真夏のダイヤモンド 〜Second〜


<オープニング>


「あっとひっとり! あっとひっとり!」
 夏休みの昼下がり。校庭に元気な子供達の声が響く。
 どうやらグラウンドに自分たちでラインを引き、野球をしている様だ。
 人数は5:5の計10人。内野はピッチャー、キャッチャー、セカンド、ショートの4人、外野はセンターが1人と言う編成だ。
 点は2−1で最終回の裏、2死2、3塁。一打逆転サヨナラの場面でもある。
 ――カンッ!
 しかし打球は緩い内野フライ。
「セカン!」
 セカンドの少年が落下点へと入る。グラブにボールを収めて試合終了となる……誰もがそう思っていた。
 ――ぽとっ。
 まさかの落球である。
 3塁走者はホームイン、2塁走者も一気に3塁を回る。
「ホームホーム!!」
 セカンドの少年は慌ててホームに送球。
 しかし慌てると簡単なプレーも出来なくなるもの。送球は大きく逸れ、キャッチャーの遙か上を越えてゆく。
 試合は終了。屈辱的な逆転負けである。
「あんなの落とすなんて、バカじゃねーの?」
「ほんとだよ、その後だって何だよあの送球。死ねよ!」
 試合後、チームメートから容赦ない言葉が浴びせられる。涙を零しながらうつむく少年。
「……ごめんね」
 セカンドの少年とは別の、聞き慣れない声。
 見れば、そこには野球のユニフォームを纏った少年。
「ボクのせいで……ごめんね……」
 遠目には泥に見えたユニフォームの汚れは、赤黒い血。バットにも血がこびりつき、少年自身もポタポタと血を垂らしている。
「う、うわぁーっ!!」
 少年達は一目散に校庭を逃げ出した。

「良く来てくれたわ」
 教室で一同を出迎えたのは柳瀬・莉緒(中学生運命予報士・bn0025)。
「そんなの着て暑くないのかって? 直に紫外線を浴びない為には、暑くても長袖じゃないとね」
 さて、今回の現場はとある小学校の校庭。
 近い将来、この小学校の子供が地縛霊に襲われる恐れがあるのだと言う。
「そこで、あなた達に地縛霊を退治して貰って、被害を未然に防いで貰いたいのよ」
 莉緒は地図を机に広げつつ、説明を続ける。
「地縛霊は、どうやら野球好きの少年で、セカンドに拘りがあるみたい。ただしエラーをした事を強く悔いているみたいで、エラーをした人間や、それを責める人間を殺めようとしているわ」
 つまり、この小学校の校庭で野球をし、セカンドの選手がエラーをし、周りの人間がこれを責めれば特殊空間が発生し、地縛霊は出現するだろう。
 一般人が襲われる前に、能力者達で地縛霊を呼び出し、退治してしまいたい。
「地縛霊は、セカンドの少年の他に8人出現するわ。ボールを飛び道具に使う選手、バットで殴りかかってくる選手、足が速いのとか、守備力の高いのとかバラエティに富んでるわね」
 一体一体の力はさほど高くはないが、油断は禁物だ。
 特殊空間はちょうど野球のフィールド程度の大きさ、かなり広いので自由に戦えるだろう。

「どんなに一生懸命練習していても、どうしてもエラーやミスってしちゃうものよね……」
「でも自分のせいで仲間に迷惑かけたと思ったら、すぐには立ち直れないわ」
 莉緒の言葉に、少し難しい表情で応える速坂・めぐる(烈風少女・bn0197)。
 地縛霊になった少年らの心も、元は野球を愛するまっすぐな心だったのかも知れないが、大事な場面でエラーをしたこと、仲間から酷く責められたことで、ねじ曲がってしまったのだろうか。

