<リプレイ>
● 暗い屋上に蛍火のような灯りが灯る。素早く戦線を構築した能力者達は、それぞれの武器に力を宿らせる。 魔方陣を展開する間も惜しんで柏木・リク(赤と青の唐辛子・b38226)が流麗に描いた魔弾を地縛霊は銃身で受け、勢いを逃がす様にわずかに後退する。 「かなり手強そうだね」 受けたダメージを感じさせないそぶりで構え直す地縛霊を鋭く見やる。 「それでも負けない、皆と一緒だからね」 「心配事は尽きませんが、一緒なら大丈夫です。それにしても遮蔽を取りたかった所ですが……屋上じゃ仕方有りません。銃弾が来ても我慢しましょう」 歪んだ笑みを浮かべる地縛霊を前に安心院・ヒナタ(金曜日に降る雨・b51011)はぼやく。 「いや。避ければいいのですか」 足元を狙ってばらまかれる弾とタイミングを合わせ、ヒナタは地面を蹴る。銃弾の嵐を飛び越えたヒナタは落ちる直前で床に手を突き、反動を利用して崩れた体勢を立て直す。片膝をついたままヤドリギの祝福を発動させ、仲間の強化と回復を図る。 飛びかかる弾に飛びこむように緋羽音・榎楠(宵紅翔・b31720)が駆ける。銃弾と双剣が火花を散らし澄んだ音を立てる。避けきれなかった銃弾に傷つきながらも榎楠の勢いは衰えることがない。勢いに押される様に後ろに下がり避けようとする地縛霊がガクリと動きを止める。死角を突くように伸びた影に切り裂かれ出来た隙を逃さずに、光刃が弧を描く。 「遠いからとか大丈夫なんて思ってたらダメですよね」 足止めを受けても慌てずにダークハンドに切り替え、不意を突いた津島・燿(緋翔彩華・b14495)はにこりと笑う。 「やる気満々みたいですけど強い相手と戦うのは嫌いじゃないですし」 みんなで協力すれば大丈夫ですよね、と言う燿に能力者達は頷き会うと次の一撃を繰り出していく。ヤドリギの祝福を受けた相馬・真理(絆を結びし蛍火・b29620)は扇を広げ緩やかに踊る。暗闇を切り裂くその舞は光を収束させる。放たれた光の槍は銃弾で相殺され、弾けた光が地縛霊の歪んだ口元を一瞬映す。暗い空の下で黒衣の地縛霊と能力者達の死闘が始まった。
● 砕けて粉になったコンクリートが舞い散り、白い煙がたなびく。 空の拳銃を捨て手品の様に小さなリホルバーが黒瀬・和真(黒のレガリス・b24533)の眼前に突きつけられる。心臓を握られたと思う程の悪寒、考えるより先に身体が動いていた。体をひねり致命的な一撃を受けることは防ぐが丈夫な戦装束の上から肩口を射貫かれる。がすぐさま暖かい感触が痛みをぬぐい去って行く。 「大丈夫ですか……?」 とっさに術式を綴る手を止め、紫乃月・美桜(春を待つ桜の蕾・b13384)は呪を紡ぎ、符に込めると優しく送りだしたのだ。美桜に片手を上げて応えると和真は十字架剣を握り直し気合いを入れる。 「オレの攻撃に続け!」 頼りになる仲間達が続いてくれるのは振り返らなくてもわかっている。コンクリートの欠片を踏み砕きながら和真は地縛霊に躍り掛かる。二振りの黒影を纏った剣が黒衣の影をかみ砕く。ほぼ同時に虎のように身をたわめて隙を窺っていた樺黄・英志(白絶蛛刃・b23501)が俊敏に駆ける。 「力技は苦手なんだが、な!」 強い叫びと対照をなすように英志は軽ろやかに足で床を踏みしめる。それだけの何気ない動作で生み出された衝撃波に翻弄される地縛霊の正面に陣取ったまま和真はひょいと頭を下げる。優雅な動きでにリクが描いた魔弾が、頭上の髪を焼きそうな位近くを通り地縛霊に炸裂する。それとほぼ同時に重い斬馬刀を担ぎ上げたまま燿は軽やかに飛び上がる。落下の勢いも手伝い、振り下ろされた刀は地縛霊を叩き潰す。 