≪煌々堂≫ひみつのメルヘンお花畑


<オープニング>


「これ見て! 心霊写真だよ」
 飛びついて来た霧生・颯をなだめて落ち着かせると、漆名・神威はその写真を手にとった。
「さっきお客さんが置いて行ったんだ」
「客が……」
 忘れ物かと思うが、この際重要ポイントはそこではない。神威は煌々堂に丁度たむろしていた皆を呼び集めた。
「これを見てくれ」
 神威が差し出した写真には一面の花畑。その真ん中の木の横に残留思念らしきものが写り込んでいる。
 霧生・楓がいそいそ覗き込んだ。
「まるで絵本の中の様にきれいですね」
「本当に綺麗です。これはその方の大事な場所なのでしょうか」
 小さい頃の秘密基地とか、と小野・早深は微笑んだ。
「でもこれはどこなんでしょお?」
 新城・刹那が小首を傾げた。
 そこで神威はおもむろに写真を裏返す。そこには古びたインキで地図らしきものが描いてあったのだ!
「あ、この林の奥ですか。ここはそんなに遠くありませんよ?」
 如月・絢香が嬉しそうに言った。
 林の奥に小径を辿り、ぱっと開ける野の花畑。
 今日はせっかくの梅雨の晴れ間、こんなに素敵な場所なら早速出かけてみたいもの。
「どうだ、せっかくだから弁当や菓子などを持って花畑で遊ばないか?」
 皆の瞳が輝く。
 くだらない事に俺を巻き込むのは……壬生・契はいつもの台詞を引っ込めて、大切な幼馴染みの言うことに同意した。
「仕方ない。ゴースト狩だな」
「ゴースト退治ならまかせて!」
 家事全般も得意な、絢峰・飛鳥が元気に言った。

 こうしてこの日の煌々堂は俄に活気づいた。
 どちらにしても、能力者としては放ってはおけない。
 それでも結社の仲間で挑む冒険に、能力者達は何やらわくわくするのだった。

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参加者
霧生・楓(双子の妖草使い〜妹〜・b01351)
霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)
小野・早深(光を携え歩む魔女アリス・b03735)
漆名・神威(黒と白の守護者・b42493)
絢峰・飛鳥(紫炎の舞姫・b43878)
新城・刹那(藍色の雪姫・b45413)
如月・絢香(光輝く月の使者・b53100)
壬生・契(冷酷な狩人・b60516)
NPC:桐生・アギト(中学生黒燐蟲使い・bn0187)




<リプレイ>

●出発するにゃ。
 ピクニック日和だにゃ、と漆名・神威(黒と白の守護者・b42493)はご機嫌だった。ちょっと暑いけどゼリーでも作っていくにゃ。
 絢峰・飛鳥(紫炎の舞姫・b43878)は朝から顔をポッと赤らめていた。だって神威と行けるなんて……ポポッ。ううん、初依頼に友人といけるのは心強いね。何より神威と……以下ループ。
 だけどウットリワクワクの一方で、飛鳥の手はガンガン動いて和風弁当をこしらえる。リクエストのあった出汁巻き卵、肉じゃがもばっちり追加しておいた。
 そして神威の為の愛妻弁当! うん……愛妻って言っちゃうよ、モウ。飛鳥は一人桃色ほっぺでご飯の上にそぼろで丁寧にハートマークを描いた
 霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)と霧生・楓(双子の妖草使い〜妹〜・b01351)の双子の兄妹はクッキーを焼いていた。
 テーブルには既に、颯が主にこしらえ、楓がちょっぴり手伝った鶏の唐揚げに厚焼き玉子メインのお弁当が鎮座している。ご飯は食べやすさを考えておにぎりにした。
「お兄ちゃん……できた……けど」
「楓、よかっ」
 颯は息を止めた。できたとか言ってるがこれは何だろう……紫色の物体X?
「クッキー……どう……かな?」
「美味しいといいね」
 颯は忘れない様に胃薬を荷物に忍び込ませた。
 その頃小野・早深(光を携え歩む魔女アリス・b03735)はレタスとスモークサーモンとアボガドのサンドイッチを手際よく作り、新城・刹那(藍色の雪姫・b45413)はキンキンに冷やした緑茶を用意していた。
 いよいよ出発の時間が迫る。
「楓、帽子を忘れちゃダメだよ?」
 霧生の双子もお揃いのオーバーオールにTシャツで準備完了だ。ちなみにオレンジは颯、ピンクは楓だった。
 こうして準備を整えた彼等は林の奥へと探検する。如月・絢香(光輝く月の使者・b53100)は自分が作ったわけでもない弁当をにこにこ大事に抱えて神威の横を離れない。
「神威姉さま、一緒にお弁当食べましょうね」
「そうだにゃ」
「一緒にゴースト倒して、一緒に遊びましょうね」
「もちろんそうするにゃ」
 息つく暇もないほど、とにかく姉様大好き。いっぱいお話しするんだ。
 飛鳥はそんな会話をとろんと聞きつつ、二人とぴっとり腕組んだり手を繋いだりして歩いた。
 一方。そんな皆とは対照的に真っ暗な人物もいた。
(「なんで、俺は此処に居るんだろう……」)
 壬生・契(冷酷な狩人・b60516)は一番後ろをぽつぽつ歩いていた。幼馴染の為とはいえ、何故荷物持ちをさせられるんだ? 人との交流もあまり好きじゃないのに……。
「これもあいつの為と思えばいいか……」
 実はもう一人いた。
 今日お呼ばれしてしまった桐生・アギト(中学生黒燐蟲使い・bn0187)は偶然彼の呟きを小耳に挟み、先をゆく皆の様子に考え込んだ。実は荷物持ちを手伝おうとしていたのだが、少し考えてみる事にする。銀誓館にはいろいろあるのだ、いろいろと……。
 そんなこんなで煌々堂の一行は目的地に辿り着く。林が突然切れてお花畑が広がった。
 まず目指すのは、あの写真の木……。

