ただし−−


<オープニング>


「ううっ……俺は生きる価値の無い人間なのか? 神から見放された存在なのか?」
 一人の冴えない中年男が嘆いていた。
 彼の名は田中信男(34)、十年近く勤めていた会社を解雇され、妻子は実家へ帰り、今ではボロアパートでの一人暮らし。
 嘆きたくもなる。
 ――トントン。
 不意に肩を叩かれて顔を上げると、そこには爽やかな笑顔を浮かべる一人の青年。
「人生をやり直すのに、遅すぎるなんて事は無いんですよ」
「そうですとも! 諦めなければ、必ず努力は報われます」
「そうよ、またすぐに良い仕事が見付かるわよ!」
「出て行った奥さんやお子さんだって、戻ってきますって!」
「哀愁を感じさせるおじさまって素敵よね……慰めてあげたくなっちゃう♪」
 気付けば、美男美女達は信男を囲んで口々に励ましの言葉を掛けてくる。
「君達……そうか、そうだよな……嘆いてるばかりじゃ何も変わらない。自分で――」
 温かい励ましの言葉の数々を受け、信男は嘆くのを止めて立ち上がる。
 が、そこで彼は初めて気付く。男女は皆プラカードを手にしており、そこにはこう書かれていたのだ。
『※ただしイケメンに限る』
 ――と。

「酷い話ね……」
 悪夢の概要を説明してから、柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)は溜息混じりに呟いた。
 田中信男と言う男性が、アパートの自室において来訪者ナイトメアの悪夢に囚われているのだ。
 それも、性質の悪い悪夢に。
「このまま悪夢を見続けていたら、田中さんの精神は参ってしまうわ。ナイトメアの思惑通りになってしまう前に、彼を助けて上げて欲しいのよ」
 幸い、アパートへの侵入・脱出には気を遣わなくて良いと莉緒は付け加えた。

「まずは悪夢に入って、田中さんを慰め――るフリをしながら苛めている美男美女集団をやっつけて頂戴」
 彼らは悪夢の衛兵なので、見た目に拘らず倒してしまって良いという事だ。
「ただし、男女ともかなりの美形揃いだから注意してね。油断してると思わぬ攻撃を受けるわよ」
 戦闘の間も、隙あらば信男の精神を痛めつけようと口撃を加えてくる事が予想される。
 戦いながら余裕があれば信男を励ましたり、勇気付ける言葉を掛けてあげるとその後の為にも良いかもしれない。
 もっとも、能力者達の励ましの言葉も場合によってはプラカードに記された文字によって逆効果にされてしまう危険がある。言い回しにも注意が必要だ。

 何しろ、美男美女集団を撃退した後は、信男を立ち直らせてあげなくてはならないのだ。
「田中さんはかなりの人間不信に陥っているから、あなた達が励ましてもすぐには聞き入れなくなってる可能性が高いわ」
 しかも、能力者達は見た目もかなりレベルが高い。今の信男にとっては、コンプレックスを刺激される相手にもなりかねない。
「難しいと思うけど、何とか彼を傷つけないように、勇気づけて欲しいのよ」
 彼が自力で立ち上がれなければ、再び同じ悪夢に囚われる可能性も否定できないのだ。

「それじゃ、ティンカーベルの粉を渡しておくわね。夢の中では理屈の通らない事、不思議な事が幾らでも起こり得るわ。その一方で、夢の中で重傷を負ったり命を落とせば現実でもそうなるから、注意してね」
 そう言うと、莉緒は能力者達を送り出す。
「それじゃ、頑張ってきてね!」

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参加者
平良・虎信(荒野走駆・b15409)
源真・神那(朱凰の力宿す紅蓮姫・b17752)
ツァオ・ウィンスター(機工道化・b18513)
マロン・ビネガー(ライジングコメット・b32320)
フィル・プルーフ(響葬曲・b43146)
ピケ・エゴルフ(ソウルハッカー・b44670)
リラローズ・マグスレード(紅き月下に舞う薔薇小姫・b52012)
真鍋・真白(漏れる心・b56821)



