のは鮭で、こっちは昆布です」
「はぅ、とっても美味しいですよぅ♪」
 早起きして用意したお弁当。喜んで食べてもらうのが、何よりも嬉しくて。
「遠慮なく食べて下さいッすね♪」
 華夜のお弁当だって負けてはいない。特製のサンドイッチは色んな種類を持ってきていた。
「えっと……玉子焼きは甘かったりするでしょうか」
 照れる夕祈にアーリエルは頷き、
「お手伝いさんが甘く作ってくれたのですよぉ」
 お弁当の後に良かったらと、雪芽。
「……雪芽はクッキーと紅茶を持ってきたわ」
「私にも分けて下さいな〜♪」
 正座で居住まいを正した飴璃も、持参した紅茶とハニーティーをふるまって。
 お花見にゃんこなちひろは、晴れ渡る青空にしみじみと呟いた。
「今日は、いい日にゃ〜」


マスター:リヒト 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2009/06/01
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