修学旅行2009〜湯の町道後観光ツアー


   



<オープニング>


 銀誓館学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
 今年の修学旅行は、6月24日から6月27日までの4日間。
 この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。

 中学2年生の修学旅行は、四国四県を巡る旅です。
 徳島県で鳴門の渦潮を見学し、香川県ではうどんを食べ、愛媛県では今治市などを観光、高知県では四万十川でアウトドアを楽しみます。
 宿泊地である琴平温泉と道後温泉もとても魅力的です。
 さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!

 湯の町、道後。
 四国・愛媛県松山市に存在するこの道後温泉は、開湯三千年といわれる日本最古の名湯である。
 町のほぼ中央に位置する道後温泉本館は、明治時代に建築された公衆浴場であり、現在国の重要文化財に指定されている町のシンボルである。
 かの文豪、夏目漱石もこの温泉の常連であり、小説「坊っちゃん」の中にも描かれている。町の至る所で坊っちゃんの名を冠した物、場所を目にするのはその為だ。
 また湯上りあとには、商店街でお土産を探したり、いよかんソフト、じゃこ天などのご当地グルメに舌鼓を打つのも良い。
 本館からは人力車も出ており、明治時代に思いを馳せながら町を行くのも一興だろう。
 風情と活気に溢れた町並みは観光する者の目を存分に楽しませてくれる筈だ。

「いよいよ修学旅行ね……楽しみだわ」
 この時期、中学二年生は間近に迫った修学旅行に心を躍らせて居る者が殆どだが、柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)も例外ではなさそうだ。
「良いわよね、温泉って。もちろん温泉に入る事自体も素敵だけど、温泉町独特の雰囲気って言うのかしら、あれがまた良いのよ。……ちょっと、何が『年寄り臭い』よ!  こほん……まぁとにかく、自由行動の時間も多いし皆でワイワイ行った方が楽しいわよね?」
 一緒にいきましょう、と言う事らしい。

「そうそう、旅先で体調を崩したりしない様に、きっちり体調は整えておかないとね。せっかくの修学旅行だもの、思い切り楽しみましょっ」

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参加者
NPC:柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)




<リプレイ>

●男湯女湯、神の湯霊の湯
「莉緒ちゃん、千鶴ちゃん、二人とも背中を流してあげますのよ」
「い、良いわよそんなの」
「良いから良いから」
 やや強引に椅子に座らせると、背中を流し始める幸奈。
 最初は普通に流していたのだが、やがて瞳を光らせる。
「隙ありですの!」
「殺気?!」
 危険を感じ取って間一髪逃げる千鶴。
 ――こちょこちょ。
 脇をくすぐるのが幸奈の狙いだった様だ。
「ひゃぁっ!? ……こ、こらぁっ! 待ちなさいっ!」
 追いかける莉緒と逃げる幸奈。
「騒いでないで大人しく入りなさーい」
「うっ……済みません」
 先生からお叱りが飛ぶが、幸奈は湯船へ潜って難を逃れる。さすが忍者だ。
「やはり、温泉は良い物で御座るなぁ」
 一方、千鶴はゆったりと温泉を満喫したのだった。

「事前にガイドブックで調べてみたけど、実物ってこんな感じ……」
 霊の湯では、紗々とエレナがゆったりと湯船に浸かっていた。
「ほんとね、歴史を感じるわ……うわ、紗々ちゃん細いわね。肌綺麗ね」
「え? そ、そうかな」
「そのうちに絵のモデルになって欲しいかも」
「え? えええ?!」
 美しい物は創作のインスピレーションを刺激するのだろうか、しかし紗々は湯に入ったばかりなのに真っ赤になっている。
 のぼせてしまわなければ良いが。

「はぁ。極楽極楽」
「はぁ……極楽、極楽」
 こちらは『坊っちゃん』にちなんで「泳ぐべからず」の注意書きがなされた男湯。ヒナタとイグニスが偶然同じ感想を漏らす。
「日本人に生まれて一番良かった、と思う瞬間ですね。次点で和食ですけど」
「なぁに、日本人でなくとも温泉は良い物さ」
 シュヴールも欧州出身だが、温泉の魅力は十分理解出来る様だ。
「観光や土産探しもいいけど、こうやってゆっくり過ごすのも旅の醍醐味だな」
 中学生の男湯とは思えない落ち着きである。