<リプレイ>


「34歳なんてまだまだ若いんだから、新しい恋も見つけられるって!」
「そうそう、自立した大人の男性ってモテるよー」
「や、やめてくれ……もうよせ……!」
 能力者達が田中の夢の中へ入ると、すぐさまそんな声が耳に入ってきた。
 若い男女が中年男性を囲んで、口々に励ましている様だ……が、手には『※ただしイケメンに限る』の文字が記されたプラカード。要するに、一旦持ち上げておいて高い所から落とす手法だ。
 そして哀れな田中はナイトメアの思惑通り、地面に蹲り頭を抱えて、ただ弱弱しく震えている。
「お止めなさい。リラ」
 フィル・プルーフ(響葬曲・b43146)の声に応えて、蜘蛛童のリラがそんな若者達の間に分け入る様にして田中を庇おうとする。
「なんだお前達は?」
「美醜などはその方の主観でしかありません。十人十色、みな違うのです」
「そんな事アンタが言っても説得力ないしー。ね、おじさま」
「う、ううっ……許してくれ」
 フィルの正論も、若者達……そして田中には通用しない様だ。
 確かに彼女ほど容姿端麗では、にわかには説得力を持ちにくい言葉かも知れない。
「傷ついた人の心を蹂躙するような行ないなど、美しくありませんわね……」
 そんな若者達の前に立ち塞がるのはリラローズ・マグスレード(紅き月下に舞う薔薇小姫・b52012)。
「蹂躙するなんて人聞きが悪いなぁ。僕達はこのおじさんを励ましてただけじゃないか」
「そうよそうよ。ほらおじさん、歳なんて関係ないってば」
 言いながらも、プラカードで田中の背中を突付く。
「貴様等、いい加減にせんかッ!」
 平良・虎信(荒野走駆・b15409)は一喝するなり、プラカードを奪いとってバキリと折る。
「お前も、さっさと立ち上がれ!」
「な、何なんだ、ほっといてくれ……私の事は」
 そのまま虎信は田中を強引に立ち上がらせると、若者達の輪から引っ張り出して遠ざける。
「おい! そのおっさんは俺達の獲物だぞ」
「それは少し違うな……君達こそボクの獲物だ」
「な、何……?」
 田中を護るべく立ち塞がるのはピケ・エゴルフ(ソウルハッカー・b44670)。
 そして彼女の使役ゴーストであるシャーマンズゴーストのルーツは、ジリジリと迫り来る若者達の前へ進み出る。
「やれやれ、そんなにいろいろ言われるのが怖いのかネ〜?」
 耳を塞いだまま震えている田中をサングラス越しに眺め、小さく肩を竦めるツァオ・ウィンスター(機工道化・b18513)。
 見た目が冴えない事は本人が嫌と言うほど知っている事だし、それを今更指摘されたくらいではここまで落ち込むことも無かったかもしれない。
 ただ、どん底まで落ちていた精神状態で掛けられた温かい言葉、それに縋ってもう一度立ち直ろうとした刹那に再び突き落とされた事で、かなりのダメージを受けたのは間違い無さそうだ。
 蜘蛛童のナナ公もそんな田中を護るべく、迫り来る若者達の矢面に立つ。
「じゃあ俺達の代わりに君たちがそのおじさんを励ますのかい? 何ならこのプラカード貸して上げようか?」
 能力者の乱入に最初は驚いた様子だった若者達だったが、調子を取り戻したのかニヤニヤと笑いながらそんな言葉をかける。
 田中も、また助けるフリをしてまた裏切られるのではないかと疑心暗鬼に陥っている様で、一向に顔を上げようとしていない。
「まぁこんなプラカードを持つまでもないか。世の中見た目が全てだもんなぁ? ハッハッハ!」
 ――ドカッ!
「じゃかぁしい。黙らんかい、おんどりゃあ。ええ加減にしくさらせ?」
 朱凰炎を地面に叩きつけ、啖呵を切ったのは源真・神那(朱凰の力宿す紅蓮姫・b17752)。
「美男美女? ふっ笑わせんな。腹黒の醜さが言葉に滲み出とるわ」
「な、何よ……」
「本当の美しさ、は……心の美しさ」
 こくりと頷きながら言葉を引き継ぐのは、マロン・ビネガー(ライジングコメット・b32320)。
「んだとぉ! 俺達はどこからどうみたって美男美女だろがぁ。大体俺達が醜いっていうなら、そこの中年親父はどうなるんだ?」
 若者達はしかし、自分達の心の醜さを自覚する事無く田中への悪口を一層激しくさせるばかり。
「ひ、酷い酷い酷いっ!! わざと傷つける様に言葉を使うなんて許せないっ!! 絶対にぶっとばす!!」
 そんな悪口を掻き消す様に、声を上げたのは真鍋・真白(漏れる心・b56821)。
「あぁ? 生意気なガキどもだ。おやじ諸共やっちまえ!」
 このままではねちねちと田中を苛める事も難しいと判断したのか、シビレを切らした若者達は一斉にプラカードを振り上げ、襲い掛かってきた。


