喰い改めよ


<オープニング>


「だからさー、諭吉を2、3人置いてけって言ってんだよ」
「ケンジは気が短いから、早く出した方が身の為だぜ」
 冴えない風体のサラリーマンを若者2人が取り囲んでいる。どうやらオヤジ狩りの最中のようだ。
「お、お金を出したら……大人しく立ち去って……く、くれるんだよね?」
 哀願するような目で若者を見つめながら、サラリーマンは震える右手を財布へと伸ばす。
「安心しな。大人しく金を出せば何もしねえよ。なあ、シンヤ」
「そうそう。俺達を信用しな、おっさん」
 オヤジ狩りするような奴のどこをどう信用すればいいのか……。
 思わず口にしそうになった言葉を飲み込み、サラリーマンが財布から取り出した3万円をケンジが手にしたその時――。
 びったーん! びったーん!
 どこからともなく、何かを叩きつけているような音が聞こえてくる。
 音の正体を確かめようと3人が視線を向けた瞬間、サラリーマンとシンヤの頭部が音を立てて砕け散った。
 あまりにも非現実的な出来事に、ケンジは状況を理解することができず、その場に立ち尽くすだけだ。
「喰い改めよ」
 突然聞こえた男の声に驚き、ケンジが声のした方を振り向くと何かが全身に絡みついてきた。
 絡みついた何かは、この世のものとは思えない力で全身を締め上げる。
 薄れゆく意識の中、ケンジが見たものは料理人の服装をした1人の男だった。 

「先日、オヤジ狩りをしていた若者2人と被害者のサラリーマン1人が、ゴーストに殺されました」
 教室に集まった能力者達に、山本・真緒(中学生運命予報士・bn0244)が告げる。
 真緒は地図を机の上に広げると、赤いペンで×印がしてある所を指差した。
「ゴーストが現れるのは、飲食店が立ち並ぶ通りにぽつんとあるこの空き地です」
 この場所には、数年前まで美味しいと評判の焼肉屋があったらしい。
 特に店長が何年も研究を重ねて作り上げた特製麺を使った冷麺はすこぶる評判が良く、焼肉を全く食べずに冷麺だけを何杯も食べる客もいたとか。
「でも、その冷麺のせいで、近所とのトラブルが絶えなかったそうです」
 麺に強いコシと歯応えを出し、具材の牛タンを柔らかくする為と言って、昼夜問わずに調理台に麺と牛タンを叩きつけていたというのだ。
 多い時には10人以上の従業員が作業をしていたというから、騒音はかなりのものだったに違いない。
 堪りかねた住民達が文句を言いに行っても、『美味い物を作る為には仕方ない。俺の冷麺を喰い、考えを改めよ』の一点張りで、会話にならなかったようだ。
 しかしその後、泥棒に入られる、食中毒が発生する、そして店が放火されるといった不幸が相次ぎ、店は建て直されることなく、そのまま閉店してしまったらしい。
「敵は地縛霊が1体、リビングデッドが7体です。地縛霊は冷麺の麺、リビングデッドは牛タンで攻撃してきます」
 聞き慣れない攻撃方法に、能力者達の思考が一瞬停止した。
「地縛霊の攻撃方法は2つ。麺を使っての拘束攻撃と広範囲攻撃です。リビングデッドの攻撃方法は牛タンによる単体攻撃だけですが、それなりに威力があるので注意して下さい」
 牛タンで叩かれた時の痛みや感触を想像して、真緒はぶるっと身体を震わせた。
「地縛霊は空き地内でお金のやり取りをすると現れます。ちなみに金額はいくらでも構いません。午前0時にもなれば人通りは殆どありませんし、空き地は広いので戦うのにも問題ありません。多少薄暗いですが、外灯があるので別に灯りを用意する必要も無いと思います」
 ここ最近の不景気で空き店舗も多く、少々大きな物音をさせても人が来る心配はありませんと真緒は付け加え、ポケットからある物を取り出す。
「これは空き地から数百m離れた所にある焼肉屋さんの冷麺半額割引券です。無事に戦いを終えたら、皆さんで食べに行ってはどうですか?」
 夜中に焼肉屋で冷麺ってどうなのよ? と思いつつ、能力者達は割引券を受け取り、教室を後にするのであった。