●道後温泉迷宮
「これだけ広いと迷っちゃうよネ〜」
「まさかぁ、子供じゃないんだからそんな……」
 風呂上りのアリスと莉緒は、本館内部を探検する事に。
「あのあの」
「ん?」
「迷子になっちゃったんですよ〜〜」
 通りかかった二人に泣きながら訴えるのは真莉亜。早速遭難者だ。
「大丈夫、ボク達と一緒に行こうヨ」
 そんな訳で真莉亜を加え、三人で見学する事に。
「おおきくて泳げるくらいのお風呂っていいよね〜」
「そうだけど、ダメよ泳いじゃ……あら、天元寺さん?」
「あ、莉緒ちゃん! 階段どっちだっけ!?」
 三人が次に出会った遭難者は麻優里。
「莉緒ちゃん探してたから丁度良かったよ」
「わたし達もね、これから休憩所に行って涼もうと思ってたのよ」
 麻優里を加え、道連れは四人に。
「なんだかレスキュー隊みたいだネ」
「マコーニーさん目立つから丁度良いかも?」
「背が高いからかナ? それとも金髪が珍しいのかナ?」
「うーん……それもあるけど」
 外国人の美少女が浴衣姿で居れば、注目が集まるのはいわば必然である。さっきからやけに一般客達の視線が集まる。
「いや、読んだことねぇけどよ。まぁあれだ、いい趣味してるぜあんた……あれ、ここどこだ?」
 と、そんな一行の前、坊っちゃんの間から出てきたのは往人。彼も例外ではない様だ。
「安心して、ボク達が来たからにはもう大丈夫だよ!」
 そんな訳で住人も救助。
「えーと、こっちに又新殿があるんだっけ?」
 ――ゴチ!
「っ〜……」
「どうしたの?」
 一行が更に館内を歩いていると、柱の近くで蹲っている朔羅に出会った。近寄って声を掛ける麻優里。
「ちょっと浸かり過ぎて湯あたりを〜」
「じゃあボク達と一緒に休憩所にいこうヨ」
「うん、それが良いわ」
 この後、幸い一行は二次遭難する事無く、休憩所へとたどり着く事が出来た。

●大広間で涼み
「柳瀬、そのなんだ、ソフトボール大会では世話になったな」
「んー、結構打たれちゃったわ。特に後半ね」
 大広間で涼んでいたみなとは、クラスメートの莉緒を見掛けて声を掛ける。
「改めてクラスメイトとして、よろしく頼みたい。頼りにしてるぞ」
「な、何よ急に改まって。こっちこそ頼りにしてるわ」
 普段何気ない関係のクラスメート同士の友情を深めるにも、修学旅行は良い機会かもしれない。

「(湯上りのこのひと時、最高ですね……)」
 うちわ片手にリラックスしているのはラウレス。
「あの方と来られたら良かったのですが……ああ、でも混浴じゃないんですよね……って何を考えてるんでしょう」
 一層顔を赤くしつつ、暫し離れている恋人の事なんかも考えていたり。青春である。

「流石にちょっとのぼせましたわね……でもとても良い湯でしたわ」
 霊の湯、神の湯とはしごしてきた蓮は、スダレ越しに吹き込んでくるそよ風で体をクールダウン。
「皆さんは甘味処めぐりに? 行ってらっしゃいませ」
 自分も後で行ってみようか、先に出てゆく皆を送りつつ地図をチェックするのだった。

●湯の町観光
「からくり時計が鳴るまで、もう暫くありますね。それまでお土産探しでもしましょうか……」
 本館から出てきた結奈は、時計を見て少し考える表情。
「凄い、人力車があるんだ! 乗ってみたいな……」
 一方、迦凜は人力車を見上げて思わずうずうず。
「じゃあ、皆で人力車に乗ってちょっと回ってみる?」
「うむ、そうしよう」
 莉緒と桜も乗り気の様子。
 温泉を出た生徒の多くは、人力車で町を回る事にした様だ。

「松山に行ったらやっぱり『坊ちゃん団子』は必須ですよね。一六タルトもいいけどね」
「折角の旅行なんだし、ここにしか無い物とか記念に買いたいよね」
 人力車から町並みとガイドブックを見比べ、あれこれ提案する結奈。迦凜もお土産購入には糸目をつけない覚悟の様子。
 食べ物だけでなく、この地ならではの工芸品等も多く並んでいる筈だ。

「風凪さんまたちょっと背伸びた?」
「クラスが変わって大分経ったからの。しかしスタイルは莉緒殿が……」
「そんな事ないってば」
 と、人力車に乗りつつガールズトークに花を咲かせているのは桜と莉緒。
 莉緒にとっても、クラスが変わっても友達で居て貰えると言うのは幸せな事だ。

