終の偶像


<オープニング>


 町外れの寂れた館の前で、年老いた上品な印象の女性が佇んでいた。
 ここは、既に他界した夫と彼女が数十年の生活を共にした思い出深い家だ。
 彼女は数年前、都会に住む息子に招かれ、住処を移した。
 優しい息子夫婦や元気な孫達に囲まれての生活は楽しかったが、ふとした拍子に思い出すのはここでの生活。
 だが、人が住まなくなり荒れる一方のこの家は、とうとう取り壊されることになった。
 最後の姿を目に焼き付けようとやってきた彼女は、昔を懐かしむように部屋を見て回り、そして――待ち構えていた赤い紋様を持つ大きな蜘蛛に捕らわれてしまった。
 危機を前に最後に思い浮かべたのは、帰りを待つ『家族』の顔。
 繭の中のその命は、今や風に晒された灯火のように、頼りなく揺らめくだけだ。

「蜘蛛の妖獣が出たよっ!」
 能力者達が視聴覚室で待っていると、慌ててやって来た長谷川・千春(中学生運命予報士・bn0018)が開口一番そう告げた。
 乱れた呼吸を整えた後、妖獣が吐き出した糸で老婆を捕らえているという概要を簡単に説明する。
「お婆ちゃんが捕まってから、もう何日も経ってるの。妖獣達を倒して、早く助けてあげて!」
 そう言って、彼女は沢山のメモが記された手帳を捲った。
「お婆ちゃんが捕まっているのは、その辺りじゃちょっと珍しい古くて小さめの洋館だよ。コの字型の建物で、2階建て。あ、コの字の空いてる部分が南側で、真ん中に玄関があるんだよ。玄関の前はちょっと広い庭みたいになってるね」
 老婆が何処に捕らわれているかはわからないが、恐らくは二階の何処かだろうと千春は言う。
 建物は部屋の数も多く老朽化しているものの、床が抜けたりする心配はないようだ。
「ここにいるのは、1mくらいの大きい蜘蛛が1体、半分くらいの大きさの蜘蛛が3体、家に入り込んで暮らしていた浮浪者のリビングデッドが4体……この人達は、蜘蛛に殺されちゃったんだね」
 少ししゅんとした千春だったが、すぐに説明を再開する。
 妖獣達は足で引っ掻く攻撃の他、噛みついて相手を猛毒状態にしたり、糸を吐いて拘束してくる。
 更に、大きい方の蜘蛛の糸の拘束には、締め付けて苦痛を与える効果も追加される。
 リビングデッドは特筆するような能力はないが、探索の邪魔になることは確かだろう。
 大きな蜘蛛の妖獣が老婆と共にいる以外、他の妖獣やリビングデッド達は動き回っているのか居場所がわからないという。
 千春は情報を出した後、暫し悩むように顎に手を当てた後こう言った。
「みんな以外にも、この妖獣に対して動いてる存在がいるみたいなんだ……。蜘蛛妖獣を保護して、連れて帰ろうとしてるみたいだから気を付けて。もし、そいつらが来る前に妖獣を倒せなかったら、ひとまず撤退した方がいいよ。なんか、やな感じがするの」
 千春は相変わらず真剣な顔をして、能力者達の顔を見回す。
「繭の中で、お婆ちゃんは凄く恐い思いをしてると思う……結構なお年だから、弱ってるかも」
 蜘蛛の妖獣については言葉で誤魔化せるだろうけれど、助け出したら優しく介抱してあげて欲しいと訴えた。
「大変な相手だけど、人の命が掛ってる……勿論、みんなの命も大事だから、ちゃんと無事に帰って来てね!」
 千春は、能力者達を元気付けるように明るい笑顔を浮かべて手を振った。

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参加者
コレット・サプネール(双碧之蝶・b01132)
氷室・雪那(雪花の歌姫・b01253)
ファレル・ヴァルハーレン(銀の暗殺者・b01559)
レン・カラミティ(中学生魔剣士・b02641)
高瀬・玲(カレーライスの女・b03516)
白銀・征人(太陽の翼・b05621)
雛宿・籠姫(深炎の魔弾術師・b05888)
斎木・塔子(カーボンマイスター・b06319)



