ボールペンを分解してはいけません


<オープニング>


 その学校の図書室には、ある噂話があった。
 放課後、一番奥にある席でボールペンを分解すると、耳元で女の声が聞こえてくる……。

「どうせアレだろ、キャップ回す時の「キュキューッ」って音を聞き間違えたんだろ?」
「そんなトコだろうね。あの席って音響くしさ」
 図書委員と思しき2人の男子生徒は、そんな会話を交わしながら、返却された本の片付けをしていた。
 そして、すべての本を片付け終えたところで、日誌を書くために件の席に座った。
「今日は貸出30の返却18。うち遅延5冊って、ちょっと多くね?」
「最近増えてるんだよねー……っと、あれ?」
 日誌を書いていた少年が、ふと手を止めてボールペンを弄り出すのを見て、もう1人の少年はちょっと怪訝な表情を浮かべた。
「なんか引っ込んだ」
「筆圧強すぎなんだよ」
 どうやら力を入れすぎて、ペン先が奥に引っ込んでしまったらしい。
 少年は溜息をつき、ボールペンのキャップを弛めて芯を抜いた。
 すると……。
『ダメ……』
「ん? 何か言った?」
「いや何も」
『壊シチャ、ダメ……』
「やっぱり言った!」
「俺も聞こえた!」
 耳元に、たしかに聞こえてきた女の声。
 驚いた少年達は、立ち上がって辺りを見回した。
『ダメ………』
「「……!!」」
 彼らの目の前に立っていたのは、血塗れの制服を着た、長い黒髪の眼鏡の少女。
 少女は、少年達が逃げるより、悲鳴をあげるよりも速く───彼らを、特殊空間の中へと引きずり込んだ。
 
 
「みんな、集まってくれてアリガト。あのね、中学校の図書室で、図書委員の男の子が2人、地縛霊の特殊空間に捕らわれちゃったのヨ」
 教室に集まった能力者達に、久慈・久司(高校生運命予報士・bn0090)はそう話し始めた。
「捕らわれちゃった男の子達はね、返却された図書の整理を終えて、図書室奥の席で日誌を書いていたところだったのよ。けど、ボールペンが壊れちゃって、直そうとして分解したところに、地縛霊が現れたの」
 地縛霊は、少年達を特殊空間へと引きずり込んだ。
 今のところ、まだ特に危害は加えていないようではあるが、無論このまま放っておくわけになどいかない。
 
 詳しい説明をするために、久司は図書室の見取り図を机の上に広げた。
 見た限りでは、何の変哲もないごく普通の図書室だ。そこに久司は、赤ペンで目印を書き込んでゆく。
「カウンター左側にある閲覧スペース、ここの一番奥の席で、2人は日誌を書いていたの」
 つまり、ここで何らかの行動を起こせば、特殊空間への入り口が開かれるということだ。
「特殊空間の中はかなり広くって、壁際には大きな本棚が並んでいるワ」
 机や椅子もいくつか置かれているが、戦闘の障害になるほどではないようだ。
「多分アナタ達は、空間のちょうど真ん中くらい、地縛霊は右奥隅、男の子達は地縛霊から2〜3m離れたところに倒れているわね。急いで駆け寄れば、ギリギリ近接できるくらいの距離だと思うワ」
 少年達は完全に気を失っているが、とりあえず外傷等はないようだ。
「地縛霊の攻撃は、右手に持った2色ボールペンから繰り出されるわ。炎の赤、毒の黒。それと、スピードスケッチみたいな技も使ってくるわね」
 また、左手の修正液を塗り、回復と能力強化も行えるらしい。
「それから、左奥隅の方に、学ランを着たミイラみたいな地縛霊が2体、一緒に現れるワ」
 学ランの地縛霊はどちらも百科事典のようなものを手にしている。殴られれば、かなり痛いだろう。
 
