放送部員には放送部員の意地がありゅっ!?


<オープニング>


「いいか我が放送部のルーキーよ、よく聞け! 放送局員に必要なのは、一に練習二に活舌、三四がなくて五に技術だ!」
「はい、部長!」
「アメンボ赤いなあいうえお!」
「アメンボ赤いなあいうえお!」
「柿の木来たからかきくけこ!」
「柿の木来たかりゃっ……きゃきくけこ!」
 あ、噛んだ。
「いかんなルーキー! そんなことでは全国放送コンテストの大舞台、あのステージには立てんのだよ!」
『そうだそうだ、あの舞台に立てるのは、真の活舌猛者のみ!!』
「「……誰!?」」
 振り向いた二人の目に映ったのは、でかいアクセント辞典を持ったでかい学生。
 ぼか、ぐしゃ、と鈍い音。放送室が、血に染まる。
『私のたわしはわしわし沸かしてワシに渡した! 竹垣に竹立てかけたかったから竹立てかけた!』
 後には、活舌練習課題を叫ぶ地縛霊だけが残った。

「青い家に青々と相生の松、生麦生米生卵……」
 放送室の椅子に座り、一心に呟いていた長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)が、ひょいと顔を上げた。
「あ、集まってくれたね! それじゃ、今回の事件の説明をするよ!」

 今回地縛霊が現れたのは、とある高校の放送室。
「なんでもずいぶん昔に放送部は廃部になったらしくて、職員室でも校内放送ができるから、ずっと使われていなかったらしくてね。けど、新しく放送部が作られたらしいんだ!」
 今のところ部員は二人のみ。けれど、放送活動を盛り上げていこうと意気込んでいるらしい。
「けど、放送室に地縛霊が現れちゃって、このままだと遠くないうちに殺されちゃうの。その前に、地縛霊を退治しちゃってほしいんだ!」
 地縛霊が出現するには条件があるため、今はまだ被害は出ていない。
「地縛霊は、言葉を『噛む』……つまり、言い損ねたり、言ってる途中に舌を噛んだりすると現れるよ。わざとやってもいいけど、早口言葉なんかをみんなで言ったりしたら、多分誰か噛むよね!」
 現れるのは、地縛霊が四体。
「一人はマイクを持った女の子。体力が結構高くて……呼び出し放送風のアナウンスで、呼ばれた人を怒らせて自分のところに呼び寄せるんだ」
 基本的には一人を呼び寄せるだけだが、たまに全員を一斉に呼び出すので注意が必要だ。
「二人目は、本を持った男の子。本を朗読して、同時に自分の味方の回復と、敵への攻撃をするんだよ!」
 範囲は広く、戦場となるであろう放送室全体に届く。
「三人目は、ミキサー盤っていう機材を持った女の子だよ」
 こんなのなんだけど、と千春が、放送室においてあった音量調節用らしき機械を指し示す。それなりに、でかい。
「狙ったところで大きな音を爆発させたり、わざと音をハウリングさせてみんなをマヒさせたり。耳に痛い攻撃をしてくるよ!」
 耳が聞こえなくなったりするわけではないが、地味に嫌だ。
「最後は、大柄でマッチョな男の子。大きなアクセント辞典を持っていて、それで近くにいるみんなを殴ったり、投げたり、戦場中に紙をばら撒いたり。ダメージも体力も大きめだよ!」
 文化系なのに、何だか肉弾派。
「それと全員、近づいてきた相手に、手に持ったもので殴りかかることもあるよ。あと、戦闘中に言葉を噛んだりしたら、全員すごい勢いでその人狙ってくるから、気をつけてね!」
 あとは、と千春は学校の制服を渡しながら付け加える。
「学校自体の警備は薄いらしいから、制服を着ていけば玄関は通れるんだけど……放課後だと放送部の二人がいるから、うまく連れ出してあげてほしいな。一度連れ出しちゃえば、戦闘の間は戻ってこないと思うから!」

「あ、それとこれはできればでいいんだけど……放送室に、あまり傷を付けないように戦ってほしいんだ。せっかくできた放送部、機材が壊れて潰れちゃうのはかわいそうだからね。地縛霊たちは放送室に傷をつけるようには戦わないから、みんなが気をつけてくれれば大丈夫だから!」
 お願いね、と千春は皆に手を合わせる。
「いろいろ考えることはあるけど、みんななら大丈夫。頑張って来てね!」
 そう言って、千春は能力者たちを送り出した。

