金色纏う剣牙虎


<オープニング>


 閉館の時間を迎えた博物館。
 その3階フロアを、2人の警備員が手持ちの懐中電灯で、くまなく照らす。
 そこは大型の剥製が幾つも収められた、大きなガラスケースで占められたフロアだった。
「ここはいつ来ても不気味だよなあ……」
「ま、確かに目とか光りそうだが、所詮剥製に……ん?」
 2人が呟きを零した瞬間、ガラスケースに収まった剥製の一角から眩い光が奔る。
 中にあった虎の剥製を中心に金色の光が収縮し、そして……。

 グルルルル……。

「今の光は、一体……」
「それより、何か聞こえ……っ!」
 只ならぬ予感に、もう1人が剥製が収められた大きなケースに灯りを向ける。
 瞬間、眼の前で起きている光景に――呆然と、懐中電灯を落とした。
「と、虎の剥製が、動いて……!!!」
 仄暗き空間に轟くのは、内側から強化ガラスが破られた音。
 勢い良く飛び出したのは、黄金の毛並みを纏った、大きな虎。
『グオォォォン!』
 曲刀のような巨大な牙が、闇を一閃する。
 腰を抜かした警備員を凶牙が引き裂き、生臭い匂いが辺りを覆って……。
「うわわ――っ!」
 階下に逃げようとしたもう1人を大虎は凝視したまま、体をぶるっと振わす。
 あたかも、再び其の足で地を駆けることを、喜ぶかのように――。
 
●金色の大虎
「……みんなに頼みたいのは、『黄金の林檎』のメガリスゴースト退治だ」
 武羽・和史(小学生運命予報士・bn0099)は教室に集まった能力者達を見渡した。
 ――黄金の林檎。その名に聞き覚えがある何人かが互いに目を合わせる。
 その中には、眞田・烈人(中学生コミックマスター・bn0142)もいた。
「黄金の林檎のメガリスゴースト? いったいどんな奴なんだ?」
 烈人の問いに、和史は動物の剥製に取り付いたメガリスゴーストだと答える。
 そして、パーカーの内ポケットから地図と、建物の見取り図らしきものを取り出した。
「……目的のメガリスゴーストが現れるのはここ。とある都市にある博物館の3階だ」
 地図に印をつけた和史が次に広げたのは、博物館の見取り図。
 その3階の中央付近を大きく占めていたワンフロアを、ぐるっと赤ペンで囲った。
「……みんながこの博物館に着く頃は、閉館直後というのもあって裏口だけが空いている。そこから3階に向かって欲しい」
 館内には一般人はいないが、3階には見回りを始めた警備員が2人いるという。
 このままでは戦いに巻き込む恐れがあるので、彼等を避難させる必要があるだろう。
「……現れるのは、大きな虎の剥製に取り憑いたメガリスゴーストが1体。元は虎の剥製だけど、今は毛並みも金色に変わっていて、その能力もメガリスゴーストによって十分強化されている」
 その凶牙は一撃が重い上に、運が悪ければ生命力を奪い続けられる。
 また、その雄叫びは直線上の獲物を薙ぎ倒し、酷い麻痺を伴うとされる。
「……他にもこのメガリスゴーストは、周囲の動物達の剥製を6体ほど援護ゴーストとして呼び寄せる」
 大虎を護るように行手を阻むのは、ジャガーやオオカミ、小鹿等の剥製たち。
「……ジャガーやオオカミは強靭な顎を生かしての噛み付きを、小鹿は角を突き出して突進を仕掛けてくる」
 しかし、彼等はいずれも剥製だったもの。
 数こそ多いが、攻撃力や体力は大虎に比べれば大した事はないという。
「……メガリスゴーストを倒すと、虎の剥製も一緒に破壊されてしまうけれど、気にしないで」
 これだけはメガリスゴーストを倒す上で避けることはできない。
 戦いの最中、周囲の器物を破壊してしまうことも、仕方がない事だと告げた。
「……下手な細工をするより、世界結界の効果に委ねる方が、何よりも効果的だから」
 この場合、博物館を泥棒か何かが荒らしたという事になるのだろう……。
 戦闘後は、速やかにその場を立ち去って欲しいと、念を押すように付け加えた。
「……俺の予報は未来視だから、まだ被害者は出ていない、けれど」
 だが、相手はメガリスゴースト。
 強敵と戦うことになると口を結んだ和史に、能力者達も気を引き締める。
「ああ、皆頑張ろうぜ!」
 烈人が懐から取り出したのは1枚のカード。
 その内に収められた勇猛な相棒から仲間に視線を移すと、力強く頷いた。