 彼女が何故地縛霊になったのか、何故ボールペンに拘るのか……。
 学校に残された噂話からは、それは残念ながら分からない。
「けど……とにかく、一刻も早く男の子達を助けてあげなくっちゃ!」
 噂が、まだ噂であるうちに。
 久司はそう言って、能力者達に3色ボールペンを1本ずつ手渡し、教室から送り出した。
 そして……。
「これ、どうしようカシラ……」
 彼女の覗き込んだ紙袋の中には、バラバラになった3色ボールペンが1本、ちょっと哀しげに転がっていた。

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参加者
緋之坂・央璃(チェルビエロディブルーノ・b00444)
姉川・雪声(勁雪・b00688)
暁葉原・燵吉(恢炎樹・b04308)
崗・攻(昏き秩序の守護者・b06519)
巽・誠一郎(柔らかい弾丸・b09486)
岡田・正(真昼の月・b16747)
淵守・透(グッドセンサー・b30327)
井上・皓凱(我が目指せしは壁の華・b31993)
黒霧・凛(あまねく花・b41925)
蒼月・花梨(中学生月のエアライダー・b61796)



<リプレイ>

●分解≠破壊
 しんと静まりかえった放課後の図書室で、10人の能力者達は、手にしたボールペンを弄くりまわしていた。
「……ボールペン、たしかに時々やっちゃうんだよな…。うん、ばらして「なんでここに入らないんだろう」って……」
「分かります。授業中に暇ができたりすると、つい分解したくなっちゃいますよね」
 経験のある者同士で気が合うのか、井上・皓凱(我が目指せしは壁の華・b31993)と黒霧・凛(あまねく花・b41925)が頷き合う。
「そうそう! だってあんなに細かいパーツの集合体なんだよ!? 分解しろって言ってるようなもんじゃん!」
 淵守・透(グッドセンサー・b30327)も、どうやら分解常習犯らしいが、壊してしまったことは一度もないらしい。
「なぁ、そういえば、三色ボールペンの配色ってよ……全国共通か?」
 暁葉原・燵吉(恢炎樹・b04308)は、ふと疑問に思った。
「さぁ……多分共通だとは思うけど。てーか俺、お前に「ボールペン貰えるらしいぜ」って連れてこられたんだけど……」
 それが、まさか地縛霊絡みの話だったとは……。
「まぁいいけど……」
 そう言いながらも、岡田・正(真昼の月・b16747)の視線は彼方の方へ向いている。
「とにかく、捕らわれてる2人を早く助けてあげなきゃ!」
 蒼月・花梨(中学生月のエアライダー・b61796)はそう言って、グッとボールペンを握り直した。

 能力者達は閲覧スペース最奥の席に集まると、そこで数人が、ボールペンの分解作業を開始した。
「俺は本にライン引いたりするのに使うが、いつも青が残るんだよな」
「あたしは黒が先になくなるタイプ。だから芯交換に分解は必須なのよね」
 何とかならねぇモンかとごちながら、青のスイッチを弄る姉川・雪声(勁雪・b00688)。緋之坂・央璃(チェルビエロディブルーノ・b00444)も、複雑なものだと売ってないのよねーと、ちょっと困ったように眉を寄せる。
「僕はいつもは4色の奴を使っててね。青は頑張って使うけど、それでも緑がいつも残って困るんだよね」
「たしかに」
 巽・誠一郎(柔らかい弾丸・b09486)の言葉に、何人かが共感した。
「ところで俺、分解後に戻す自信ないんだけど……」
 戻んなかったらどうすんだろうなぁと呟きながら、やや腕力的に分解を進めていた崗・攻(昏き秩序の守護者・b06519)だが……。
「……あ」
 ぱきん。
 その乾いた音は、寧ろ分解時より「破壊」時に聞こえるもの。
 テヘ☆ と笑って誤魔化そうとする彼の手元に、仲間達の視線が集中する。
 しかしその時、背後から、少女らしき声が聞こえてきた。