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参加者
風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)
藤咲・紘(過去の過ちを償い続けし声人・b21314)
舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)
汐見・倭(霧は苦手・b48743)
デュオン・ウィンフォール(ガードポイント・b51310)
志水・みゆ(偽りを歌う光・b53832)
瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)
御堂・常夜(剣の舞と籠の小鳥・b67735)



<リプレイ>

●地縛霊、あわせてぴょこぴょこ……?
「噛むと怒る、地縛霊……えと、赤巻紙青巻紙黄ぎゃきっ……あ」
 いきなり噛んだ舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)に、皆が振り返る。
 思わず頬を赤らめる深緋。初依頼で緊張していることもあるけれど、それ以前に早口言葉はちょっと苦手。
「噛むのも愛嬌だと思うけどな。練習の内はたくさん噛んだほうが良いと思うし……それに最初から噛まずに出来るなら苦労はないよ」
 藤咲・紘(過去の過ちを償い続けし声人・b21314)がすかさずフォロー。隣で御堂・常夜(剣の舞と籠の小鳥・b67735)も、初依頼に緊張した面持ちを浮かべながらもうんうんと頷く。
「執事たるもの、主人に正しい情報をお伝えする為に、発音は常に正確でなくてはなりませぬ。そう言う意味では、放送の方々とも通じる所があるのかもしれませんな」
 瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)が、誇らしげに言いながら放送室のドアを見やる。そこでは、彼にも負けぬ心意気を持った二人の少年が、練習を始めようとしているはずだ。
 二人が犠牲になる前に急がなければと、深緋が早足で放送室に向かう。
「失礼します」
 扉をそっと叩けば、すぐさま飛び出してくる二人の少年。
「あっ、はいっ!」
「何か御用ですか? 呼び出し放送ですか?」
 やる気満々といった様子で尋ねる二人に、深緋は「職員室の放送の機材の方の調子が悪い様で、先生から放送部の二人を呼んでくる様に、と言われたのですが……」と告げる。
「おおっ、仕事か!」
「仕事ですね、先輩! 伝えてくれてありがとうッス!」
 きらきらと瞳を輝かせて飛び出していく二人に、ちょっと申し訳なさそうに頭を下げて、深緋はさっと仲間たちに合図を送った。

「廃部になった放送部に想いを残しているのかもしれないですね。復活した放送部の部員さんに、複雑な気持ちなのでしょうか」
 パソコンやCDデッキをなるべく傷つかなさそうな場所によけながら、志水・みゆ(偽りを歌う光・b53832)がそっと呟く。
「放送部員の地縛霊か……どのような未練があるにせよ、生ける者を殺して良い理由にはならないな」
 固定されていたマイクスタンドを工具で外してよけながら、デュオン・ウィンフォール(ガードポイント・b51310)が言う。隣で山積みのビデオを片付けていた汐見・倭(霧は苦手・b48743)が、静かに頷いた。
「希望と夢で輝いている2人の為にも、頑張ってゴーストを退治しましょ」
 最年長らしい風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)の言葉に、全員がしっかりと頷く。
 やがて、あまり広くない放送室にもかなりの空間が出来上がって。
「それでは、行くぞ」
 配置を整えた仲間たちが頷き、武器を握るのを確認して、デュオンは口を開く。
「カエルぴょきょぽっ……」
 いきなり噛んだ。
 早口言葉は良く噛むと言うだけあった。
 一瞬、放送室が静まる。
 次の瞬間、
『いかんなぁー、そんな活舌では放送の星にはなれん! カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ!』
 素晴らしく流暢な早口言葉と同時に、巨大なアクセント辞典が唸りを上げて振り下ろされる!
「くっ……!」
 何とか武器で受け止めたデュオンに、右から大きなマイクが、左から文庫本が、さらにはミキサー盤からの轟音が襲い掛かる。
 かなりの傷を受けたデュオンを助けんと、能力者たちはいっせいに動き出した。