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参加者
多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)
稲葉・翔(静天を駆る原色・b24314)
木原・冬(森の民・b29431)
天海・冥(へっぽこ冥土種ヴァンパイア・b41964)
水澤・芽李(はお嬢様に憧れる・b45823)
土岐・緋雨(中学生鋏角衆・b47789)
南條・氷(寒がり雪女・b53103)
皐月・翠(翡翠の魔天狼・b63375)



<リプレイ>

●ぴょんぴょん跳べよ。跳べば分かるさ
 ゴーストの存在が確認された空き地に集まる8つの影。
 いたいけな少女から金を毟り取ろうとしているカツアゲ少女達か?
 いや、違う。どこからどう見てもそうにしか見えないが、ゴースト退治にやってきた能力者達だ!
「よォねーちゃん、最近夜は寒いねえ。僕らの財布もなーんか寒いんだけど、お金貸してくれないかな?」
「む、無理です。私の財布だって寒いんです……」
 楽しそうに絡んでくる稲葉・翔(静天を駆る原色・b24314)に、天海・冥(へっぽこ冥土種ヴァンパイア・b41964)が財布の中を見せる。
「いやいや、高校生の財布の中身がこれだけとかありえないから。実はどこかに隠してるんでしょ? ちょっと飛んでみてくれる?」
「きっとそうだよ、シャオ(翔)。ぴょんぴょんさせて、隠してるお金を1円残らず出させよう! ほら、跳んで跳んで!」
 ちょっと大げさなくらいの声を出しながら、木原・冬(森の民・b29431)が翔の意見にノリノリで同調する。その姿は小物感漂う不良そのものだ。
「ぴょんぴょんしてもお金は出てこないですーっ」
 目を潤ませながら冥がぴょんぴょんと飛び跳ねるが、お札どころか小銭1枚落ちてこない。
「仕方ないわね。ほら、大人しく財布ごと渡しちゃいなさい?」
「そうそう、大人しく財布ごと渡した方が身の為ですよ」
 逆らったらどうなるか分かってるんだろうな、オラァ! と言いたげな雰囲気を漂わせ、皐月・翠(翡翠の魔天狼・b63375)と多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)が冥を睨みつける。
 高身長の2人に見下ろされ、メンチ切られまくりのこの状態は、まさに蛇に睨まれた蛙だ。
「凄い迫力なの! あんな迫力で絡まれたら、もうお金を出すしか助かる道はないと思うなの!」
「もし人が来たら、適当なこと言って誤魔化そうと思ってたけど無理そうよね……」
 物陰に隠れて待機していた水澤・芽李(はお嬢様に憧れる・b45823)と南條・氷(寒がり雪女・b53103)も、あまりの迫力に唾を飲み込む。
 最早、冥に選択肢は残されていなかった。
「ひいいっ! お金は差し上げますから殴らないで下さい。本当にこれだけなんです」
 震える両手に小銭を乗せて涙目で差し出すと、カツアゲの様子を見守っていた土岐・緋雨(中学生鋏角衆・b47789)がお金を受け取る。
「えっと……あの……その……確かに……受け取りました……」
 緋雨が静かに呟いたその時だった――。
 びったーん! びったーん!
 どこからともなく、何かを叩きつけているような音が聞こえてくる。
 いや、何かでは無い。彼女達は知っている。この音の正体が何なのか。
「ゴースト退治が終わったら、冷麺が待っているなの! みんな頑張るなのよっ!」
「あと肉もね!」
 芽李と翠の言葉に頷いて、能力者達はイグニッションカードを天に掲げた。
「「「イグニッション!!!」」」

