≪D-Force≫我らは戦隊D-Force! 〜詠唱銀を守り抜け!〜


<オープニング>


 渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)は人通りのまったくない路地裏をうろついていた。
 いかにも買い物帰りといった風体、きょろきょろと辺りを見回し、何度も同じ道を通るといった挙動――まさしく、その姿は迷子の如く。
 この路地裏は幾度目だっただろうか――がしゃり、と音がした。寅靖が、足を止める。
 素早く寅靖を取り囲んだのは、7つの西洋甲冑。突撃槍を固く握り、サーコートを着込んだその顔は、兜に隠れて見えない。
「大人しく詠唱銀を渡せば、危害は加えない」
 若干篭った声で、鎧の一人が言う。七人が一斉に、寅靖に詰め寄る。じり、と寅靖が一歩退きかけた――その時!
「助けてっ、ルチャ影ーっ!」
 突然姿を現して叫んだのは、道行くお姉さんA――ではなく、久遠寺・絢音(鳥喰い娘・b32745)!
「誰だ!」
 一斉に振り向く鎧姿たちの上から、さらに声が降りかかる!
「待てーい!」
 その声は、比喩でもなんでもなく『降って』来た。
 見上げればそこにいたのは――忍者。白いマフラーが風になびき、覆面の奥の瞳は悪を許すまじと叫ぶ。そう、彼こそが、ルチャ影!
「覆面忍者ルチャ影参上、お前達の思い通りにはさせん! とぉっ!」
 ルチャ影――流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)が廃ビルの屋上を蹴る。風を切り、白い布をなびかせ、彼はすたりと着地する。
「D-Force出動です! あなた達に詠唱銀は渡しません!」
 同時に現れた若生・めぐみ(キノコの国のめぐみ姫・b47076)の号令で、次々に姿を現すD-Forceの面々!
「囮に引っかかりましたね!」
 百鬼・ルル(氷れる炎の振るうは常盤緑の矛・b40707)の傍らで、ケルベロスオメガのケケレが唸り声を上げる。
「絶対、逃がさないんだよ!」
「もきゅ!」
 ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)と真モーラットピュアのモルモが、びしりと指を突きつける。
「神妙にお縄につく……です」
 フランケンシュタインのセトの背に隠れるように、けれど闘志を湛えて鎧姿たちを見つめるネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)。
 そんな中、包囲に加わりつつも片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)は。
「……なんでヒーローモノのノリ?」
 思わず素でツッコんでいた。

「な、何だ、お前たちは!」
 現れたヒーローたちに、思わずおののく鎧姿たち。
 全員兜で顔が見えない。
 まぁマスクみたいなもんか。
「……あれ、怪人?」
 呟いたのは、誰だっただろうか。
 ……………………能力者たちの正義は立証された!
「詠唱銀はここだ、奪えるものなら奪ってみろ!」
 寅靖が叫び、イグニッションと唱えて力を解き放つ。
「ええい、我々は怪人などでは……!」
 何やら鎧姿たちは言っているようだが、さておき。
 頑張れD-Force! 負けるなD-Force! 世界の平和――もとい、寅靖と詠唱銀の無事は、皆の手にかかっている!

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参加者
渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)
流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)
ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)
ネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)
久遠寺・絢音(鳥喰い娘・b32745)
片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)
百鬼・ルル(氷れる炎の振るうは常盤緑の矛・b40707)
若生・めぐみ(キノコの国のめぐみ姫・b47076)