●隣の能力者は、よく噛む能力者?
「今治すわね!」
「デュオンさん、いくよっ!」
 莱花がヤドリギの祝福を、紘がギンギンパワーZを、デュオンへと投げかける。
「ふん、無茶しやがって……」
 倭が皮肉っぽくデュオンにささやき、虎紋を呼び覚ましながらミキサー盤の地縛霊へと向かう。
「まず先に、その危険な物をしまって頂きますぞ!」
 直哉の龍尾脚が、ミキサー盤の地縛霊へと振り下ろされる。次は魔狼の力を使おうと、直哉はそこで足を止めて地縛霊と対峙した。
「菫、行きましょ……!」
 深緋がフレイムキャノンを撃てば、真スカルサムライの菫も応えるかのように同じ地縛霊に近づき、素早い斬撃を放つ。
 デュオンが雪だるまアーマーを使いながら、倭たちがいる戦線から僅かに離れる。退治したのは、文庫本を持つ地縛霊。
「滑舌も大切ですけれど、発声練習も大切なんですよ?」
 高らかに奏でられるみゆのヒュプノヴォイスに、ミキサー盤とマイクの地縛霊が膝を折る。
「傷つけあいなんかより……一緒に踊ろう?」
 常夜がさらに地縛霊たちを踊りへと誘う。文庫本の地縛霊が、それに誘われてステップを踏む。
 けれど、巨体を誇るアクセント辞典の地縛霊は、歌と踊りの誘惑に耐えた。
『まだまだ行くぞ! いいアナウンスはアクセントの確認から!』
 鋭い紙が、能力者たちを激しく斬り裂く。
 さらにミキサー盤の地縛霊が目を覚まし、高音域の音量を最大まで上げる!
 キィィィィィン、と耳障りな高音が鳴り響き、能力者たちの動きを止めた。急いでみゆが、歌をヒーリングヴォイスに変える。
 能力者たちの半数ほどがマヒを食らった状況に、常夜が唇を噛む。
(「マヒや怒りの回復が出来るのは、僕だけ。それだけ頑張らないといけないんだ……」)
 湧き上がるプレッシャーを抑え、常夜は必死に情熱を高める。
「風見様、今回復するね!」
 解き放たれたヘブンズパッションは、莱花をマヒからしっかりと解き放っていた。
「このていろかっ?」
 倭が瞬断撃を放ち、ミキサー盤の地縛霊の注意を引く。噛んだのはわざと。疑いようもなくわざと。
『はっはっは、練習がなってないなあぁ!』
 けれど地縛霊はそんなことは気にしない。アクセント辞典が凄まじい勢いで倭の頭を直撃する。
『いずれの御時にか……』
 デュオンに道を阻まれた文庫本の地縛霊は、さっと文庫本を開いて読み始める。
 その上手すぎる朗読は、地縛霊たちを勢いづかせ、能力者たちの体力を奪う。
 常夜の回復を受けてマヒから立ち直った莱花が、急いで倭にヤドリギの祝福をかける。
 しばし龍尾脚やフレイムキャノン、瞬断撃、クレセントファングが飛び交い、白燐蟲やヤドリギの祝福、ヘブンズパッションやヒーリングヴォイスが傷を癒す。
 ついでに早口言葉も飛び交う。
「坊主が上手にびょうびゅに……っ!」
『甘い!』
「東京特許きょきゃきょきゅっ……!」
『あと百回!』
「生麦にゃまごめ……」
『ほらほら舌の回転がなってないぞおぉっ!!』
 何だかいい加減皆が悔しくなってきた頃。
「これで……最後っ!」
 紘の放ったクレセントファングが、ミキサー盤ごと地縛霊を断ち割り、消滅させた。

 マヒ攻撃を放つ地縛霊は倒したものの、何度となく噛んでいたデュオンと倭の傷は深い。
 それを確認し、直哉は少し考えて。
「むぅ……やむを得ませんな」
 布槍を握り締め、一つ深呼吸して、直哉は覚悟を決めた男の顔で口を開いた。
「皆様のお相手は瀬場が…………瀬場が致しましゅじょ!」
 噛んだ台詞が、こんなにも格好良く聞こえたことはかつてなかっただろう。仲間を守るためだからこそ。
『どんな台詞も噛んだら台無しだぁっ!』
 そこのところがわかってない地縛霊の攻撃を、直哉はしっかりとその身と布槍で受け止める。さらにもう一体の地縛霊が、マイクを強く叩きつける。
 直哉の心意気に応えるかのように、ヤドリギの祝福が、ギンギンパワーが、ヘブンズパッションが直哉の身へと飛ぶ。デュオンと倭も、白燐蟲の力と虎紋の力でそれぞれ傷を癒す。
『彼女は答えない。けれど、その目ははっきりとそれを認めていた。彼女は……』
「確かに上手いですけど、こっちの歌も負けません」
 負けじとばかりに朗読が響けば、みゆがヒーリングヴォイスですぐさま傷を癒していく。
 菫が骨を拾い、体勢を整える。その後ろから、深緋のフレイムキャノンがマイクの地縛霊を撃ち抜く。さらに紘のクレセントファングが、地縛霊を抉った。
 かなりの痛手を受けながらも、地縛霊の少女はマイクを握りなおす。その目が捕らえたのは、倭!
『お知らせいたします。……今すぐ、放送室まで来てください!』
「この……っ!」
 こみ上げる怒りに、倭が電光剣を振るい発勁手袋をかざす。アビリティを使っていないとはいえ、攻撃は確実に地縛霊にダメージを与える。
 すぐさま常夜がヘブンズパッションを投げかけ、倭の怒りを解いていく。
「菫、合わせてね……っ」
 深緋の指示に菫が頷き、斬撃を与えた後僅かに横にそれる。その場所を、フレイムキャノンが撃ち抜く!
 その一撃が、マイクの地縛霊を消し飛ばした。

