PK


<オープニング>


 舞台はファンタジー世界。
 街を出ると、そこは広い平原だった。
 周りにはゼリー状のぽよぽよした、かわいいヤツが愛らしく動いている。
 オンラインゲームによくある、最初のエリアだ。
 ここで、変な黒い馬が、一人の新人PCを踏みつけつつ、ゲラゲラと笑っている。
「うひゃひゃ、ざまぁ!」
 周囲には見るからに高レベルっぽいのが従えていた。
 こいつらが、この新人PCをPKしたようである。
 どうやら、この新人PCは悪夢に囚われた被害者のようで、オンラインゲームでPKされたことが原因でショックを受け、こうなってしまったらしい。
 そして、悪夢の中で永遠にPKされ続け、変な馬……ナイトメアに屈服してしまった。
 ナイトメアがPKで彼から奪ったアイテムは、悪夢の欠片。
 このレアアイテムがあれば、復活の糸口を見つけることができるかもしれない。
「でも、これだけ暴れてあいつらが動かないはずがねぇ」
 もっとも厄介な敵……それは、現実世界からの使者。
 ナイトメアは従える悪夢の衛兵に、邪魔者をことごとくPKするように命じた。
「ここは俺の庭だ、好き勝手にはさせねぇ」

「PKって、サッカーのことですか?」
 栗栖・優樹(小学生運命予報士・bn0182)がゴースト事件について説明するが、内容がちぐはぐだった。
 話によれば、ナイトメアが悪さをしており、一般人が悪夢に囚われてしまったようである。
 だが、彼が言うには、悪夢の世界はファンタジーなRPGによくある光景らしい。
 そんなところでサッカー?
 優樹がとぼしい知識で必死に説明するのを拾い、分析し、ようやく悪夢の囚獄に捕らわれた主人公の姿が浮かび上がった。どうやら、オンラインゲームが関係するらしい。
「日本人は対人戦を極端に嫌いますからね。特にPKは」
 その辺りに詳しそうな白河・アイリス(高校生呪言士・bn0084)がいたおかげで、だいたいの状況が把握できる。
 原因は「PK」、すなわち「Player Killer」、あるいはその行為についていう「Player Killing」。PKとは、ゲーム中において他のプレイヤーを意図的に殺す者であり、その行為でもある。サッカーのペナルティー・キックではない。
 被害者はオンラインゲームでPKされたことが原因で、悪夢に囚われてしまったようだ。
 いきなり襲われ、殺され、アイテムを奪われてしまったら、誰でも嫌な思いをする。
 特に被害者の敬二さんは、オンラインゲーム初心者らしく、右も左もわからない状況でPKされてしまったわけだし、ショックは大きいはず。
 そこにナイトメアが付け込んだわけだ。
 敬二さんは悪夢の中で拷問のようにPKされつづけ、ついに屈してしまう。
 そして、ナイトメアがついに悪夢の欠片を手に入れてしまったのだ。
 これにより力を得たナイトメアは、復活しようと画策しており、周囲にも悪夢の影響が広がっている。このままにしておけば、マズい状況になりかねない。
 その前に、敬二さんの悪夢の中へティンカーベルの不思議な粉を使って入り込み、ナイトメアを倒すのが、今回の依頼である。
「え、えっと……ぶたいは、ファンタジーRPGっぽいばしょです……」
 入った悪夢の中は、今は無き某オンラインゲームによく似たファンタジー世界。
 冒険は最初の街からスタート。
 外にはゼリー状のぽよぽよしたヤツが、かわいく動いているらしい。
 そんな光景を眺め、いざレベルアップ! と、この平原を冒険していると、PK野郎が襲ってくる。
 もちろん、こいつらはナイトメアが送り出した悪夢の衛兵で、敬二さんをとことんPKしまくり、彼の精神をズタボロにしたヤツらだ。後ろでは、ナイトメア本人が偉そうにしている。
 こいつらを釣り上げて、返り討ちにしよう。
「え、えっと……つよい人にはおそってこないので、よわい人になってください……」
 夢の世界なのでコスチュームとかは何でもいいが(アバターでメイド服やスクールユニフォームなどもあるので問題なし)、いかにも強そうな姿や装備だと襲ってこないらしい。
 こいつらは、弱いものいじめしかできないヘタレなのである。
 ということで、初心者丸出しな姿でナイトメア達を誘き寄せてほしい。
 ゲームにおけるクラスも、夢の中なので曖昧だ。勝手に名乗ってもらって問題ない。
 でも、ゲームにおける二次職、三次職にありそうなクラスは、やっぱりマズそうだ。ダメなら街でクラスチェンジできるので、失敗しても安心仕様となっている。悩んだら「ノービス」にしておけば、間違いないだろう。
「え、えっと……てきは六体います……」
 以下、ナイトメアとゆかいな仲間達のリスト。

