星の下、君と一緒に聖なる夜を


   



<オープニング>


 銀誓館学園のクリスマスパーティー。
 毎年、様々な趣向を凝らすパーティーが開催され、学園はクリスマス一色に染まります。
 冬休みを目前としたクリスマスイヴの日は、様々なパーティーが開かれているようです。

 クリスマスパーティーは無礼講。
 たとえ、今まで一度も口をきいた事が無い人とでも、一緒にパーティーを楽しむ事ができます。
 クリスマスパーティーは、新しい友達を作る為のイベントなのですから。

 気に入ったクリスマスパーティーがあれば、勇気を出して参加してみましょう。
 きっと、楽しい思い出が作れますよ。


 短い昼が終わり、星の瞬く夜が訪れる。
 きらびやかなクリスマスツリーを遠くに望む屋上で、キャンドルを灯しながら静かに過ごす。
 そんなひと時を、今宵、あなたは誰と過ごすのでしょう?

 愛しい恋人と一緒に、静かに星を眺める。
 大切な友達や仲間達と、夜のティーパーティーもいいかもしれません。

 キャンドルの灯りと星の瞬きに包まれながら、素敵な時間をあなたと共に……


「すごいね、星がこんなにいっぱい見える……やっぱり冬だから空気が澄んでるんだ」
「綺麗ですね……」
 月島・生樹(中学生運命予報士・bn0202)と、五條・梅之介(高校生魔弾術士・bn0233)は、白い息を吐きながら空を見上げていた。
 寒さは気にならない。それほど、今宵の夜空は幻想的だった。
「ね、キレイだよね。キミはこれから誰かと会う約束があるのかな?」
 同じ様にして星を眺めていたあなたに、生樹は少しだけ悪戯っぽく笑ってみせた。
 

 今宵、この屋上では、眩しい光と騒音は絶対厳禁。キャンドルを灯し、静かに夜空を眺め、語らうための場所になるのです。

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参加者
NPC:月島・生樹(中学生運命予報士・bn0202)




<リプレイ>


 立ち昇る紅茶の湯気と同じくらい白い息。
「寒くないかい、璃琉? ほら……これ、一緒に使おうか?」
「えっと……ありがとうなの……あったかいの……」
 顔を赤くして白い息を吐いていた瑠琉を、守元は白いロングマフラーに誘った。
「えっと……ちょっと形悪いかもだけど……頑張って作ったの」
 今度は瑠琉からの、ケーキのお誘い。
「うん、美味しく出来てるよ。それじゃお返し♪」
 星の下、互いに食べさせ合って、照れたように笑い合った。


 見上げれば、満天の星空。まるで、あの日見た夜空のような。
「あっという間の1年だった気がするわ。色々あったよね……夏にはえっちな水着をプレゼントされたりね☆」
「な、夏の水着の件はだな……」
 たじろぐ終凪に、雪那は悪戯っぽく笑ってみせる。
「……やっぱりちょっと変わったかもしれないね、私。去年よりずっと、あなたのことが好きになってるもの……」
「俺だって……」
 強く抱き締められた腕の中、優しい口付けが、降ってきた。


「……熱いから気をつけて」
 ホットチョコレートが入ったカップ差し出した結那は、そのまま何となく太郎の肩に寄りかかった。
「寒いのか……?」
 太郎がジャケットを脱いで羽織らせてやれば、ちょっとだけ熱っぽい瞳が見上げてくる。
「……メリークリスマス。一緒に来れて良かった」
「ああ……」
 その瞳に優しく笑いかけ、そっと優しく唇を落とす。
 星空の下、二人を繋いだ口付けは、甘い、甘い、チョコレートの味。


 ムーンリーズはポケットから取り出したハンカチをベンチに敷き、まりあーじゅの手を引いた。
「素晴らしい月夜ですね、星々も美しい……でも一番美しいのは、まりあさんですけど……」
「リーズ君は若いのにしっかりしてるなぁ……」
 少し照れたようなエスコートに、くすぐったそうな笑みを返す。
 仄かに香るダージリン。それを彩るのは、クリスマスプティングとミンスパイ。
 遠くでキラキラ光るクリスマスツリーを背に、小さなお茶会が始まった。