●新春シャンソン歌手により新春早々……じゃないけど戦闘終了っ!
「スモモもモモもモモもも……あ」
 デュオンが白燐奏甲を掛けながら噛もうと試み……思わず言いすぎる。
『覚えてないのも練習の足りない証拠ーっ!』
 これも噛むにカウントされるらしく、アクセント辞典を素晴らしい手首のスナップで投げつける地縛霊。さらに文庫本の角が、デュオンに襲い掛かる。
 それでも、最初の集中攻撃に比べれば、だいぶ楽になっていた。
「僕の想いを……力にして!」
 常夜が、デュオンにヘブンズパッションを解き放つ。倭が見えぬほどの速さで文庫本の地縛霊に斬りかかり、紘がクレセントファングで華麗に斬り裂く。
「みゆさん、合わせましょ!」
「わかりました、莱花さん!」
 みゆと莱花が頷き合い、同時に手を伸ばす。
 二本の光の槍が同時に生まれ――文庫本の地縛霊は双方向から貫かれて消えていった。

『まだまだ、あと百回行くぞ! だが喉を嗄らしたら許さん!』
 無茶を言いながら、最後に残った巨体の地縛霊が紙をばら撒く。
 けれどそのダメージは、みゆの歌ですぐさま癒されていく。
「人命守るため、その行く手、阻ませてもらう」
「……行くぞ」
 倭とデュオンが目と目を見合わせ、息の合ったタイミングで攻撃を叩き込む。
「もう、そろそろ……!」
 深緋のフレイムキャノンが、地縛霊に魔炎を与える。燃え上がったその体に、莱花の放った光の槍が突き刺さる。
「これで……終わりにしましょう!」
 直哉が地を蹴る。回転と共に、鋭くつま先が叩き込まれる。
『むぅ……まだまだ……活舌が……』
 アクセント辞典が地に落ちかけ――持ち主と共に、虚空に消える。
「演技とはいえ、やはり発言を噛むのはよろしくありませんな。今後ますます気をつけるように致しますぞ!」
 爽やかな執事スマイルと共に、直哉はそれを見送った。

 能力者たちが極力傷をつけないようにと気をつけたため、放送室に損害はなかった。
 二人が戻ってくる前にと、能力者たちは素早く機材を元に戻そうと動き出す。
「少ない人数だからこそ、きっと大切に使って貰えるよ。また新しくやるのは勇気のいる事だから応援したいな」
 デッキ類を戻しながら、紘が優しい顔で呟く。
「地縛霊さん達は、放送部が廃部になったのが悲しかったんでしょうね。でも、これで新しい放送部が安心して活動できますね」
「地縛霊さん達の分まで、あのお二人にはこれからの活動、頑張って欲しい、ですね……♪ 私も見習って、滑舌、良くなる様にちょっと練習、してみましょう……」
 コードやCDを戻しながら、みゆと深緋が笑顔で頷き合う。
「この放送室には、あの2人の夢が詰まっているのよ。でも、貴方達が生まれ変わったら、楽しく放送室で活動出来るといいわね」
 莱花の言葉に、常夜も「そうだね」と頷いて。
 倭が皮肉っぽく何か呟いて、デュオンにそっとたしなめられる。そんな光景も、無事に惨劇を阻止できたからこそ。
 確かな充実感に包まれて、能力者たちはそっと放送室を後にした。


マスター:旅望かなた 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2009/10/15
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