『壊シチャ、ダメ……!』
「「「………!!」」」

 どこか悲痛な、まるで訴えるかのような声とともに。
 能力者達は、忽ち特殊空間へと引きずり込まれてしまった。

●数十秒
 大きな本棚に囲まれた、やけに無機質な特殊空間。
 そのほぼ中央に落下した能力者達は、素早く辺りを見回しながら、イグニッションカードを頭上に掲げて叫んだ。
「「「イグニッション!!」」」
 予報士から教えられたとおり、左にミイラのような地縛霊が2体、そして右には、黒髪の眼鏡少女の地縛霊が立っていた。
『ダメ……』
 そう言って、少女はゆるりと歩みだし、すぐ傍に倒れている2人の少年にボールペンを突き刺そうとした。
「うぉっと、そこまでー!」
「そいつらは絶対に傷付けさせないぜ!!」
 間一髪。
 イグニッションと同時に走りだした央璃と正は、それぞれ少年の前に壁となるよう立ちはだかり、先陣を切って飛び出していた透は、両手に握りしめたナイフを胸の前で交差させ、少女のボールペンを受け止めた。
 壁になるよう進み出ながら、魔法陣の力を体内へと取り込む誠一郎。攻と皓凱は少年達を後方へ運ぶ体勢を整えて、花梨もそれに加勢する。
『グァ!』
「おっと、そこまでだ」
 ミイラのような地縛霊が、少年達の背後に迫る。けれどそこには雪声が入り、気を引くように獣爪を振り下ろす。そしてもう1体のミイラには、燵吉がフェニックスブロウを叩き込んだ。
 鬼面に白燐蟲を纏わせながら、少女の方へと駈ける凛。それを見てか、地縛霊はボールペンで宙に絵を描きだし、彼女のことを襲わせた。
「きゃっ……」
 思った以上の攻撃力に、凛は一瞬怯んだが、仲間達が少年2人を安全な場所へ運ぶまでは、ここを動くわけにはいかない。
「大丈夫?」
 透にギンギンパワーZを投げ渡され、幾分痛みは緩和したものの、どうやらなかなか侮れない攻撃であることは間違いないようだ。
『グゥゥゥ!』
「わりぃが、そうはいかねぇんだよ」
 燵吉と雪声も、自らが囮となり盾となって、2体のミイラの行く手を阻む。
 その隙に、出来る限り迅速に。
 攻と皓凱がそれぞれ少年達を抱え上げ、花梨とともに地縛霊の対極まで全力で走る。
 時間にすれば、ほんの数十秒。
 けれど、もしゴーストの攻撃が僅かでも少年達に及べば、彼らの命は呆気なく消えてしまうことは明らか。
 それだけは、何が何でも阻止しなくてはならない!
 抑え、走り、そして……。
「待たせたな!」
 攻が叫び、長剣を旋回させながら駆け戻る。
 皓凱はギンギンパワーZを一気飲みし、花梨も急いであとに続いた。
「いくぜ! こっからが本番だ!!」
『壊シチャダメ!!』
 3色ボールペ……いやいや、少年達のために!
 正は『白』と名付けられた日本刀を構えると、気合を入れ直すかのように頭上で高速回転させた。