「わ……結構高いんです、ね……眺めは良いです、けれど……」
「心配ない。ゆったり動く乗り物だからな」
 人力車の座席の上、少しおっかなびっくりの雨兎。隣の真祐斗が安心させる様に告げる。
「……ほんと、ゆっくりとした速度が、段々なんだか心地良く……こう言うのも、良いですよね」
「このような風情ある町並みを巡るには、人力車が一番相応しいな」
 近代的な乗り物には無い趣を、存分に満喫する二人だった。

「いい景色ね。乗り心地も良好……ふふ」
 人力車から少し優雅な気分で街並みを眺め、ご満悦のスカーレット。
「日本の街づくりは西洋にはない趣がありますね」
 ドルミエンテも初めての経験と言う事で、今回の修学旅行はかなり楽しみにしていた様子。
 鎌倉も歴史ある街だが、此処ではそれとはまた別の趣を感じる事が出来る筈だ。
「本当に明治時代に来た気分なのですよぉ〜。どうせなら、着物に袴とか着て観光できたらよかったですよねぇ」
 また別の人力車からレトロな町並みを見て、ほのりも上機嫌。
 日本人にとっても、郷愁を誘われる温泉街の景色は何とも言えない。

「ふぃー、気持ちよかった〜」
 望月が湯上りの体を夕風で冷ましていると、袖を引っ張られる感触。
「もち、もち! 人力車乗ろうよぅ」
 妹の嘉月だ。
「人力車なんて地元でも……」「1時間コースで! ほら、乗って!」
 結局妹の言うまま人力車で観光。
「まずご飯、それから甘いのも食べに行こうね?」
「じゃあ、美味しい物食べられる所にお願いします。それから甘味処に」
 恋人や家族にお土産を買って……何だかんだ言いながらも、仲の良い兄妹である。

「伊予の国って地名もね、湯の国が訛って出来たって説もあるくらいだよ」
「なるほど……それくらい大昔から温泉で栄えた地だったんですね」
「そうよ、俺達なんか毎日温泉だからな。兄ちゃんどこから来たんだ?」
「あ、鎌倉です。神奈川の」
 さて、聖夜は足湯に浸かりつつ地元の人にあれこれ話を聞いていたり、コミュニケーションを取る。
 地元の人との交流も旅の醍醐味の一つだ。

「あ、これ美味しいですね」
「うん、疲れた時は甘い物だよね」
 土産物の買い物袋をベンチに置き、いよかんソフトに舌鼓を打っているのは諷とユノ。
「他にも、坊っちゃん団子とか、手焼き煎餅とか……はっ、食べ物の事ばっかり」
「あはは……でもやっぱり観光に来たら、ご当地のものだよね」
 二人の甘味所巡りはまだまだ続きそうだ。

「せっかくだし、人力車、有希と藍那で乗ったらどうだ? 写真撮ってやるぜ♪」
「え? い、いいよ、もう!」
「お、俺は乗らんぞ!? 変な気を回さんでいい……まったく」
 人力車でのツーショットを持ちかけたモクレンだったが、藍那も有希も照れて居る様。
「それより結社の皆にもお土産買わないと。何にしようかなー」
「俺も何か自分用に……あ、この変な置物とかいいんじゃね?」
「……なかなか、いい趣味だな……」
「……うん。いいんじゃない?」
 モクレンの趣味は無難にスルーし、揃いの湯飲みを物色する二人であった。

「……前から気になってたんすけど、その前髪はどうなってるっすか?」
「こ、この前髪はえと。その、紫外線ばりあー……?」
「バリアー!?」
 楽しげに喋りながら歩いているのは庵と奈古。
「はっ、あれは……伝説の!?」
「いよかんそふとっ!?」
「でもじゃこ天ソフトって言うのもあるよ」
「一個ずつ買って、半分こするって言うのはどうすか?」
「うん、そうしよっか」
 この後も、二人は仲良く甘味処めぐりを続けるのだった。

「うーん、なかなか良いのがないなあ……黎明なら恋人に何を買って帰る?」
「あまり値のはらないもので、それでいて奇麗で使い勝手のいい物かな。何時も使ってもらえれば、嬉しいでしょ?」
 月凪は恋人に、黎明は家族に送るお土産をそれぞれ物色中。
「……これだ!!」
「うん、良いんじゃないですか。眺めても綺麗ですし」
 月凪は砥部焼のペアマグカップ、黎明は絵葉書を購入。
 お土産自体もさる事ながら、一生懸命お土産を選んでくれた彼らの気持ちも相手には伝わる筈だ。