「あなたの、銃と私の、この力……勝負、です……っ!」 前衛の能力者達の間を縫うように閃光が走る。真理の一撃を能力者達に翻弄されている地縛霊に回避できるはずもなく、痛手を与えたはずだが地縛霊の動きに何の遅滞もない。能力者達の猛攻を凌いだ地縛霊も反撃を開始する。 「銃が今までと違います! 気を付けて」 地縛霊の動きに気を配っていた燿が警告の声をあげる。今までより大口径の銃は前衛を無視してその後方に向けられていた。とっさに榎楠が斜線に割り込む。 嵐に翻弄される様に守りを打ち砕かれ、苦鳴を上げて膝を折る。衝撃で乱れた呼吸を整えながら『ブランニューハート』を掲げる。榎楠の強い意志を現すように燦めく刃が二度三度と弧を描く。 「これが……ヤドリギの祝福です。受け取って下さい」 さらに重ねるようにヤドリギの祝福と治癒符が飛び能力者達は体勢を立て直す。強敵な地縛霊は少し怖く美桜は緊張するが、信じ合っている皆となら、その緊張もうそのように軽くなる。美桜は箒を振るい、紅蓮の力を魔弾に込め一気に解き放った。
● 「みなさん、とっておきです!」 地縛霊が動くよりも先にヒナタは魔術師の手袋をひらめかせる。繊細な銀糸の刺しゅうに囲まれた動力炉がフル回転し、詠唱を増幅させ濃い霧を発生させる。闇の中でもなお白く、霧は流れ地縛霊を蝕む。 「さぁ、この状態でも銃を撃てますか? まぁ、撃った所であまり意味はありませんが……」 霧にまとわりつかれた地縛霊は忠告に耳を貸さずに真理に立て続けに銃弾を撃ち込むが、驚いたような声を漏らす。霧によって力を失った弾は分厚い雪を貫く事が出来ずに終わったのだ。 「私たち、八人の力が、あれば……あなたに、負けたり、なんか、しませんっ」 追撃を避けた真理が紡ぎ出すのは純粋なエネルギー。透明感ある暖かな光、それを束ね上げるは誓絆。黒衣を白く染め上げるような光を凝縮させると、リボンをたなびかせながら投げつける。地縛霊は迎撃しようと銃を撃つが力を失った攻撃を意に介さずに直進しその身体に突き刺さり、動き回っていた地縛霊の動きが止まる。地縛霊の気を引きながら回復と攻撃に獅子奮迅の働きを見せていた和真は、狙っていた瞬間を見逃さなかった。銀のチョーカーを揺らし気勢と共に地面を蹴り双剣を放つ。わずかにタイミングをずらした攻撃は十字の傷を深く深く刻みつける。 朱月桜華が閃光を跳ね返し、桜吹雪を戦場に散らす。銀に彩られた細い指で長柄をつかむと燿は漆黒を纏う。聖職服に縫い込まれた銀糸すら見えない程、全てを吸いこむような濃厚な黒影を纏った燿は、素早く踏み込むと渾身の力で逆袈裟斬りに斬りつける。重い朱月桜華を振るっても燿の態勢が流れる事はない。振り切った姿勢から両手で柄をくるりと回すと隙を窺っていた地縛霊に刃を向け、牽制する。 舞うように腕を広げリクは術式を描き出す。鮮やかな青と清廉なる白が描く舞は緩やかに優雅な動きだが、指先は複雑に空を刻み立体的に展開領域を広げていく。星のように輝く術式は一点に収縮すると、力を秘めた白銀の魔弾に変じる。 桜色の炎が箒の先に灯る。美桜は目を閉じるとその炎に意識を集中させ術式を汲みあげていく。魔弾が生み出す熱気が桜の香りをふわりと辺りに散らす。呪悠分に力を込めた魔弾が出来ると美桜は目を空ける。 リクと美桜は顔を見合わせると同時に武器を振り上げる。Red pepper of sapphireから雷の魔弾が、Riprogettazione di ciliegiaから炎の魔弾が、二重螺旋のように絡み合いながら地縛霊に突き刺さる。 ぼろぼろになりながらも地縛霊の歓喜とも取れる表情が崩れる事が無い。ある意味不気味なゴーストであるが、榎楠の冷静さが崩れる事は無い。 