≪*お菓子の家*≫縁と祭りと


   



<オープニング>


 それは、いつもの調子の一幕。高宮・琴里(天つ風・b27075)が地方の農村に住んでいる知人から送られてきたという写真を茶菓子と共にテーブルの上に重ねて置いていた。
「……縁日の写真?」
「はい、知人から去年のお祭りの写真が送られてきまして、今年来ないかとお誘いが」
 団員の一人が写真を数枚取ると同じように他の結社の仲間たちも手にとって眺めていく。
「田舎の縁日ですか、小旅行はいいですねぇ」
「縁結びのいわれもある神社を中心にお祭りが開かれているそうですよ。皆さんもよければ一緒にどうですか?」
「縁結び……んー、縁が見つかると嬉しいのですっ」
「えんむすび? ……おむすびの親戚カナ?」
「縁結びは気になるわ。でも、屋台も楽しそうね。素敵な出会いをお願いしますの」
「お好み焼きから攻めるか、それともヤキソバから……」
「お祭りかいな、面白そーや……ん?」
 わいわいと和やかに会話がはずんでいる最中、蒼十郎が一枚の写真に目をとめる。
「って、これ残留思念ちゃうん?」
 眉間にしわを寄せて覗き込む蒼十郎の後ろから他の者たちも覗き込む。確かに写りこんだ神社の境内の藪には、普通なら写ることのないだろう不可思議なもやが浮かんでいる。
「残留思念…祭りもいいけど、こっちも放ってはおけないですね」
「今の内なら実体化させてもそんなに強くなさそうだから、サクッと倒して縁日を楽しめばいいんじゃないかな?」
「そうと決まれば、早速行く準備ですね」
 琴里の言葉を皮切りにみな準備をし始める。秋の縁日、彼らはどう過ごすのだろう。

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参加者
風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)
アルファ・ラルファ(ティアレタヒチ・b15679)
ユーリリア・イセンガルド(ウインドミル・b22726)
幸田・泉水(琥珀色の夢・b22961)
高宮・琴里(天つ風・b27075)
菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)
相馬・亮介(高校生青龍拳士・b43357)
空知・凪(華蝶拳士・b43818)
NPC:麦畑・知代子(ブラウニー・bn0137)




<リプレイ>

●祭りの道を行く
「ふぅ……、激しい戦いだったデス……」
 アルファ・ラルファ(ティアレタヒチ・b15679)が歩きながら額を手の甲で拭う。汗が浮いている様子には見えないが。
「大いなる災いやフェンリルにも勝とも劣らない強敵だったカナ。あの絶体絶命のピンチを、知代子さんのチョコレートで大逆転したなんて、今でも奇跡としか思えないデス!」
「何か不可思議な物語が語られてる気がするんだけど」
 語り部に引き合いに出された麦畑・知代子(ブラウニー・bn0137)が目を細めてアルファを見る。
「ざんりゅうしねんはごーすとをじったいかさせてみなでたおしました、まる」
「うーん、ほんとにいともあっさり片付いたなゴースト……」
 小学生の絵日記のような口調で菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)が説明したとおり特筆すべきことは何もなかったりする。相馬・亮介(高校生青龍拳士・b43357)も思わず蒼十郎の言葉にうなずいてしまう。
「さー、大勝利を祝って、今日はパーっと遊ぶですヨ♪」
 知代子のささいなツッコミは気にせずにアルファ一同の前に立って全身で感情を表現して見せる。その彼女の後ろにススっと紅葉柄の和服を身にまとったユーリリア・イセンガルド(ウインドミル・b22726)と幸田・泉水(琥珀色の夢・b22961)が並ぶ。
「と、いうわけで早速始めましょう〜」
「ぜひ一位になって皆さんに奢らせてもらいますよ」
 説明しよう! 今回は3チームに分かれて縁日の屋台を舞台にした勝負をすることになったのだ! 一番負けたチームが一番勝ったチームにおごるというのが今回のルールである! 以上説明終わり!
「金欠気味な財布を防衛するためにも負けられません」
 泉水の場合はすでに背水の陣な気もする。
「莱花さん凪さん、絶対に勝ちましょうなのです!」
 高宮・琴里(天つ風・b27075)が風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)と空知・凪(華蝶拳士・b43818)共に気合いを入れる。
「わいらも負けたら罰ゲームやさかい、手は抜かへんで!」
 恋人相手にも勝負事では妥協しないはずの蒼十郎、彼の後ろでは亮介と知代子が微妙な表情をしている。
 かくして三つ巴の戦いの火ぶたは切って落とされたのであった。