「この間〜、『坂の上の雲』を読みまして〜」
「あれってかなりの長編ですよね、すごいなぁ……」
「詩ねぇ……俺には良くわからんな」
 紬、イセス、勇の三人は子規記念館へとやってきた。
 松山市は正岡子規が幼少期を過ごした場所でもある。
「この頃から〜、野球少年は坊主頭だったんですね〜……フフッ」
 子規の写真とイセスを見比べ、噴き出す紬。
「どうしたんですか?」
「いえ〜、イセスさんが坊主頭を想像してしまいまして〜」
「あははっ! そりゃいいや」
「も、もう何考えてるんですかっ」
 記念館を見終わった一行が外へ出てくると、そこには浴衣姿の美女が二人。
「お誕生日おめでとう、勇君!」
「おおっ?!」
「どう? 浴衣美人……って程じゃないけどどうかな? この子は私の友達なんだけど、勇君が誕生日だって話したら一緒に祝ってくれるって」
「お誕生日おめでとうます、勇様。ふう、それにしてもこの時期湯上りは少々暑う御座います」
「い、いや、堂々と美人って名乗れると思うぞ」
 沙希と女装した涼介の艶姿に真っ赤になる勇。
「これは私からです」
 イセスが差し出したのは野球のチケット。
「おぉ……イセス、ペアチケットじゃないところが空気読めてるじゃねぇか」
 勇はお礼のヘッドロックをかけつつ男泣き。
 この後、一同は近くの喫茶店へ行き、改めて勇の誕生日祝い。
 謎の浴衣美女が涼介だとネタ晴らしされた時の勇のリアクションは……また別のお話。

「見つけたぞ……本当にあったんだ!」
 その頃、夕羽は念願叶って通常の9倍サイズの坊っちゃん団子を見つけ出した。
「すいません! これ宅配便で送れますか?!」
 家族や仲間達も実物を見ればさぞかし驚く事だろう。早速纏め買いして、発送の手続きをする。

「僕、大切な人にお土産買って帰ろうと思うですよ〜。沙紀さんは、どんなお土産をお探しですか?」
「大切な人か〜今頃なにをしてるかしら……甘い物が好みだったわね……確か」
 人力車で街を観光した沙紀と省吾は、土産物屋に立ち寄りそれぞれ恋人への土産を探している所。
「この辺で人気のお菓子って何があるかな〜?」
 和洋折衷のスイーツは無数にある道後の街。恋人との再会を一層甘い物にしてくれる事請け合いである。羨ましい限り。

「街綺麗だったねー」
「ええ、のんびり散策するのも良いけれど、人力車も風情がありましたね」
 ふわりと漣も一頻り町並みを観光し、人力車のお兄さんに勧められた甘味処へ。
「伊予柑ソフトに、坊ちゃん団子に……美味しそうな甘味がたくさんあって迷うなぁ」
「食べ切れなかったらお互い分けて食べましょうね。美味しかった物をお土産に買って行きましょう」
 二人はテーブルに一杯になるほどの甘味を注文し、厳正なお土産選びを行うのだった。

「む、あれは何だ。美味しそうだな」
 次から次に視界に飛び込んでくるご当地グルメに、普段は物静かな慧も今日ばかりは少し饒舌。
「お、美味しい!! 美晴も桜も榎も食べるか?」
「いくら嬉しいからって、食べかけの物を人様にあげちゃ駄目ですよ〜。新しいのを買ってから渡してください〜」
 美雨も上機嫌で食べかけのじゃこ天を差し出すが、美晴に諭されてしまう。正論な様なそうでもない様な。
「そう言う美晴さんもいつの間にいよかんソフトを……あ! み、見ました!? 人力車ですよ! 人力車! 初めて見ました!」
 桜は通りかかった人力車を見てテンションが上がり捲くり。
「あ、写真撮ればよかった……せっかくだし、皆で撮って貰いましょうか」
 道後温泉の夜景をバックに楽しげな4人の姿。
 今日ばかりはすっかり年相応の女の子達である。

「あ、あれ! あれ食べてみたい♪」
「なんか一日中食べてばっかり……」
 じゃこ天を頬張る遊姫を見て、溜息を漏らす遊恵。
「美味しい……皆へのお土産にも買っていいかなぁ? 来たからには道後温泉っぽいお土産が良いよねぇ?」
「いいわよ……でも、お土産代残ってる?」
「……えーと」
「仕方ない、私が支払うわ……大きいのを買っておきましょ」
 余り小さい物だと、皆に配る前に姉が食べてしまうかも知れない。備え有れば憂い無しである。

