<リプレイ>
● 結社「あまやどり」のメンバーである9人はこの日、一周年を記念するパーティの準備に勤しんでいた。 「窓にスプレーで落書きとかしたいけど……怒られるかな?」 結社長の柳瀬・和奈(てるてるむすめ・b39816)は、窓ガラスとスプレー缶を交互に見て暫し思案。 部屋の中は既に折り紙の輪っかや月桂樹のリース、てるてる坊主などですっかりデコレーションされていたのだが、窓だけはやや殺風景に思える。 一口に1年と言っても、「あまやどり」と共に歩んできた彼女にとっては掛け替えのない日々の積み重ね。その記念のパーティともなれば、飾り付けにも妥協はしたくない所。 「後で綺麗にすれば大丈夫だよ、きっと」 「そっか、そうだよね! 描き描きー♪ てるてるぼーうず♪」 可愛らしいてるてる坊主を更に増産しながら言うのは、月乃葉・優生(命を刻む懐中時計・b45954)。和奈もその言葉に頷くと、早速窓一杯に文字や絵を描き出す。 優生もまた、創設間もなくからの古参メンバーであり、和奈とは気の置けない親友の間柄である。 「『祝! あまやどり1周年』と」 黒板に大きく文字を書き込む三井寺・雅之(風炎の光彩・b60830)。 彼にとって「あまやどり」は、銀誓館に入学した頃からのなじみ深い場所。当初散策の拠点であった此処は、多くの仲間達との出会いの場にもなっていることだろう。 「あ、私にも描かせて」 缶を手に、自らも窓の前に立つ速坂・めぐる(烈風少女・bn0197)。 紆余曲折を経て銀誓館に来た彼女も、最初は戸惑う事ばかり。そんなめぐるにとっても「あまやどり」は安らぎの場所となった。 さて、一方調理班の方はと言うと……。 「飾り付けも大分進んでいる様だな」 槻森・流(石礫煌姫・b40777)は、塩鮭入りのおにぎりを並べつつ、部屋の中を見回す。 幼いメンバーも多い中で、落ち着きがあって頼れる彼女はとても貴重な存在。今日もはしゃぎながら飾り付けをする仲間を優しく見守っている。 「こっちも負けてられないね。ま、手際よくやっちゃいましょか」 手慣れた様子で揚げ物やサンドイッチを完成させてゆく鈴峰・蓮(雨音の止む頃に・b53732)。 一休みする場所を求めて「あまやどり」に辿り着いた彼も、はや1年が過ぎた。 (「おにーさんもここにきて1年、いろんなことがあったんだよなぁ……この1年で俺は強くなれたし、護りたい、大切な人もできた……幸せだよな」) それらの日々を振り返り、万感の心境である様子。 「あまりパーティー向きでは無いかもしれませんね」 苦笑しながら肉じゃがを煮込む夜科・涼子(蒼穹の乙女・b55281)。 折目正しく落ち着きある涼子は、料理の腕前もかなりの物。小学生組にとっては同年代でありながら、頼れるお姉さんである。 「……お祝いは、お赤飯、ですよね?」 自宅から大量の赤飯を持参したのは、夜咫・晶(獅子の瞳を映す銀鏡・b53016)。 何かと個性的な彼女だが、「あまやどり」では良いアクセント。当初は他人とのふれあいに困惑する事も多かった様だが、この場所で多くの仲間達とふれあい、大分本来の輝きを取り戻している様に見える。 「皆、一段落したらこっちのデコレーションもお願い」 こちらも古株中の古株、宮代・さつき(空色の風詠い・b52693)が並べたのは、ケーキの台となるスポンジ。全員分のケーキの他に、あまやどり用のケーキを皆で完成させようと言うのだ。 「凄い! これってさつきちゃんが作ったの?」 「今日は『あまやどり』の誕生日だからね」 砂糖細工の傘も、それぞれのイメージカラーに合わせて9本揃っている。 こうして飾り付け、料理、そしてケーキが完成し、いよいよパーティの始まりだ。
