雷の槍


<オープニング>


 とある建物の中にある配電室。
 その中へ今、作業を行うのか、作業着を着た数名の男達が入っていく。
 その瞬間……彼等の周囲が一瞬暗転し、だだっ広い空間へと引きずり込まれていた。
 そんな彼等に向い、バチバチと音をたてながら電撃が纏う槍を引きずり、彼らへと近付く少女が一人。
 そして、彼女が走りだし、その槍を突き出した瞬間、特殊空間内に赤い液体が飛び散るのであった。

「電撃を纏った槍……厄介な武器だね」
 むぅ、と唸り声をあげながら、説明を開始する神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)。
 それによれば、地縛霊はある建物の中にある配電室に身を潜め、特定の時間内にそこへ侵入した者達を無差別に襲い、その命を奪い取るのだという。
 地縛霊の現れる時間は、午後3時〜3時15分の間だけ。
 地縛霊の力なのか、その時間は鍵が必ず開いているようだ。
 その時間内に配電室へと足を踏み入れると、地縛霊の特殊空間へと引きずり込まれるようである。
 服装は特に指定はないようであり、作業員が襲われた事自体はたまたまであったようだ。
 地縛霊に勝利するまでは、特殊空間から脱出する事はできない。
 配電室は2階にあり、建物にも比較的容易に潜入できるようである。
 中には高校生用の塾があるようであり、よほど年齢が低くなければ、疑われる事も特にないだろう。
 地縛霊は高校生くらいの少女の姿をしており、電撃を纏った槍で突き刺す攻撃、槍を回転させて稲妻の竜巻を作り出し、周囲の者達を攻撃する能力を持つ。
「みんなが安全に勉強できるようにしないといけないねっ」
 でも勉強は苦手だけど、とつけたし、苦笑いする優希。
「じゃあみんな、怪我しないでねっ」

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参加者
唯鋼・神鉄(嘯風弄月・b02177)
雛神・至高丸(神翼の剣士・b02724)
久遠寺・紗夜(光龍の蒼月姫・b05369)
祭屋・宴(真スカルカナード・b38961)
佐々木・颯太(らぶラクーン・b40604)
艮寅狼・魅龍(戦狼外道巫女・b42729)
冬木・誓護(護るべき誓いはこの心に・b47866)
神倉・紅牙(忘却の彼方より・b52223)
緋之・正義(吹き荒ぶ緋色の風・b55958)
無堂・理央(龍虎舞闘・b59341)



<リプレイ>

●侵入
 一見、何の変哲もないその建物の一室に、電撃を纏いし槍を振るう少女のゴーストが現れるという。
 その建物を利用する全ての人々の平和を守るため、彼等、銀誓館学園の能力者達はやってきた。
 今回集まった者達はほとんどが皆高校生以上だった事もあり、特に誰かに疑われる事もなく、容易に侵入する事ができた。
 まずは順調な滑り出しであるといえる事だろう。
「ふぅん。塾ってこうなってるんだぁ。みんなこーゆとこでぇ、お勉強ぅ、がんばってるんだぁねぇぃ〜」
 と、勉学に勤しむ者達に感心している様子の艮寅狼・魅龍(戦狼外道巫女・b42729)。
 彼女は塾に通った事がないようで、興味津々、といった様子である。
「この少女は、なぜ配電室に現れるのでしょうね……」
「配電室と少女って奇妙な組み合わせだよなぁ」
 うーんと首を傾げる少女、久遠寺・紗夜(光龍の蒼月姫・b05369)と、迷惑そうな表情の少年、神倉・紅牙(忘却の彼方より・b52223)。
 何故彼女がその場所に現れるのか。
 すべてが終わった時、その答えは出るのであろうか。
「それにしても、雷の槍なんてかっこいいもん持ってんじゃない?」
「そうだな、電撃の槍とか、カッコ良いことしやがって!」
 疑問を抱く者達がいる中、地縛霊の武器に対して、憧れのような感情を抱く祭屋・宴(真スカルカナード・b38961)、佐々木・颯太(らぶラクーン・b40604)。
 確かに、見た目だけをみれば、それはかっこいいといえる代物であるのかもしれない。
「………雷の槍か。タケミカヅチ然り、ゼウスの神の雷然り、雷とはいわば畏怖の象徴だ」
 しかし、能力者達にとっては他愛のないものでも、一般人にとっては恐怖の象徴となりうるかもしれない。
 そんな事を危惧している少年、緋之・正義(吹き荒ぶ緋色の風・b55958)。
「鍛冶師としては興味あるけどまぁそれはそれとして。世界の秩序と平穏な日常のため。三途までの旅路、唯鋼神鉄が案内仕る」
 興味がないわけではない……が、それ以上に重要な事がある。
 唯鋼・神鉄(嘯風弄月・b02177)は、それをよくわかっているようであった。
「何でここにゴーストが出てきたのか知らないけど、早く倒して被害が出ないようにしないとね!」
 気合い十分、といった感じの三つ編みの少女、無堂・理央(龍虎舞闘・b59341)。
 自分自身が感じた辛い思いを、他の誰かに味あわせないためにも、彼女は戦う。
「そうですね。今はただ、彼女を倒すことだけを考えるとしましょう」
 彼等に触発されたのか、メガネをかけた少年、冬木・誓護(護るべき誓いはこの心に・b47866)もまた、疑問は捨て去り、目の前にある戦いだけに集中しようという心構えとなったようである。
「さて、行こうか」
 皆の戦意が高まっている事、準備が整っている事を確認し、雛神・至高丸(神翼の剣士・b02724)はゆっくりと配電室の扉を開け……そして、能力者達は地縛霊の力によって、特殊空間へと引きずり込まれていく。
「……」
 そして、皆がハッと気づいた時、彼等の目前には、バチバチと放電を巻き起こす槍を握りしめ、仁王立ちする少女が一人、立ち尽くしているのであった。


