水の刃


<オープニング>


 とある公園に設置された噴水。
 辺りがすっかり暗くなった頃、そのすぐ側にあるベンチで、数人の男子高校生達が談笑を楽しんでいた。
 そんな彼らへと近づく、全身がびしょぬれの男が1人……。
 高校生達がそれに気づき、席を立とうとした時には……全てが遅かった。
 びしょぬれの男はいくつもの水の刃を投げつけ、少年達の体を切り裂いていったのだった。

「公園の噴水に現れる地縛霊、それが今回のターゲットだよっ」
 神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)の説明によれば、その公園はそれなりの広さを持ち、昼間は親子連れや小学生達等、多くの人が訪れるようである。
 が、夜は部活帰りの学生達やカップル達が休憩程度にやってくるのみであるらしい。
 地縛霊は深夜、中高生の男子だけを狙って姿を現し、襲いかかるようである。
 今回の地縛霊は通常空間に現れる。
 深夜とはいえ、まったく人通りがないとも限らないので、注意する必要があるだろう。
 地縛霊が出現する条件は、外見が男子中学生、高校生に見える者達が、午後8時過ぎ頃に、噴水の周りへとやってきた場合のみとなる。
 特に人数に指定はないようである。
 噴水は公園の中央付近に位置しており、外灯が設置してあるため、それなりの明るさはあるらしい。
 地縛霊は30代くらいの男性の姿をしており、全身がびしょぬれである。
 ブーメランのような形をした水の刃を作り出し、それを連続で投げつけ、周囲の者達を切り裂く攻撃、それを手に握りしめ、剣のように用い、切り裂く攻撃を行うとの事。
「みんなの憩いの場所、取り戻してきてねっ」
 そう言いつつ、よろしく、といった感じで、優希は軽く頭を下げた。
「じゃあみんな、怪我しないよう、頑張ってきてねっ」

マスターからのコメントを見る

参加者
榊・悠(アウター・b05605)
支倉・朝龍(銀糸に囚われし想いの残滓・b20581)
七瀬・瞳亜(パパラチアの魔女・b25292)
松風・笹羽(朝色の神鳴り・b31323)
パーラ・クライトン(ガトリング少女・b33716)
檜枝・氷見子(雪解けの雫・b38630)
月村・斎(閑人・b45672)
ジャック・スミス(誰がエロスだスミスだ俺は・b53905)
地炬・釧(鉄の蛇・b59735)
榮柄・黎己(蒼炎綺想・b61614)



<リプレイ>


 暗く、静まり返った深夜の公園。
 その中央に位置する噴水に現れるというびしょ濡れの少年……地縛霊。
 彼による犠牲者をこれ以上増やさないためにも、能力者達は地縛霊を打ち倒す者を選抜すると同時に、見張り役をたてる事としたようだ。
「憩いの場を血に染める地縛霊……許せませんね」
 地縛霊に対し、激しい嫌悪感を抱いている様子の榮柄・黎己(蒼炎綺想・b61614)。
 とはいえ、彼は今回、見張り役に徹する事に決めているようなので、直接、その想いをぶつける事はできないであろうが。
「不良にも地域性があるみたいっすけど、ここはどうなんすかねぇ……」
 そんな事を考えながら、公園内をパトロールし、一般人が入り込んでいないかどうかを確認してまわる地炬・釧(鉄の蛇・b59735)。
 仲間達が安心して戦いに没頭できるようにするために、彼等は精一杯、自らの役目を果たす。
 その甲斐あってか、地縛霊の出現時間が近づく頃には、公園内に人影は見当たらなくなっていた。
 一方、今回集まった10人のうち、5人の能力者達は入口付近にて待機していた。
「びしょ濡れの地縛霊ですか……何があったのでしょうね」
 これ以上頭を冷やす必要はなさそうですね、と続けるのは、大人びた容姿をもった少女、松風・笹羽(朝色の神鳴り・b31323)。
 無論、それ以上の制裁が必要である事もまた、彼女は理解しているようであった。
「俺らに歳が近い学生たちに、なにか恨みでもあるんか?」
 んーと首を捻りながら、顎鬚をさする少年、ジャック・スミス(誰がエロスだスミスだ俺は・b53905)。
 中高生……しかも男子生徒ばかりを狙う地縛霊。
 はたして、どのような理由があり、彼はそんな行動をとっているのだろうか。
「時間があれば調べてみたいところでしたわね」
 そう呟くおしとやかな雰囲気を持った少女、七瀬・瞳亜(パパラチアの魔女・b25292)。
 様々な疑問が、能力者達の頭を駆け巡っていく。
 が、残念ながら、戦闘を間近に控えた能力者達に、その事実を調べるような時間は用意されていなかった。
「皆さんの憩いの場を……取り戻してみせましょう……!」
 ぎゅっと小さな拳を握り締めながらそう決意するのは檜枝・氷見子(雪解けの雫・b38630)。
 内心は臆病であるという彼女だが、そういった素振りはまったく感じられる事はなく、その顔は微笑みに満ちていた。
「なんにしても、これ以上の犠牲者を出す訳には参りませんわね」
 携帯電話を握り締めながら、皆にそう呼びかけるパーラ・クライトン(ガトリング少女・b33716)。
 彼等は、囮役の少年達が無事に地縛霊と接触できる事を祈りつつ、パーラが握りしめた携帯に変化が起こるのをジッと待つのであった。
 もっとも、少年達にのみ敵意をむき出しにする地縛霊の元へ、複数の少女達がやってきた場合、彼がその場に居続けるのかどうかは未知数ではあったが。
 そして残りの3人、囮組はというと……。
「来たな」
 嬉しそうな表情で、揺らめく前方の空間を凝視する榊・悠(アウター・b05605)。
「何としてでも倒さなくてはならないな」
 スゥッとイグニッションカードを取り出し、戦闘態勢を整える支倉・朝龍(銀糸に囚われし想いの残滓・b20581)。
 そして、初めて学校の制服を着用し、どことなく不思議な感覚を覚えていた月村・斎(閑人・b45672)が、前方より現れる、今回のターゲットの姿を確認する。
「あいつか……」
 びしょぬれの男は、不気味なうすら笑いを浮かべながらゆっくり、ゆっくりと三人へと近付いてくる。
 その独特のオーラから、彼がこの世のものではないと確信した3人はすぐさまイグニッション、地縛霊と、囮役の能力者達による戦闘が開始された。

