≪夕陽に舞う鴉≫猪鍋と心霊写真


<オープニング>


「猪鍋を食べにいこう!」
 南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)は集まった結社の仲間に向かい、第一声を発した。
「……ではなかった、この雑誌を見てくれ」
 レイジが取り出したのは、鍋物がおいしい穴場の店を特集した雑誌だった。
「おいしそうだね」
「これは期待できますね」
 などと、仲間達の期待が声になってもれる中、レイジは再びわざとらしくせき払いをしてから話を続けた。
「違う。いや、それも目的の一つではあるが、その店の周りを映した写真に、見えるだろう……残留思念が」
 仲間達がみなそろって問題の写真を注視する。
 そこにはたしかに心霊写真らしい、おぼろげな何か、が映りこんでいた。
「なんだろうこれ? 動物?」
「いや、人かも……、四つんばいに見えないこともないし」
 あれこれと論争してみるものの、やはり心霊写真。何が映りこんでいるかまでは特定できない。
「現場はとある田舎町。夕方になれば人通りも少なく、店の周りは寂れていて基本的になにもない。まさに穴場の店、という感じだな」
 雑誌の説明文を指差しながら、レイジは話を続ける。
「店とは少し離れた場所だし、夕方になれば誰にも気付かれずに現場に向かえるはずだ」
 レイジの言葉に仲間達が頷く。
「つまり、仕事が終われば猪鍋を楽しめばいいわけか。いつか食べに行こうって話してたもんな」
 誰かがそう言い出すと、結社の面々は楽しそうに雑誌の情報に目を通し始め、雑談に花を咲かせる。
「たしかに、猪鍋も楽しみではあるが、相手は残留思念。放置すると被害が出るかもしれん。それを倒すのは俺達の仕事だからな」
 レイジの言葉に、仲間達は再び強く頷く。
 本来の目的を忘れずに、されど寒くなってきた季節にちょうど良いおいしそうな猪鍋に思いをはせながら、結社……夕陽に舞う鴉の面々は決意を固めるのだった。

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参加者
月島・眞子(トゥルームーン・b11471)
サラ・モラトリアス(日陰の眠り姫・b36309)
月夜野・流火(金眼の獣・b42065)
南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)
風蔵・魁(はぐれ建築士・b47950)
城崎・モクレン(冥府の焔に抱かれて・b62861)
清澄・ソウヒ(蒼く緋き剣巫女・b65426)
柳谷・凪(お気楽アーパー娘・b69015)



<リプレイ>

●猪鍋を目指して
 とある田舎町、空を見上げれば、夕空に少しずつ藍色が広がっていた。
 まわりに人通りはなく、まさに寂れた田舎という感じだろう。そんな中、ある意味その雰囲気には似つかわしくない奇妙な若者の集団があった。
「うーん、大事になる前に何とかしないとですねぇ」
 サラ・モラトリアス(日陰の眠り姫・b36309)は問題の写真を眺めながら、悩ましげな表情で呟いた。
 見ればその写真には、奇妙なものが写りこんでいる。世に言う心霊写真そのものといった感じだろう。
 特殊な能力を持つ彼らにとって、未来に起こりえる問題の種を放っておくことはできない。そういうわけで、能力者たる彼らは数人の集団で写真の現場に向かい歩いていたのだが……なぜかどこか、楽しそうな表情の者が多かった。
「大前提はこの世の常識を護る為ってのは承知しとりますよけど偶にはえぇやん早くナベしたいが為に張り切っても今日くらい動機不純でもやってナベめっちゃ楽しみやもん!」
 と一気にまくしたてたのは風蔵・魁(はぐれ建築士・b47950)だ。
 その言葉に、仲間達はみな肯定するように頷き返す。
「バッチリ退治して皆で冬の鍋を満喫するぞ!」
「猪鍋なんて食べたことないからとっても楽しみなのね」
 月島・眞子(トゥルームーン・b11471)が勢いよく声をあげれば、月夜野・流火(金眼の獣・b42065)が期待に膨らんだ表情をみせる。
「ゴーストなんてさくっと倒して鍋食おうぜ、鍋!」
 城崎・モクレン(冥府の焔に抱かれて・b62861)は待ちきれないとばかりに少し早歩きになっていた。
「そう急がなくても、問題の場所はこの辺りみたいだぞ」
 南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)が言う通り、気づけは写真の拝見とよく似た光景があたりに広がっていた。あとは、問題の心霊部分が写り込んでいる場所を絞り込むだけだ。
「ゴースト退治もしっかりとですよ。お仕事終えて、皆さんでお鍋を楽しみましょう」
「皆、がんばろ〜ね♪」
 清澄・ソウヒ(蒼く緋き剣巫女・b65426)と柳谷・凪(お気楽アーパー娘・b69015)が言うように、彼らにはしっかりとゴースト退治を頑張る理由がある。士気もあがるというものだろう。
「どうやらこの場所みたいだな。四足のゴーストか、それにしても……期待されてるな、猪鍋」
 問題の心霊写真に写りこんだ四足の何かを指差しながら考え込むレイジに、皆の視線が期待の現れとなって集まっていた。
「俺も楽しみだが、とにかく今は目の前の敵に集中して……それじゃあ、みんな、準備はできてるな?」
 詠唱銀を手に、写真の場所と同じ位置になるよう確認しながら、レイジは皆に語りかける。
 そして、仲間達の頷きを確認したのち、詠唱銀がふりかけられた。