●チームワーク
 少年達は安全な場所まで運び終えた。
 ここからは、遠慮無しに戦える!
「ここまでの借り、返させて貰う」
 髪を逆立て、身体に虎縞模様を刻む雪声。透も一旦攻撃の手を止め、ギンギンパワーZを一気飲みした。
「ハートマークは気にするな! むしろ見るな!」
 皓凱は皆にそう訴えながら、特に消耗の激しい燵吉へ向けて、ヤドリギで出来たハートを飛ばした。
 けれど、やはり気になるものは気になるのか、数人の視線がハートへと向く。
「手加減は、必要ねぇよな?」
 燵吉の、躊躇いのない一撃が、少女を炎に包み込む。
 まだ体力に幾分余裕のある誠一郎は、回復よりも炎の魔弾を撃ち込むことを優先させ、凛はミイラの攻撃を背中にくらい咳き込みながらも、紅蓮のオーラを凝縮させた一撃を少女の胸元へ叩き込んだ。
『ダ、メ……!』
「うぐっ!?」
 ボールペンが、央璃の肩にザクリと深く突き刺さる。炎と毒は、そう簡単には消えてくれなかった。けれど彼女は怯まず、蹌踉めきながらも少女に紅蓮の一撃を見舞った。
「みんな強いねぇ……ボクもまけてらんないや!」
 ぐっと握り拳を作り、漆黒の影で少女の左腕を裂く花梨。
 若干少女に届かない正も、攻と息を合わせて同時にダークハンドを伸ばしたが、闇は少女の脚を撫でたのみで、毒に冒すまでは至らなかった。
『グァァ……』
「百科事典で不貞を働くとは……!」
 ミイラの振り下ろした百科事典が、雪声の肩を強かに撲つ。著者の気持ちを踏みにじるような行為に、彼の眉間に皺が寄った。だが彼は、ミイラへの反撃は行わない。
 まず倒すべきは、少女の地縛霊。
 回復よりも、少しでも早く少女を倒すことを選び、雪声は龍顎拳を撃ち込んだ。
 かなりの深手を負ってしまった央璃に、皓凱と透が続けて回復を施す。
「燵吉さんっ!」
「くっ」
 凛の叫びに、燵吉が振り返る。重い百科事典を銀色の刃で受け止め、押し戻し、しかし攻撃は少女へと。
(「ボールペンに拘る理由、何だろう……」)
 色々と想像を巡らせながら、誠一郎が魔弾を撃ち、まだオーラの戻りきっていない凛も、可能な限りの攻撃を行う。けれど少女は、それらを揺らめくようにかわし、透へ向けてボールペン画を奔らせた。
「はい奏甲、いくよっ!」
 即座に彼に駆け寄って、黒燐奏甲を施す央璃。
 上手く敵の背後まで回り込めた正は、漆黒のオーラで包み込んだ刀を少女の背中に振り下ろし、ぐらり揺らいだところで攻がダークハンドで掻き毟る。
 次はボクの番とばかりに、花梨もダークハンドを伸ばしたが、こちらは惜しくも外れてしまう。
 そうしてる間にも、ミイラの攻撃は雪声と透を襲ったが、皓凱と誠一郎の素早い治癒に救われた。
 連携での回復よりも、龍顎拳での打撃を選んだ雪声。透もまた、両手のナイフを巧みに操り少女に傷を刻んでゆく。
 燵吉の撃ったフレイムキャノンが、また少女を炎に包み込んだ。そこに凛も炎を重ねようとしたが、あと一歩のところで防がれてしまった。
『ボールペン、壊シ、チャ……!』
「おぅっ!? ぬ、ぬけてくるか!」
 慟哭とともに振り下ろされたボールペンは、央璃の持つ堅牢な番傘でも防ぎ切れぬ勢いをもって、彼女の太腿へ深く突き刺さった。幸い毒と炎にまかれる事はなかったものの、傷口からは多量の鮮血が溢れ出した。流石にちょっとヤバイと感じたか、後方へ下がりながら黒燐蟲で傷を塞ぐ。
『ガァァ!』
「痛ぇじゃねーかこのやろう!!」
 後頭部を思いっきり百科事典で殴られた正は、そのぶんの体力を黒影剣で僅かであるが取り戻す。花梨、雪声、攻、そして透も、続けざまに攻撃を仕掛ける。燵吉の炎は、惜しくも着火しなかったが、皓凱が仲間の傷を癒す時間を作るには十分だった。
「蒼月さん危ないっ!」
「わぁっ!?」
 目の前を掠め飛び、ミイラに直撃した炎の魔弾に、花梨は一瞬驚いた。だがそれは、彼女を狙おうとしていたミイラの気を引くため、誠一郎が撃ったものだった。そして目論見通り、ミイラは彼を百科事典で殴りつけ、ひどい打撲傷を負わせたが、すぐさま駆け寄って奏甲を施してくれた凛のお陰で、どうにか倒れずにすんだ。