「リラ、お願いね」
 真紅の闘気がリラを包むと同時に、空中に放たれる蜘蛛の糸。
「う、わっ……な、なんだこれっ。解けよっ!」
 田中へ迫ろうとしていた若い男の一人が糸に絡め取られて動きを奪われる。
「容赦は致しません」
「ぐうっ!!」
 フィルの手から放たれた黒い弾丸が、更に別の男を撃ち抜く。
「お前ら、そんなメタボなりかけのおっさんが好みかよ。そんなのより俺の方がずっと」
「……少し、お静かになさって下さいます?」
 優男の言葉を遮ったリラローズの腕が上がると同時に、無数のコウモリがその男に群がる。
「ひっ!? と、取って! 取ってえぇーっ!」
「『いけめん』だろうと何だろうと、頑張ろうとしている人の邪魔をするのは最低の行いですわ」
 吸血コウモリに集られている男に彼女の言葉が聞こえたかどうかは不明だが、他の若者達は一層激昂して襲い来る。
「男の見栄えは外見ではないッ! 人生の苦を味わえば、綺麗な顔のままではいられぬわ! 今は落ち込んでいても、酸いも甘いも噛み締めたこの男の方がッ! 貴様等なんぞより、数倍イカスぞッ!!」
 ――ドガッ!
「ごふっ!!」
 草食系イケメン男子を蹴り飛ばしながら声を張り上げる虎信。
「っ……」
 ずっと顔を伏せたままだった田中も、これには思わず顔を上げる。
 今でこそ沈んだ生活を送っている田中だが、幾度と無く人生の栄光と挫折を噛み締めながら年輪を重ねてきたと言う自負はある。
 そして、田中がこの場に居る誰より唯一勝っている要素がそこだと言っても過言では無いだろう。
「ボクも君達にはさっぱり魅力を感じないな……フン。イケメンに限るというならもっとマシなヤツ用意してこい」
 ――バキッ!
「ぎゃうっ!?」
 ピケの放った雑霊弾がプラカードを貫通し、モデル体型の若い女に命中する。
「な、なんだと……良く見ろ、俺達の外見は完璧だ!」
「ルーツとは比べるまでもないね」
「……ルーツ? こんなデカい鳥みたいな奴のどこが俺達より――ぎゃあぁぁ!!」
 外見には絶対の自信を持っていたらしいイケメンはルーツを指差して抗議するが、答えを得るより先にルーツの火炎に包まれる。
「私たちの中デハ、ノブオの方が人気ネ」
「有り得ない! そんなオヤジが、俺達より良いって言うのかよ!」
 ――ヒュッ。
「ぐわあぁっ!?」
 ツァオは返答の代わりにナナ公に闘気の鎧を纏わせ、目の前に居たイケメンに毒の牙を突き立たせる。
「わ、解ったぞ……お前達あれか、見た目より金で男を選ぶタイプなんだな? 残念だけどそいつはリストラで会社を首にされて家族にも見捨てられたただのおっさんなんだよ! つまり一つも良い所のないクズさ!」
「……」
「ヒャッハハハ! どうだ、幻滅したか? 何だったら今から俺達に乗り換えても良いんだぜ、お嬢ちゃん達ぃ」
 耳障りな声を上げながら笑う男。神那はただ黙ってそれを聞いていたが、不意に顔を上げる。
「……てめぇらの血は何色だぁ、ああん? 歯ぁ食いしばれーーー」
 ――ドガァッ!
「げぶうっ!?!」
「体より、心の痛みの方がずっとずっと重いんやでぇ。こんなんではまだまだ足りひん。その身にしかと刻みやっ」
「ちょ、待っ……」
 ――どかっ、ばきっ!
 馬乗り状態になって拳を振り下ろす。その姿はまさに鬼神そのものだった。
「まだ34歳の人に『おじさま』は失礼だよ」
「……は、はぁ?」
 神那の豹変振りにあっ気に取られていた若者達だが、マロンの言葉を聞いてようやく我に帰る。
「おじさんをおじさんって呼んで何が悪いのよ。そんな奴、中年のくそ親父じゃん」
「気品の欠片も無い人達……後、長身長髪眼鏡のツンデレ男もいないし」
 容赦なくダメ出しするマロン。
「……別にお前の為に眼鏡を掛けた訳じゃない。妙な勘違いはするなよ」
 長髪の男が胸ポケットから眼鏡を取り出し、気障な仕草でかけながら言う。明らかにマロンをピンポイントで狙ったキャラだろう。
「……悪いけど、任務だから」
 ――ゴォォッ!!
「ひえぇえーっ!」
 見た目的にはともかく、魅了されるほどの相手でもない。
 マロンは吹雪の竜巻を起こすと、眼鏡男も含めて若者達を一気に飲み込ませる。
「そ、そんな小汚い中年のどこが良いんだよ……俺達の方がずっと格好良いだろ……」
 満身創痍の若者達は、尚も田中を傷つけようとする。
「そ、そうだろ? そこのお嬢ちゃ――」
「イケメンだから何じゃい! ラーメン食べたいっ!」
 ――ドスッ!
「ぎゃわあぁっ!」
 この時真白のツインネックギターに宿ったのは、見た目の良くない者達の凝縮された怨念だったのかも知れない。
 ともすれば僻みと言えなくも無いその強力な念は、イケメンを瞬時に貫いた。