「缶珈琲と、さっき作ったクッキーも持ってきたぞ。一緒に食べよう」
 体を冷やさないようにな、とマフラーを手渡して、章人は是空を抱き寄せた。
「私は、周りの星が見えなくなるくらい眩しく光っている星を見つける事ができました……章人さんとの記念のイブの日から、きっと私の中ではその星を中心に世界が回っているです」
 何の話か。じっと見上げてくる瞳が、その答え。
 灯されたキャンドルから香る初々しい桜の香りが、寄り添う二人を優しく包んだ。


 コーンスープとカップケーキで、二人だけの小さなパーティー。
「うんっ、美味しいっ。やっぱお出かけの時は嘉月の手作り食べたいなー」
「うん、いつでもがんばって作るー」
 零れた笑顔。思わず、裕也はブランケットで包み込むようにして嘉月を後ろから抱き締める。
「流れ星、探そうかな……」
「だいじょうぶ。お星様にお願いしなくても、ずっと一緒に、います」
 今確かにここにある、愛しい温もり。二人を祝福するように、星が一筋、流れて消えた。


 星空を見上げながら、お互いに知っている星の名前を挙げていく。
「この時期はこぐま座流星ぐ……くしゅんっ!」
「……失礼。温かくしませんと」
 小さなくしゃみを漏らしたティアリスを、柳は抱き締めるようにして毛布で包んでやる。
 赤く染まった顔を誤魔化すように笑った柳を、ティアリスは真っ赤な顔のままそっと見上げる。
「Merry Christmas、柳先輩」
「メリークリスマス」
 近い鼓動。伝わる温もりが、優しかった。


 ホットココアとシフォンケーキ。互いに持ち寄ったものでささやかな夜のお茶会。
 温まった体が冷めないうちに、毛布を被って二人寝転び、星を眺める。
 ふと、寒がりな彼女のことを思い出し、灰那は隣を盗み見た。視線に気がついた紫唖が、甘えるようにして擦り寄ってくる。
「えへへ……ぽかぽかあったかいなあ」
「まあ……風邪を引かれても困りますしね」
 そのまま寄り添い、吸い込まれそうなほど綺麗な星空を、ただ黙って二人で見上げた。


 ブランケットを被って、手を繋いで。
「あれ、オリオン座だよな。あっちは何だろ?」
「どれ?」
 嬉しそうに星を指差す紀更が何となく可笑しくて、美桜は微笑を漏らす。
「美桜」
 不意に、呟かれた低い声。振り返った美桜の唇に、触れるだけの優しいキスが降り注ぐ。
「好きだぜ、美桜」
「……! っ、私もっ、紀更が、大好きよ」
 照れたように笑う紀更の胸に額を預け、美桜は顔を真っ赤に染め上げた。
 今日は二人にとって、初めてのクリスマスイブ。


 星図を片手に夜空を見上げ、紡実ははしゃいだ。たくさんの星が見えるのが、大好きな人とこの時間を過ごせるのが嬉しいらしい。
 しかし寒いのか、時折マフラーに口元を埋める彼女を見て、喜兵衛は着たままのダウンジャケットで包み込むようにして紡実を抱き締めた。
「暖かいか?」
「……うん、世界一あったかい」
「また、来年のクリスマスも一緒にいような」
 そっと囁かれた言葉に、うん、と頷いた紡実は、回された喜兵衛の手をぎゅっと愛しく握った。


「温かいミルクティー持ってきてるだ。影斗さんもどうぞ〜」
「大事な時期だろう。風邪を引かないようにそれも巻いておけ」
 ミルクティーのカップを受け取った影斗は、自分のマフラーを外し、眞子に渡す。
「来年は私も卒業か……なんだか、ちろっと寂しい」
「時は留まりはしない。後悔しないようにあと三ヶ月、間に合う内に努力すると良い」
 空になったカップを返してくる影斗の肩に頭を預け、眞子は星空に向かって、そっと何かを呟いた。


 キャンドルを灯し、静かに向かい合う。オレンジの灯に照らされた柳霞の表情が、少し寂しそうに歪んだ。
「来年も……綺麗に星空が見えると良いな」
 そんな様子に気がついたのか否か、耶神は柳霞の頭に、ぽん、と手を乗せそう言った。
「耶神……来年もまたこうやって、一緒に過ごせるでしょうか?」
 寄り添って、精一杯の背伸びをすると、近づく驚いた顔。
 三度目のクリスマスイブ。輝く星の下。唇と唇が、僅かに優しく触れあった。