●戦闘開始
「お前の相手は俺だぜ」
 鬼神三鈷杵に黒燐蟲を纏わせ、黒きオーラを放たせながら、自分へと攻撃を集中させるべく、前へ前へと移動していく悠。
「キエロ……」
 彼の目論見どおり、地縛霊は悠へと狙いを定めたようで、彼へと接近し、水の刃で悠の体を切り裂いていった。
「移動しながら使えるのが幸いしたな」
 悠をサポートすべくして後を追いかけていた朝龍は、その有用性を実感しつつ、白燐奏甲を発動。
 黒き輝きを放つ悠の武器へと白燐蟲を宿らせ、鬼神三鈷杵は白と黒のオーラを纏い、悠自身の体力もまた、完全にとはいかないが、回復していく。
「何があったかは知らないが、地縛霊なんて良いもんじゃないだろ」
 彼の行動、存在を戒めるかのように、地縛霊に対してそんな言葉を吐きながら、斎は悠と同じく黒燐奏甲を発動する。
「いくぞ」
 そして、悠は鬼神三鈷杵に妖気を凝縮させ、紅蓮の炎を作り出し、地縛霊の胸部へと、その小さな刃を突き刺していく。
「ヌゥッ」
 すかさず、水の刃で悠の体を切り裂き、反撃を行う地縛霊。
 両者ともに、体に受けたダメージは大きかったようで、互いにフラフラとよろける。
「さすがに強いな」
 引き続き、悠を白燐奏甲にて回復させながら、地縛霊が強敵である事を改めて実感する朝龍。
「さあ、良い子は眠る時間だ」
 禍々しく、怨念の込められた漆黒の瞳で、ギロッ、と地縛霊を睨みつける斎。
 その瞬間、地縛霊の体は内部より切り裂かれていき、さすがの地縛霊も、思わず自らの体をおさえつけ、痛みをこらえる。
「一気に決めるぞ」
 アビリティが使えない状態となった悠は、鬼神三鈷杵、独鈷杵を駆使し、地縛霊の体を数度、突き刺す事によって、若干ではあるが、確実なダメージを与えていく。
 しかし、地縛霊もまた、すぐさま水の刃で薙ぎ払い……悠の体力は限界へと近付いていく。
「回復が間に合わないか……」
 歯がゆい思いをしつつも、手をとめるわけにもいかず、回復に徹する姿勢を続ける朝龍。
「悠、朝龍、なんとかこらえるんだ」
 仲間達が来る事を祈りつつ、再度、強靭な意志を秘め、禍々しきオーラを放つ瞳で地縛霊を睨みつけ、強烈なダメージを与えていく斎。
 悠と斎の攻撃により、地縛霊もまた、かなりのダメージを負っていた。
 このまま一気に押し切る事ができれば……と、誰もがそんな事を思った時、
「お待たせしました!」
 入口にて待機していた仲間達が、異変を察知してやってきたのであった。