「とにかく、これ以上悲劇を起こさせる訳にはいかないわ。しっかりお願いね!」
 かくして、能力者達は学園を出発するのだった。

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参加者
真浪・忠史(豪龍拳士・b00075)
北野・菜奈(紅桜を継ぎし者・b02110)
不利動・明(大一大万大吉・b14416)
シルフィア・クロス(白揺花・b19633)
豹童・凛(近寄り難き者・b33185)
乙・一(豺・b37073)
南城・霧冶(二人がいい・b47330)
雛月・朔(月夜に薫るは白梅の香・b50957)
三井寺・雅之(小学生ヘリオン・b60830)
デューテ・ハルトマン(出来損ないのホムンクルス・b61163)
NPC:速坂・めぐる(烈風少女・bn0197)




<リプレイ>


 一般人の目を避けつつ、学校の敷地内へ潜入を果たした能力者達。
 夜の校庭は静まりかえり、微かな虫の鳴き声や遠くを走る車やバイクの音だけが聞こえてくる。
 
「ラインは簡単に木の棒か何かで?」
「そうだな、野球らしき物を出来れば良いのだから……そういえば高校野球ってどうなってたっけか」
 雛月・朔(月夜に薫るは白梅の香・b50957)の問いかけに答えると、真浪・忠史(豪龍拳士・b00075)は早速ホームベースをつま先で描き始める。
 地縛霊は往々にして何らかの条件を満たした人間の前に姿を現すものだが、この校庭に巣食う地縛霊もその類。
(「後悔や責められる事は良くある事ではありますが、ゴースト化するまでに悔いていたのですね……」)
 木の棒で本塁から一塁への線を引きつつ、北野・菜奈(紅桜を継ぎし者・b02110)はこれから対面する事になるゴーストに思いを馳せる。
 今回のゴーストは野球――特にエラーに対して強い思念を抱いており、二塁手のエラーと仲間達からの罵倒をトリガーとして出現するのだと言う。
(「昔、高校野球の決勝で同じようなシーンがあったんだよな。しかしその選手はプロで名選手として活躍した……私も好きだったよ。だが小さな子にはショックだったのだろうがな……」)
 不利動・明(大一大万大吉・b14416)が言う様に、いかなる選手も野球をプレーする以上、エラーと無縁では居られない。
 過酷な練習をしている高校球児やプロ野球選手でさえ、多かれ少なかれミスはするもの。それを乗り越えてまた成長してゆくものだ。
「けれど、いざ起こした行動が挽回への努力ではなく、好きだったものを利用した他者を巻き込む行為だったのは……悲しいですね」
 外野の守備位置を確認しつつ、小さく呟くシルフィア・クロス(白揺花・b19633)。
 これから幾らでも挽回の機会はあったと言うのに、自らそれを捨て去り、それどころか同じ境遇の者を殺めようとする怪物にまで堕ちてしまった。残酷というより無い。
「野球……? ソフトボールならやった事あるが、それでも大丈夫か?」
 さて、豹童・凛(近寄り難き者・b33185)はバッターボックスを描き、足場を確かめつつ今更の確認。
 今回の役割上、バッターの役割は難しくはないし、ソフトボール経験者なら問題は無いだろう。
「セカンドベースは……この辺?」
 一方、今回のキーポジションでもある二塁手を担当する南城・霧冶(二人がいい・b47330)が、位置を確認しながらセカンドベースを地面に描く。
 自らこの役目を適任と感じている彼は心優しく真面目で、少しだけ気が弱そうに見える。
 もしかしたら、エラーをした少年も彼に似たタイプだったのかも知れない。
(「まぁ、エラーは誰だってあることなんだから、地縛霊になっちゃうほど責めた回りの方も、ちょっとやりすぎだったんじゃーとか思うけど……」)
(「だが、それも人生と割り切れなかったゴーストに、前途ある若者の命をくれてやるわけにはいかんよ」)
 デューテ・ハルトマン(出来損ないのホムンクルス・b61163)も乙・一(豺・b37073)も、ゴーストに一定の同情は覚えた上で、それを心の奥にしまい込む。
 いくら同情の余地があるゴーストであっても、罪のない一般人を殺めさせる理由にはならない。
 同情すれども躊躇せず、それが能力者達の鉄則とも言えよう。 
「ボールに当たるなよ。ゴーストが出てこないからな」
「あのねぇ、ドッジボールの鬼を自称する私が牽制球なんかに当たる訳ないでしょ!」
 三井寺・雅之(小学生ヘリオン・b60830)の忠言に、胸を張りつつ言い返す速坂・めぐる(烈風少女・bn0197)。
 そうこうするうち、ダイヤモンドも完成した様だ。
 ゴーストを呼び出す為に、偽りの野球に暫し興じるとしようか。