●叩くほどに美味くなる
『誰だ……ここで商売をするのは……』
『喰い改めよ……喰い改めよ……』
 うわ言のように呟きながら、麺を手にした地縛霊1体と牛タンを手にしたリビングデッド7体が近づいてくる。
「カツアゲは商売じゃなくて犯罪だから」と能力者達が心の中で突っ込んでいると、更に突っ込みたくなる出来事が。
「改めて食べろだなんて、人を食ったゴーストちゃんよね!」
 びしっとゴーストを指差して氷が言った。
 我ながら上手いこと言ったなぁ、みんなどんな反応してくれるんだろうと期待に胸を膨らませ、周囲の視線を確認するが……感じられるのはとても冷たい視線ばかり。
「ええっ!? お姉さん上手いこと言ったでしょ? 言ったわよね?」
 再び同意を求めるが、ダメッ……!
 がっくりと肩を落とす氷に、地縛霊が『お前は今すぐ喰い改めろ!』と麺を投げつけた。
 ボールのように固まっていた半透明の麺は着弾点で爆発し、そこからまるで意思でも持っているかのように動いて絡みつき、身体の自由を奪う。
 そこへリビングデッドが1体近づいて、手にした牛タンで顔面を殴りつける。
 べちこーん!
「キモ臭っ!?」
 大きな肉の塊が叩きつけられる衝撃。ねっとりと肌にくっつき、剥がれていく気持ち悪い感触。そして鼻を突く悪臭。
 それら3つが1つになった牛タン攻撃を喰らい、整った氷の顔が一瞬、別人のように酷く歪んだ。
「牛タンや麺で攻撃される事なんて、普通に生きてたらまずありえないですよね! 能力者としての僕に感謝……って、あの様子を見てたら当たりたくは無いんだけども」
 翔の言葉を聞いたリビングデッド達は、『どうだ。我らの牛タン攻撃、思い知ったか!』と得意気に笑い出す。
 リビングデッドと化した彼らにとって、牛タンは最早食材ではなく、ただの武器でしかないようだ。
「麺も牛タンも食べる物なの! 人を苦しめる為にあるんじゃないなの!」
 食べ物を粗末に扱うゴーストを注意して、芽李が浄化の風を使う。
 残念ながら芽李の注意はゴーストの心に届かないが、氷に届いた浄化の風は傷を癒し、絡みついていた麺を取り除くことに成功する。
「そろそろ氷の傍から離れてもらえる? 近づかれすぎちゃ、困るのよね」
 氷を攻撃したリビングデッドの懐に入り込み、翠が爆水掌を放つ。
 強烈なエネルギーを体内に流し込まれたリビングデッドは、堪らず後方に吹き飛ばされる。
「食べ物を粗末に扱うなんて、困ったゴーストですね。仮にも料理の道を志していた人がそれではダメでしょう!」
 口で言っても分からないなら、身体で分からせるまで。
 瞳はロケット噴射の勢いをハンマーに乗せて、ロケットスマッシュを地縛霊に叩き込む。
『お前達、こいつにたっぷり御馳走してやれ』
 地縛霊の命令を受けたたリビングデッド達が、瞳に攻撃する為に集まりだした。
「雷尖……合わせてっ」
 それを見た緋雨は、真ケルベロスの雷尖に声をかけて攻撃を仕掛ける。
 緋雨が独楽のように回り始めると雷尖も回転を始め、リビングデッドへと突き進む。
「申し訳御座いません……散っていただきます」
 高速回転した2つの独楽が、周囲にいるリビングデッドの身体を1回、2回、3回と切り裂いていく。
「お姉さんのセンスが理解できないなんて、困ったゴーストちゃん達よね」
 先程冷たい視線を向けられたお返しに、氷がもっと冷たい吹雪の竜巻をプレゼントする。
 一歩も引かない戦いを見せる能力者達に、地縛霊は『俺の麺に負けぬ歯応えのある奴らだ。どう料理してくれようか』と黒い笑みを浮かべた。