 ・☆魔神滅殺暗黒剣士☆:全身黒尽くめの鎧で双剣使い。見た目はすごいがハッタリ。
 ・DoragonQueenNight:黄金の鎧を着た女騎士。スペル間違えてるし、略してはいけない。
 ・うちのみぃちゃん:猫の着ぐるみアバターの魔術師。「にゃー」としか言わない。
 ・辻バフ製造機:フンドシ一丁にアフロな変態僧侶。辻バフといいつつ、かけるのはデバフ。
 ・「砂」:メイド服の銃使い。物陰に隠れて伏せながら狙撃する。芋虫。
 ・ご本人:ナイトメア。馬。以上。

 こいつらを見かけたら要注意。
「私なら、仲間と一緒にPKしてきた相手をログアウトするまで追い詰めますけどね」
 この方は特殊として……PKを倒す「PKK」となって、ナイトメア達をやっつけよう。
「え、えっと……ナイトメアはよわむしですから、すぐにげます……」
 ナイトメア達は初心者しか襲わないヘタレっぷりで、ピンチになるとすぐに逃げ出す。
 戦いの舞台となる平原の奥に、次のエリアとなる森への入り口があるが、ここがナイトメア専用のワープとなっている。ここから逃げ出すようだ。
 その他、初心者平原エリアの状況は下記のとおり。
 南に街への入り口があり、周囲はぽつぽつと岩があるものの、特に大きな障害となるものはない。南西にかけて森が広がり、ここに例のワープポイント。東は山で囲まれ移動できない。
 ここで逃すと、またどこかで悪さをするに決まっている。
 うまく戦況をコントロールし、鬼畜ナイトメアを逃がさぬよう、撃破してほしい。
「え、えっと……ゆめの中でけがしちゃうと、ほんとうにきずつくので、ちゅういしてください……」
 優樹から粉と忠告を受け取ると、能力者達はナイトメア討伐に向かった。

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参加者
天薙・詩郁(北十字の猛禽・b15163)
エルヴァ・シルフィル(茶道好きな魔剣士・b19067)
司・葬(中学生ファイアフォックス・b29619)
瀬川・奈留(偽名の炎・b36175)
八伏・椛(メイプルワイズ・b37345)
橘・悠(白き霹靂・b45763)
オリバー・ナイツ(黒服へたれ種ヴァンパイア・b50388)
八木山・聖夜(黄金山羊座の守護剣士・b55076)
アリアン・シンクレア(森の妖精・b58068)
出雲・さらら(淡桃雪・b65574)
NPC:白河・アイリス(高校生呪言士・bn0084)




<リプレイ>

 ナイトメア退治の依頼は、比較的難しい依頼だとされる。
 だが、今回戦う相手は、自分達より弱そうな相手しかPKできないというヘタレらしい。
 ある程度の実力を持った能力者なら、難なく倒すことができそうなゴーストであるが……。
 この手の依頼が難しいのは、ナイトメアの臆病な性質による。
 分が悪いと、すぐに逃げ出すのだ。
 その足の速さは、さすがに馬、といったところか。
 どれだけ熟練した能力者でも、その逃げ足の速さだけには勝てないのである。
 今回、悪夢世界に入り込む能力者達も、そのことを十分理解し、ナイトメア討伐に挑む。