「よーし、いくよー」
 中衛へと位置を取り、全身に虎の模様を浮かび上がらせ、黒髪は逆立ち、内にて眠っていた力を覚醒させる理央。
 彼女に続こうとする他の能力者達であったが……彼等が行動するよりも早く、地縛霊が行動を開始した。
 前へと出てきた理央へと狙いを定めた地縛霊は、彼女に向い駆け寄り、その腹部へと、電撃が宿りし槍を突き刺した。
 腹部が切り裂かれし痛み、電撃による痛みが全身を襲い、思わず顔を歪めてしまう理央。
「無堂様、すぐに回復いたします」
 そんな仲間の惨状を見て、紗夜はすぐさま救いの手を差し伸べる。
 紗夜が、理央と自分との間にハートマークを描き出した瞬間、2人に愛の祝福が与えられ、若干ではあったが、理央の傷は回復していき、その顔にも生気が蘇ってくる。
「そこのお嬢さん、あたしと遊んでくれるかな?」
 注意をひくためか、地縛霊を挑発する宴。
 彼女はロアの爪紅と名付けられた長剣を頭上へと掲げ、高速回転させ始める。
「物騒なやつだな」
 物騒じゃない地縛霊もいないか、と思いつつ、魔法陣を出現させ、自らの体に魔弾のエネルギーを逆流させる紅牙。
「一身上の都合で、あなたを処断します」
「六文銭もあらへんが、三途の川まではおくったるわ」
 更に、誓護が光り輝くリフレクトコアを召喚し、神鉄が彼岸帰航を黒く輝かせ、彼等のあとに続く。
「愛の沁みこんだバス停だ! 遠慮なく受けな!」
 仲間達が着々と強化を行っていく中、生み出した不死鳥のオーラをラヴいバス停へと宿らせて強化し、地縛霊の頭部を強打した。
 熱気とともに放たれた一撃が、地縛霊の脳天へと重くのしかかる。
「皆の勉学を妨げようなどとは無粋な奴だ。我が教育的指導をしてやろう」
 先程の呑気な様子から一変、戦闘態勢に入ったのか、口調、雰囲気といった様子が変わってしまった魅龍。
 彼女もまた、不死鳥のオーラを生み出して自分の武器へと宿らせ、地縛霊は再び、不死鳥が宿るバス停によって、その腹部を強打されるのであった。
「地縛霊の現れる時間は3時から15分までの間と言っていた……それまでに倒さなければ逃げられる、か……?」
 誰にも聞こえぬよう、そう呟きながら、至高剣 『神翼』を高速回転させる至高丸。
 地縛霊が逃げ出すのかどうかは定かではないが、どちらにしても、早く倒すにこした事はないだろう。
「俺の炎よ……燃えろ!燃えろ!燃えろ!」
 そういった事情を自然と感じ取っているのか、一気呵成に攻撃を行う正義。
 彼は真っ赤に染まった炎の球体を作り出し、地縛霊目がけて放つ。
 放たれたフレイムキャノンが地縛霊の体へと命中した瞬間、彼の体は炎に包まれ、炎上するのであった。

