<リプレイ>
● 「わ、これは本当に秘湯ですね」 荷物を下ろしながら、辺りを見回す日向・るり(蒼空に揺れる向日葵・b06322)。 「bizarre moon」の8人は、やや険しい山道を踏み分け、ついに目的地である美人の湯に到達した。 「思ったより暑くなくて良かったよ」 やれやれと手団扇で扇ぐ蘭・梗也(シルキースター・b00967)。 何しろ、彼らはこれから残留思念を駆除する大事な役目を抱えているのだ。 「ゴースト? 聞いてないよそんなの」 と、サキュバスのお銀チャンと手を繋ぎ、早々と温泉に入る気満々だったデリシャス・ニィサン(シャーマンオブセクシーハート・b08405)。 「まぁいいじゃねぇか、幽霊つっても美人なんだろ? 目の保養目の保養」 デリシャスの肩をポンと叩きつつ、前向きな意見を述べるのは日夜野・導眞(パツィフィスト・b33203)。 美人の湯に出る地縛霊と言えば……やはり美人な筈だ。 「へぇ、じゃあそれもちょっと楽しみ」 それを聞いて、へらりと笑いながら言うのは叶・狂弥(気狂いピエロ・b30491)。 同じ戦う敵にしても、美人な方が楽しい。彼にとっては、楽しいか否かが非常に重要だ。 「こんな温泉貸切独り占めなんて欲張り過ぎるでしょ」 正論の神門・知秋(落下椿・b64365)。 「bizarre moon」の面々も既に十分美人揃いだが、そこは飽くなき美への探求心と言うか、さらなる向上心を持っている様子。 「山奥にこんな綺麗な所があるなんてね……」 さて、その一方で美貌や外見の事に興味がない様子なのは、忍瀬・瑠矢(黒薔薇に誓いし片翼の願い・b03938)。 美しい容姿や優れた才能は、望めば得られると言う訳ではないが、望まずに得られる者も居ると言う事だろう。 「ほな、さっさと始めよか? いけずな地縛霊は早めに退治して美人の湯に浸からんとね」 いそいそと詠唱銀の入った袋を取り出すのは、御幸院・小巻(艶くれなひの華いくさ・b51762)。こんな山歩きでも、普段と変わらず一分の隙もないメイクをしている。 景色と温泉を存分に満喫する為にも、手早く残留思念を駆除するとしよう。
● 小巻が詠唱銀を振りまくと、空中に煌めく青白い燐光。 次第にそれは人の形を成しはじめ――。 「出ましたね、お弁当と温泉が待ってるので気合で倒すのですっ」 「なんて……格好を」 ぐぐっと気合いを入れるるりと、思わず絶句して、それから慌てて視線を逸らす梗也。 現れた地縛霊は、長い黒髪の儚げな美女。スタイルもかなりの物で、いかにも温泉が似合う。そして何より(温泉に入るのだから当然と言えば当然なのだが)裸なのだ。 「蘭先輩、湯気で隠れてるから大丈夫ですよ」 「ああ、上手く隠れてるな……」 よくよく見て見れば、るりの言う通り局所的な湯気によって程良く隠されており、セーフティだ。 「うわ、こんな女の子ゴーストには手出せないよ」 「ひゅー! こりゃ予想以上だ」 「あ、本当に美人なゴースト。目の保養だよねー」 デリシャスや導眞、狂弥も、美女地縛霊に若干テンションアップ。 「……E……いやF? もっとあるか……」 一方、女性陣は若干心穏やかではない。知秋は地縛霊の豊かな胸を見て、自然と対抗心を燃え上がらせる。 「もう十分別嬪なんやさかいここをうちに譲りよし!」 「……だめ。私はもっと綺麗にならなきゃいけないの……だからこの温泉は私だけの物……」 直球で意志を伝える小巻だが、さすがに地縛霊も大人しく言う事を聞く気配はない。 実力に訴えるしかなさそうだ。
「もっと綺麗になったら……素敵な恋を見つけて……今度こそ幸せに」 「お姉さんは十分綺麗だぜ。なんなら俺と――って危ねぇ! いきなり魅了されそうになったぜ」 触れなば落ちんと言った風情のゴーストに、思わず魅了されそうになって我に返る導眞。 「そう簡単に魅了はされないぞ」 「……そうよね、私なんて全然魅力ないし……スタイルも良くないし」 「いや、唯でさえ魅了されそうな姿だとは思うが」 「うん、ゴーストじゃなかったら口説いてたのにな、勿体無い」 「だめだ、とても戦えないよ!」 俯くゴーストを思わず慰める男性陣。魅了されているとも言う。 「(……男性はこういった女性に魅了されるものなのか……?)」 「(男って生き物はこれだから……そんなに巨乳が好きか……ってか、私だって負けてないし)」 そんな男性陣を、あきれ顔で眺めているのは女性陣。 