 ティンカーベルの不思議な粉で敬二さんの夢の中に入ると、そこは広い草原のフィールドだった。
 周りには、ゼリー状のかわいいモンスターがぽよぽよ動いている。
 かつて戦った電脳世界を、彷彿とさせる世界観であった。
 街の入り口前には、初心者らしきPTが集まっている。
 能力者達であった。
「広い場所だな。どこにいけばいいんだ?」
 エルヴァ・シルフィル(茶道好きな魔剣士・b19067)が、広いフィールドを周囲を見回す。
 何をすればいいんだろうといった感じで、たどたどしく動き、とりあえずクエストでもこなすか、といった感じでモンスターに近づいていく。
「これ、どうやって攻撃するんじゃ?」
 ノービスの橘・悠(白き霹靂・b45763)は、一生懸命にゼリー状のモンスターを殴っている。
 いかにも初心者がやりそうな「武器を装備していませんでした」という感じで、苦戦している「演技」をしていた。
 同じくノービス演ずる出雲・さらら(淡桃雪・b65574)も「ぜんぜんわからないです〜」と、初心者っぷりを大々的にアピールしている。
「私なんて、戦闘スキルすらないです。だって、村娘Bですし」
 さららは村娘っぽいアバターだったが、瀬川・奈留(偽名の炎・b36175)は完全に村娘。
 どうやって戦うの? という感じであったが……とりあえず、さららと村娘姉妹を演じながら、街の周辺をうろちょろしていた。
「ちょwwwザコのくせに硬杉wwwしかも囲まれるしwwwww」
 オンラインゲームの世界ということで、どこぞやの掲示板からきますたといった感じで、草を生やしまくっているのが八伏・椛(メイプルワイズ・b37345)。
 周囲のゼリーをことごとく殴り、逆にフルボッコにされている。
「今、助けますわね。エルフ族は弓の名手なのですわ!」
 エルフを演じるアリアン・シンクレア(森の妖精・b58068)が、ゼリーまみれになっている椛を弓矢で蹴散らし、助け出す。矢がプスリと刺さり、涙を流しながら消えていくゼリーなモンスター達。
「とりあえず、回復アイテム作っておくね」
 キノコ帽子をかぶったコックさんの八木山・聖夜(黄金山羊座の守護剣士・b55076)は、仲間が戦闘している横で、ひたすら採集を続けている。
 能力者達が初心者ぽいふりをしているのには、わけがあった。
 ナイトメア達は、弱いものいじめしかできないヘタレだからだ。
 こいつらを釣り上げるため、こうして演技しているわけである。
 そんな能力者達を遠くから眺めている集団があった。
「あいつら、弱そうじゃね?」
「hahaha noob!」
「いいカモだな」
「ヤルか?」
 最初のモンスターに苦戦している能力者達へ近づいていくPT。
「あっ、あれは! もしかしたら、ウワサの……」
 白河・アイリス(高校生呪言士・bn0084)がオススメというWIZにクラスチェンジしてきたオリバー・ナイツ(黒服へたれ種ヴァンパイア・b50388)が、近寄ってくる連中に指を差した。
 いかにも高LVそうな装備で、上級者であることは間違いない。
「PKは俺が許す。だって、ここは俺の庭だし、俺がGMだし」
 その後ろには黒い馬がいた。
 ナイトメアだ。
 ということは、あのPTがPK……悪夢の衛兵であることになる。
 馬の指示を受けて、そのPK連中が動き出した。
「えっ! 初心者エリアでもPK可能なの!? しかも、相手は一級廃人様だし!」
 天薙・詩郁(北十字の猛禽・b15163)は、とりあえず驚いた様子を見せておく。
 敵はもう一体いるはずだが……姿は見えない。
 どこに隠れているのか……それに、ナイトメアに逃げられないように、ヘタレを演じながら戦うのは、なかなか大変である。そして、隙を見て一斉攻撃を仕掛けるわけだが、予想以上に難しいように感じた。
 詩郁はアイリスに目で合図を送った。
 もし、自分が倒れた場合、彼女がナイトメアへの一斉攻撃合図を出すことになる。
 能力者達は、初心者を演じつつ、ナイトメア達を迎え撃った。
「見習いけんしだからってバカにしないでください!」
 司・葬(中学生ファイアフォックス・b29619)が、近寄ってきた全身黒尽くめの双剣使いに、威勢良く攻撃をしかけていった。
「え、効いてないの?」
 だが、効いた様子はない……と思ったが、結構ぷるぷると震えていたり。
 意外とやせ我慢だったりするかもしれない。
「逃げます!」
「こ、こんな強い方に勝てるわけがありません!」
 オリバーも逃げる……振りをして、ワープゾーンの方へと走った。
「初心者を攻撃するなんて、ひどいですわ!」
「助けてくださいですー!」
 アリアンとさららも逃げ回り、調子に乗った衛兵達が後を追い掛け回す。
「はっ! もう、後がないー!」
 森の周辺をチェックしていた悠は、逃げながら例のワープポイントを発見した。
 そこを背にして能力者達がワープを塞ぐように、衛兵達を迎え撃つ。
「ちょwww逃げれないしwwww玉砕覚悟で特攻しかねぇwww」
 椛は盾を構えると、近づいてきた女騎士に飛び掛った。
 そして、もう片手で構えるどうのけんで斬りつける……というか、殴りつけるといった表現の方が正しいような「ぽこっ☆」という音が響いた。当然、まったく効いた様子はない。
「なんという硬さなの! こうなったら、まず薄そうな僧侶からやっつけるわよ!」
 詩郁は、フンドシ一丁にアフロという、ぶっ飛んだ姿の僧侶に狙いを定めた。
 他の能力者達も、僧侶や魔術師といった邪魔な攻撃をしてくる敵を倒しつつ、ナイトメアを取り囲んでいく。
「けっ。雑魚も数いたらキツいな」
「にゃー」
 僧侶はアンチヒールのデバフや毒で攻撃してきたが、さすがに裸ということで、能力者達の集中攻撃に耐えれず、速攻で撃沈した。そんな能力者達を魔術師が爆風で吹き飛ばし、双剣士が斬りつけてくる。
「いたた……弱いものいじめはやめてくださいです……」
「くっ、これは厳しいな……」
 双剣士の連撃を受けた奈留は、盛大に後ろへ倒れ(たフリをし)ながら、大泣きした(もちろん、ウソ泣き)。そんな奈留に、聖夜は回復アイテム「キノコの丸焼き(ヒーリングファンガス)」を使ってHPを回復させる。
 その裏では、こんなチャットが行われていた。