● 「というわけで乾杯の音頭、よろしく団長」 「パーティならやっぱ必要だよねー♪ じゃあ、みんなジュース持った?」 雅之に促され、グラス片手に問い掛ける和奈。 「「持ったー」」 「よし、じゃあ行くよー。あまやどりの誕生日を記念して……かんぱーいっ!!」 「「かんぱーい!」」 「えっと、えっと……乾杯、です」 ――パーン! グラスの触れ合う音に続き、クラッカーが鳴らされる。 「一周年おめでと、あまやどり。これからもお世話になるね」 各々、祝いの言葉と気持ちを捧げながら、グラスを傾ける。 「冷めちゃう前に食べよ食べよ」 「いただきまーす!」 食欲をそそる香りと共に、湯気を立てている料理。 皆の空腹もそろそろ限界に達していた。 「みんなお料理上手だ……うー、食べすぎ気をつけないとー」 和奈は皆の作った料理を少しずつ食べるが、どれも非常に美味しく箸が止まらない。 「うん、抑えるところは抑えないと後が恐い事になるから気をつけないと……でも美味しい!」 それは優生も同じようだが、年頃の娘達にとっては体重計も恐ろしい。 「あ、皆。ケーキも有るんだから、食べ過ぎには要注意だよ?」 と、ペース配分を呼びかけるさつき。メイド服に着替え、甲斐甲斐しく働いている。 「追加で食べたいものある人ー? 足りなかったらおにーさんがまた作るよ」 こちらも伊達に執事スタイルではない蓮。食欲旺盛なメンバーには心強い。 「こんな風に騒ぐのは、学園祭の後夜祭以来か」 「そうね、戦いの後の祝勝パーティもあるけど……こういう平和なお祝いが最高よね。って、この肉じゃが美味しい! うちのお母さんが作るのよりずっと美味しいわ」 雅之の言葉に同意しつつ、肉じゃがを一口食べためぐるはその味付けに思わず感激。 「家でのお手伝いレベルですけど……でも他のお料理も本当に美味しいですね。作り方を教えて貰いたいです」 謙遜しつつ、向上心旺盛なさつき。 そうこう言っている間にも、あれだけ並べられていた料理が見る見るうちに少なくなってゆく。 「もう残り少ないか。そろそろケーキだな。私が持って来よう」 「あ、ごめんね。有り難う」 「なに、私は動いている方が落ち着くからな……」 「おにーさんも手伝おう」「あ、じゃあ私も」 流達がケーキを運び、皆の前へ並べてゆく。 「美味しそう……あれ? どうしたの晶」 「……いえ……とても、美味しそう、ですね」 皆と出会えたこと、こうして一緒に過ごせることを噛み締めると、思わず胸がいっぱいになってしまう。涙が零れないように、にこりと微笑んで応える晶。 他の一同も晶同様、幸福を噛み締めつつケーキを頬張るのだった。
● 「やるからには勝ち目指すよー!!」 「こう見えても大富豪得意なんですよ♪」 さて、お腹を満たした9人はゲームに興じることとなった。 最初にやることにしたのは、2組に分れての大富豪だ。 普段通りやる気満々の和奈と、いつになく静かな闘志を燃やす涼子。 「こういうゲームだと普段やらないような意地悪な事とか、意外と知らなかった一面が見れたりするから楽しいよねぇ」 「罰ゲームは回避したい所だな……」 カードを配りながら楽しげに言う優生。雅之は勝ちにはこだわらないが、それでも罰ゲームは出来ればやりたく無いところ。 肝心の罰ゲームは、ばっちりデコレーションされた窓ガラスを綺麗にするという、地味だが大変な罰だ。 「どうかな、覚えられた?」 「えっと、多分……大丈夫、です」 晶は大富豪のルールを知らなかった為、急遽さつきにレクチャーを受ける。 「OK……私の鬼引きを見せてあげる」 「私も負けるつもりは、無いしな……」 早くもバチバチと火花を散らし合うめぐると流。 グーパーの結果、比較的のんびり楽しむ組と、真剣勝負組に分れたのだった。
「うわー、またスペード縛りか……」 「ごめんね。スペードしか無くてさ」 すっかり手札を封じられて嘆く和奈と、次々に手札を減らしてゆく優生。 (「このペアが通れば大富豪!」) 残り手札は3枚、そのうち10のペアを切る。 「えっと、これ……出せます、か?」 「うわ」 と、ここで晶が切ったのは11のペア。 2、1、そして5のペアと続けて切って結局そのまま上がってしまった。 「うーん、もう教える事は何も無い……かな」 苦笑しつつも、2番手で上がるさつき。 次順の優生が最後の1枚を捨てて3番手。 「ううー……次だよ次!」 手札に恵まれなかった和奈は、大貧民からの巻き返しを図るのだった。
