そこのけそこのけ麻呂が来る……! いとをかし、百鬼夜行でおじゃる♪


<オープニング>


 ……ちゃん♪ ……ちゃらちゃん♪
 深夜のことだ。
 とある田舎の片隅の、田と田の間のあぜ道に。
 ……ちゃらちゃん♪ どんちゃらちゃん♪
 ささやかながらも、陽気な音が響いていた。
 それはいくつもの足音を伴って、ゆっくりと進んでいる。
 集団の先頭、恰幅の良い身体を公家装束で包んだ男が、後ろの者達を振り返った。
『ほーれほーれ! もっとでおじゃる! 麻呂にがんがんさーびすしてたも〜♪』
 どんちゃらちゃんちゃん♪ どんちゃらちゃん♪
 それは、異様な集団だった。
 首のない落ち武者がいる。首の長い女中がいる。
 山伏のような服を着た烏もいれば、鬼は鼻に割り箸をつっこんで、下手な踊りを踊っているし、着流しをきた骸骨は、番傘をくるくる回して宴会芸を披露している。
『あそれ! あよいしょ!』『うふふ……♪』『ぐははははー!』
 かくも陽気な百鬼夜行。
 先頭に立つ烏帽子の男は、おなかをたぷたぷ揺らして言った。
『愉快でおじゃるの、愉快でおじゃるの! 麻呂はとっても満足でおじゃ〜♪』
 そこに。
「――でさぁ、そいつの彼女がまた……」
 遠くの角を曲がり、男2人がやってきた。
「……って言うんだよ。な? 阿呆だろあいつら」
「ふうん。どっちもどっちだなぁ」
 他愛ない会話。
 何も知らぬ彼らは、件のあぜ道へと近づいていき、しかし、
 ――しん。
 として、静かだった。
 おかしな物は、何もない。
 いつもどおりの、風景だった。
 
「あ、こんにちはー。おはぎとお茶は、そこに置いてあるの自由に取っちゃっていいですから、のんびり食べながら聞いててくださいねー?」
 教室の戸を開けた能力者達を、 羽佐蔵・しの(小学生運命予報士・bn0242)はいつもの無表情で出迎えた。
「で、ですねー。出たんですよ」
「何が?」
「百鬼夜行」
 しのの言葉に、能力者たちは動きを止めた。眉をしかめた表情で、
「……ひゃっき、やこう……?」
「ですねー。地縛霊に妖獣、リビングデッドにリリスもいますし、割と節操なしな感じです」
 そんなゴーストの集団が、ぞろぞろと連れ立って夜中に徘徊しているらしい。
 まさしく、百鬼夜行のように。
「舞台は新潟県、とある田園地帯のことですよー。夜中になるとほとんど人気のない寂しい場所です。で、そこの水田の間にあるあぜ道を、百鬼夜行の地縛霊たちが我が物顔で練り歩いてる感じで」
 それなりに幅の広いあぜ道ではあるが、横に3人並ぶくらいが限度だろう。
「この百鬼夜行の地縛霊ですけど、ちょっと変わった特徴を持ってまして」
「どんな?」
「人の姿を見かけると、すぐに自分の特殊空間に引っ込んじゃうみたいですねー。そのままだと手の出しようがないんですけど、こちらが『正々堂々と名乗りを上げて勝負を挑む』と、隠れずに真っ向から戦いに来ますよー」
 この手順を踏むことで、初めて奴らと戦闘することが可能となる。
 で、ですねー、としのは頷き、
「列の先頭、百鬼夜行の地縛霊は、平安時代のお貴族様みたいな格好をしてて、ちょっとふくよかです。お腹のお肉とか」
「はあ」
「戦闘が始まったら最後尾に引っ込んでがたがた震えたりしますねー」
「えー……?」
 いいのかそれで、と皆は思うが、しのは素知らぬ顔で説明を続ける。