●さて妖獣退治。
 問題の場所はすぐにわかった。
「妖獣なんて絢香にかかれば一発でびゅーんなんだからねー」
 絢香が元気に声をあげた。
 早深はイグニッションカードを手に昔を思い出す。高校女子冬服の上に白衣をはおっていた学生時代……右足を一歩前へ、高らかにカードを掲げる。
「懐かしきあの頃へ……イグニッション!」
 刹那もさっさと起動する。早く妖獣を倒してお花畑でお弁当なんです〜。最初の立ち位置は充分に吟味した。
 皆の準備が整うと、神威が問題の場所に詠唱銀をふりかける。
「ぱらぱら〜敵さん出ておいでー」
 少し後ろにいた絢香が囃すと本当に五匹もでてきた。
「おわっ、わんさか出てきた〜」
「さて、飛ばしていきますか!」
 そう言ったのは神威で、戦闘時になると『にゃ』が跡形もなく消えた。出てきた妖獣達に突っ込み、抜刀した日本刀を軽やかに回せば刃が白銀に輝く。戦闘になるとなぜこうも攻撃的な気分になるのか……神威は目に光を宿らせて日本刀を構えた。今日は皆の盾となって頑張るのみ。
「油断しないで行くぞ!」
 五匹の蝸牛妖獣が花を背負ってのこのこやって来る。
 他の皆も勿論黙って見ているわけではない。
「ぅ……霧生楓……吶喊します……」
 楓がバス停を手にひた走る。徳山駅前と書いてあった。
「私のバス停が……真っ赤に燃えるの……勝利を掴むのね、なの……その後忘れたの……」
 えーい!
 フェニックスブロウで殴ったところに森王の槍が炸裂する。
「面倒だが、始めるしかないみたいだな」
 とか、文句言いつつも援護攻撃を行うのは契だ。背に鮮やかな蒼い弓を負っている。
 続いて神威が黒影剣で一撃入れると、あっという間に一匹消えた。
「よし、次!」
 颯がパラライズファンガスを使うと白いキノコがポンと花の上に生える。妖獣がマヒしたら絢香の出番?
「絢香も戦うんだからね、そりゃぁっ」
 びゅうううぅ。雪だ嵐だコッチコチ! 妖獣達は凍ったりまた溶けたり忙しい。アギトも黒燐蟲も元気に爆発した。
「ごめんね、さっさと終わらせちゃうよ!」
 森羅呼吸法でパワーアップした飛鳥が獣撃拳で一匹を攻撃する。ところが萎れかけた紫陽花みたいなのが蔓を伸ばして飛鳥をキュウッと締め付けた。
「早深……舞いますっ!」
 癒し手も暇じゃない。刹那と被らない様にうまく回復を皆に届ける。締め付けをふりほどいた飛鳥は紫の牙で紫陽花もどきを思い切り殴った。
 神威の黒影剣は相変わらずの切れ味だが、きのこの花粉がばふばふ飛んできてすやすや眠ってしまう。
「このー、ふっとべ〜」
 すぐ後ろにいた絢香が駆け込んできて水玉キノコを思い切り殴った。
 そして雪だるまに包まれた刹那が手にするのは新城家に伝わるという巨大な氷の結晶。冷たくも優しい冬の息吹よと結晶輪を振りながら舞う。白リボンで束ねた藍色の髪が楚々と揺れた。
「友なる人たちに力を……」
 煌々堂の能力者達は次々に花を背負った妖獣を倒していった。
「もう少しの辛抱ですよ……そう、いい仔ね……」
 とうとう最後の一匹となって早深も破魔矢を放って攻撃に参加する。
「俺を忘れては困るな」
 契も言い放つ。攻撃は見事に命中した。
「よし! いっちょあがり!」
 神威がそう声を上げるまで長い時間はかからなかった。
「あっという間に終わっちゃったね」
 絢香がみんなを見回して目を輝かせた。
「じゃあじゃあ、ご飯食べる?」