<リプレイ>

●がらんどうの館
 能力者達が駆けつけた洋館は、小振りながらも立派なものだった。
 壁にびっしりと這う蔦や何処か色褪せた風体が、時代感じさせる。
「鍵は掛っていないようですね……」
 起動を終えると、高瀬・玲(カレーライスの女・b03516)は扉のノブをほんの少し引いてみた。
 重厚な木造の扉は微かに軋み、開いた隙間から洋館の内装が窺える。
「大事にならなければ、と思ってはいたけれどね……」
 氷室・雪那(雪花の歌姫・b01253)は相次ぐ似たような事件、そして不穏な空気を孕み動き出した事態に不安を覚えながらも、好き勝手にはさせないと強い想いを瞳に宿す。
「ちゃんとお婆さんを助けて……息子夫婦さん達のところに帰してあげなくちゃ」
 各地で蜘蛛の妖獣による犠牲者が出ていることに胸を痛めるコレット・サプネール(双碧之蝶・b01132)は、何処かに老女が捕らえられていると思しき二階の窓を見上げながら呟いた。
「全く……邪魔ですね」
 蜘蛛など鳥の餌になっていればいいものを、とファレル・ヴァルハーレン(銀の暗殺者・b01559)がフンと鼻を鳴らす。
「とにかく、先を急ごう」
 新たな勢力が現れるまでの時間を思い、レン・カラミティ(中学生魔剣士・b02641)が玲と反対側の扉のノブに手を掛け、一緒に引いた。
 深い軋みの音と共に、扉が開け放たれる。
 能力者の責務は果たさなければ。
 老女も決して見殺しにはしないと、強い決意を込めた白銀・征人(太陽の翼・b05621)が睨むように見据えたエントランスは小さなホール状になっており、目の前に二階へと上る階段が設えてあった。
 カーテンすら取り払われた窓からは、陽光が差し込んでおり内部が見えない程ではないものの、明かりとしては心許ない。
(「命懸けのHide&Seek……悦しませて頂きますわ♪」)
 胸の中で呟き、微かな笑みを浮かべた雛宿・籠姫(深炎の魔弾術師・b05888)が懐中電灯を取り出し、皆と共に暗がりを照らした。
 蜘蛛の巣を払う為と、細い木の棒を持った斎木・塔子(カーボンマイスター・b06319)を先頭に能力者達はいよいよ洋館へ足を踏み入れる。
 目指すは階段を上った先、二階へ向かった能力者達は、東西2つの班に別れて探索を開始した。

●Lost Call
 古い廊下が微かに軋む。
 靴音を響かせ、西側を探索する4人は次々と部屋を開け放った。
 廊下には幸い殆ど蜘蛛の糸は張っておらず、移動の苦にはならない。
 部屋には所々小さな巣が張られていたが、引き払って久しい館には家具もなくがらんとした寂しい印象を受ける。
「蜘蛛だ……!」
 気配に気付いたレンが、懐中電灯を翳し天井を照らす。
 響く足音に引き寄せられてか、小さな蜘蛛が姿を現した。
 すかさず足を止め、コレットの唇からか紡がれた眠りを誘う歌声で眠った小蜘蛛は廊下にぽとりと落ちる。
「(フレイムバインディングを使うまでもないですね)」
 効きのいいヒュプノヴォイスに、小声で玲が囁く。
「(先を急ぎましょう。時間の節約を心掛けなきゃ)」
 すぐには起きる様子のない小蜘蛛を一瞥し、塔子達も頷いた。
 次いで幾つか目の部屋に潜んでいた小蜘蛛とリビングデッドそれぞれ1体ずつをも眠らせ、彼らは先を急ぐ。
 床の軋みを、響く足音を潜ませることもなく。