「攻撃手段はほぼ皆無ですけど、回復役としてはそこそこ優秀だったりします。麻呂の燃え滾るぱっしょんをウインクに乗せて、味方一体の体力と状態異常を回復したり、『祭りでおじゃるのー!』とかなんとか言って、味方一体を回復した後、ハイスピード状態にしたりしますよー」
「スルーするな?」
 ふざけた相手ではあるが、侮ることは出来ないだろう。
「次に援護ゴーストですけど、数も多いですし、そこそこ強敵ぞろいです。油断はしないでくださいねー?」
 数は5体。
「首のない落ち武者の地縛霊は、真っ先に突っ込んできて、刀で連続して切りつけてきます。女中っぽいリリスは艶っぽい微笑を浮かべて、全周囲の相手を眠らせてきますねー。山伏服のカラス妖獣は、風を巻き起こして攻撃と足止めをしてきますし、陽気な鬼は笑いながら最大威力の打撃を叩き込んできます。最後の和服骸骨なリビングデッドは、唐傘をくるくる回して誰かを踊らせたりしますよー」
 一気に言った。
 玉露を傾け、一息入れた後、しのは再び話を続ける。
「数が多くて、対処も色々大変でしょうけど……ここでちょっと耳寄り情報をー」
「ん?」
「ずばり、――回復させるな、です」
 様々な能力を持つゴーストたちだが、回復能力を持つのは公家の地縛霊だけである。
 さっさと奥に引っ込む上、他のゴーストたちが奴を守るように戦うため、倒すのは容易ではないが……、
「麻呂さん、ちょっとお茶目というか、愉快なものが大好きみたいでして」
 踊りや芸、一騎打ちや前口上など、『みやびなもの』を見せると、味方の回復も忘れてはしゃいでしまうようだ。
 『みやびなもの』とはいうが、ノリが良かったり勢いがあったり「雅です!」と言い張ったりしたら結構通じてしまうらしい。
 ――妖狐によって生み出された人造ゴースト、百鬼夜行の地縛霊。
「このまま放置して百鬼夜行が完成しちゃうと、かなーり妖狐に有利な状況になっちゃいます。ですから」
 それを阻止するためにも、必ず撃破しなければ。
「ではではー、勝利の報告、待ってますねー」

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参加者
夜久・紀更(死生の賛美歌・b07881)
坂田・あずき(とアサリ・b20610)
黒瀬・一郎(エアロマンサー・b21326)
フィオーレ・ノエル(空色輝石・b23027)
城崎・弓場白(澱ム椿・b46540)
隼田・光里(春宵一黒・b46671)
小此木・亮太(パワフルわんこ・b50002)
真中・由武(中学生脚闘少女・b54066)



<リプレイ>


 ……ちゃん♪ ……ちゃらちゃん♪
 陽気な音が響いている。
 あたりは暗い田園風景。猫の子一匹いない田舎を、慎ましくも騒がしい、百鬼夜行が行進している。
 どんちゃらちゃんちゃん♪ どんちゃらちゃん♪
『もっとでおじゃる! もっともーっと麻呂を楽しませてたも〜♪』
 先頭を行く百鬼夜行の地縛霊、公家の格好をした男が、ついてくるゴーストたちを煽っている。
『……むむむ?』
 ふと、その行軍が止まる。人の気配だ。
 慌てて特殊空間の中に身を隠そうとした、その時。
「ちょっと待ちなよ、そこいく幽玄妖美な珍集団!」
『おじゃ!?』
「こちらの名乗りも聞かずにおさらばってのは頂けないなぁ」
 ずい、と暗闇の中から進み出る、幾人かの人影がある。
 彼らは一体何者なのか?
 名乗りは威風堂々と、我ここに在りと見得を切る。
 さぁさぁ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!