●お花畑で弁当にゃ。
 早深は戦闘が終わると、木の根元に香りの良い花を摘んできて供えた。妖獣に亡骸が残るならきっとここに横たえただろう。
 そのまま静かに目を瞑って作法どおりに礼拝する。彼女なりの妖獣達への弔いだった。
「死者の魂。眠り給え」
 はっと振り向くと、真面目な顔をした契が立っていた。彼は人間と同じ様に妖獣の魂も安らかである事を願った。
「小野さんは優しいです〜」
 刹那が感心した。戦いの痕跡はきれいにしたけれど、妖獣のお弔いは雪女の自分には思いつかないから純粋に凄いと思う。
 彼等は逝ってしまった敵の魂に少しだけ想いを寄せる。優しい風が吹いて平和な木漏れ日が揺れた。
 刹那は笑顔を浮かべると花畑を振り返った。
「お花で一杯です〜。何のお花でしょう〜?」
「本当に綺麗ですね……」
 早深も魔法みたいに広がる色とりどりの花の絨毯を眺めた。
 その一画に仲間が集まって昼食の準備を始まろうとしていた。

「まぁ、なんて俺に似合わない場所にゃ」
 神威はそう言ってお花畑を見回した。でも弁当は楽しみらしくごそごそゼリーを取り出す。
「こんなに沢山……!? 大変だったでしょうに」
 どさりと荷物をおいた契を早深が労う。
 刹那が紙皿や箸を配り、冷えた緑茶を紙コップに注いで皆に配る。
「神威お姉ちゃん、これ食べない? あ、壬生さんも食べて」
 颯と楓がお弁当を持ってやってきた。おにぎりは食べやすいからピクニックには持ってこい。おかかに鮭に筋子、中身も様々だ。おかずには厚焼き卵や唐揚げもある。
「気が利くにゃ。ありがとうにゃ」
「まぁ、悪くない味ではあるな」
 絢香もわくわく弁当を待っていた。
 仕上げに振ったハーブソルトが決め手です、と早深がサンドウィッチを配ると、
「わーい。いっただっきま……」
 言い終わらないうちにかぶりつき、
「おいひー。もっと食べるー」
 飛鳥がぱかんと豪華お弁当の蓋を開けた。
「じゃーん、けっこう頑張ったよ!」
 紙皿にのせて皆に渡して行く。
「小野さんは出汁巻き卵、絢香が肉じゃが……あ、神威はこっちねー」
 愛妻弁当を開けると、皆の目がそぼろのハートに釘付けだ。
「ボクが食べさせてあげるよ。はい、あーん」
「にゃ……飛鳥姫、恥ずかし……お、美味しいにゃ!」
 照れながらもむぐむぐ食べると神威の目が輝く。
「ほんと? よかったー」
 飛鳥はにっこり笑うと、端っこにいるアギトに目を付けた。
「アギトさんも食べさせてあげようかー?」
「………」
 箸を持ったままアギトが固まる。どうも頭から湯気が出てそうだ。
「冗談だよー」
 飛鳥は楽しそうに笑って、彼はみるからにホッとした。
 早深がそんなアギトにそつなくサンドウィッチを勧める。
「桐生さんも、よかったらどうぞ」
「……どうも」
 アボカドやスモークサーモンのサンドイッチは美味しくて、アギトには何だか新鮮な味だった。
「わ〜どのお弁当も美味しいです〜。私も作れるようになりたいです〜」」
 刹那が嬉しそうに言って、飛鳥や早深に作り方を尋ねてみようと思った。
 その飛鳥も皆のお弁当を摘んで満足げだ。
「小野さんのも、新城さんや壬生さんの飲み物もすっごく美味しいよ」
 食べ続けの絢香も美味しさに感動したらしい。ごくんと呑み込むとうるうる言った。
「飛鳥お姉ちゃんに、早深お姉ちゃんに颯ちゃん、ありがとうねー」
 美味しいものは大好きな姉様にたべさせてあげないと。絢香はサンドウィッチを手に神威ににじり寄った。
「姉さま、これおいしいよー? あ〜んして」
 今日の神威はひな鳥みたいに素直でぱっくり口を開け通しだった。
 弁当があらかたなくなると、お粗末さまでしたと飛鳥がニッコリ笑う。
 霧生の双子は手作り菓子を配り始めた。
「クッキーを焼いてきたので、皆さんで食べてくださいね」
 颯が言えば、楓も自分で焼いたクッキーを取り出す。
「ぅ……こんなのになっちゃったの……」
 紫色の物体Xを食べた人には、もれなく申し訳なさそうな颯から胃薬を渡された……。
 そのお陰かどうかは知らないが、腹を壊したと訴える者もなく昼食は無事にお開きになった。