「クッキーを作ってみたんですけど、食べてもらえます?」
「うん、ありがとう……美味しいよ」
 向けられた笑顔に、燿も思わず笑顔になる。その時ふと、冷たい風が二人の頬を撫でた。
「……寒いから。風邪引かないでな?」
 恭一は自分のマフラーを外し、彼女に掛けてやる。
 恥ずかしそうにお礼を呟いた燿が、そっと彼に寄り添った。
「これなら恭一さんも風邪引かないですよね」
 伝わってくる優しい温もり。澄んだ空には、満天の星が輝いている。


「珈琲って普段あまり飲まないから、あまり味の保障はできないんだけど……」
 そう言って手渡されたカップに口を付けた修也は、少し驚いた顔をする。
「……ん、旨いな。いい出来だと思うぜ、これは」
「ふふっ、ありがとうそう言って貰えると持ってきたかいがあるわ」
「……サンキュ、嬉しいぜ」
 温かいコーヒーのお礼。修也は火鉈の唇に優しいキスを落とす。
 普段は中々会えない二人。瞬く星の下、今日の特別な夜くらいは、ゆっくりと。


 小さなワイヤークラフトのツリーを飾り、二人で広い夜空を見上げた。
「沙紀様は星を見て何をお感じになります?」
「何事にもとらわれることなく自由に駆け抜ける風でありたい、と思うかな……けど……空の向こうに行ったとしても、ボクは必ず芽亜のもとに戻るよ」
 空を見上げたまま呟かれた沙紀の言葉に、芽亜は満足そうに目を細める。
「沙紀様、これからもどうぞよしなに」
「うん……こんなボクだけど……これからもよろしくね」


 屋上の隅、寄り添って静かに星を眺める。
「綺麗だね……」
「……汐璃のが綺麗だよ」
 その言葉に驚いて振り向けば、照れてそっぽを向く真誇の顔。
「大好きだよ」
「……俺もお前のことが大好きだよ」
 照れ隠しに笑って頬にキスをくれる汐璃を真っ直ぐに見つめ、真誇は優しく笑いかけた。
 お互いの気持ちを分かち合った二人。手を繋ぎ、寄り添って、再び夜空を仰ぎ見る。
 たくさんの綺麗な星が、瞬いていた。


 二人の間に灯るキャンドル。バスケットの中に詰め込められたサンドウィッチと紅茶を囲んで、星空の下のティータイム。
「寒くなってきましたわね〜」
 冷たい風が吹き、口元に当てられようとしていたベルティナットの手を、アーネストが捕まえた。
「……好きだ」
 真剣な表情で真っ直ぐに見つめてくるアーネストに、驚いていたベルティナットは嬉しそうに柔らかく微笑んだ。
「嬉しいですわ〜」
 答えの代わり。優しいキスが、頬に触れた。


「お砂糖はいくつ?」
「あ、お砂糖は……一つ、で」
 控えめに答え、伽耶は慣れた手つきで紅茶に砂糖を入れるトリスタンを見つめた。程なくして手渡されたカップで冷えた手を温めながら、揺れる紅茶に息を吹きかける。
「星空の下でのティータイムも……いいですね」
 紅茶を一口こくんと含み、そう言った彼女が寒そうに映り、トリスタンは自分のマフラーを伽耶にかけ、その手を繋ぐ。
 冷えているはずの手から、確かな温もりがじんわりと伝わってきた。


「周り恋人ばっかりだね〜!」
「なんでクリスマスはカップルで過ごす人多いんだろうね……元々家族で過ごす日なのに。あ、別にマネージャーさんが不満ってわけじゃないよ」
 慌てて言った輝に、怜磨は、あはは、と笑いかけた。
「きれいな星だねー……でも、私は……闇でありたいな……なんちゃって。今のは特に意味はないの! ど、どう? ケーキ美味しい?」
 今はまだ、分からなくてもいい意味なのだろう。チョコシフォンを頬張った輝が、小さく頷いた。