●喰い改めるのはどちらか?
 地縛霊が『歯応えがある』と睨んだとおり、能力者達は徐々にゴーストを追い詰めていく。
 作戦や連携がしっかりしている上に、浄化の風を使える者が2人いるので、かなりの確率で状態異常を回復することができるのも大きい。
 拘束攻撃が決まってもすぐに回復できる為、特にピンチに陥ることも無く、ここまで常に優勢を保ちながら戦いを進めていた。
「コシと粘りのある麺。歯応えのある牛タン……でも粘りと歯応えなら僕達も負けませんよ。ねえ、ふーちゃん」
 マントを翻して、翔がゴーストの群れへ突っ込む。
「もちろんだよ、シャオ。どっちの粘りの歯応えが上か、ゴーストに教えてあげよう」
 それに冬が応えて、森王の槍を放つ。
 森王の槍が地縛霊達に突き刺さるのと同時に、翔のスラッシュロンドが一閃する。
 地縛霊は攻撃に耐えたが、周りにいた5体のリビングデッドの内、4体は凄まじいダメージに耐え切れず四散した。
「ソユ、とどめを」
 かろうじて生き残った1体に体勢を立て直す暇すら与えない。
 素早く冬が指示を出し、それを受けたケルベロスオメガのソユがレッドファイアで灰にしてしまう。
『中々の歯応えだ。それでも俺の麺には勝てん!』
 地縛霊は手にした麺を新体操のリボンのように操って、激しく回転させた麺で自分を包み込む。
 地面から空高くまで延びた高速回転する麺、それはまさに竜巻だ。
『麺トルネード!』
 地縛霊が咆えた。
 荒れ狂う竜巻と化した麺が、周囲の能力者達を木っ端の如く蹴散らかす。
 この機会を逃すまいと、残った2体のリビングデッドが弱った能力者達へと攻撃を仕掛ける。
「このままだとみんなが危ないなの! 早く回復させるなの!」
「お姉さん達の腕の見せ所よね。ゴーストちゃんの好きにはさせませんよ」
 麺トルネードの犠牲となった能力者達の傷を、芽李と氷が浄化の風で癒す。
 回復量が少ないのであまり安心はできないが、とりあえず迫りくる脅威を払うには十分だ。
 リビングデッドが振り下ろした牛タンを2本の長槍で受け止め、翠が笑みを浮かべる。
「助かったわ……2人ともありがとう。それじゃあ反撃させてもらうわよ」
 受け止めていた牛タンを払い除けて懐に入り込み、翠は爆水掌を叩き込んだ。
 リビングデッドは粉々になりながら吹き飛ばされていき、12mの地点に達した時には跡形も無く消滅していた。
「あとは地縛霊のみです……頑張りましょう、雷尖」
 拘束回転する独楽と化した緋雨が地縛霊を2回切り裂き、続いて雷尖が連爪撃で傷を広げるように抉る。
「本当の食べ物ではないにしても、食べ物を武器に使うその性根が許せません! たっぷり反省して下さい!」
 そこに瞳がロケットスマッシュを叩きつけ、渾身の力を込めて振り抜く。
 地縛霊は轟音とともに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
『お、俺は……悪くない! お前らこそ喰い改めるべきなんだ!』
「料理は人を笑顔にする為の物でしょ、悔い改めるのは貴方ですっ!」
 最後の力を振り絞って立ち上がる地縛霊に、冥がきっぱりと言い放つ。
 次の瞬間、地縛霊の周囲にある幾つもの物品に鋭く尖った刃が生え、地縛霊を押し潰すように集まり出す。
「この一撃で終わらせます。行けっ、ジャンクプレス!」
 グシャァッ!
 ガードすることも避けることもできず、ジャンクプレスに押し潰された地縛霊は見るも無残な姿に変わり果てていた。
 戦う力と意志を失った地縛霊は膝を折り、そのまま地面に崩れ落ちる。
『クイ……ア……ラ……タメ……ヨ……』
 最後に一言そう呟き、地縛霊は夜の闇に溶けるように消滅した。