 一方、東側も途中の部屋で出くわした小蜘蛛の1体を雪那が眠らせ、廊下を沿って南へと下っていた。
 南端からひとつ手前の部屋の扉を開けた瞬間、
「「……!」」
 目に飛び込んで来たのは、赤い目のような紋様を持つ大きな黒い蜘蛛と、その背後に張り巡らされた糸に掛けられた大きな繭だった。
 詠唱兵器を構える仲間達の傍ら、ファレルは早速連絡を取るべくトランシーバーを取り出す。
 振り上げられた大蜘蛛の前足を、征人が巨大な太刀で受け止めた。
 その間に、何度も通信を試みたファレル。
 しかし、時折耳障りなノイズが走るだけで、通信することが出来ない。
「……ダメですね、繋がりません」
 忌々しげにトランシーバーを見下ろし、しまい込む。
 仲間達は目を見張った。
「ホイッスルは……!?」
 通信が使えなければ、ホイッスルを鳴らして西班に伝えると相談していた筈だ。
 十字架の如き意匠の剣を大蜘蛛に突きつけた雪那の問いに、ファレルは軽く首を振るだけだった。
 何と言うことだろう。
 西班との連絡手段を失い、一瞬場が凍りつく。
 今となっては遅いが、万が一の為にもうひとり、連絡役を設けて置けばよかったのかも知れない。
 元々、連絡役が拘束されて伝達が遅れる可能性もあったのだから……。
 だが、能力者達に動揺するような猶予はない。
 彼らの都合などお構いなしに、大蜘蛛は侵入者を攻撃し始めているのだ。
 牙のような部位を開き、大蜘蛛はファレルに向かって糸を吐く。
 兆候を目視した彼は、二振りの剣のうち片方を構える。
 だが、糸を剣だけに巻きつけて隙を突き、もう片方の剣で大蜘蛛を突き刺す……その思惑は叶わなかった。
 絡みつく糸はファレルの腕にまで及び、麻痺の効果は全身に行き渡ってしまう。
「ぐぁっ……」
 更に、糸の巻きついた腕に骨が折れんばかりの激痛が走る。
「……お婆さんを助けましょう!」
 救助が最優先と決めていた。
 征人が声を上げると、頷いた籠姫が炎の蔦を生み出し、大蜘蛛に放つ。
「ふふっ、縛られる側に回った気分は如何かしら?」
 大蜘蛛が拘束された隙に、脇をすり抜けた征人が奥の繭へと走った。
 赤黒い染みが所々ついた繭を、巨大な太刀が一閃する。
 閉じ込められていた老女は意識もなく、かなり憔悴しているようだったが、胸が上下しているのを確認して安堵する。
 大蜘蛛の拘束は程なく解けてしまったが、老女を救い出して仲間達の許に戻るには充分な時間だった。
 老女を担いだまま後方へ退避しようとした征人は、足を止める。
 廊下から入って来たのは……西側に向かっていた仲間達ではなく、手前の部屋で眠らせて置いた小蜘蛛だった。
 小蜘蛛からの攻撃を阻むよう、雪那が征人と老女の前に立ち塞がる。
 放たれる、声の衝撃。
 ぴしり、と窓硝子に僅かな罅が入った。
 小蜘蛛は数度の追撃を受けたが、大蜘蛛は最初の衝撃を受けたところで追撃までは生じない。
「ここはお婆さんの思い出の家だ。お前達の居ていい場所じゃないっ!」
 老女を庇いながら、征人が思いの丈を込めた不死鳥のオーラを纏う斬馬刀を大蜘蛛に叩き込んだ。
 燃え上がる炎はじりじりと大蜘蛛の体力を奪う。
 が、蜘蛛達の反撃も手痛いものだった。
 糸に絡め取られれば身動きも効かず、その上猛毒に侵さてしまえば回復の手立てがない。
 大蜘蛛と小蜘蛛の挟撃に、老女を庇いながらの戦いは、この人数では分が悪すぎた。
 ヒュプノヴォイスやフレイムバインディングで一時的に拘束は出来ても、眠りは攻撃で解除されてしまうし、炎の蔦も能力者達が体勢を立て直す前に振り払われてしまう。
 猛毒に蝕まれていたファレルがやっとのことで糸を振り払い、足元から禍々しい腕を発生させる。
 頭を握り潰してやろうとばかりに闇色の腕は大蜘蛛の頭部を目指すが、軽くいなされ虚しく宙を掻いた。
 再び迫った毒牙に侵され、白燐奏甲での回復も間に合わず、ついにファレルは膝を付く。
 糸から抜け出そうと抵抗を試みながらも、籠姫は骨の軋むような激痛に歯を食い縛った。
 苦痛で掻き乱される脳裏に浮かんだのは、大切な人の顔。
(「塔子……!」)
 救いを求めるように、声なき声が叫んだ。