●三本勝負!
 最初の戦いの舞台は大小さまざまな景品がシートの上に置いてあるフィールド。そこを仕切る人物の隣には木製の輪が入った箱が置いてある。つまりここは輪投げの屋台。
「輪投げって単純そうに見えるけど、結構難しいのよね……」
 大体屋台の輪投げというのはかなりルールが厳しいものなのである。輪の中に景品がすっぽり収まるようにしないといけないし、途中で景品のどこかに引っかかってもダメ。そういうことを鑑みても客に取らせる気がないだろうというのがあるのもこの屋台の特徴である。大きなぬいぐるみとか。と、いうことでここでの勝敗はとった景品の大きさで決める事にする。まずは最初にユーリリアが動く。
「投げる時は……優しく、そっと包み込むようにふんわりと……」
 輪がユーリリアの手から離れた瞬間風が吹いた、気がした。……風は風でも突風だが。宙を舞った輪は景品をなぎ倒して行きボーリングならいいスコアが出るだろう。
「あれ?」
 勢い付けすぎである。2番手に進み出るのは亮介。
「遊びとは言え勝負なら全力! 行くぞー!」
 じっくりと対象を選ぶ。既に一人はずしている以上入れれば負けは回避できるが、できれば勝ちも狙いたい。
「いざ勝負!」
 程々の大きさのものに目がけて輪を放ると、しっかりとその中に収まる。手に入れたのは箱に入ったスナック菓子だった。
「なるほど、そうやるのね……」
 莱花は先二人の姿をどうやるかをじっと見ていた。代金と輪を引き換えると景品の中にデフォルメされた猫のぬいぐるみがあるのに気付く。大きさといい形といい明らかに難易度が高そうだ。
(「猫……」)
 意を決して輪を投げる。投げられた輪はきれいな放物線を描きすっぽりと猫のぬいぐるみをその中に収める。
「きゃー、入った! 何だ、とっても単純じゃない!」
 一戦目、勝利チームB、敗北チームC。

 雛壇状になった台の上にひな人形の代わりに菓子箱や人形が積まれている。中には据え置き用のゲーム機なんてのが置いてあったりする。仁義なき縁日勝負、2本目はここ射的の屋台が舞台となる。エントリーは琴理、泉水、知代子の三人。それ以外のメンバーはそれぞれの景品で大中小と目星をつけていく。それぞれに3点、2点、1点という感じでポイント制で勝負を決める。
「よし、じゃあ私からやらせてもらうわね」
 くるりと射的の銃を半回転させてコルクの弾丸を上から詰める。
「風よし、バネよし、まずは試し撃ち……」
 適当にまずは一射して銃のクセを見てから、残った弾で軽い景品から狙っていく。
「あれ取り易そーちゃう? 頑張ってや♪」
 蒼十郎の刺すような重心の高い物をしっかり落として行き最終的に小さなもので点数を稼ぐ。
「ま、こんなものよね」
 得意げに手に入れたチョコレート菓子を開ける。なんだかんだで細かく刻んだ点数は中々のものとなっている。
「ふふふ、中々やるわね。だけどこの泉水と競う身の不幸を呪いなさいな」
 言いつつ銃を構え狙う対象を探す泉水、だが途中で動きが止まる。
「あ、ぬいぐるみかわいいデス。あれ、狙ってくださいデスよー」
 アルファがノーテンキな事を言う耳に入らない。なぜならば狙おうと思っていた小物が大体知代子に撃ちとられていた後だから。彼女の方に視線を向けると目をそむけたあたり狙ってやったらしい。出鼻をくじかれた泉水は幾つか落とすものの景品のバランスを崩すのに弾を使いすぎて追いつけなかった。また一歩財布のピンチが近づいたっぽい。
「最後は私ですね、負けないですよ〜」
 琴理が狙うのは台の隅にあるふわふわのぬいぐるみ。既に泉水が頑張ったおかげで幾分か落としやすくなっている。慎重に弾を当てていき……。
「やった、リベンジ完了です!」
 手に入れたぬいぐるみをギュッと抱きしめて満悦の表情を見せる琴理。けれどポイントそのものは追いつけずこの勝負はAチームが取る。……また連敗のCチームは罰ゲームが決定した。