「(こんな近くに魅惑のボディがあんのにな……)」 抜群のスタイルと美貌をこれ見よがしにするゴーストに対して、憤りを禁じ得ない知秋。 「BS? させへんえ」 そんな時に頼りになるのは小巻。 彼女の赦しの舞が、男子の煩悩と女子の嫉妬心を鎮めてゆく。 「さ、ガンガンいっとくれやす!」 「うん、悪いけど成仏してもらうね」 狂弥のツインネックギターから、魂を揺るがす旋律が紡がれゴーストの動きを封じる。 「今のうちに……蘭先輩! 日夜野先輩!」 「よし、油断は無しだ」 るりの魔眼がゴーストを捉えると同時に、気を引き締め直した梗也が不死鳥の闘気を纏って間合いへ飛び込む。 「幽霊だし、女でも手加減しねーぜ」 間髪入れずに、導眞がハンマーを振り上げて強力なインパクト。 「どうして邪魔するの……私は綺麗にならなきゃいけないのに……」 能力者達の苛烈な攻撃を受けてなお、温泉への執着は変わりないゴースト。 「美貌だのスタイルだの、興味が無い……始末する」 「興味が無……くはないけど、消し炭になれ」 瑠矢のハンマーと知秋の椿鬼が、その執念を断ち切るべくゴーストを討つ。 ――バシィッ! 「……もっと……キレイ……ニ……」 煌めきながら、散ってゆくゴーストの体。 死して尚、美を追究し続けた哀れなゴーストは、ようやく現世の鎖から解放される。 「……いたた、あれ? 女の子は?」 そんなタイミングでお銀チャンに頬をつねられ、ようやく正気に戻るデリシャス。 「もう終わりましたよ。でもほっとしたら余計お腹が……」 能力者としての任務も完了した事だし、ここからは温泉と景色、そしてお弁当を楽しむ事にしよう。
● 「皆の好物も事前リサーチしてしっかり持って来たよ」 知秋が広げたお弁当は、出汁巻き、海老フライ、豚の生姜焼き、から揚げ、ポテトサラダ等々、皆の好物をふんだんに盛り込んだ豪華な物。 「(……小巻! 綺麗になりに来たんと違うの? ビキニやさかい食べたらお腹が出たん丸分かりなんえ?)」 お弁当を前に、美と食欲の間で大いに揺れる小巻。 「(せやけど……食べ物を前に我慢出来るわけないやないの!)……卵焼き、頂いてえぇやろか?」」 結局、食欲には勝てなかったようだ。 「あ、エビフライ……これ、貰っていいだろうか……」 瑠矢も表情には出さないが、嬉しそうな雰囲気は十分窺える。 「どうぞ、召し上がれ」 知秋の返事を聞くが早いか、数組の箸が我先にと自分の好物を捉えてゆく。 「景色が綺麗だとお弁当も美味しいですよね」 るりも瞳を輝かせつつ、甘い卵焼きに舌鼓。 「どれも美味そうだし!!!」 「デリシャス特製デリシャスなお弁当。ハート型のお弁当箱におかずと愛情いっぱい詰め込んだよ」 女性陣の可愛らしいお弁当に続いて、デリシャスがお披露目したのは殆どピンク色で統一されたド派手な弁当。 「……デリシャス先輩の弁当は……凄いな……」 「……すご、弁当がピンク色だ。素直にすごいよ先輩」 「……うん。お兄さんの本気を見た気がする」 みんな賞賛するが、美味しそうと言う意見が全く出ないのは気のせいだろうか。
● 腹ごしらえを終えた一同は、男女別れて水着に着替える事にした。 「自然のシャワーだな」 早々と水着に着替えた梗也は、まず滝に打たれて汗を流すことにした様だ。 滝は数条に分かれて流れており、強すぎず弱すぎず、まさに天然のシャワーと言った風情。 「フフッ、おニューの水着どうかな? 似合ってるかな」 黒とショッキングピンクのビキニと言う大胆な装いで登場したのは……デリシャス。 ぐねぐねと体をくねらせてセクシーポーズを決めている。 「うん。ちょっと……、遠慮したいかな」 素直な感想を述べる梗也。 「確かにビキニは好きだけどよ……っつか、デリニィのそれ、色が被ってないか?」 示し合わせた訳ではないのだろうが、導眞もピンクと黒の水着(こちらはごく普通の男性用水着)。 「水着着るのも久しぶりだな、海とかプールとか行かないし」 さて、同様に滝の水を浴びている男子。しかし一見、見覚えのない顔だ。 地元の若者だろうか? それにしては妙に垢抜けて居る気もするが……。 「狂弥か! スッピンなんてレアだから一瞬誰かと思ったぜ」 導眞が少しして気付くが、化粧を取った狂弥は確かに普段とは別人だ。 「せっかく温泉入るんだし、さっぱりしとこうと思ってね」 狂弥は別にすっぴんを隠す気も無いようだが、そこは素顔も十分に美形であるが故の余裕だろう。