「ふーむ……全体的に抑え気味だな」 「いやいや、おにーさんは本当に全然強いカードがないだけだよ」 「奇遇ね、私もそうよ」 一方、真剣勝負組は口三味線で相手を幻惑しつつ、熾烈な心理戦の様相を呈していた。 「あんまり熱くなりすぎないようにな……」 「っと、8流しです」 やれやれと言った様子の雅之に続き、涼子が8を切って場を流す。 「それじゃ行きますね」 涼子が満を持して切ったのは、4枚のカード。 「「か、革命!?」」 これまで手にしていたカードの強弱が逆転する役。 一同に電撃走る。 「ふふっ、これで上がりです」 そして自分自身はさっさと上がってしまった。 「よし、何とか行けるか」 「おにーさんも負けられないのよね」 デッドヒートの末、雅之と蓮が逃げ切る。残りは2人。 「通って!」 ばしっとめぐるが切り出したのは、クイーンのペア。 「……悪いな」 「ぎゃあ!」 が、流の出したジャックのペアに封じられてしまった。 結局その後は1枚もカードを切ることが出来ず、流が4番手の上がりを物にしたのだった。
● 大貧民に続いて神経衰弱や、双六と言ったボードゲームを存分に楽しんだ一同。 いよいよ、メインイベントでもあるプレゼント交換の時間がやってきた。 「それじゃ皆、線を足して、それから好きな場所に名前書いてね」 どのプレゼントが誰の手に渡るかは、あみだくじで決まる。 「3本くらい引いておこっと」 「じゃあ俺は一番下に……」 横線が大量に書き加えられ、それぞれの名前も明記された。 「じゃあ、まずは1番のプレゼントからー……えーと、こう来てこう来て……1番は蓮くん! 続いて2番は〜……」 和奈の手によって、それぞれのプレゼントが全員の名前と結びつく。 「これで全員分行き渡ったよね? じゃあ早速開けてみようか!」 「ドキドキするね。でも、自分のが来ないようには祈っておかないと……」 「あ、そっか……そう言う可能性もあるんだね」 期待に胸を高鳴らせつつ、プレゼントの包みを解いてゆく9人。 「何これすごい! 綺麗!」 めぐるが眼を輝かせたのは、さつきが出品した幻想的な色合いのランプ。 「わー、可愛い! 誰の誰の?」 和奈の手に渡ったのは、蓮が出品したアミュレット。いつも笑顔でと願いの篭められた物だ。 「む、これはクリスマスに相応しいな」 流には、優生お手製の月桂樹のリース。クリスマスにも相応しいが、季節を問わない幸運のお守りでもある。 「これも可愛い! あまやどりにぴったりだね」 優生へは、雅之の雨傘を模したストラップ。あまやどりらしい一品だ。 「これは……縫いぐるみだね、クジラかな?」 さつきが箱から取り出したのは、コミカルな表情をしたクジラの縫いぐるみ。めぐるの出品した物だ。 「これ、私が、貰っても、良い、ですか?」 「あぁ、ソレでよかったか少々不安に思うが……」 晶が手にしたのは、子猫が時計を抱いたデザインの目覚まし時計。 「……大切に、しますね」 大事そうに、ぎゅっと抱きしめる晶。 「これは……涼子ちゃんっぽいね」 「うふふ、当たりです」 蓮は、涼子の出品した雪だるまの人形。雪だるまなのに傘を差しているのがお茶目だ。 「さて、私はと……まぁ!」 涼子には、晶が作った手編みのマフラー。傘の模様やてるてる坊主のデザインがあしらわれた本格的な作品だ。 「ってことは、俺のは……」 雅之が開いた包みには、和奈お手製の和傘。掃晴娘人形も付いており、雨降り自体からも守ってくれそうだ。 「ありがとうな。とても良い記念だ」 各自、送り主へお礼を言い合い、プレゼント交換も無事完了だ。
● 「今日はいい天気だ」 「また、やりたいですね」 「うん、これから1年も一緒に頑張っていこうね」 パーティも終わり、少し風を感じようと外に出た一同。 改めて仲間達との絆を深める、良い機会になった事だろう。 「ねぇちょっとー、上の方届かないから手伝ってー」 「すごい手が冷たいよー」 と、声のした方を見ればめぐると和奈が窓越しに手を振っている。 「しょうがない、皆で手伝ってあげようか」 「そうだね」 やれやれと部屋に戻る一同。 皆一緒なら、準備や後片付けもまた楽しい。 これからも「あまやどり」はメンバー達と共に、のんびりと、時折賑やかに、時を過ごしてゆく事だろう。
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参加者:8人
作成日:2009/12/23
得票数:楽しい2
ハートフル13
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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