●焼肉屋の誘惑
 真緒から貰った冷麺半額割引券の焼肉屋へとやってきた能力者達。
 メニューに目を通すと目的の特製牛タン冷麺は800円と書かれていた。
 割引券を使えば、1コインでお釣りが来る財布に優しい価格になるが、せっかく焼肉屋に来たのだから、優しい価格よりも優先したいものがある。
「どうせだし肉も食べたいわよね、肉。他に肉も頼む人、いる?」
「ここにいるのは女の子ばっかりですから、ちょっとくらい羽目を外して食べちゃってもいいですよね?」
「焼肉屋で冷麺だけってのも寂しいしね」
「シャオに同意! いくら冷麺が美味しくても焼肉店の主役といえば肉だよ」
 今が夜中だとか、冷麺と違って割引券が無いから通常料金だとか、そんなことは気にしない。
 食べたいから食べるのだ。欲望に忠実な瞳、翔、冬の3人が、翠の問いに手を上げて答えた。
「ノリノリだね、ふーちゃん。それなら僕と大食い勝負だっ!」
「こう見えて私は大食いだよ。シャオには絶対負けないからねっ!」
 翔と冬に至っては大食い勝負までやるつもりらしく、バチバチと熱い火花を飛び散らせている。
 そんなこんなで注文の決まった能力者達は店員を呼び、ぞれぞれ希望のメニューを注文していく。
 そして最後に氷の注文の番が回ってきた。
「カレーを出しなさい」
「はい、牛タンカレーですね。お1つでよろしいですか?」
「え、無い!? 冷麺があってカレーが無いですって! じゃ、冷麺で……え、カレーあるの?」
 注文した本人はもちろん、やりとりを見ていた能力者達も耳を疑う。
 色々とツッコミどころ満載だが、カレー好きの氷は迷わず冷麺と一緒に牛タンカレーも頼む。
 注文を終えた能力者達のテーブルに、所狭しと食べ物が並んでいき、華やかになったところでジュースで乾杯。
 女の子だけの賑やかな食事会が幕を開けた。
「うーましー♪」
 開始早々、氷が美味しさに声を上げる。
「そんなに美味しいんですか? 締めに食べるのが楽しみになってきましたね」
「締めにこれを食べるつもりなの?」
「食べるつもりなの? って、焼肉の締めといえば冷麺に決まって……」
 そこで瞳の台詞が止まる。
 忘れていた。氷が牛タンカレーを頼んでいたことを。
「締めに食べるのはさすがに重いとお姉さん思うんだけどね」
「いえ、食べません」
 瞳はきっぱりと断った。
「冷麺頂きますなの♪ あれ、緋雨ちゃんどうしたなの?」
 緋雨が不思議そうに冷麺を見つめているのに気付き、芽李が声をかけた。
「私の知っている冷やし中華とは異なる物でしたので……冷麺と冷やし中華は違うのですか……?」
「冷麺と冷やし中華は違う物なの。良かったら、芽李ちゃんが美味しい食べ方を教えてあげるなの」
「是非お願いします……」
 頭を下げる緋雨に「お安い御用なの」と言って、芽李はテーブルに備え付けられているお酢、タデギ(唐辛子ペースト)、キムチなどを入れて、黄金色のスープを赤く染めていく。
「ラーメンとかと違って、麺には弾力があるけど、麺を噛み切らずに長いまま食べるのが通なのよ♪」
 そう言って実際に食べてみせる芽李の真似をして、緋雨も冷麺を口にする。
 はたして初体験の冷麺のお味は?
「うん、美味しい冷麺なの〜! 冬に冷麺もなかなか美味しいなのね」
「あらっ……とても美味しいですね……。初めて味わう新鮮な食感です……」
 満足のいく味だったようで、2人ともご満悦の様子。
「あぁ、やっぱり美味しいです。これなら焼肉も期待できるかも。……少しだけなら、大丈夫かな。あぁ、でもやっぱり節約しないと……」
 焼肉も食べようかと財布を開けた冥だったが、中に入っている金額を考えると贅沢はできない。
「このロース美味しいね、ふーちゃん」
「甘みがあって最高だね、シャオ♪」
 ごっくん。
 目の前で美味しそうに焼肉を食べている翔と冬を見ていると決意が揺らぐ。
「甘みがあって美味しい」と冬が食べていた物は、実は翔が冬の皿にこっそりと乗せていた焼けた野菜だったりするのだが。
「すみませーん。とりあえずロース1人前下さい」
 気が付いたら冥は肉を注文していた。
 こうして楽しい時間はあっという間に過ぎていき――。
 ずずずずずーっ!
 スープを飲み干して空になった器の上に箸を置き、翠が両手を合わせる。
「ごちそうさまでした」
 焼肉組が締めの冷麺を食べ終えて、真夜中の食事会は幕を下ろした。
 しかしそれは同時に、この場にいた何人かにとって、胃もたれと増加した体重との戦いの幕が開けたことを意味している。
 ある意味、ゴーストよりも遥かに厄介なこの敵に、乙女達は勝つことができるのか?
 それはまた別のお話……。


マスター:春夏秋冬 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/11/13
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