「この亮太様が人に厄成す鬼退治に只今参上、ってね」
 小此木・亮太(パワフルわんこ・b50002)の名乗りに続き、夜久・紀更(死生の賛美歌・b07881)が啖呵を切った。
「俺が名を聞いておけ、死者のニオイは逃さねぇ」
 さながらそれは歌舞伎の如く。
 一歩踏み出し動きを止めて、睨む瞳は銀の色。
「ゾンビハンターの夜久紀更ってモンよ」
「人非ざれば闇に往きる、隼田光里と申します」
 髪振り乱して語る者、隼田・光里(春宵一黒・b46671)と人は呼ぶ。
 指はシラウオ夜闇に踊り、纏う衣は黒燐蟲。
「この黒燐達共々、よしなに」
 フィオーレ・ノエル(空色輝石・b23027)も負けてはいない。
 帽子のつばを浅く握って、頷き喉を奮わせた。
「瞳に抱くは空の石」
 ならば美髪は雪か白雲。
「名はフィオーレ、以後お見知りおきを」
 空の申し子名乗りを上げりゃ、愉快痛快微笑みながら、前に出る影小柄な少女。
「ボクは千羽の筆頭、脚闘家の真中由武!」
 夏と申さば肝試し、真中・由武(中学生脚闘少女・b54066)は笑って腕試し。
 おやおやそこに飛び出したるは、坂田・あずき(とアサリ・b20610)と白毛玉。
「稀なる白鼠とその使い、手合わせ願おうか〜」
 きらりとウインク、ハートを描き、帽子代わりかモーラット。
 などと言ってる隙に麻呂地縛霊がこそこそ後ろに下がっているが、まぁこちらも自己強化とかやってるし、努めて気にせず黒瀬・一郎(エアロマンサー・b21326)は先を続けた。
「黒瀬一郎……風使いだ」
 事前に準備しておいた光源が闇を払う。
 それは小さいながらも周囲を照らし、真夜中の田園地帯を戦場へと変換した。
「お前達を阻みに来た。……来い」
 堂々とした彼らの名乗り。
 叩きつけられた挑戦状に、麻呂は、
『ひいいいっ!? が、がたがたでおじゃる、びくびくでおじゃる〜!?』
 ガタガタガタガタガタガタ……!! となにやら肩凝り用マッサージ器のように振動していた。
(「震えすぎだ!?」)
 もう初っ端から気勢を殺がれる事はなはだしい感じだったが、能力者たちはめげなかった。
 最後、傘差し進み出るその影に、びくりと震えた麻呂が問う。
『だ、誰でおじゃるか? 名乗ってたもれ!』
「姓は城崎、名は弓場白……当世一の傘使いサ」
 城崎・弓場白(澱ム椿・b46540)は傘を閉じ、「さてソコの」と唐傘広げる骸骨へ、傘の先端を突っつける。
「洒落も喋れねェしゃれこうべにしちゃァ洒落た得物だ……ココは一つ、俺と傘くらべといかないかィ?」
『い、一騎打ちでおじゃるか? おじゃるな!?』
 ね! ね! と瞳をキラキラさせて同意を求める麻呂をゴーストたちは軽くスルー。
「皆々様も知る通り、傘たァ「サシ』て使うもの。無粋な助太刀は止して貰おうか」
『みんな、いいかの? 一騎打ちでおじゃるよ!』
『いや、これそういう勝負じゃないんで』
 うんうん頷くゴースト達に、麻呂が「え、そうなの?」的な顔をする。
『でも、麻呂は観戦するでおじゃるよ〜♪ 雅だからの!』
 ……とりあえず、麻呂は釣れた。
 果たして果たして、かくも陽気な百鬼夜行とのぶつかり合いにて御座そうろう!
 彼ら能力者は、見事妖狐の尻尾を打ち砕くことが出来るのでありましょうか!?
『者ども、であえであえーでおじゃる♪』
『もう出てるぜ! ぐははははー!』
 続く!


「そこの武者!」
『ヌ?』
 開戦するやいなや、いの一番に行動しようとした首のない落ち武者ゴースト。
 奴を指差し、由武が強気に柳眉を逆立てた。
「ボクの名は由武。武に由しある者同士、楽しもうじゃないか!」
『面白イ!』 
 頭ないのにどうやって喋ってんだよ、とかそういう野次を飛ばさせない程の迫力で、刀の柄を握り締めたゴーストは、
『我ガ早駆ケ、トクト御覧ジロ!』
 目にも留まらぬ疾風となって、彼女の眼前に一気に迫った。
「速……っ!?」
 嵐さながらに振るわれる高速の連撃。
 刃が空気を切り裂く音を耳元に感じながら、彼女は両手のナイフを舞うように操り、肌に刃が当たるスレスレで受け流していく。
『ほおれほおれ、どっちも頑張るでおじゃるよ〜?』
 ……き、気がっ、気が抜ける!?