 美男美女達は残さず蹴散らされた。
「あははーすまんなぁ。つい暴走してもたわ……さて、後は田中はんやね」
 神那ももとの調子に戻って言う。
「助けてくれた事には礼を言うよ……でも、ほっといてくれ……」
 田中は、能力者達が自分を助けてくれたという事は理解しながらも、やはり若く容姿端麗な能力者達を全面的に受け容れる気分にはなれない様だった。
「田中様はこの子を……リラをどう思いますか?」
「え? ひっ、く、蜘蛛?!」
 フィルの声に振り向いた田中の目の前に居たのは、蜘蛛童のリラ。
「怖い、不気味……とお思いになられるかもしれませんね……。ですが、そんな風に見られてしまってもわたくしはリラが大好きです。外見など関係ありません。ともに過ごし、ともに闘ってきたリラだから好きなのです」
「……し、しかし……」
「田中様の奥様は、田中様のお顔だけが好きだったのですか? 田中様もお顔だけで奥様をお選びになられたのですか?」
「い、いや……それは……」
「きっと、そうじゃありませんよね……♪」
 フィルの説得を聞いて、田中は思案げな様子で再び俯く。
「見かけが良いから、世の中で成功する訳ではないことも、私のような子供より遥かに経験豊富な貴方は、既に理解されておりますでしょう」
「それは解っているさ……でもね、今の私は見た目どころか……仕事も家族も……」
「今の自分を駄目だと思っていたとしても、『今』が田中様の全てではありませんの。過去を嘆くより、自分に出来る事は何か、を探してみませんか?」
 自虐的な田中の言葉を遮り、リラローズはそう促す。
「だが、私に出来る事なんて……上司も妻も子供も愛想を尽かした様な私に……」
「誰かの為ではなく、昨日よりも明日はもっと自分の事を好きになれるように……」
「自分の事を……?」
「あぁ、大体だな、顔面やら何やらは個性だろう! 自分の顔に先ず自信を持つのだ」
 再び威勢良く励ましに掛かるのは虎信。
「じ、自信なんて……持てる訳無いだろう」
「奥さんいる身で贅沢な悩みを持つじゃないか。深刻なブサイクは君くらいの歳でも余裕で独身なんだぞ」
 上を見ればキリは無いが、下を見てもキリはない。
 自分がどん底の様な錯覚を抱いている田中へそれを告げるピケ。
「それに顔だけではない! 妻も子供もいる者が、こんな程度で背中を曲げてどうするのか! 萎びた状態の夫を見て、妻が喜ぶか? 落ち込んだ父親を見て、子供が喜ぶか?」
「その妻も子供も私の元を去っていったんだぞ……」
「仕事をするにしても妻子を振り向かせるにしても、まずお前が立ち上がらねばならん! 己の路とは自分で切り開くモノだ!」
「……まず、立ち上がる……?」
「そうや、あんなアホどもなんかに負けたらあかんがな。まだまだこれからやんか。どんな仕事やかて、こつこつ真面目に働こうと言う気があったら、家族かて戻ってくるがな」
「……」
 神那の言葉に顔を上げた田中は、周囲をきょろきょろと見回す。
「プラカードなんて無いよ。ほら、こんな外見の人でも普通に生きてるから」
「うわっ」
 田中の肩を叩きながら告げたのは、雪だるまに扮したマロン。
「奥さんやお子さんとは連絡取ってるの? 話し合った方が良いよ」
「……」
 無言で俯く田中。
 妻子に捨てられたと言いながらも、実際には自ら殻に篭って妻子を遠ざけてしまった部分もあったのかも知れない。
 能力者達の説得を力に前へ進むのか、それとも立ち止まってしまうのか、岐路に立ち惑う様に宙を彷徨う田中の視線。
 それが彼を見つめていた真白の視線と、一瞬交錯する。
 田中の悩みや苦しみについて、能力者達が全てを理解しているという事は有り得ないだろう。心からの励ましであっても、ともすれば偽善、自己満足……そんな風に思われてしまう危険もある。
 言葉を操る一族の血を引く彼女は、十分過ぎるほどその事を理解していた。
 だからこそ、たった一言に自らの想いを篭めた。
「負けないで……!」