●決着
「お返しだよ!」
 先程のお礼だと言わんばかりに、小さな鉄片を飛ばしていく理央。
 致命傷とはならないものの、そのダメージは確実に地縛霊の体力を奪い、能力者達を勝利へと導いていく。
「マトメテ……」
 しかし、地縛霊も負けてはいない。
 槍を超高速で回転させて電撃による竜巻を作り出し、それによってその場にいた全ての能力者達を包み込み、能力者達の体へと高圧電流を流し込んでいった。
「さすがにやりますね」
 このまま攻撃を受け続ければ、屈強の能力者達といえど、さすがに耐えきれないであろう。
 紗夜は先程に引き続き、2度の攻撃を受け、一番体力が危険な状態となってしまった理央に向かってハートマークを描き、体力を回復させていく。
「でも、あたし達も負けないよ」
 未だ消えきらぬ電撃による痛みをこらえながら、地縛霊に向けて、自らの影を伸ばしていく宴。
 影は地縛霊の足元へと到達すると、掌の形へと変化し、地縛霊の体を引き裂いていく。
「電撃対決ー。なんて言ってる場合じゃねーな」
 余裕をかましていられる状況じゃない事を理解している様子の紅牙。
 彼は光り輝く球体、雷の魔弾を作り出して撃ち放ち、それが命中した瞬間、地縛霊は正義の雷によって身を包まれ、激しく悶え、苦しむ。
 電撃を操るゴーストであるとはいえ、やはり他者からの似たような攻撃には耐えられないようであり、その場に崩れ落ち、がくっ、と両膝をついてしまう。
「光よ、かの不浄を祓い、清めたまえ……!」
 さまよえる魂を正しき道へと導くため、誓護はエネルギーを凝縮させ、神々しい光を放つ槍を作り出し、メガネの奥に潜む黒き瞳で地縛霊の姿をしっかりと捉え……2、3歩助走をつけながら、勢いよく投げつけた。
 そして、光の槍は地縛霊の体へと突き刺さり……貫通していった。
「グアァァァァァ」
 絶叫しつつ、激しい放電を巻き起こしながら光に包まれていく地縛霊。
 やがて……光が収まった瞬間、能力者達は、狭い配電室の中へと……通常空間へと帰還していのだった。


「終わったね」
 緊張の糸が切れてしまったのか、ふぅー、と息を吐きだしながら、その場に座り込んでしまう理央。
 彼女は強敵と戦うのが初めてだったようなので、それも仕方のない事なのかもしれない。
「ああ、終わったな。これで塾に通ってる人らの安全は保障されたわけだな」
 もっとも、彼等ににとっての最大の敵は、勉強そのものなのかもしれないが、と言葉を続けつつ、無事に戦いを終えれた事に一安心している様子の紅牙。
「逃げられる事もなく終われてよかったね」
「そうやな。平穏な日常が取り戻されて何よりや」
 至高丸、神鉄もまた、地縛霊を取り逃がす事無く討ち取る事ができ、満足げである。
「まぁ、何にしても俺の正義を容易く貫けるはずがないからな………あっ、俺『たち』か」
 ハッとしてそう言いなおす正義。
 自分一人で戦っているのではなく、仲間達とともに戦っているからこそ、自分自身もまた、正義を貫く事ができると、彼は感じ取っている事なのだろう。
 そして、誓護、颯太はまだ雷の槍が残っていないかの確認と、地縛霊がなぜこの場所にいたのか、彼女が何者だったのか……何か手がかかりが残っていないかどうか軽く見て回るが、特にそれらしいものは何も見つからなかった。
「仕方ありませんね」
 不本意ながらも、捜索を打ち切る誓護。
「ま、ゆっくり眠りな!」
 特に残念そうなそぶりも見せず、地縛霊に対してそんな言葉を吐く颯太。
「あ、颯太ちゃん先輩、誕生日おめでとうなんだね。勝利が誕生日プレゼントです!なぁんて!まぁなんでもいいや。誕生日おめでとうー! 」
 そんな彼に向い、祝福の言葉を贈る宴。
 依頼中に誕生日を迎えた事が幸運なのか不幸なのかはわからないが、思いがけない仲間からの祝福をうけ、彼も嬉しそうな表情を見せた。
 ……仲間達が辺りを物色し、一休みしている中、紗夜はほんの少しだけ配電室の扉を開け、辺りに誰もいないかどうかを確認する。
「……どうやら、誰もいないようです。今のうちに外に出てしまいましょう」
「終わっらお腹すいちゃったぁ。なんか食べにいこぉ」
 紗夜と魅龍に促され、能力者達は配電室をあとにし、何一つ疑われる事無く廊下を通り、階段を降りて出口を潜り抜け……その建物をあとにするのであった。 


マスター:光輝心 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2009/05/20
得票数:カッコいい13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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