 萎えかける心を修行で培った精神力で超叱咤しつつ、連撃を全てかわしきる偉業を成し遂げ、
「地に顕れし月の業、見せてあげるよ!」
『グ!?』
『おほっ』
 報復のクレセントファング。
 それは三日月の軌跡を描き、落ち武者の鎧にぶち当たって甲高い音を立てた。
 同時、彼女に促がされるように、3人が動き出す。
 まずは広範囲に状態異常を撒き散らす女中を潰す。
 紀更が構えるチェーンソー剣、『la nuit noire』の回転動力炉が唸りをあげて、刃を高速で循環させた。
「雅なる黒の力、見せてやるぜっ」
 剣の振り抜きと共に漆黒の弾丸が射出される。
『きゃっ!』
 当たる。凝縮された黒燐蟲の弾頭は着弾の瞬間に爆発、砕けた波涛の勢いで周囲へと拡散し、思う様に貪った。
 間髪など入れはしない。
 ゆらりと炎のように揺らめいて、顕現する魔狼の闘気。
 桜の花弁舞い散らせ、夜気より黒く染まる太刀。
 女中ともども封殺せんと、亮太とフィオーレが飛び出していく。
「遊びたいなら、無粋な真似は止めて俺らとやろうぜ?」
「鬼さん此方、剣の鳴る方へ♪」
『ぐははは! 俺様の相手はガキ2人かぁ!?』
 ガギィン!
 金属にかち合うような音を立て、黒影剣の刃が止まった。
 木の幹を思わせる鬼の腕が、剣を軽々と受け止めている――。
『うふふ、そんなに慌てないで下さる?』
 女中リリスが着物をわずかにはだけさせ、しなを作った。
 途端、能力者たちの頭がぐらりと揺れる。リリスの不可解な力により、猛烈な睡魔が襲ってきたのだ。
『まだまだ夜は長いのよ。ねぇ……ふふ、もっと楽しみましょう?』
 まぶたを閉じてはダメだと思うも、倒れこみそうになる体はいかんともしがたい。
 脱力する身体。朦朧とする意識。く、と呻いて、次々と夢の世界に埋没していく。
 だが、
『……あら』
 ひらり、ひらりと、夜を白い蝶が舞う。
 否、蝶と見えたそれは一郎が持つ和扇だった
 速さはない。むしろゆったりと、四季の移ろいを体現するが如く蝶は踊る。
 扇を持つ手首がひらりと風を生むたびに、仲間たちがはっとした顔で目を覚ます。
 浄化の風の効果である。自身の能力が無効化されたと悟り、女中がわずかに表情を険しくして、
『見たかの? 見たかの? とっても風流でおじゃるのう!』
『あのすいません気が散るんでちょっと黙ってて下さる?』
 ダメ出しきたー!
 などと彼らが心の中でツッコンでいる間にも戦況は進んでいく。
 ガァとカラスは一声鳴いて、団扇のような両翼を羽ばたかせた。それは即席の竜巻を作り出し、鉄傘を広げた弓場白に襲い掛かる。
 さながら風の牢獄である。足を止めた弓場白の、しかし動きまでは止まらない。
 乱戦模様になりはしたが、いまだ一騎打ちは続いている。
 放たれた獣撃拳は、慌てて避ける唐傘構えた骸骨につきこまれ、あばらを一本頂戴する。
「おやァおめェの傘ァ、逃げうつ為の落下傘かィ?」
 挑発に、骨が笑った。
『あそれ! 太神楽の傘回しでござあい!』
 ケタケタ骨を打ち鳴らし、ぐるりと回した傘は魔性。
 訳もなく踊りたくなる衝動を見る者に植えつける。
『うむうむ、雅な一騎打ちでおじゃるのう』
 満足そうに麻呂は頷く。
 と、そこでふと、麻呂は指をくわえて首をかしげ、
『で、他に出し物はないのかの?』
 ……うわコイツ飽きるの早っ!?