 西班は、復路を急いでいた。
 こちらには大蜘蛛の姿はなかった。
 それなのに、自分達が一番南端の部屋を調べるまでに至っても、一向に東班からは何の合図ももたらされない。
 連絡役に何らかの不具合が生じたのか、連絡自体出来ない状況に陥ってしまったのか――ともあれ、危急の状態に面している可能性は高い。
 無事であって欲しい、胸騒ぎに襲われながらも、能力者達は走る。
 走る彼らを、行き掛けに眠らせて置いた小蜘蛛やリビングデッドが阻んだ。
 小蜘蛛が吐き出した糸を、塔子はマントで防ごうとするが、それごと糸に巻きつかれて動けなくなってしまうという結果に至る。
「ここで余計な時間を食う訳には、いかないわ……」
 精神を集中し、コレットが柔らかな旋律を紡ぐとゴースト達は一斉に眠りの淵へと落ちていく。
 1体だけ眠らなかった小蜘蛛には、玲が生み出した炎の蔦を絡めて足止めし、レンは麻痺した塔子を連れて再び走り出した。
 更に、階段付近では足音を聞きつけて来たのか、一階にいたと思しき3体のリビングデッドに足止めを食らう。
 それもヒュプノヴォイスで即座に眠らせ、彼らは洋館の東側へと急いだ。

●零れた砂は戻らない
 開け放たれたままの扉に、戦いの気配。
 その部屋の中の状況は、切迫していた。
 助けた老女は征人が必死に庇っていたお陰で無事だったが、東班は既にファレルと籠姫2人の戦力を失っていた。
「籠姫っ……」
 塔子が悲痛な声を上げ、倒れた籠姫に駆け寄ろうとするも、間に立つ小蜘蛛がそれを阻む。
 胸の奥にふつふつと湧き出すのは、怒りなのだろうか。
 他の面々の攻撃が大蜘蛛に向いていた為、小蜘蛛は倒される程のダメージを受けておらず、西班が到着する時点まで生き残っていたのだ。
 状況を見るなりコレットが涼やかな歌声を響かせ、雪那達を回復させる。
 西班の能力者達は邪魔な小蜘蛛に攻撃を集中させ、玲の腕に据え付けられた刃が小蜘蛛に止めを刺した。
 味方の到着に、これで体勢を立て直せる……そう思った矢先だった。
 眠りから覚め、或いは拘束が解けたのだろう。
 西班がこちらに急ぐ際、足止めしていたゴースト達が部屋へと雪崩れ込んできたのだ。
 小蜘蛛2体に、リビングデッド4体。
 無視して大蜘蛛に攻撃を集中出来る数ではない。
 ヒュプノヴォイスの準備に入る塔子達の前にレンが飛び出た。
(「蜘蛛は、足が弱いというな……」)
 レンは足元を凪ぐように、低い位置で鎖鎌を払う。
 しかし、返ってきた手応えは鋼鉄の如き硬い感触。
 生物の蜘蛛と、蜘蛛の姿をしたゴーストは別物なのだと、改めて思い知らされた。
 そんな彼に、第一の目標を定めたゴースト達が群がる。
 運動で鍛えた俊敏さを生かそうとするも、それが通用するのは普通の人間の世界でのみだ。
 一般人の能力を遥かに凌駕しているゴーストには、さして意味がない。
 ひとたび常識を超えた戦いに入ってしまえば、一般的な技能が役に立つ局面はそう多くはないのだ。
 襲い来る糸や猛毒に、リビングデッドの攻撃が追い討ちを掛け、仲間達がレンから敵を引き剥がすことが出来た頃には、彼に戦う力は残っていなかった。
 その後は、もうどうにもならなかった。
 コレットの癒しや、幾つもの拘束術。
 時間さえあれば、この状態からでも崩れた体勢を整え、勝利することが出来たかも知れない。
 けれど、とうとう残り少ない砂が全て零れ落ちてしまう瞬間が訪れた。