<リプレイ>

●それを彼らは卑怯と呼んだ。
「悪い怪人さん、しっかり退治しないとだよね!」
 ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)の言葉に、隣で真モーラットピュアのモルモが「もきゅ!」と応える。
「そうです。例え校長先生が許しても、この美少女魔術師アヤネが許しませんっ!」
 久遠寺・絢音(鳥喰い娘・b32745)が黒エナメルを使ったワンピースをはためかせ、長杖を突きつけて宣言。
「……あの、怪人では……」
 片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)がこっそり突っ込みを入れると同時に、
「我々は怪人ではない!」
「なに言ってるんですか。ほら、私達は外国からやって来た……」
「それは外人だ!」
 思わず静まり返る空気。
 こいつらもなかなか愉快な奴らだった。
「――槍は貫く武器。それが彼らの意思を表しているのではないかと彷彿とさせられます。僕も矛を掲げるもの、お互い譲れませんね」
 一旦緩んだ空気を物ともせずに。百鬼・ルル(氷れる炎の振るうは常盤緑の矛・b40707)が強い瞳を鎧姿達に向け、マジカルロッドを握り締めた。
「……迂闊だな、怪人ども」
 唐突に、渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)が呟き、ちらりと廃ビルの中を伺う素振りを見せる。
「どういう意味だ?」
 兜の中からくぐもった声が聞こえた、その時。
「碧さん、今です……!」
 ネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)が、廃ビルの屋上に向かって叫ぶ!
「何!?」
 兜の正面が屋上に向く。そこには――誰もいない。
 そしてフランケンシュタインFWのセトの体に、真紅のオーラで出来た鎧がまとわりつく!
「霧に呑まれて迷子になればいいんですよ」
「えと、寝ててくださいっ」
 絢音の魔蝕の霧が、鎧姿たちの戦闘力を奪っていく。斎の悪夢爆弾が、一人を深い眠りに落とした。
「行くよ!」
「――気をつけてください、この魔弾は脳髄まで痺れますから」
 まだ動くことの出来る一人に、ユエとルルが雷の魔弾を投げつけた。
「悪い怪人さん……じゃなくて、謎の鎧姿さんをお仕置きします」
 若生・めぐみ(キノコの国のめぐみ姫・b47076)がそう言って、ひょこりと一人の頭に白いキノコを生やさせる。
「ルチャキック!」
 ジャンプと共に繰り出された流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)の爪先が、三日月の軌道を描いて鎧の面を揺らす。
 ルルのケルベロスオメガのケケレと、セトが走り、鎧姿の一人に噛み付き、殴りつけた。
 連携によって開いた隙間を、虎の紋をまとった寅靖がすぐさま駆け抜ける!
「逃がすな! まずは回復と射程を!」
 寅靖のすぐ後ろにいた男が叫んだところを見ると彼がリーダーか。その言葉に従って、一人が浄化の風を吹かせ、もう一人が射程を伸ばす回復を施す。セトとケレレの攻撃を受けた鎧姿は、四つのリフレクトコアを呼び出した。
 浄化の風に呼び覚まされて、一人が何とか起き上がる。
「追うぞ!」
 リーダーの言葉に応と答え、合わせて三人が走り出す。リーダーだけが寅靖に何とか追いつき、攻撃を叩き込んだ。
「くっ……」
 激しくうずく痛みの刻印。回復が阻害されたことを、それは表していた。
「あなたがリーダー、なのですね……!」
 ネフティスがリーダーを指差す。絢音がそれに合わせて炎の魔弾を飛ばし、斎が赦しの舞で回復を阻害していた刻印を消し去る。
 リーダーを振り切り、寅靖が後衛へと走る。
「クレセントファング!」
 影郎が飛び上がる。そして――そのまま着地する。
「一体何を……!?」
 蹴りが来るかと身構えていた鎧姿の一人が、拍子抜けした声を上げ……驚いたように動きを止める。
 ネフティスが、ユエが、ルルが、寅靖のところに集まったのだ。
 中が見えないように背中で囲い込み、寅靖が詠唱銀を懐から取り出す。
「まさか、銀を受け渡す気か?」
「卑怯な!」
 鎧姿たちが怒りもあらわに叫ぶ。何が彼らの心情に火をつけたのか、一瞬能力者たちが戸惑うほどの声だった。
 鎧姿たちが中衛を一気に突破し、集団へと迫る。爆発を避けるためある程度散開していたのと、コの字型の陣形を取っていたことがかえって仇となった。
 突撃槍の一撃に、寅靖はそれでも耐えて手元を隠す。二撃目は幻影、けれどその痛みは本物。
「ヒーローの癖に卑怯? 生憎だが俺は悪役だ!」
 幻影の三撃目を寅靖が背中に受けつつ、銀がルルの手に渡りかける。けれどそこに割り込んだ手が伸びて、四撃目を受けると同時に詠唱銀は忽然と消えた。
 ――いや、消えたならまだ良かったかも知れない。それは既に、敵の手の中にあったのだから。
 素早くその懐に、詠唱銀はしまい込まれた。

●奪回せよ、詠唱銀。
「っ!」
 とっさにめぐみがパラライズファンガスを放つ。けれど後方に残っていた一人が吹かせた風と、もう一人が送ったヘブンズパッションに、マヒした体は解き放たれた。
「命のやり取りしてるのに卑怯もクソもねぇ! むしろそっちが……!」
 影郎が何とか持ち逃げを阻止しようと、使役ゴーストたちを残して後衛に向かって走る。
 けれどケケレとセトは、接敵された主人を助けようとその後を追った。
「モルモは寅靖兄ちゃんを!」
 ユエの指示を受け、モルモが寅靖の傷をなめて癒す。
「詠唱銀を、持って行かせるわけには……!」
 ネフティスが穢れの弾丸をリーダーにぶつける。セトがそれに追いついて、パワーナックルを叩き込む。
「さあ、もずく……じゃない、もくじ……でもない、藻屑になっておしまいっ!」
 何とか言い切って、絢音が炎の魔弾を放つ。
「さ、させませんっ」
 詠唱銀を持ったまま離脱しようとしたリーダーに、斎が悪夢爆弾を放つ。リーダーの膝が、崩れる。
「寝るなリーダー!」
 倒れ込んだリーダーの脇腹に、思いのほか高い声と同時に爪先がめり込んだ。
「あ、ああ。すまない」
 無理矢理起こされたリーダーが、剣を頭の上で旋回させつつ急いで走り出す。さらにもう一人が後を追う。
「待て! そっちには……」
 不利な状況でも策ありと思わせなければ。その思いが、蜘蛛の糸と共にそんな言葉を吐き出させる。けれど。
「大丈夫、どうせデマカセだ」
 土蜘蛛の檻にただ一人捕えられた鎧姿の女は、見切ったように言った。
「止まれーっ!」
 ユエが雷の魔弾を放つも、足止めには至らない。さらにモルモが火花を飛ばすも、突撃槍にガードされる。
 ルルとケケレが、同時に炎を生み出す。炎の魔弾はその鎧を焼き焦がしたものの、レッドファイアはそつなく避けられた。
「行かせるか!」
 影郎が足を速め、さらに駆ける。
「特製のキノコをどうぞ……痺れますよぉ」
 めぐみが再びパラライズファンガスを生み出す。けれど浄化の風とヘブンズパッションの前に、やはりキノコは消えていく。
 後方にいた二人の鎧姿が、幾分能力者たちへと近づいた。
「あの……来ますっ」
 斎がそう言って、仲間たちを守るように一歩進み出る。けれど鎧姿たちは、斎に攻撃を加えることはなかった。