 めっちゃ頑張ってるのに! 弓場白さん一騎打ちめっちゃ頑張ってるのに!
『それなら麻呂の燃えいずるぱっしょんを……』
 うわー待った待った待ったと大慌てでみやびる(造語)能力者たち。
「麻呂さま!」
『おじゃ?』
 声を張り上げたのはあずきだった。
 彼は一度手を高く挙げ、麻呂の注目を引いた後、勢いよく前を指差す。
 駆けていく自らの相棒――モーラットピュアのアサリの姿を。
 一直線に女中へと向かうアサリが「もっきゅー!」と可愛く鳴いた時、「ご覧あれ!」とあずきは微笑んだ。
「世にも珍しい、白鼠の花火でござーい!」
『おお〜♪』
『きゃー!? ……ていうか仲間やられてるのに拍手しないで下さる!?』
 最期にビシッとツッコンで、女中のリリスが消滅した。
 ともあれ、厄介な範囲バッドステータス能力がいなくなったのは大きい。
 再び視点は、激闘の鬼退治へ。
 夜闇の中、ぐおう、と黒雲が蠢いた。
 翻る黒の呪髪。
 烏の濡れ羽と称されし、その艶やかなる髪の合間より、光里は呪いの魔眼を発動させる。
 ガ、と呻いて鬼が左胸を苦しげに押さえた。
 見逃す亮太ではない。
 餓狼が吼えた。
 圧縮された大気は咆哮のような響きをもって、龍撃砲を迸らせる。それは鬼に直撃、貫通し、落ち武者をも巻き込んだ。
 しかし、鬼はまるで平気な顔で、むしろ心底楽しそうに口端を吊り上げる。
『潰れるなよ? 潰れるなよ? 潰すがなぁ!? ぐははははっ!』
 赤い鬼の呵々大笑。
 かなりノリノリな感じの鬼が、フィオーレの真上から巨大な拳を叩きつけた。
「……っ」
 落雷のような凄まじい衝撃。
 それを、細身の剣で受け止めたフィオーレは、苦痛に耐えながらも気丈に叫んだ。
「――他の人へは、行かせません」
 拳圧に粉塵が舞う中を、ぐっと押し返すようにして、
「浮気は駄目、貴方の相手はこの私!」
 弾いた。
『い、一途でおじゃるのぅ、雅でおじゃるのぅ……ぐす』
「「泣いてる!?」」
「麻呂さま雅カウント入りましたー!」
 なんか外野うるさいけど黒影剣ー! ……雅に!
 やはり、回復を全くさせていないのが大きい。
 ダメージは着実に積み重なり、間違いなく敵を追い詰めている。
 最期まで愉快そうに笑いながら、赤い鬼がぶっ倒れた。
「く……」
 代わりにあがった苦悶は由武のもの。
 防具の特性をも駆使し善戦していたものの、ついに落ち武者の刃が彼女を捉えたのである。
 だが致命傷ではない。だから、今は。
「ごめんね。ちょっとの間、お願い」
 下がる由武に、紀更が交代して前衛へと躍り出ながら、頼れる微笑を浮かべて見せた。
 ちょっぴり麻呂目線で!