 お祭りの定番と言えばやはり金魚掬いだろう。祭りに行ったことのあるものであればどこかで一回はやった事がある……はずである。最後の戦いはこの金魚掬いが舞台となる。蒼十郎、凪、アルファが横一列に並ぶ。ポイが使えなくなるまで最も多くの金魚をとった者の勝ちである。
「……む」
 おもむろに凪が隣にいたアルファから離れる。アルファ本人は渡されたポイを見て不思議そうな表情を見せている。既にこの時点でこの先の展開が見えるような気もするが気にしない。
「……やはり気をつけるべき相手は……」
 すっと目線を蒼十郎の方に動かす。手慣れた様子でポイを交換してもらっている。明らかに手練である。
「お、準備でけたか? ……ほな始めよか」
 凪の視線に気付いた蒼十郎が彼とアルファに声をかける。
「自宅の池の鯉で練習した成果、見せてやるぞ!」
「魚を取るのは大得意なのデス! きっとこれでも大丈夫デスよ!」
 二人とも力強く返す。
「じゃ、………スタートや!」
「……あっ!?」
 アルファが開始数秒で声を上げる。
「……あの、その、ユーリさん、泉水さん、ごめんなさいなのデス……」
 アルファ0匹で脱落。そんな彼女の様子を横目で見ながら凪はポイを水の中で踊らせ次々と椀の中に入れていく。練習の甲斐はしっかりと出ているようである。
「……む、破れてきたようじゃな」
 凪はそこまで見るともう十分だろうと、大物狙いへと切り替えてあえなくポイが使い物にならなくなる。
「まあ、これだけとれば大丈夫じゃろう」
 安心していた凪が蒼十郎の方はどうなっているかを見る。
「何じゃと!?」
 見ればペースは遅い物の凪よりも多くの金魚が彼の椀の中を泳いでいる。
「あー、こっちも破れてもたか……やったらコレや♪」
 彼はポイが破れ始めては別のところを持ち替え金魚をすくい取っていく。一枚のポイの使い方が結果として勝負の決め手となった。
「悪く思わんといて、小さい頃よーさんやってたんや♪」
 練習だけでは埋められない経験値の差がはっきり勝負に現れた形となった。これにより勝利回数が最も多いのはAチーム、敗北回数が最も多いのはCチームとなった。

●縁の祈り
 気持ちよく三連敗したユーリリア、泉水、アルファは奢る事に。
「……ぁうー……、今月はお小遣いがピンチ、カモ……」
 アルファが財布の中身を確認しながら呟く、がそれで困るのなら途中途中で自分の為に出店に寄っていたどーなのか。
「……」
 ユーリリアも財布の中身を見てため息をつく。だから君も勝負中にタコ焼とか買わなければ以下略。三人が奢ることになったのはふわふわの綿菓子である。
「子供っぽいかもしれないけど、こういうの好きなんだよねー」
 棒についた綿菓子を食べながら呟く。そんな勝者の姿を琴理はじーっと見ている。
「ほれ、食うよな?」
 蒼十郎がそんな様子の琴理がねだる前にひょいと綿菓子をちぎって渡す。一度きょとんした表情を見せるものの、すぐに笑顔に変わる。
「……ごちそうさま、って言うべきかしらね」
 知代子が幸せそうな二人の様子を見て呟く。そんなこんなで一行は賑やかしく歩いて行き神社の境内へとたどり着く。
「縁結びの神様なのね。ここでお願いをしたら、素敵な人と出会えるのかしら」
 莱花は実家で度々出ている話題を思い返しながら手を合わせに宮へと歩いて行く。そんな彼女と同じ思いなのか他の女子たちも同じ方向へと向かう。
「……ご縁を結びたい方が、居るのですよね? 違うです?」
 歩きながら琴理が知代子に話しかける。突然の質問に知代子はしどろもどろになる。
「そ、その縁を結びたいというか結ばれてるっていうかもうちょっとっていうか……」
 声の大きさが尻すぼみに小さくなっていく。ついでに知代子の顔も赤く染まっていく。そんな風にして賽銭箱の前に集まる。
(「良い人と出会えますように」)
(「わたしにもいい縁が巡ってきますように」)
(「素敵な出会いがありますように……もしすでに出会っているのなら、素敵なイベントが起こりますようにっ」)
 それぞれが色々な思いとともに願いをかける。
「『縁』って、お友達との巡り合わせも、そーなのカナ?」
「いや恋愛に限ったことじゃないから、そういうのも縁だと思うよ」
「うむ、わしもそう思う。ここにいる結社の仲間に出会えたことへの感謝と、新しい出会いを願っておこうかの」
 アルファの問いかけに亮介と凪がそう返す。そう聞いたアルファは前へと進み出て、他の者にならうように手を叩く。
「こんな素敵な縁を結んでくれたこと、ありがとうデス! これからも、素敵なお友達と仲良くなれますよーにお願いしますデス!」
 大きな声で紡がれた願いは澄んだ秋の空に吸い込まれていく。縁は紡がれ織りなして広がっていく。これはそんな風にして生まれた穏やかな一つのエピソード。これからもそんな風にして縁が縁を呼ぶ事を願いながら一行は神社を後にした。


マスター:西灰三 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/10/22
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死亡者:なし
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