<リプレイ>
●古きを納めし館 廃墟となった博物館。闇を呪う光の塊が周囲を照らす中、天代・美輝(言霊歌い・b11644)の戦歌が響く。 「with you 剣を執れ with me 拳を握れ」 かき鳴らすギターと歌声が反響し合い、室内を包み込む。それは、立ち塞がるゴースト達を薙ぎ払う、魂の歌。 「with you 銃を構え with me 弦を鳴らせ」 「あなた達に構っている時間は、あまり無いのよ!」 その歌に合わせ、神崎・遥(紅月の魔女・b03039)の持つ槍の穂先から魔弾の炎が解き放たれた。歌に苦しみ悶えていたリビングデッド警備員が、その炎で焼き尽くされる。 だが今日、9人の能力者達がここに来たのはゴーストの殲滅が目的ではない。 「あいつらが逃げる前に、追いつかないとなっ!」 蹴りを思い切り叩き付けながら、叫ぶのは三崎・優児(少年活劇ヒーロー・b48478)。彼の言う『あいつら』……それはこの奥にいる筈の襲撃者。 「でも、放ってはおけないしね……」 己の生み出す影を広げながら、氷室・雪那(雪花の歌姫・b01253)は双剣を構える。影は警備員の足元を切り裂き、そこから毒を埋め込んだ。 「まずはゴースト退治、しっかりやりましょうか」 「よし……日方さんっ!」 新たな半身、ケルベロスオメガへと指令を飛ばす八伏・弥琴(綴り路・b01665)。応じて唸りをあげ、一直線に突き進んだ。 「さて、私達もいきましょうか」 日方が背負いし黒刃が道を開き、そこに飛び込むは碓氷・宗一郎(光源氏計画蜘蛛童編・b47117)の蜘蛛童・爆、胡蝶。 主が闘気の篭手を纏わせれば、忙しなくその足を動かして叫びの地縛霊へと一気に肉薄、毒の牙を突きたてる。 「回復はうちに任せてぇな!」 全力で攻撃を加える能力者達の背を、水上・結奈(神代の雪巫女・b45505)が支える。凍て付くような波動に乗せて白燐を撒けば、たちどころに傷は塞がった。 「よしっ……行くぜ!」 その力に後押しされ、一気に間合いを詰める鎖天・契(闇夜を纏う陽の刀・b00883)。 「鎖天先輩、お願いしますっ!」 「おうっ! 早い所、終わらせてもらうぜ……!」 行く手を遮る警備員は山神・伊織(龍虎双握・bn0002)が引き受け、その隙に地縛霊の懐に潜り込む。 拳が獣のオーラを纏うと、真っ直ぐに地縛霊を粉砕した。 「このまま一気に片付けるぞ!」 警備員を蹴り倒しながら、優児が叫ぶ。多少強いゴーストとは言え、アビリティを惜しまず力を振るう能力者の前に、このゴースト達では太刀打ちできない。 「これで、倒れて……!」 程なくして、弥琴の放つ呪詛が遮光器土偶型の地縛霊を打ち倒す。倒すべきゴーストを全滅させ、しかし休まず能力者達は奥へと向かう。 迅速にゴーストとの戦いを終わらせたのが幸いしたのだろう。しばらく進むと、能力者の耳に剣戟の音が届いた……。
●再会の白 ゴーストとの闘いを繰り広げる襲撃者達。大人数が向かえば警戒され、逃亡されかねないと言う判断から、まず4人が乱入する。 「お前達は……!」 「まずは、共通の敵からがセオリーでしょ?」 能力者達の姿を認め、こちらにも武器を向けようとする襲撃者達。それを押し留めるように、遥がゴーストへと武器を向ける。 「ふん、信用出来るものか!」 「よく知らない相手だから、と幼い子供のように怯えて。それがジョンブルのやり方ですか?」 それでも槍の穂先を向けるマイルズに、挑発を口にする宗一郎。 「ふん。安い挑発に鎌掛けか、やはり子供……」 「ウチらが子供やって言うんは認めるけど、子供やさかいと言うて何もせぇへん訳やない!」 その台詞を遮って、結奈も言葉を畳み掛ける。 「誰もそんな甘っちょろい信念でやっとる訳やない」 「む……」 言葉に詰まるマイルズに美輝も重ねる。 「子供の喧嘩じゃないって言ったよな。俺らもそうだ。ガキの使いであんたらの邪魔しに来てんじゃねぇ」 「ふん……そう、子供と言う所に拘るのが……」 なんとか言い返そうとするマイルズを、ランドルフが片手を上げて遮る。 「後にしろ。今はゴーストが先だ……そうだな?」 「ええ。手早く片付けましょう」 遥が頷くと、彼らはゴーストに槍を向ける。