「これでこの男も二度と悪夢に囚われる事はあるまい。素晴らしい、流石は俺様、そこに痺れて憧れて良いッ!」
 田中の部屋へ戻った能力者一行。虎信は一仕事終えた自分を褒め称える。
「……良いよね、ミントの香り」
 間も無く目を醒ますであろう田中の為に、マロンはアロマランプを灯す。
「サングラス掛けると、意外にいけるかもしれないネ」
 戯れにサングラスを田中に掛けさせてみたツァオは、冗談なのか本気なのかそんな事を呟く。
「奥さんやお子さん、戻って来られるでしょうか……」
「どうかしらね、全ては田中様次第……かも知れませんわ」
 大分寝顔は安らかになったが、それでも苦労でやつれた様子の田中を見つつ、言葉を交わすフィルとリラローズ。
「……戻ってくるんちゃうかな」
「最後に決めるのは自分さ。できるだろ? ……男ならさ」
 神那とピケの言葉に根拠は無いが、そう願いたいものだ。
「さぁ、長居は無用ね。行きましょう」
 真白はテレビの上に伏せられていた家族写真をそっと元に戻し、一行は部屋を後にした。

 見た目の良し悪しが人の人生を左右する事は、確かに有る。けれど、それだけが人の人生を決める事は無い。
 その事に気付き、前向きに生きてゆく事が大事なのかも知れない。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/06/06
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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