「ツーダウン! 締まっていこう!」
 キャッチャーミットをバシンと叩き、忠史が腰を下ろす。
 外野の三人は極端な前進守備隊形。
 状況は同点で迎えた最終回。二死ながら三塁にはデューテ、二塁にはめぐるが居る。
 マウンド上の明は額の汗を拭う仕草。
 一打出れば勿論の事、ワイルドピッチやパスボールでも試合が終了してしまう崖っぷちの状況だ。
「さぁ、来るがいい!」
 打席の凛は、集中力を高めながらバットを構える。
「……」
 明の様子を見て、ワンテンポ開けた方が良いと判断した忠史は二塁に牽制のサイン。セカンドの霧冶が音もなく二塁ベースに近づく。
 三塁にはサヨナラのランナーも居るため、二塁のめぐるはリードも少なめ。牽制で刺せる可能性は0に近い。
 加えて、あくまでワンテンポ置くのが目的なので、明は三塁のデューテを目で制してから、霧冶のグローブめがけて慎重にスローイング。
 ――ヒュッ。
「……あっ!?」
 まったくどうと言う事もない、山なりのボールが霧冶のグローブの縁にあたり、後ろに逸れる。
「デューテ!」
 めぐるが本塁を指さすと同時に、凛がバッターボックスから外れて大きな身振りで手招き。デューテもそれを見るまでもなく、三塁ベースを蹴る。
「っ……!」
 センターのシルフィアは転々とするボールを拾い上げ、奇跡に賭ける本塁送球。
 しかし、そのボールが忠史のミットに収まる頃には、デューテはとっくに本塁を通過し、凛と勝利のハイタッチを交わしていた。
 試合終了だ。
「……」
 すぐ横にいた菜奈から、突き刺さるような視線が浴びせられる。霧冶はその場に立ち尽くすばかりで、謝ることも弁解する事も出来ないで居る。
「集中力を切らせてんじゃねぇよ。ランナーがいるの分かってんだろうが」
 レフトの雅之がこちらへ歩いてきながら、大きな声で怒鳴りつける。
「何をしているんですか!? セカンドをやりたいと言ったのは貴方でしょう? 自分の仕事はしっかり全うしてください!」
 同様に、ライトの朔もいつになく厳しい口調で叱責を飛ばす。
「どうして取れなかったんですか?」
 シルフィアは特に悪意を籠めることもなく、尋ねる。
 それが解ってたら苦労はないよ! 思わずそう逆ギレするくらいしか答えようのない、残酷な問いかけだ。
「何やってんだよ。遊びだと思って手を抜いたんじゃないのか、ああ?」
 更に三塁からゆっくり歩み寄った一は、見下ろしながらの厳しい詰問を浴びせる。
「ごめん……」
 ようやく霧冶の口から出てきたのは、蚊の鳴くような謝罪の言葉。
「あの程度の送球も捕れんとはな……私の責任となる所だっただろう?」
 マウンド上から、不快感を露にした明の言葉が響く。
「いや、不利動の送球は問題なかった。犬の方がまだ使えるので代わってこい……むしろお前は犬に失礼なレベルだ」
 忠史もマウンドの辺りまでやってきて、そう言い放つ。
 チームメイトの誰1人として、霧冶を庇う者や慰める者は居ない。
「あれ、仲間割れかな?」
「もっと骨のある相手だと思っていたが……ガッカリだよ」
「せっかく良い勝負だと思ったのに、最後の最後で台無しになったわ。あの程度のキャッチボールも出来ないでセカンドを守りたいなんて、バッカじゃないの?」
 いや、仲間だけでなく相手チームの選手までもが、失望の面持ちで告げる。
 エラーは些細な物であっても、試合の流れをガラっと変えてしまったり、重要な場面で犯せばそれこそ試合自体を壊してしまう重大なプレーなのだ。
「……」
 その重さを一身に背負わされて、ただ立ち尽くすだけの霧冶。
 叱責の言葉が止み、暫し静寂がグラウンドを支配する。
 これはあくまでゴーストを呼び出す為のいわばお芝居なのだが、こういう状況に立たされた少年は確かに実在した。
 そう考えると、途端に霧冶は目の前の景色が滲むのを感じた。
「……ごめんね」
 微かに掠れた涙声が、どこからともなく響く。
 各ポジションの定位置に、青白い光が揺らめき、ユニフォーム姿の球児達が姿を現す。
「出てきたわね。ちょっと湿っぽくなったし、派手にいきましょ」
「ええ、それでは高校生活最後の夏、よい青春の思い出にさせてもらいます」
 演じている方も余り爽快とは言いにくい演技の時間もこれまで、後は全力で地縛霊達を駆逐するだけだ。