やはり彼らはランドルフに決断を委ねているようで、彼が判断を下せば後は異論は出ない。 マイルズも渋々と槍を構え、共闘してゴーストと戦い……そう時を置かず、打ち倒した。 「さて……またお逢いしましたね」 その場のゴーストが全滅すると、まず先んじて切り出すのは宗一郎。 「先日は名も名乗らずに失礼しました、私は碓氷・宗一郎と申します。この子は胡蝶と」 それを切欠に、残りの3人も名を名乗る。それを聞き届け、ランドルフは頷いた。 「こちらの名は、全員把握しているな? 他の者はどうした、お前達だけではあるまい」 「今は分かれて、他のゴーストと戦闘しているわ」 実際には、近くで待機している。だが、ゴーストが邪魔をしないよう見張っているのだから、必ずしも嘘とばかりは言い切れない。 「では、何の用だ。前回、すでに交渉は決裂したと思ったがな」 「今日は、こちらをお渡ししに参りました」 宗一郎が取り出し、差し出すのは、後日の会談を申し込む親書。 受け取ったランドルフはその場で封を開き、目を通すと仲間達に回す。 「ひと様の詠唱銀を強奪すんのは分別の無いガキのすることじゃねぇってのか? なら筋通してもらおうか」 文面に目をやるメルヴィナへと、美輝が言葉を紡ぐ。 「そこまでしてまで何しようとしてるか説明してもらえねぇかな、姐さんよ。今じゃなくてもいいから」 「挑発と嘆願だけで何でも叶うと思っているなら、そういう所が子供なのです」 眼鏡を押し上げ、彼女は淡々とそう口にした。 そうして全員が文面を読み終えると、ランドルフはその手紙を懐にしまった。 「ともあれ、これは預かろう。返事をするかどうかは請け合えないが」 「それで、構いません」 頷く宗一郎。最低限の目的を果たし、逃げられる心配が薄いと見て、残る6人もそこに合流する。 「話を聞いてくれたみたいね、ありがとう」 「礼を言われるような事じゃないわ」 雪那の言葉に、ツンとした表情で返すミリセント。 「……前とは連れが違うんだな」 「あ、こいつは日方さんって言うんだ。それと、僕は八伏弥琴、よろしくね」 ケルベロスオメガに興味を示すエドガーに、笑みと共に名乗る弥琴。興味津々と言った様子のエドガーだが、ミリセントに小突かれ表情を引き締める。 「さて、手紙の他に用件はあるか?」 「特にありませんが……しかしどうやら、お互い消耗しているようです。ここを出るまでの間、協力して頂けませんか?」 宗一郎からの共闘の申し入れに、再度考え込むランドルフ。 「いくら私達が信用できないと言っても、ゴーストよりはマシでしょう?」 「……どうする?」 己だけでは判断し難いと考えたのか、他の仲間へと意見を求める。 (「サイラスはこっちに興味津々って感じで、マイルズは敵意を隠しきれてないようだな……」) その様子を観察しながら、襲撃者達の力関係を探る契。大胆なサイラスと慎重なマイルズが意見を釣り合わせ、エドガーとミリセントはまだ子供、となれば視線はメルヴィナに集まる。 「……構わないと思います。恒久的に仲間でいろ、と言う訳でもないでしょうし。ですが、ゴーストの詠唱銀は渡して貰います」 「いいんじゃないかしら。ね?」 その条件に頷きを返す遥。能力者達からも異論が出ず、ほんの一時の同盟が組まれる事となった。
●仮初めの共闘 15人と言う大所帯での帰り道。道中に現れるゴーストを、その戦力によって打ち倒していく。 (「……随分、じろじろと見られてるな」) 戦いのさなか、襲撃者達の強い視線を感じて少しやり難そうにする契。彼らは、少しでもこちらの闘いから情報を得ようとしているようだ。 「まあ、それはこっちも同じなんだが……」 騎士たちの戦いぶりは、アザレアの時と変わらない。統制と連携の取れた、訓練された戦闘だ。 「そういやさぁ……」 ゴーストのいない時を見計らい、優児に話しかけてくるエドガー。 「……なんだよ?」 「いや、前回のアレ、なんだったんだ? 裏切りがどーのとか、ニセ騎士がどーのとか」 その問いに優児が答える前に、ミリセントが呆れたようにため息をつく。 「……まだ気にしてたの?」 「いや、やっぱ気になるだろ」 まあただの鎌掛けだったのだが、それを優児が明かす前に何やら言い合いを始める2人。 