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参加者
久遠寺・桜(枝垂桜・b47675)
歴木・大地(弌筆・b58481)
九条・勇(キレるな危険・b59732)
舞城・笑弥(剣で脅すより笑顔で脅かせ・b59830)
星・琴菜(夜空に奏でる生命の音色・b60743)
ミツル・イセクラ(ブラッディチェリー・b64670)
ヘルガ・リントゥコート(ハルティヤ・b64966)
浅葱・柚太郎(魔弾機工士・b68416)
NPC:眞田・烈人(熱血コミックマスター・bn0142)




<リプレイ>

●荒ぶる目覚め
「今の光は、一体……」
 警備員の1人が眩い光に包まれた剥製が収められたケースに灯りを向ける。
 しかし、懐中電灯の灯りがケースを照らす事は――なかった。
「「動かないでください!」」
 閉館を向かえた博物館のフロアに飛び込んできたのは、幾つもの光と黒服の人物達。
 その何人かはフルフェイスメットで武装しており、中には獣のようなものもいて……。
「まだ、入館者が……っ!」
 警備員の1人が灯りで侵入者達を照らそうとした瞬間、その腕に強い圧力が加わる。
 星・琴菜(夜空に奏でる生命の音色・b60743)が素早く間合いを詰めて掴んだのだ。
「動かないで下さいって、いいましたよね?」
「ご、強盗か!?」
 抵抗する間もなく半ば強引に連れ去られて行く同僚の姿に、もう1人も声を上げて。
 しかし、その声が続くことも、仲間を助ける術をあたえる事もなかった。
「気をつけてください、剥製が……」
 終始、伏せ目がちの瞳で虎の剥製を注視していたヘルガ・リントゥコート(ハルティヤ・b64966)の声に、周囲に緊張感が張りつめる。
 ――そして。

 グオォォォン――!

 深淵に響き渡るのは、獣のような咆哮。
 同時に、内側からガラスが破られたような音が、響き渡った。
「うわわ――っ!」
 荒ぶる目覚めを告げる咆哮。
 かりそめの命を得て現れたのは、黄金の毛並みを纏った大きな虎……。
「死にたくなければ、誰もこのフロアに入らせるな」
 腰を抜かす寸前のもう1人の腕を掴んだのは、九条・勇(キレるな危険・b59732)。
 灯りを置く為に少し出遅れた勇も、無理矢理外に引きずるように警備員を運んでいく。
 多少強引であろうとも、それは迅速で確実な避難方法だった。
「ミツル兄ちゃん、行こう!」
 夜の博物館にちょっとドキドキしたものを覚えながら周囲を注意深く見回していた浅葱・柚太郎(魔弾機工士・b68416)の声に、ミツル・イセクラ(ブラッディチェリー・b64670)も頷く。
「ええ、メガリスだかゴーストだか知らないけど、キッチリ仕留めときマショ」
 勇と琴菜が戻るまで、虎――メガリスゴーストを抑えるのが自分達の役目。
 同時に現れたオオカミやジャガー、小鹿の剥製達が取り囲む前に、柚太郎と共に素早くメガリスゴーストまで間合いを狭めたミツルは、炎を模したレイピアを横薙ぎに振う――が。
『グオォォォン!』
 術式の一閃をメガリスゴーストは横に飛び退ってかわす。
 そして、その反動を持って飛び上がると、ミツルの肩に鋭い牙を深く抉り込ませた。
「ヤツフサ可愛……いえ、初陣、頑張りますっ!」
 援護の準備と周囲の警戒を怠らずにいた舞城・笑弥(剣で脅すより笑顔で脅かせ・b59830)も、首に付けたヘッドライトを揺らしながら仲間に治癒を施すヤツフサの姿にキュンとしたものを覚えながらも、攻撃の要でもあるミツルに祖霊の力を宿す。
「ありがと、助かるワ」
 牙に付けられた焼き付くような痛み。そして、身に浸食し続ける痛み。
 その2つを同時に耐えきることは、並大抵のものでは――ない。
「ここは私達が抑えます、2人は早く警備員を……!」
 ミツル、柚太郎だけでは虎を抑えきれないと判断して中衛から前衛に切り替えた久遠寺・桜(枝垂桜・b47675)は、警備員を庇うように連れ出す琴菜と勇を背にして眼前に迫るメガリスゴーストの懐に飛び込むように身を沈ませる。
 一閃。光の如き白色の獣爪を振うが、その感触は浅い。
「同じ絵描きとして息を合わせて行こうね、烈人兄ちゃん」
 ――剥製にメガリス……こんな事もあるのだろうか。
 黄金の加護を得た獰猛なる獣を前に、歴木・大地(弌筆・b58481)も物陰から飛び出す。そして、鋭く前を見据えると、動物達が生き生きと自然を駆け回る姿が描かれた原稿用紙を、素早く宙に撒き散らした。
「ああ、ソラさんもブレイドも宜しくなっ!」
 眞田・烈人(熱血コミックマスター・bn0142)も妄想の原稿を周囲に飛ばす。
 2人が一斉に撒き散らした原稿用紙が、乱戦状態になりかけていた戦場に煌めいた。
『もきゅっ!』
 同時に。愛らしさの中に力強さを感じる意気込みをあげたのはソラさん。
 あたかも自分より大きい相手に負ける気はないという風に勢い良く飛び出してミツルの後ろに張り付き、獰猛さをあらわにしたブレイドも、主人に迫ろうとした狼に鋭利な爪を連続で振う。
 宙を舞う原稿用紙が止む頃には、援護ゴーストの数が2体程減っていた。
「茨の檻へ、ようこそ」
 警備員達がフロアから消えると同時に、ヘルガは扉を閉めてヘルメットを脱ぎ捨てる。
 気高き騎士の志を秘めた十字架から放たれた魔法の茨が、深淵を覆った――。