●猪出現
 イグニッションを終え、残留思念が形を持つのを待っていた能力者達はその結果に驚くことになる。
「相手は猪だったとは……偶然だな」
 レイジの言う通り、なんの偶然なのか残留思念は猪のような妖獣として実体を持ち襲ってきたのだ。
「本気で腹が減る前に倒してやるからな! 見れば見るほど美味そうなんだよ!」
 モクレンは叫びながら、腹の虫を押さえ込み、後方からシューティングファンガスを叩き込む。
 事のついでに猪鍋を楽しみに集まった彼らにとって、猪の姿はさんざん意識し続けていた相手といえるだろう。
「はわ、皆さんに護りの障壁ですよぅ」
 サラはサイコフィールドを展開し、仲間達の援護に回る。
 現れた妖獣の動きにあわせる形で能力者達はすぐさま戦闘態勢へと移行していた。
「……なんというか、ほんとに猪突猛進なんだね!」
 相棒のマトラに指示を与え、自分は前衛に駆け出しながら凪が呟いた。
 戦闘態勢をとり、身構えていた彼らの間を妖獣は猛スピードで突き抜けていく。確かに巻き込まれれば中々の攻撃力なのだろうが、動きが直線的すぎるせいで彼らにとって、見切るのはそれほど難しいことではなかった。
「月島さん。よろしくお願いしますよ」
「そのまま反対側に吹っ飛べ〜〜!」
 後方からソウヒの祖霊降臨をうけた眞子はすかさず妖獣の前面に移動し、ロケットスマッシュで敵の体をはじき返した。
「猫のキッスは死の甘さだよ。電撃くらってしびれちゃいな」
 猫の耳や尻尾をゆらしながら流火の放った雷の魔弾がさらに妖獣に襲い掛かる。
「あは、猪突猛進言うても動けんかったら意味あらへんやろー?」
 連続攻撃に弱る妖獣の姿を見て、魁が迷宮陣を展開し、妖獣の動きが目に見えて止まった。
「っく、みんな一気に畳み掛けるぞ」
 相棒のケルベロスオメガに指示を与えながら、レイジ自身はダークハンドを撃ち続ける。
 動きが止まった隙を見逃すはずもなく、能力者達の攻撃が一斉に妖獣に襲い掛かる。
「勝利のVなのだ〜♪」
 たからかに叫ぶ凪の言葉通り、妖獣はやがて地面に倒れこみ、そのまま絶命した。

「ふー、ほなちっと除霊してきますわ」
 心霊写真をとられるような場所だけに、今後も同じようなことがあるともかぎらない。そういった事態を防ぐため魁は仲間達から離れ、除霊建築学によるお祓いに入る。
 戦闘後の高揚感のまま、しかし彼の頭の大部分には未だ雑念が残る。
「……猪鍋はよ食べたいな」
 呟きながらも、手は抜かず、しかし鍋への期待は膨らんでいくのだった。
 