「行きますよ、藤姫」
 朔の呼びかけに応え、祖霊達が蜘蛛童の藤姫に宿る。
 各ポジションから一斉に地縛霊らが向かってくるが、能力者達は先ず、セカンドをはじめとする内野陣に狙いを定める。
 ――バッ。
 投網のように広がった糸が、月光に煌めきながらセカンドの地縛霊へ降りかかる。
 だが、二塁手は華麗な横飛びでこれを回避するなり、体勢を整えるより先に反撃を試みる。
 ――バシィッ!
 正確なスローイングで投じられた光の球が、藤姫に直撃して眩いスパークが起こった。
「不利動、そっちを頼む」
「任せろ」
 忠史と明のバッテリーコンビが間合いを詰め……。
「はぁっ!」
 ――ズン……ッ!
 踏みしめられた忠史の足から衝撃波が広がる。と同時に、二振りの長ドスを手にした明が剣舞を舞う様に敵中へ斬り込む。
「では、今のうちに強化と回復を」
「うん、蘇芳はユニフォームを!」
 白燐蟲達がシルフィアの箒に宿り、神秘的な光を纏う。一方の霧冶は、サキュバスの蘇芳を野球のユニフォーム姿に変身させつつ、白いキノコを藤姫へ。
 かなり深い傷を負っていた藤姫だが、この助けによって何とか前線にとどまれる程度までは回復する。
「君達には熱さが足りない。紅蓮の打法であの世までかっ飛ばしてくれるわ!!」
「Flammenkanone! Feuer!!」
 ――ゴォォッ!!
 凛の火産霊神が紅蓮の炎を纏い、デューテのMaschinengewehr Zwillingeが巨大な火球を打ち出す。
「ギャアァァッ……」
 灼熱の火に焼かれ、そのまま倒れ伏せる遊撃手。
「次、セカンドを黙らせよう」
「OK、援護するわ!」
 ――ガガガッ!
 めぐるのイカロス・ビートが段幕を形成し、二塁手を爆煙に包み込む。
 これに紛れるように間合いを詰めた一の指先が、トンと二塁手の額に触れた。
「ぐッ……! う……」
 少年の体内で暴走した気は、内部から彼の身体を破壊し尽くす。
「ごほっ……ごめ……ん……僕のせい……で」
 血の涙を流しながら、二塁手の少年は膝から崩れ落ちる。
 身体が燐光となって消滅しきってしまうまで、うわごとのように謝罪は続く。
 ――ビュッ!
 と、能力者達の顔の間近を掠める数条の光線。強肩を活かした外野陣からの、遠距離攻撃だ。
 更には、一、三塁手とバッテリーの2人もジワジワと間合いを詰めてくる。
「感傷に浸っている暇は無いようですね」
 言うが早いか、光る矢をつがえて引き絞る朔。
 メインの少年を倒したとは言え、まだまだ敵は多く残っている。