●借りそめの命
「すみません、少し時間が掛かってしまいました」
 戻って来た琴菜と勇の瞳に入ったのは、互角の戦いを進めていた仲間と大地の背中。
 援護の剥製達は半数以上倒されていたが、メガリスゴーストは衰えている素振りもなく、大地とヘルガは互いの回復が重ならないように、何度も声を掛け合っていた。
「なんだか、怪獣映画みたいだねー!」
 体力があるミツルはともかく、柚太郎は自身の治癒で手一杯になりつつあって。
 しかし、虎に狼、鹿に使役ゴースト達が戦う戦場を見つめるその瞳は、どこか楽しそう。
「警備員達は、どうでしたか?」
 反対に重たい息を吐く桜は、駆けつけてきてくれた勇にほっと胸を撫で下ろす。
 笑弥の治癒と可能な限りガードに専念していたことで、何とか持ち堪えていたのだった。
「心配ありません、少々強めに脅しておきましたから」
 武器の無明狼を見せながら、王者の風で睨みを効かせておいたと勇は笑みを浮かべる。
 その言葉通りなら、戦っている間に警備員達が戻ってくる事は、ないだろう。
「フロア外で掛けた強化が持ちこせたら良かったのですけど、そう上手くいきませんね」
 桜と交代するように前に出た琴菜も、気を引き締めるように日本刀を高らかと掲げる。
 そして、メガリスゴーストを惹き付けるように、勢いをつけて旋回させた。
(「生前も美しかったのでしょうね」)
 目前で悠々と力を振う、神々しき黄金の剣牙虎。
 回復手が巻き込まれないように虎の動向を注視していたヘルガは思わず溜息を零す。
 同時に、傷付いた桜を癒すべく祝福を与え、笑弥が舞えば戦場に癒しが広がった。
「烈人兄ちゃんっ!」
「ああ、いくぜ!」
 大地の生き生きと駆け回る動物達が、烈人の自然の風景を描いた原稿用紙が宙に舞う。
 彼らが外に出る事はもう無いけれど、せめて漫画の中だけでも……と、祈るように。
「いろいろ注意して行動しなきゃ」
 中央にはガラスケース、他にもメガリスゴーストの直線攻撃と気をつける事は多い。
 柚太郎が放った鋭利な水の刃が闇に煌めき、狼を一刀両断に斬り裂いた、その時。
『グルルル……』
 次々と倒されて行く剥製達に、メガリスゴーストは低い唸り声を上げる。
 姿勢を低く屈ませたメガリスゴーストに気付いたヘルガは、即座に警告を促した。
「咆哮が、きます……!」
 だが、実際の攻撃に備えて防御態勢を取ったのは、桜だけ。
 他の者は直線上にならないように気をつけていたものの、喰らう事まで行き届いてない。
 ヘルガは動きを止めようと魔法の茨を放つが、茨がその動きを止めることはなく――。
「危ないっ!」
 咆哮の先にいた笑弥を咄嗟に突き飛ばした烈人を、重い衝撃が襲う。
 酷い麻痺と衝撃の苦しさに膝を折った烈人にジャガーが牙を剥けたのは、ほぼ同時。
「おまえの相手は僕だっ!」
 その直後、中衛に戻った柚太郎が間に入り、忍者刀で凶爪を既のところで受け止める。
 前衛のサポートは使役達に任せ、後衛に気を配っていた事が功を奏した瞬間だった。
「ありがとう……」
 自分を庇ってくれた2人に礼を述べる笑弥に、烈人は大丈夫だと笑みを浮かべて。
「この程度の傷はヘッチャラだもんね〜!」
 柚太郎も笑みを返しながら己に治癒を施そうとした時、戦場を癒しが包み込んだ。
「離れ過ぎないように、気をつけてください」
 桜の赦しを乞う舞いが能力者達の身に刻まれた傷を和らげて、戒めを取り払う。
 中衛という位置で常に仲間の状況に注意を払っていた桜の行動は、誰よりも早かった。
「ソラさん、突っ込み過ぎない様に気をつけて!」
 大地は体勢を立て直したジャガーを見据えると、即座に宙にスケッチを描く。
 深淵に火花が炸裂すると同時に、戯画化されたジャガーが本物目掛けて飛びかかった。
(「わたし、皆さんのお役に立ってるのでしょうか……」)
 支援に徹しているとはいえ、初依頼の笑弥にとっては、不安な事が多くて。
 思わず動かした視線が、浅い傷を負いながらも懸命に戦うヤツフサに止まる。
 そして、果敢に前線で治癒を施すソラさんと主人に祈りを捧げるブレイドにも――。
(「いえ、いつか兄さまも言っていましたね……出来る事をするだけだと……!」)
 初陣の笑弥に配慮して彼女と位置が重ならないように振舞う勇、仲間に攻撃が及ばないようにメガリスゴーストの注意を惹きつけて闇の力を織り交ぜながら戦う琴菜の姿に、箒を握る手にも力が込み上げる。
「大丈夫、ですか?」
 前衛を特に気遣いながらも回復手にも気を配るヘルガに、笑弥は力強く頷く。
 その赤茶の瞳に揺らめくのは、強い意志だった。
「背中はお任せ下さいませ、援護致します!」
 後方から聞こえた笑弥の力強い声に、全員が「応!」と答えて。
 仲間に届く声。それは、戦いの場において何よりも頼もしい守護の力に他ならない。
「烈人兄ちゃん、柚太郎、息を合わせて行こう」
 大地が祈るように放った原稿と烈人の原稿が、生き生きと宙を舞う。
 柚太郎も大地と烈人の攻撃に息を合わせて、水刃で確実に1体ずつ仕留めていって。
「火力を集中して、確実に数を減らしていきましょう」
 桜が狙いを定めたのは、防御も侭ならず浸食を伴う一撃を受けた琴菜の側にいた小鹿。
 突進を仕掛けた小鹿目掛けて桜が獣の力を解き放つと同時に、ヘルガの光が宙を裂いた。
「狩らせていただきます」
 博物館は好きだれど、森で生きてきた自分にとっては、ここは少し寂しすぎる……。
 闇を払うように撃ちだした光が、疲労の意を濃くしていた最後の1体を撃ち抜いた。