「あ、温泉卵じゃ! 温泉饅頭も食べようの! いや、あちらの甘味処も……」
「って、ショウ、引っ張るなよ!」
「硝子ちゃんはしゃぎすぎ! 温泉卵もお饅頭も逃げないから」
 テンション上がり捲くりの硝子に引っ張られ、あちこち連れまわされているのは鴇と久埜。
「あ、あの和小物、綺麗じゃの! 二人も恋人や相棒に渡すのじゃろうっ?」
「うん、伊予絣の小物にしようかな、綺麗だし」
「うわぁ! 予算が足りないっ! くっ、この饅頭だけは外せないし……!」
 しっかりお土産を選択した久埜と、予算のやり繰りに困窮している鴇。
「お、人力車」
「乗ろう乗ろう!」
「予算……」
 三人は大騒ぎしながらも、温泉街めぐりを満喫するのだった。

『ここが夏目漱石ゆかりの町ですかぁ』
 スケッチブックに書く鈴江。相変わらずの無表情だが、仲間達との旅行を楽しんでいる様ではある。
「お二人は寂しくは無いでありますか?」
 ゼオンシルトを含め、三人とも使役遣い。使役ゴーストと一緒に歩く事は出来ないので、少し心残りでも有る様だ。
『ええ、ちょっとだけ』
「えへへ、でも皆様と一緒ですもの、寂しくありませんわ。そうだ、甘い物でも頂きましょうか」
 銀月の提案で甘味処へ向かう三人。使役ゴーストの分も楽しんで上げるのが一番だ。

「愛ちゃん。一緒に着てみませんか?」
「……! うん、着て みたいっ」
 温泉街を散策していたアイネと愛は、貸衣装の店を発見。
 坊っちゃんやマドンナに扮する事が出来る様だ。
「どうでしょう、ちょっと変ですか?」
「ううん。アイネちゃん は、燐としていて……とても、綺麗」
「有難う御座います。愛ちゃんは、お人形さんみたいで可愛いです」
「折角ですし、写真を撮ってもらいませんか?」
「うんっ。せっかくだし、撮ろうっ」
 店を出た二人は空の散歩道で記念撮影。改めて友情を深める良い機会になったのではないだろうか。

「あ、いよかんソフトがある。すいませーん」
「こっちには団子がある! 『坊ちゃん団子』。これって、あの有名な夏目漱石にも登場するんだよ、な」
「タルトとかお煎餅とか……なんだか目移りしちゃうの」
 多くのスイーツを前に騒いでいるのは、ルアン、エルアン、黎己の三人。
 なにも甘い物は女の子だけの食べ物ではない。
「ん、これ美味しいな……でもお土産には出来ないし、温泉まんじゅうでも買っていくか」
「これも美味しいぞ。黒い盾の皆へのお土産は『坊ちゃん団子』にする、な」
「ぼくは栗入りタルトを……でも食べ物ばかりじゃなくて景色も堪能しないとね」
 一頻り満喫した三人は、人力車に乗って街の観光へ繰り出すのだった。

「人力車もいいけど、やっぱり自分で歩くのがすき……」
「そうね、このペースだからゆっくり見られる物もあるし」
 暮れなずむ温泉街を歩く祭と莉緒。
 昼とはまた違う趣があって、ライトアップされたショウウィンドウは見ていて飽きを感じさせない。
「あ、あれ……食べてみたい……」
「ん、あれは抑えておかないとね」
 二人は暫しお土産選びを中断し、いよかんソフトを購入。
 ベンチで食べつつ、他愛ないおしゃべりに花を咲かせるのだった。

「夕維、夕維! 見ろこの貯金箱! ご利益ありそう!」
「ほんと、可愛いですね。……わ、このタオル猫さんだらけですよ」
 土産物屋であれこれ物色しているのは奏夜と夕維。
「あ、そろそろ時間!」
 と、土産探しを中断して店を出る二人。
 丁度からくり時計が動き出す時間だ。
「あー楽しかった。一緒に回ってくれてありがとな」
「いえ、こちらこそ……終わってしまうのが残念な程……」
 ちょっぴり良いムードである。
 
 そろそろ個別行動の時間も終わり、宿泊先への移動をするタイミング。
 ちょっと食べ過ぎてカロリーが心配になっている生徒も多いかも知れないが、そこはそれ、ゆっくり温泉に入って代謝を高めれば大丈夫……な筈である。
 もし大丈夫じゃなかったとしても、せっかくの修学旅行。楽しまなければ損と言うものだ。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:65人
作成日:2009/06/26
得票数:楽しい21  笑える2  ハートフル2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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