 ――ガシュッ。
 藤姫の猛毒を持った双牙が、投手の腕を貫く。
「これは……敵が多い分、大変な作業ですね……」
 必ずしも強いと言う訳ではないが、敵は回復や遠距離攻撃を駆使し能力者達を手こずらせる。
「貴方達の未練、ここで断ち切らさせてもらいます!」
 菜奈の足下から影が伸び、投球モーションに入った投手の脚部へ襲いかかる。
 影の手により深々と傷つけられながらも、それでもボールをリリースする投手。
 ――バッ!
 空中ではじけたボールは、七色に輝きながら無数に分裂し能力者達へ向かいくる。
「こんな変化球があってたまるか」
 飛来する魔球を、長ドスで両断する明。
「この構え……剣技にも応用できるな」
 一方の凛は、バントの様な構えでボールを弾く。
「では、こちらも魔球でお返ししましょう」
 魔球には魔球とばかりに、シルフィアはアンダースロー気味のモーションから炎の魔弾を放つ。
 ――ゴォッ!
「グアァァーッ……」
 直撃を受けた投手は、文字通りの大炎上。マウンド上で崩れ落ちる。
「燃える球にはご用心……ですよ」
「このままいくよっ、蘇芳はサードを」
 浮き足立った敵内野陣を見て、霧冶はパラライズファンガスを捕手の頭に生えさせる。蘇芳は接近してくる三塁手に絡みつき、精気を吸い取る。
「仲間割れしてると勝てる試合も勝てなくなるぜ。憶えておくんだな」
 雅之の光の槍は、捕手のプロテクターをその身もろとも貫いた。


「……片付いたようですね」
 ふっ、と安堵の吐息を付きつつ、藤姫と共に校庭を見回す朔。
(「野球は楽しく行うもの……確かに勝敗は大事だが……このような事は二度と無いように祈りたいものだな……」)
 一方、天を仰ぐ明。
「僕らがさっき演じたみたいな事が、この後起こるかもしれないんだよね。乗り越えられると良いな……エラーする子も、責める子も」
 戦闘で消えかけたセカンドベースを、もう一度つま先で書き直しながら呟く霧冶。
「人間は……否、生きてる者には失敗は付き物だと先生は言ってた。だが、その悔しさを糧に努力すれば強くなれる。野球も、戦うこともそれが大事だ」
 こくりと頷きながら言う凛。
 野球に技術は必須だが、心が強くなければ良い選手にはなれない筈だ。逆境を糧に出来る強い心が。
「……」
 セカンドベース上に、そっとグラブを供える雅之。
(「ねえ……少しでも間に合いましたか?」)
 シルフィアがその横にボールを置きつつ、問いかける。
 少年達がかつて、何よりも好きだった筈の野球。それを愛する気持ちはまだ残っていただろうか……。
「それにしてもやはり俺は罵倒される側だな。思うように言葉が出てこない」
「十分出来てたと思うが」
 さて、マウンド辺りでそんなやり取りを交わしているのは忠史と一。
「誰かちょっと俺を罵ってくれ」
「は、はぁ? いきなりそんな事言われても解らないわよ。バッカじゃないの! 本当にどうしようもないんだからっ!」
 一応リクエストに応えるめぐる。
「もっとお母さんっぽく頼む」
「何よそれ……デューテ、解る?」
「全くこの子はしょうがない子だねぇ……みたいな感じ?」
「(人々の想いがゴースト化する。改めてシルバーレインとは脅威的なものですね……)」
 しょうもないやり取りをしている数人を余所に、菜奈はごく小さく呟く。
 元はまっすぐな気持ちであっても、そこに僅かな闇が存在すれば、残留思念が生じ、ついにはゴーストが生まれる事もある。
 今回のゴーストとて、元は他愛ない子供達の野球遊びだった事を思えば、脅威と言うしかない。
 だからこそ、能力者達は戦い続けるのだ。悲劇が新たな悲劇を生む事がない様に。

 そんな悲しみの鎖をまた一つ断ち切った能力者達は、月下のグラウンドにダイヤモンドを残し、静かに凱旋の途につくのだった。


マスター:小茄 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2009/08/07
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