●誉れ高き黄金
「これでメガリスゴーストの討伐に専念できますね」
 気力で麻痺から脱した琴菜は攻撃に集中するように、更に間合いを狭めていく。
 星の名を冠する日本刀に乗せた闇が奔り、同時に大地のスケッチが戦場を駆け抜けた。
(「ついに虎と対決かあ……少し怖いけど、頑張るぞー!」)
 前衛陣の猛攻を受けていたメガリスゴーストは、僅かながら疲労を覚えていて。
 しかし、衰えを感じさせない威圧感と気迫を前に、柚太郎は勢い良く雷を撃ちだす。
 紙一重で雷を避けたメガリスゴーストの反撃をミツルは僅かに体を捌いて避けてみせた。
「さっさと片づけますか!」
 守備から一気に攻撃に転じた勇も、黒色の青龍刀にリズム良く青龍の技を乗せて行く。
 アビリティの残数に余裕があるのは笑弥だけとなっていた能力者側も苦戦を強いられていたが、確かな回復を受け続ける能力者とは反対に、息継ぐ間もない集中砲火を浴び続けたメガリスゴーストは、ついに苦悶の雄叫びを上げた。
「剥製になった、動物達の魂のためにも……」
 自由を奪われた境遇には同情できる。
 けれど、仮初めの生は在ってはいけない事――だから。
「俺達が終わらせなきゃ!」
 大地は烈人と声を掛け合いながら、最前線のミツルと勇に積極的に癒しの力を施す。
 身に浸透する優しさ。それが前線で奮闘する彼等の背を、さらに後押しした。
「あともう一息、頑張って倒しましょう」
 このまま博物館で暴れられて他の展示物を壊されない為にも……躊躇はしない。
 獣の力が切れた桜も更に踏み込むように、神秘の力に切り替えた獣爪を斬り込ませる。
 終わりの刻が近いことを、告げるように……。
「さあ、還りましょう」
 失った命に2度目の自由等ないことを、ヘルガの光も告げる。
 だが、与えられた自由を失うことを恐れるように、メガリスゴーストは――足掻いた。
「まだ戦う気力が残っているとは……」
 苦し紛れに放たれた咆哮を受けた勇は素早く麻痺から脱すると、自らの体内に眠る白虎の力を覚醒する。
「わたし達も、負けてられませんっ」
 笑弥もダメージが蓄積していた琴菜を救うべく、古より在った土蜘蛛の魂を召喚した。