「今度は俺の番だ、任せとけ! 雅なる戦い、見せてやるぜ?」
『雅なる戦とな? おほ、楽しみでおじゃるのう♪ のう?』
『ガァ? あほ〜』
『おじゃっ!?』
 ……見なかったことにしよう。うん。
 心の中で頷いて、下がる由武に黒燐奏甲の光を宿す紀更だった。
 その頃。
 かの一騎打ちも、ついに終局を迎えようとしていた。
 鋭く突きこまれた唐傘の一撃を、受け止めた傘は髑髏の模様。
 眉根を詰めた弓場白に、
「我が符と我が力もて癒しを現す、疾く在るべし!」
 行け、と。
 その背中を励ますように、一郎から治癒符が飛んだ。
 口端を歪めた弓場白が、鉄傘を閉じて斜に構える。
 ――傘は傘でも一サシすれば、赤い血の雨降らす傘。
 ならば。
「塵も残さず燃え尽きな……ッ!」
 紅蓮に燃える『あめふらし』が、シャレコウベの中心に突き刺さった。
 動きを止め、大地に崩れ落ちる唐傘骸骨。
『むむむ、もしかしてちょっとマズイかの……?』
 もしかしなくてもかなりマズイ。
 既にほとんどの配下は能力者によって倒されている。さすがにちょっとはしゃぎ過ぎだろう。
『そうでおじゃるの。ここはやはり、雅なる麻呂祭りを開催するしか……』
「おーい、そこの御貴族様!」
『おじゃ〜?』
 全く緊張感の感じられない顔で、のんびりこっちを向いた麻呂に笑顔を向けて、亮太はサッカーボールで軽快にリフティングを開始する。
「雅に蹴鞠観戦でもどうだい?」
『蹴鞠とな! 雅でおじゃるの、雅でおじゃるの!』
 あっさり釣られる麻呂!
 こいつホント阿呆だなとか言っちゃダメ!
「疾さならば負けないよ? 目にも止まらぬ業、見せてあげる!」
『ヌオオ、ヨモヤ我ガ剣速ヲ上回ルトハ……!』
『おじゃ? なにやら騒がしいでおじゃるの?』
 ハイスピード状態の由武がクレセントファングを叩き込んで見事リベンジを果たしていたけれどそんなコトは麻呂には見せない。
「麻呂さま! 麻呂さま!」
『おじゃ〜?』
「空を御覧下さい……」
 にっこり微笑み、あずきは高く天を仰いだ。
「素敵な、星空……!」
『おお〜、なんと見事な!』
『カァ……ガ、ガァ〜〜!?』
『いとをかし、いとをかし♪』
 雲ひとつない星空を見上げ、ご満悦そうにお腹をたぷたぷさせる麻呂。
 で、顔を戻したとき。
『……おじゃ?』
 なんか、戦場がすっきりしていて。
 笑顔を浮かべた能力者たちが、麻呂をずらりと取り囲んでいた。
「さて、雅に終わらせるとするか」
「うん、雅にね」
「高貴なご身分の方とお見受けします。……覚悟して下さいな」
「雅に!」
 もうみんな雅ミヤビ言い過ぎてワケが分からなくなっていた。
 光里がススっと進み出る。
 そして最後の大見得切り、皆々様に置かれましては、なにとぞご清聴のほどをお願いします。
「ここに見えますは、流れ流れて極東に辿り着きました従属種でござい」
 とはいえ彼女は従属種、従うその身の頼りなさ。
「けれども呉れる目配せ一つ、これには自信もあります故に、どうぞ近くでご覧遊ばせ、お見逃しの無きように……」
 なんだなんだと麻呂プラス能力者たちが見守る前で、彼女はにっこり、こう言った。
「――ビームッ!」
「「ぶっ」」
 いや普通に呪いの魔眼なんだけどね!
 技も空気を読んだのか、クリティカルヒットを叩き出し、
『み、雅だった……の……』
 百鬼夜行の地縛霊は、ついに身体を薄れさせた。


 戦闘後。
 ふう、と息をついた彼らは、微笑を交し合い、互いの健闘を称えあった。
「お疲れ様ー!」
「……賑やかなしっぽになる所だった! 危ない危ない」
「雅に出立できたでしょうか……いってらっしゃいませ」
 夜空を見上げ、踵を返し、彼らはあぜ道を後にする。
「……」
 ……みやびってなんだろう。
 ふと、そんなコトを思った能力者達だった。


マスター:リヒト 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2009/08/03
得票数:楽しい17  笑える33  カッコいい3 
冒険結果:成功!
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