 そして……遂に期が訪れた!
『ダメ、壊シチャ……』
 満身創痍となっていた地縛霊の少女は、修正液を取り出すと、ぺたりぺたりと身体に塗り付け幾つもの傷口を塞ぎ消した。
 それと同時に、少女から、強いオーラが立ち上る。おそらく今の行為で、かなり攻撃力が跳ね上がったろう。
「大学での授業で、ノートに修整液を使う暇はないッ! 速いんじゃチキショー!」
 央璃が叫ぶ。だが、それこそが、能力者達の待ち望んでいたものだった。
「回復されちゃったか、でもさ……今だよ!!」
「よし、来たぞ!」
 彼らは何かを確信したかのように、次々と少女に攻撃を加えていった。防がれ、避けられても、ニヤリと笑みを浮かべたままで。
 そして、その答えが出るときが来た。
「行け! 淵守!」
「来ました! 俺の出番!」
『!!!』
 一切の迷いのない、透の突きが一閃。
 その瞬間、少女の動きがビタリと止まった。
 退魔呪言突き……こうなれば、決着はもうついたも同じだった。
「解けないうちに一気に行くよ!」
 敵は動けない。だが油断なく、持てる限りの力を使って、一気に畳み掛ける能力者達。
 やがて少女は、ぼろぼろと足下から崩れだした。
「何故そんなにボールペンを分解するのを嫌がったんだい?」
 誠一郎は、消えゆく少女に問いかけてみた。
『……ダ、メ……壊………』
 けれど彼女の口からは、その答えを聞くことはできなかった。

●組み立て
 残るミイラ姿の地縛霊は、体力こそかなりあったものの、倒すのにさほどの苦労はなかった。
 危なげなく、1体ずつの集中攻撃でこの世から消し去り……そして10人の能力者達は、少年2人とともに無事に特殊空間から抜け出すことが出来た。

 まだ若干残っていた傷を、蟲やヤドリギ、ファンガスの力で癒し、イグニッションを解除する。いまだ気を失ったままの少年達は、雪声と攻が椅子に座らせ、うたた寝でもしてしまったようにておいた。
「顔色も良いし外傷もないし、きっとそのうち気が付くわね!」
 机に突っ伏して眠る少年達の顔に、仕事をやり遂げた充実感を感じた央璃が、満足げな笑みを浮かべる。
「これで漸く、一段落ですね」
 やや離れた席に腰掛け、安堵の溜息をついた凛は、手にしていたボールペンをじっと見つめてみた。
「………」
 ちょっと手先が疼いたが、ここで壊すわけにはいかないと堪える。
「そういえば、このボールペン貰っていいんだよな!!」
「そりゃ当然でしょう!」
「やったーーー!!!」
 やたら嬉しそうな正を見て、透もちょっとテンションが上がり、3色ボールペンを握りしめたまま何故か万歳三唱が始まった。
「そうそう、こいつらのボールペン、直してやらないと」
 そう言って燵吉がつまみ上げたのは、机の上に置かれたままになっていた、生徒達の壊れたボールペンだった。
「中でバネがズレただけかな?」
 とりあえず、芯を抜いてみる皓凱だが、何となく余計壊しそうな気がしたのか、組み立て作業はバトンタッチ。
「このノック部分にバネを通すのがちょっと面倒なんだよね…… 」
 片目を瞑り、手際よくバネを填め込む誠一郎。
 仲間達も、地縛霊を呼び出す際に使ったボールペンを組み直す。
 そして程なく、ボールペンは元通りの形に戻り、カチカチと小気味よいノック音を立てられるようになった。
 花梨はそれを受け取ると、少年達の傍にそっと置いた。
「ホラ、直ったよ……もう、壊れないといいよね」
 その言葉に、皆もふっと微笑んで頷く。

 そして、誰にも気付かれぬうちに。
 能力者達は、夕陽の射し込む図書室をあとにした。


マスター:大神鷹緒 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2009/05/19
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