 力と力のぶつかり合い、制したのは――。

「体勢が崩れたワ!」
 ミツルの流麗な動きと柚太郎の雷を受けたメガリスゴーストが大きくよろめく。
 その瞬間を見逃す事なく、大地のスケッチが、ヘルガの光が、そして――。
(「夜の博物館に忍び込んだのは、ちょっとした泥棒気分で楽しかったですけれど」)
 ふと、冗談を思い浮かぶのも、余裕がでてきたせいなのかもしれない。
 その余裕も、きっと頼もしき仲間が側にいるからだろう……。
「この世に存在すべきでない、凶悪な力は……」
 最後の戦いに挑むが如く、体中の力を振り絞って牙を剥けるメガリスゴースト。
 琴菜はその姿を見据えたまま強く地を蹴ると、その懐に飛び込むように身を屈めて――。
「さっさと滅びてしまえ!」
 低い姿勢から放たれた、漆黒の一閃。
 黄金を、闇が斬り裂いた。

●黄金の終焉
「結構派手に壊しちゃいましたけど、大丈夫……ではないですね」
 警備員達がみたら色んな意味で正気に戻りそうな光景に、琴菜は苦笑を零す。
 眼前にあるのは、無惨に砕けたガラスケースと、原型を留めぬ剥製達だけ……。
「ブレイドにソラさん、ヤツフサもお疲れさまだぜ!」
 満面の笑みでヤツフサを撫でていた烈人に、笑弥はふわりと笑みを返す。
 自分とヤツフサが皆の役に立った事、それがとても嬉しかった……。
「とにかく、騒ぎにならない内に退散しましょうか」
「そうだね、周りに気づかれちゃタイヘンだしね」
 琴菜の言葉に、柚太郎は誰よりも先に頷く。
 しかし、何処か楽しそうな様子を隠せない彼にミツルはくすっと笑みを零して。
「一息をつくのはその後ですね」
 周囲に黄金の林檎のような欠片が無い事を確認した桜は、素早く踵をかえす。
「散らかした儘で、ごめんなさい」
 ヘルガも後ろ髪を惹かれる思いに耐えながらその後に続こうとした、その時。
「……明日のニュース、『博物館に強盗!』とか騒いでないと良いなぁ」
 最後にぼそりと呟きを零した勇に、ヘルガは思わず視線を移す。
「明日はニュースにならないと。いいです。ね」
 そして、少しだけ口元を緩ませると、同意するように淡い笑みを浮かべて頷いた。
(「もし其処に魂が囚われてたままなら、これで解放されているといいな」)
 静寂が戻ったフロアに、大地はそっと想いを零す。

 願わくば、自然を駆け回れる場所に、彼等の魂が解き放たれていますように――。


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2009/12/13
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