●終の結び
 突然、窓から激しい打撃音と硝子が割れる音が響き、皆一斉にそちらに注視する。
 割れた窓硝子の隙間から、蜘蛛妖獣と同じ黒い艶を持つ節足が垣間見えた。
 運命予報で見出された蜘蛛達とは、既に全て遭遇している。
 確認するまでもなく、窓に張り付いているのは援軍だろう。
 あの足が数度打ちつけられれば、窓は程なくして破られてしまう。
「……撤退しましょう!」
 老女をぎゅっと抱き締め、征人が叫んだ。
 大蜘蛛もかなりの傷を負ってはいたが、闖入者が割り込むまでに倒せる確実性はない。
 守るべき命を最優先とする彼らには、選択はひとつしかなかった。
「私が眠らせるわ……!」
 雪那が最後のヒュプノヴォイスで眠りを誘い、多くの敵を足止めるべく援護する中、動ける者が活路を開く。
 眠らなかった大蜘蛛には玲が炎の蔦を放ち、抵抗を見せている間に部屋からの脱出を試みる。
「これ以上、かごめに指一本触れさせるものか……!」
 傷を負い続けながらも、塔子は傷付いた者達を庇って白銀の刃で小蜘蛛を叩き斬り、玲と共に殿として老女を抱えた征人と、深い傷を負った者達を逃がして後に続いた。

 複数の靴音が遠ざかっていく。
 能力者達が去った部屋に、新手の蜘蛛達に先導され、時代を折衷したような不思議な風体の男が現れた。
 がらんとした空間にあるのは、ぱっくりと口を開いた繭と、傷を負った大蜘蛛だけだ。
 それを見下ろしている筈の目元はゴーグルに覆われ、どんな表情を浮かべているのかさえわからない。
 男は連れて来た蜘蛛達に命じ、傷付いた蜘蛛を連れて去って行った。

 館を出て人気のない路地を走る。
 深追いをするつもりはないのか、既に背後には蜘蛛達の姿はない。
 このまま市街地へ向かえば、もう心配はないだろう。
 戦いの余波による影響なのか、老女の意識が戻る気配はまだない。
「畜生……!」
 紙のように白い顔を見下ろし、征人は押し殺した声を漏らす。
 守れなかった、お婆さんの思い出の場所を……。
 それでも、細く切れそうだった命の糸は繋ぎ止めた。
 弱くとも確かな鼓動が、彼女が生きているのだと顕示している。
 自分達の判断は間違ってはいなかった。
 苦味を覚える胸の中、一条の光を噛み締める。
 もし救出を後回しにしていたとしら、老女を繭の中に置き去りにして逃げなければならなくなった可能性もあるのだから。
 安全を確保出来る場所まで逃げ、救急車を呼んだ後は、然るべき機関に委ねるしかないだろう。
 籠姫の用意したお菓子を口にするところを見ることも、行く末を見守ることも叶わないけれど、蜘蛛の悪夢が大切な思い出を壊してしまわぬように。
 市街地の方角――沈みゆく夕日に向かって駆けながら、能力者達は老女の命と想いの行方を強く祈った。
 苦い砂利の散らばった道、しかしそれこそが明日へと繋がっている。


マスター:雪月花 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/02/13
得票数:笑える3  泣ける2  カッコいい1  怖すぎ3  知的2  せつない30 
冒険結果:失敗…
重傷者:ファレル・ヴァルハーレン(銀の暗殺者・b01559)  レン・カラミティ(中学生魔剣士・b02641)  雛宿・籠姫(深炎の魔弾術師・b05888)  斎木・塔子(カーボンマイスター・b06319) 
死亡者:なし
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