 ●ささやき
 聖夜>(奈留):こっちの演技に騙されてるみたいだね。
 奈留>(聖夜):それに、この双剣士。全然弱いし、痛くないです(笑)

 女騎士も盾を構えて、攻撃を受け続けるだけであり、後衛職の僧侶や魔術師がいないと、能力者に大きなダメージを与えられないようだ。
「みなぎっっっっってwきwたwぜーーーー!」
 椛もポーション(という名のギンギンパワーZ)をがぶ飲みして、ぽこぽこ叩き合っていた。
 うまくナイトメア達を騙しつつ、次は魔術師を狙っていく能力者達。
(「まだ姿が発見できないな……」)
 エルヴァは魔術師のファイアーボムを受けて吹っ飛びながら、銃使いの姿を追っていた。
 攻撃速度は遅いものの、確実に銃でこちらを狙撃してくる厄介な相手だ。
 この攻撃が案外痛く、なるべく避けようとは思うものの、姿がまったく見えない。
(「ならば、撃破を急ぐのみ……」)
 エルヴァは猫の着ぐるみアバターの魔術師へ、静かに大鎌の刃を向けた。
「こんな強い後衛職は反則です……」
「にゃ!」
 魂を刈り取るように鎌の刃が着ぐるみを切り裂き、オリバーがコウモリの群れを召喚する。
 着ぐるみなので様子はわからないが、随分とHPを削ったはず……オリバーは頃合を見計らって、魔術師の撃ち込んだ魔法で吹き飛ばされた振りをしながら、ワープポイントへ向かった。
「もう……ダメなのです」
 さららの放った光の槍が着ぐるみを貫通すると、魔術師は悲鳴をあげながら倒れた。
 同時に、さらら自身も咳き込んで、胸を押さえながら地面にうずくまった。
「だ、大丈夫!? すぐに精霊の力で癒すわ!」
 アリアンが一応、回復させるが……もちろん、これも油断させるための演技だということは知っている。悠やアイリスも仲間の状態をチェックし、ちょっとの傷も癒していく。能力者達は万全の状態で、一斉攻撃の態勢を構築していった。
「おいおい、何雑魚相手に手間取ってるんだよ。俺が蹴散らしてやるわ」
 そこへ、ついにご本人が登場。
 偉そうに近づいてくると、能力者達を叩きのめそうと目を光らす。
「もうダメ……」
 詩郁がキーワードをつぶやき、片膝を地面につこうとした。
 これが、一斉攻撃の合図である。
 能力者達は互いに目で確認しつつ、その瞬間を持った。
「あの、和平しません?」
「へ?」
 だが、近づいてきたナイトメアへ、葬が出し抜けに言った。
「貴方達の目的は、その『橋』で現実に帰還することでしょう? 貴方みたいに『出来る』方ならわかると思いますけど、ここで僕らを退けて橋で現実に帰還しても、今度は現実で殺し合いです」
 予想外だった。
 ナイトメアにしても、他の能力者にしても。
「互いに全力の和平を呑んでもらえるなら、此方は『世界結界を最も痛めない方法での現実帰還への協力』と『現実世界での拠点と協力』を約束できます」
「交渉するきか?」
 ナイトメアがギッと能力者達を睨む。
「賢い貴方ならわかると思いますが、僕達を見方にした方が後々に益があると……同意するなら、この場は引いてくれませんか?」
「俺達と和平協定を結べというのか」
 葬は静かに首を縦に振った。
「だが、お前達では役不足だ。たかが一介の能力者が協力するといっても一体、誰が信用する?」
 ナイトメアと葬のやりとりを、他の能力者達は呆然と見ていることしかできなかった。
「もし、交渉をしたいというのなら、俺達が現実に蘇ることができるという確証を示せ。話はそれからだ、出直してこい。お前ら、引き上げるぞ」
 こっちが弱い振りをしていたからか、どうやら決裂しそうな様子。
 だが、驚くべきことに、ナイトメアは悪夢の衛兵達に撤退するように命じた。
 引いてくれるのか?
 あまりにも意外な展開に、能力者達は一瞬、頭が真っ白になった。
 ……いや、まて。
 悪夢の欠片は、未だナイトメアの手中にある。
 このまま引き下がらせれば、結局ナイトメアのおもうがままではないか。
 逆に、こちらがナイトメアに騙されているのでは……?