●決着
 ようやく、すべての戦闘メンバーがそろった能力者達であったが……地縛霊の様子が何やらおかしい。
「……チガウ」
 やってきた能力者達を見渡し、そう一言呟く地縛霊。
 それもそのはず、彼が狙うのは中学、高校の男子生徒達なのだ。
 ターゲットになりえない少女達が5人もやってくれば、戸惑うのも当然といえるだろう。
「殿方ばかりではなく、こちらのお相手もして下さいまし?」
 そんな事はお構いなしに、笹羽は自らの体に魔弾のエネルギーを逆流させ、前方の空間へと魔法陣を描き出していく。
 悠は引き続き鬼神三鈷杵にて攻撃を加えていくが……先ほどとは違い、地縛霊が反撃を行う素振りは見せず……それどころか、彼は噴水の方へと向かい、移動を開始しだした。
 どうやら、自分の狙うべく相手ではない者達が出現した事により、戦闘意欲が消え去り、その姿をも消し去ろうとしているようである。
「に、逃げていきますよ」
 地縛霊の思いがけない行動に慌てつつも、仕方なく、氷雪を見に纏い、雪だるまの姿へと変身していく氷見子、そして万が一を考え、悠の回復を行う朝龍。
「ちっ……早くケリをつけないとな」
 スペードを頭上へと持ち上げて高速回転させながら、短期決戦を挑む必要がある事を認識するジャック。
 このまま地縛霊を取り逃がしてしまえば、なんのために見張り役を2人もたてたのか、なんのために囮役の者達が頑張ったのかがわからなくなってしまう。
「じゃあな」
 しかし、そんな状況を打破したのは、地縛霊に対し、禍々しき視線を送り続けていた斎であった。
 背を向け、逃げ去っていく地縛霊へと突き刺さる呪いの魔眼……。
「グゥゥゥゥ」
 激しく、悶え苦しみながら、その場へと倒れこんでいく地縛霊。
「……終わりましたわね」
 崩れゆく地縛霊の姿を見ながらそう呟き、イグニッションを解除していくパーラ。
 彼女の言葉どおり、地縛霊はゆっくりその姿が薄れていき……やがて、完全に消え去った。
「人を傷つけた事は許せませんの」
 瞳亜はそんな言葉を投げかけながら、イグニッションカードをしまいこみ……能力者達は、見回り組に勝利の報告を行うべく、歩きだすのであった。


 若干、危なっかしい場面はあったもの、どうにか、戦いは能力者達の勝利に終わった。
 先程、あれだけ騒がしかった噴水広場の前も今はシーンと静まり返り、水の流れる音だけが、小さくその場に響き渡っていた。
「私も、お散歩しようかな……部屋に閉じ篭るだけじゃなくって……」
 しばしの沈黙の後、微笑みを浮かべつつ、氷見子がそう呟く。
 色々な意味で、今回の依頼は彼女にとって、いい経験となったようである。
「何があったかは気になる所だけど、それは俺の仕事じゃないな」
 たとえ地縛霊にどれだけの事情があろうとも、斎に……能力者達にできるのは、ただ彼等を打ち倒し、正しき場所へと送り届ける事だけである。
「厄介な敵でしたが、これで公園に平和が戻りますね」
 噴水を見つめながらホッと安堵する黎己。
 厄介な敵であったからこそ、それを打ち倒した時に得られる充実感もまた、大きいのかもしれない。
「そうだな、これで憩いの場が恐怖に染まることはなくなるだろうが……」
 黎己の言葉に頷きつつも、ゴーストとの戦いは、これからも果てる事無く続いていくのだろうな、と、悲しげな感情を抱く朝龍。
「一般の人たちが巻き添えにならなくて何よりでしたね」
 見張りを引き受けた甲斐があったな、と満足げな表情の釧。
「あの世で悔い改めるが良いですの、そして来世ではこの様な事がないように祈っていますわ」
 消え去った地縛霊へと向け、そんな言葉を贈る瞳亜。
 果たして、彼女の願いが届くのかどうか……それは、神のみぞしる、といったところだろうか。
「ごめんなさいね」
 パーラもまた、どこかで引っかかる部分があったのか、そう謝罪の言葉を贈る。
 どういった理由があったとしても、ゴーストとなってしまった以上、それを放っておくわけにはいかない。
「……ふぅ」
 悠は喉が乾いたのか、噴水の水で喉をうるおす。
 囮役を引き受け、なおかつ、攻撃を受け続けた事もあったためか、心底疲れを感じているようである。
「さて、それでは帰りましょう」
 皆に向ってそう呼びかけ、出口へと向かい、どことなく気品を漂わせながら歩き出す笹羽。
「そうだな。さっさと帰るか」
 その後にジャックが続き、他の能力者達も彼等の後を追う。
 こうして、その公園に潜む地縛霊は打ち倒され、平和が取り戻されたのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2009/05/23
得票数:カッコいい14 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。