「人が訪れなくなった場所であっても、ゴーストが出るならば」 静止し、隙を窺っていた榎楠が地面を蹴る。一気にトップスピードまでギアを上げ、地縛霊の反応スピードを越え防御する暇さえ与えずすれ違い様に双剣を振るう。 「その喜悦を打ち砕いて、この場で完殺してみせよう」 油断無くすぐに振り向く榎楠の動きに胸元の勾玉が合わせるように揺れる。地縛霊を見る。倒れかけた地縛霊が拳銃を構え直すより早く、疾風が飛びこむ。 「時代遅れのガンマンが出る幕じゃない。早急にお還り願おうか」 よろめく地縛霊に、白虎絶命拳を放ち虎紋覚醒を連携させ様とした英志も、たたみ掛けるべきだと判断し、猫科のしなやかさで地縛霊の懐に飛びこむ。 「必殺の一撃だ、喰らえ!」 大技を連続させるために気力を振り絞り、最高純度の気を絡新婦を握る指先に集中させる。叩き付けるように触れた指先から放たれた気は、蜘蛛の巣のように経路を描き地縛霊を根本から砕き尽くす。 「西部劇は終わりだ。眠ってろ」 仲間を信じて見事な連携を取る能力者達を地縛霊の狂気は敵うはずもなく、端からボロボロと肉体を崩れさせながらよろよろと後ろに下がり、倒れる。最後に悔しそうな呻きの尾を引きながら地縛霊は転落する。慌ててかけより下を覗いた時にフードを外した顔が初めて見える。信頼し合う能力者達を羨むような表情に見えたのは、気のせいでは無いだろう。落下しながら地縛霊はどんどん形を失い、地面に落ちる前に、その黒衣ごと暗い空に溶け込むように消滅した。
● 「み、皆さん……お疲れ、サマ、でした!」 厳しい戦いをくぐり抜けた能力者達は、勝利を喜び合う。 「信じる皆さんと一緒に戦えば、やはり勝利することができるんですよね」 皆が一丸にならなければつかみ取れなかった勝利を手に入れた、美桜はそれが嬉しくて微笑む。 「皆さんと一緒に頑張れば、やっぱり大丈夫です」 「でも、みんなの、力を、合わせられるって……そうやって、戦えるのって、スゴイ、ですよ、ね!」 ヒナタと頷き合い、真理は少し高揚した様に楽しそうに言う。 「仲間と連携が上手く行かなかったらもっと苦戦してただろうし」 英志と榎楠も静かに頷く。 「でもちょっと緊張もしていたので……気が抜けちゃいました」 「疲れちゃいましたけど、何かあってもみんなで協力すれば何とかなるって事ですよね」 「どれだけ手強くとも、オレ達が力を合わせれば結果は勝利。繋がる心の力は無限だよ」 そう言うとリクは少し恥ずかしげに笑う。彼と燿の微笑みにつられるように緊張もすっかり取れた能力者達は笑顔になる。 仲間の顔を見渡せば、勝利の余韻が浮かんでいる。お互いの顔を見て、もう一度笑い合った八人は仲間達がいる結社に向かう。 信じられる仲間達との結束の力があればどんな強敵でも打ち破れる。この戦いで改めて感じた事を心に刻み込みながら。 「素敵な仲間がいるから、光一つない夜も乗り越えれる。だから、僕はきっとこれからも頑張れる」
いつの間にか雲が薄くなったのか、薄雲がかかりながらも細い、細い月が柔らかな光を放っている。 同じ空の下に集った仲間達と共に、何時ものように笑いながら能力者達は廃墟を後にし、帰るべき場所へ帰っていく。
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参加者:8人
作成日:2009/07/24
得票数:カッコいい8
えっち3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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