「所詮、ちっちゃい子の言う事じゃない、あんまり気にしなくても……」 「……ちっちゃい子、じゃない、ユウジ、だ」 かろうじて会話に割り込んで、そう口にする。 「ゴーストとの戦いに……大人も子どもも関係ない」 「あたしは関係あると思うけどなぁ……」 ふむぅ、と考え込むミリセント。横から結奈も声をかける。 「子供やさかい出来る事もあるんや。大人やったら見えざる狂気に侵される事が多いしな?」 「多寡の問題じゃないと思うがね」 彼らの会話を楽しげに聞いていたサイラスが口を挟む。結奈はちらりとその様子を伺うが、特別な反応はない。 「前回の話といえば……山神さんを襲ったのは気乗りしなかった、って」 「小娘一人襲うより、強敵相手の方が楽しいのは当然だろう。だがまあ、趣味だけで戦ってはいられないのが大人の辛い所だな」 弥琴の問いに笑うサイラス。そんな会話の横で、遥は少しでも情報を引き出そうとランドルフに話しかける。 「そんなに詠唱銀を集めて貯金でもする気なの? 又はメダリオンの維持に必要とか、それともメガリスとかかしら?」 「元々、詠唱銀を集めずとも溢れているのはこの国ぐらいな物だ。日本以外の能力者なら、詠唱銀は皆欲しがるだろう」 鎌掛けには反応を見せないが、言葉は返ってくる。嘘ではないようだが、全てを語っている訳でもなさそうだ。 (「やっぱり、詠唱銀を集めるのには何か目的があるみたい……?」) 「日本は最大のシルバーレインの観測地ですものね」 考え込む遥に代わって、次は雪那が話しかける。 「でも……争い合うしかないなんて、嫌よね」 「避けられる争いを無理にするつもりはないが、しなければならない争いを避けるつもりも無いな」 言葉を返すのはマイルズ。彼はあまりこちらを気に入ってはいないようだ。 「お前達が詠唱銀を渡せば、争う必要も無くなるんだが」 「まあまあ、マイルズ。今は共闘中ですよ」 そんな彼を冷静に宥めるメルヴィナ。ふん、と不機嫌そうに黙り込む。 「あまり気を悪くしないでくれ。悪い奴じゃないが、頭が硬いんでな」 取り成すランドルフに、ますます憮然とするマイルズである。
しかし、そんな和やかな共闘も長くは続かない。これだけの人数が揃えばゴーストに苦戦する事もなく、しばらくの後、彼らは入り口へと辿り着いた。 「……ここまで、だな」 共闘の終わりを告げるように、ランドルフはそう口にする。 「さて、どうする? もうゴーストに邪魔される事は無いが」 「ここでケリをつけてもいいけど……今回は平和的に別れたいな」 優児の言葉に、頷きを返す。 「まあ、そうだろうな。こちらも、ここまで来て事を荒立てるつもりはない。無い、が……」 ランドルフは、能力者達を見回して、重々しく問いかける。 「これから先も……お前達は、邪魔をしに来るつもりか?」 「ああ。この先何処に詠唱銀を取りに行くにしても、俺らも必ずそこに行く」 頷きを返す美輝。真っ直ぐにランドルフを睨みつける。 「悪用しないって確証が無いから、あんたらの行動は見過ごさない」 「貴方達が日本で行動を起こす限りは、私達はすぐに再会する事になるわ。今日のようにね」 遥も言葉を重ねる。それは、今後も敵対し続けると言う宣言に他ならない。 「あなたたちが目的を明かせば、協力できるかもしれないけれど……」 言いながら様子を伺った雪那は、小さくため息をつく。 「その気は、ないみたいね」 「残念ながら、な」 頷き、そして彼らは身を翻す。もう、ここですべき話は終わったという事だろう。 「それでは。またお逢いしましょう」 その背に宗一郎が声をかけた。彼らはちらりとこちらを振り向き、そして、すぐに再度背を向ける。 こうして、謎の集団との二度目の邂逅は幕を下ろした。
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参加者:8人
作成日:2009/10/06
得票数:楽しい4
笑える3
カッコいい46
知的98
ハートフル6
えっち8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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