「絶対に……取り返します」
 ネフティスが穢れの弾丸を放つと同時に、セトが鎧姿たちの前に立ちはだかり、重い拳を叩き込む。
「やさぐれ世界! 地獄子分ですっ!」
「ハーモニー限界! 地獄親分……って、悪役ジャン!」
 息の合ったコンビネーションを見せて、絢音が炎の魔弾を放ち、影郎が翻弄するステップからの蹴りを叩きつける。
 通り道をふさいだ、と思った次の瞬間。二つの幻影が、セトと影郎の懐に飛び込んだ。
「!」
 重い体当たりが、セトの体を吹き飛ばす。影郎が何とか踏みとどまるも、鎧姿たちはその傍らを通り過ぎていく。寅靖の放った蜘蛛の糸は、二人を捕えるには至らなかった。
 リーダーが旋剣の構えをとりながら、遠ざかっていく。もう一人もそれに付き従っており、すでに遠距離攻撃の射程には捉えられない。
 そして一人残されていた鎧姿が、するりと腕からチェーンを伸ばした。投げつけられたチェーンは、めぐみの腕に巻きつく。
「眠りよりも、マヒの方が厄介だからな」
 けれどもうリーダーにパラライズファンガスは届かない。なのに何故、と皆が思った、次の瞬間。
「逃げれるヤツは逃げろ!」
 リーダーが叫ぶ。タイマンチェーンを使った鎧姿が親指を立てる。ほとんど迷うことなく、最後方にいた二人が踵を返した。
「その、待ってくださいっ」
 ギリギリで届いた悪夢爆弾が、一番奥の一人を倒す。けれど隣を走っていた鎧姿に、あっさりと揺り起こされた。二人は再び走り出す。
 ケケレが近くの二人に接敵し、がぶりと噛み付く。そこにルルとユエの雷の魔弾が命中し、その動きを止めさせた。
 けれど、足りない。
「えっとぉ……めぐみ、突貫しま〜す」
 決め手になるかも知れなかったパラライズファンガスの機会は、めぐみの心を染めた怒りによって失われてしまった。

●追跡劇と逃走劇の終わる時。
「……行きなさい、セト……!」
 ネフティスの言葉と同時に、セトが走る。けれど数歩、あと数歩足りない。
 二人の鎧姿が走る。そして角を曲がり――その姿は、見えなくなった。
「っ……」
 せめて、捕虜だけでも。そう思ってネフティスが、近くのまだ動ける一人に呪われた漆黒の弾丸を放つ。
「奪われたか……だが、せめて!」
 寅靖が、土蜘蛛の檻を広げる。斎が、悪夢爆弾を投げる。二人の鎧姿が、ぐったりとその場に倒れた。
 けれどその間に、最後方にいた二人は姿を消していた。
「……ふ、終わったか」
 兜の奥からくぐもった声で、タイマンチェーンをつないだまま鎧の女は呟く。
「じゃあ、私も逃げ……」
 その途端、全員の視線が彼女に向いた。
「ルチャリブレ・ジ・エーンド!」
 アイアンクローからつなげて、影郎が白虎絶命拳を放つ。大きく食らった女の頭から、白いキノコが生えた。
「……やっぱりダメか」
 地面に大の字に倒れて、女は呟いた。

 メダリオンを回収し、能力者たちは捕まえた鎧姿たちを縛り上げる。タイマンチェーンを使った女と自分の胸を見比べて、絢音がこっそりガンを飛ばした。
「……あの、大丈夫、ですか?」
 救急箱を手に、斎が能力者たちを見て回る。けれど相手が積極的な攻撃をほとんど仕掛けなかったのもあって、怪我はほとんどなかった。
「これ、後で食べて下さい」
「あ、いいの? 縛られてるから受け取れないけど」
「ジェイ、そんな卑怯者の施しなど……」
 ルルが差し出した稲荷寿司に笑顔を見せた女に、隣で同じく捕まった男が渋い顔をする。
「次に会ったら、取り返します、よ?」
 鎧姿たちが消えていった路地を見て。めぐみの呟きに、仲間たちも深い頷きを返すのだった。


マスター:旅望かなた 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/12/09
得票数:笑える1  泣ける1  知的1  せつない8 
冒険結果:失敗…
重傷者:なし
死亡者:なし
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