●花畑の夢
 お腹がいっぱいになると、皆は思い思いに花畑で遊んだ。
 早深は思い切り背伸びをして深呼吸した。緑の中に彩りよく揺れる野花の中を歩き、時々立ち止まっては花の香りをかいでみる。
 楓と颯は無心に花の中に座り込んでいた。小さな手が器用に花冠を紡ぐ。
 颯はできた花冠を手に神威を探したが……誰かが渡してそうだった。そこで颯は花に囲まれて寝転がっていたアギトに近寄った。
「お疲れ様でした」
「くれるのか?」
 アギトは起きあがると不思議そうに花冠をみつめて礼を言い、ついで颯に尋ねた。
「お前は双子のどっちだ?」
 しばらく話しをして元の場所に戻ると、楓がやっとこできた花冠を差し出した。
「えっと……お兄ちゃんに出来たの……」
「ありがとうね」
 兄は妹をぎゅっと抱っこして頭を撫でてあげた。
 絢香も花を踏まない様に飛び回り、花冠をこしらえる。
(「飛鳥お姉ちゃんと早深お姉ちゃん、せっちゃんと颯ちゃんに楓ちゃんにも……」)
 せっせとこしらえては皆に渡し、
「えへへー。可愛い?」
 自分の頭にも花冠を載せてくるくる回った。そして最後の一個をあげたい人は……。

 空は青い。風が吹いて花が揺れる。
「ぅ……眠いの……」
 楓が兄にもたれて目を閉じる。颯も遊び疲れて寝息を立てる妹の側に横になった。
 契と神威、幼馴染みの二人はいつの間にか一緒に、他愛なく花に埋もれて眠っていた。葉擦れの音が子守唄。幼い頃の午睡の夢を二人は覚えているだろうか。
 だが、次に契が目を覚ましたとき、神威はもう側にいなかった。楽しそうに女子達と一緒にいる。
「………俺だけ見ればいいのに……」
 契はボソリと呟いた。忙しい奴だからな、アイツは……。
 すると近くで転がっていたらしいアギトと目があった。まさか呟きが聞こえたわけではないだろうが……。
「いつもあんな感じか?」
 視線を女子へと向けたまま、ぼそりと彼は聞いてきた。
「まあ……そうだ」
「ここは時々心臓に悪ぃが飯は美味いな」
 契がフ、と笑って二人は何やら話しを始める。
 少し離れた場所で飛鳥は神威を膝枕していた。新城さんはどこかな〜と見回していたが、そのうち自分もうとうと眠くなってきた。そこへ絢香がやってきて花冠を眠る神威に飾った……。

 こんな日は時が経つのが早い。
 帰り際、早深がデジタルカメラを構え、皆は思い思いのポーズを決めた。
「撮りますよ〜、はい、チーズ」
 それが、この日のお遊びの最後だった。
 絢香は名残惜しそうな顔で花畑を振り返る。
「あー、楽しかった。お弁当も美味しかったし! また来たいなぁ……」


マスター:水上ケイ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/07/14
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