●鍋屋、入店
 辺りが暗闇に包まれた、腹の虫が空腹を訴えかける頃合い。
 彼らはとある猪鍋屋に入店していた。店内は隠れた名店的な雰囲気に包まれ、掘りごたつ敷きの席に座り込めば、田舎の実家に帰ってきたような安心間に包まれる。
 仲間達は賑やかに談笑しながら、鍋を囲む。
「あ、今日の鍋奉行はレイジさんです」
 騒がしくお喋りに花を咲かせていた眞子だったが、ふと思い出したようにレイジの方を見つめ呟いた。
「う、ま、まかせろ」
 そんな皆の期待に答えようと、具がのせられた皿をレイジが手にとった。
「豆腐もたっぷりいれるのね」
 流火の呟きに、さっそく奉行様が動きだす。
「よし、流火豆腐だな? モクレンは……さすがファンガス、キノコもどんどん用意するぞ。眞子さんはつくねに春雨、凪はネギか」
 仲間達の注文どおりに、味噌仕立ての寄せ鍋がどんどん賑やかに彩られていく。
「これこれ! 待ってました! 腹減ってるからすげえ美味いだろーな。気が済むまで食べてやるぜ」
 モクレンは自分の好きなキノコを見つめながら、目を輝かせる。
「私はお鍋はお野菜中心で、お肉は食べたい方にお譲りしますね」
 ソウヒは何を食べようかと考えながら、周りのみなの様子を伺う。きっと彼女の手によって、食卓で肉だけを食べるような者がいれば、野菜をこっそり入れられることになるだろう。
「そろそろええ具合かね。折角やし、頂く前に乾杯しましょ?」
 魁はグラスを手に取りながら皆に語りかける。もっとも、アルコールではないわけだが……。
「コップもったか? じゃあ今日の勝利に乾杯!」
 程よく煮えてきた猪鍋を囲みながら、レイジの言葉を合図に仲間達がグラスを鳴らしあう。
「それじゃあ、さっそく鍋の方もいただこうか」
 レイジの手によってそれぞれの小皿に好みの具が振り分けられていく。
 というのは、平和な風景で、血気盛んなもとい腹ぺな者たちは、邪魔にならない範囲で自らの獲物を箸という名の武器で掴み取っていく。
「いただきます、はぅはぅ〜♪ とっても美味しいのですよぅ♪」
 サラは喜びの表情をうかべる。ほどよく煮えた鍋の具はだしがよく染み込み、口の中に広がる味は奥深い。特に猪肉は、他の肉とは違った独特のうまみを味あわせてくれた。
「戦果は大漁だよ〜♪ いっただっきま〜す♪ わ〜♪ 猪って美味しいねぇ♪ 野菜やお豆腐も美味し〜♪」
 戦果としてたくさんの具材を手に入れた凪は満面の笑みを浮かべていた。
 仲間達は思い思いの楽しみ方で、味噌味の鍋を楽しむ。もちろん騒がしい話し声が止むことはない。
「流火ちんも食べてる〜? どれも美味しいよ〜♪」
「それじゃあ俺も、うん、肉と野菜の出汁が効いていてうまいな」
「お豆腐食べる人ーっ? みんなによそっちゃうよ」
「野菜中心にキノコ類寄りで頂こかな。あ、ありがとうな、いただくわ」
「みんなもキノコ食えよ。汁が染みててすげー美味いし!」
「モクレンさん嬉しそうですね♪ 皆さん、せっかくのお鍋なのですから、ちゃんとお野菜もたべないとですよー」
「大丈夫です。お肉は一口二口頂きましたから、後は野菜やキノコをメインに……」
「つくね団子と春雨ははずせません! あ、今日の鍋奉行はレイジさんです」
 騒がしい、楽しい鍋パーティはまだ始まったばかりだった。

●最後のしめは……
「シメは雑炊とかしはる? スタンダードにご飯もえぇけど、中華麺とかもえぇやんなー」
「最後の〆はやっぱり雑炊ですよね♪ あ、でもラーメンも捨て難いんですよね〜両方注文しちゃいましょう 」
 魁の言葉に相槌をうっていた眞子は店員を呼び、しめの料理を注文する。
「うん、雑炊にするつもりだったが……それなら中華麺を先に試してからにしよう」
 鍋奉行であるレイジはなにやら考え込みながら、最後のしめに思いをはせる。そして、それぞれの材料が届くとさっそく準備にとりかかった。
 まず最初に、中華麺を入れ残った具材と味噌だしで煮立てていく。
「こういうのって期待しちゃうよね♪ フタを閉じてる間……」
 凪の言葉通り、仲間達は皆、期待のまなざしで鍋を見つめていた。
 やがて、ほどよく麺が茹で上がったところで小皿によそられ、配られていく。
「はぅ〜、とっても美味しくて幸せですよぅ♪」
 サラを始め次々に喜びの声があがる中、レイジは次の雑炊の準備にとりかかる。
 白米を敷き詰め、卵をかけ、フタをしめ……しばらく待てば、待ちに待った最後のしめが完成する。
「雑炊もできたぞ。熱いから気をつけてな」
「とっても熱いのね。俺はやっぱり猫舌なん」
 レイジによそってもらった雑炊にふーふーみぅっと、猫っぽく息をふきかけながら少しずつ流火の口に雑炊が運ばれていく。
 中華麺、雑炊と続く、しめのフルコースを味わった皆は、満足した表情でおなかをさする。
「いやー、美味しゅうございました! レイジさん、こんなえぇ機会設けてくれはっておーきにです♪」
 魁の言葉をかわきりに、皆が一斉にレイジに向かい感謝の言葉を口にする。
「ありがとう、こんな鍋食えるならいくらでも猪倒すんだけどなー」
「誘ってくれてありがとうございました。とても楽しかったですよ」
 モクレンとソウヒも満足した表情で笑いあっていた。
「みんな満足してくれたらとても嬉しいよ。今日は付き合ってくれて本当にありがとう」
 レイジは皆に向かい感謝の言葉を口にしながら、今回の猪鍋会がうまくいったことが嬉しくてついつい顔の表情をゆるませる。
「いや、しかし、ゴースト退治につきあわせておいて、お礼を言い合うというのも変な話だな」
 レイジの呟きに、仲間達に笑いが広がる。
 楽しい風景はもうしばらく店が閉店するまで続きそうだ。


マスター:坂本こうき 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/12/04
得票数:楽しい10  えっち1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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