一方その頃、温泉の傍で着替えた女子は一足先に温泉へ。 「大丈夫。うん、大丈夫」 ターコイズとブラウンのボーダー柄ビキニに身を包む知秋。胸元のリボンが可愛らしいアクセントだが、男子は目のやり場に困ってしまいそうだ。 「んー♪ 間近で見てもやっぱり別嬪やわ。ここは死守せなね?」 一方の小巻はピンクを基調としたプッチ柄のビキニ。 顔を寄せ合って、必要最小限のメイクを維持出来ているかどうかのチェックに余念がない二人。 すっぴんでも余裕で平均以上の容姿を持つであろう彼女達だが、そこはレディの嗜みと言うか、恥じらいという奴らしい。 「……初温泉……」 こちらは相変わらずマイペースな瑠矢。 すっぴんも別に問題では無い様子だが、水着もタンクトップ風のトップスに、男物のハーフパンツと色気は皆無。 ただ、表情にこそ出さないがみんなとの入浴を前に、やっぱり楽しそう。 「……」 一方で、先ほどから何度もため息を零しているるり。 白いワンピースタイプに、向日葵があしらわれた可愛らしい水着を着ているが、確かに先輩方と比べると胸元は少し……軽装に見える。 「いっぱい食べてるのにあんまり成長してくれないです……」 本人はしょんぼりと言うが、これから育つ事もあるだろうしサイズも個性である。 「お待たせー」 さて、お銀ちゃんに引っ張られたデリシャスを始め、男性陣も温泉へとやってきた。いよいよ混浴タイムである。
混浴――なのだが、男女はそれぞれ離れた場所に固まって入っている。(卒業生も居るが)学生らしいと言えばらしい光景ではある。 「……というか、視線を微妙に感じる。なんか、こう、ヨコシマな……」 「うん、男性陣は何の話で盛り上がっているんだ?」 「なんやろね、でもうちらも負けてられへんえ。ガールズトークで盛り上がろ」 男性陣の様子を窺いつつ、ひそひそと話し合う女性陣。 「俺はやっぱり白かな。形は気にしないのだけれど」 「何々? 好きな水着? そりゃビキニっしょー」 一方こちらは、ヨコシマな話題――もといボーイズトークに花を咲かせる男子。女子を遠目に見つつ、好みの水着について語り合っている様だ。 「俺の好きな水着は女の子が着てるやつ。女の子可愛いね〜。癒されるー。えへー。ムフフ〜」 デリシャスに至っては、完全に頭の中までお花畑になってしまっている。 「ところでデリ兄、カメラ持ってきてるなら皆で集合写真でも撮らないか?」 ふと提案する梗也。 残留思念も処理した事だし、綺麗な景色をバックに記念撮影というのも一興だろう。 「カメラ? 取るなら綺麗に撮ってね」 「知秋ちゃんならどんなカメラで撮っても綺麗に撮れるに決まってるよ」 「有り難う。でも胸元アップとかは駄目だから」 「えっ」 女性陣も記念撮影には乗り気のようだ。 「レンズは曇らないんだろうか……」 「そこは曇り止め仕様だからバッチリ!」 瑠矢のもっともな懸念に対しても、ぬかりは無い様。 「ほな、並ぼうか? ニィサンはんはシャッター切るから前で……日夜野はんと蘭はん、それに叶はん……叶はんは?」 並び方を考える小巻だが、狂弥の姿が見当たらず周囲をきょろきょろ。 「もしかして……叶先輩?! 全然普段と違うから分からなかったです」 かぶせ気味に声を上げたのはるり。 今までは男女別々に固まっていたので解らなかったが、改めて男性陣を見て狂弥の変貌ぶりに気付いた様子。 「眉消えちゃったよー、でも俺スッピンでもかっこよくない?」 興味津々で視線を浴びせてくる女子に、相変わらずへらへらと応える狂弥。彼の素顔が写ると言う意味でも、貴重な集合写真になりそうだ。 「はい、じゃあ撮るよー。並んで並んでー……小巻ちゃんもうちょっと真ん中に。蘭、もうちょい屈み気味で……OK、撮るよー!」 セルフタイマーをセットし、仲間の元に走るデリシャス。 ――パシャッ。
人里離れた大自然の景色をバックに、楽しげなbizarre moonの8人。 その背後に良からぬ残留思念が写り込むことは、もう二度と無い。
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参加者:8人
作成日:2009/09/05
得票数:楽しい13
えっち3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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