「……しかたないですね」
 葬が感づくと、詩郁に合図の続きを頼んだ。
「デスペナルティ上等よ!」
「ちっ!」
 ワープポイントに逃げこもうとしたナイトメアへ、詩郁が猛烈なダッシュから、呪言突きを繰り出した。葬も指先に込めた全霊の気をナイトメアに流し込む。
「『葬送の一撃』をキミに……わかり合えないなら、仕方ないよね」
 破壊のエネルギーが全身に走り、暴れ苦しむナイトメア。
「植物の精霊ドライアードよ、彼の者達を縛りあげたまえ!」
 攻撃を振り切って逃げようとするナイトメアを、アリアンが捕まえた。
 足に絡みつく茨の足枷がナイトメアの動きを封じ、そこへオリバーが高速の一撃を放つ。
「覚醒スキル・クイックドローでやられてください!」
 放たれた一打は、やや遅れてナイトメアの背中へ大きな傷を生み出し、その傷を広げるようにエルヴァが大鎌を振り落としていく。
「さっさと、人様の夢の中から出ていくんだな」
 黒い刃が傷をさらに深くえぐり、そこから力を奪っていく。
「……今までの借り、万倍以上にして返してくれる」
 悠は、今まで溜め込んだ怒りと憎しみを言葉に込めて叫んだ。アイリスの呪文と重なり、その憤然たる叫びはナイトメアの体を激しく痛めつけていった。
 能力者の総攻撃を受けて暴れ狂うナイトメアだが、茨の締め付けはさらにきつくなり、暴れれば暴れるほど、体に刺が突き刺さってくる。
 悲鳴をあげ続けるナイトメアへ、椛は全ての感情を武器に込め、それを思いっきり叩きつけてく。
「わっちの怒りが有頂天!」
 熱い感情がリミットを突破し、それは冷酷な殺戮の氷となる。
「沈めー!」
 聖夜は毒の沼を生み出し、全身を氷に覆われたナイトメアを沈めていく。
 動くことができず、もがくしかないナイトメアへさららが光の槍を投げ放つ。
「私たちがいじめっこみたいです」
 光の槍が突き刺さり、悲痛な声を轟かせるナイトメアを、奈留がいい目つきで見ていた。
 そして、舌舐めずりをすると、まさしく馬乗りで組み伏せて、首筋へと噛み付く。
「さぁて……馬刺し作り、がんばっちゃおうかしら?」
 とってもいい笑顔で生気を吸い取っていく奈留。
 すでに抵抗する力もないナイトメアは、生気を全部吸い取られて、干からびたようになって倒れた。
「ごちそうさまでした」
 完全に食い尽くされたナイトメアを、恍惚とした表情で見下ろし、合掌する奈留であった。
「デスサガをクリアした特級廃人に勝てるわけないでしょ」
 詩郁が消えていくナイトメアを、静かに見送った。
 あのときの廃人っぷりは凄まじいものがあった……あれに比べれば、こんなヘタレPKなど、大したことはない。能力者達は、命を賭したゲームに勝ってきたのだから……。

「やれやれ……これで終わったか」
 ナイトメア達を葬り、夢の中のフィールドも平和を取り戻す。
 被害者の敬二さんも、すぐに目覚めるはずだ。
 エルヴァは、再び彼が悪夢を見ることがないように願った。
「PKか……」
 聖夜は、平和になったフィールドを眺めながら、物思いに耽った。
 PK。
 日本人は、オンラインゲームで対人戦を嫌う傾向が強い。
 逆に、他国では対人戦がなければゲームとして成り立たないほど、重要なものだ。
 現在、日本に入ってくるゲームの大半が外国産というのを考えれば、そのギャップによって嫌な思いをする人が多くなるのは当然。
 敬二さんも、そんな一人だったのだろう。

 PKは他人に迷惑をかける行為か、リスクを楽しむロールプレイなのか。

 人によって、考えは違う。
 一ついえるのは……ナイトメア達は、ただの弱い者いじめでしかなかったということだ。


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参加者:10人
作成日:2009/12/08
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