 偶然会った彼女に、ここで何をしているのかと問えば、何だか寂しげな表情が返ってくる。
「私は……ちょっと昔を思い出していただけです」
 ふと目を伏せた彼女が、あまりにも寒そうで、紅葉は着ていた羽織を鶫の肩に掛けてやる。
「……いりません」
「ダメだって、風邪を引く!」
「……ありがとうございます……来年も、よろしくお願いしますね」
「うん、来年もよろしく頼むでござる!」
 なんだかんだで顔を合わせれば、自然と笑みが零れ落ちた。


 冬の澄んだ空を見上げ、温かい缶コーヒーを飲みながら、屋上の手摺に寄りかかる。
「……君と来れて、良かった」
「私もだ。一緒に来た相手が刹那で良かった」
 星を眺めながら、そんなことを交し合う。
「……麻凛、あのさ」
 振り返って真剣な顔をする刹那に、麻凛は首を傾げてみせた。
「……僕は、君が……」
 彼が紡いだ言葉に、彼女はどんな答えを出したのか。それは、天に瞬く星だけが知っている。


「仙堂さん、少し屈んで頂けます?」
 惣一郎は、ことはに言われるまま、身を屈めた。その首に、ふわり、と黒いマフラーがかけられる。
「もしかしなくても、東雲さんの手編みか?」
「手編みではないんですが……似合うかと思って」
「ありがとう。今、返せるものがなくて残念だな……礼と言っちゃなんだが、これ……」
「ありがとうございます……メリークリスマス」
 屋上でひっそりと、温かな缶コーヒーで乾杯する。
 こんなイブの夜も、そう悪くない。


 立ち昇る白い息。星空を見つめていると、突然、背中に温もりを感じた。
「ネルちゃん、寒くないですか?」
「あ……シア様も寒いのですか?」
 後ろから抱き締めてきたアリシアに体を任せ、グルーネルは暖かいですわ、とくすくす笑う。
「ネルちゃん」
 呼ばれて振り返れば、触れるような優しい口付け。
「……綺麗ですね……これからも、ずっと一緒に……」
「ええ、いつまでも一緒に……」
 満天の星空を見上げた二人。幸せそうに目を細めた。


 恥じらいは、時にちょっとした喧嘩を生む。
「……シン、手、邪魔」
「他の人いるのに、恥ずかしいし……!」
「だーっ、もう! これでいいのか……ッ」
 プレゼントの包みで顔を隠した雪架が、じっと見つめてくるシンにため息をつく。
「……シンさん、目、閉じてクダサイ」
 そうしてようやく触れ合えた唇が離れた途端、恥じらいが可笑しさに変わった。
「あはは! だいすき!」
 何だか必死だった雪架が可愛くて。シンは彼の胸に、ぎゅっと抱きついた。


 いつだったか、佳奈にあげた『えるとデート券』。今日はその券を使ってのデートらしい。
「あ、はは……せっかくのデートなのに失敗したっ」
 えるとは、しまったと声を上げた。エスコートどころか、手ぶらで来てしまったのだ。
「クッキー焼いてきたので、よかったらどうぞ……また誘って下さいね」
「ん、今度は券なしで、な?」
 照れくさそうに笑い合い、クッキーを食べながら星を見つめる。
 最初から、券なんて要らなかったかもしれない。


 今日は受け身を徹底すると決めていた。その気持ちが聞けるまで。
「……クッキーを作ってきたのね。普通は逆な気もするけれど」
 まあ、いいわ、と言って、柳枝は散耶が持ってきてくれたクッキーを口へ運ぶ。
「や、柳枝さん……! そ、その……柳枝さんの事、が……ま、前よりも、もっと好き、です……」
「ふふ、合格」
 やっとはっきりと聞けた散耶の気持ち。柳枝は満足げに笑って、頬にキスをしてやった。
 今は、これで十分だ。


 空は、繋がっているというのに。
「イギリスで見るのと星が違うわ」
「英国ですか……そちらの夜空もいつか見てみたいものです……」
 しばしの沈黙。それを最初に破ったのは和樹だった。
「貴女が好きです。一目惚れでした。友達からで良いので付き合ってください」
 顔が真っ赤だ。驚いて目をまん丸にしていたカナメも真っ赤になって、やがて、小さく頷いた。
 この星空のように。覗いたことのない人の気持ちの奥底は、きっとどこかで繋がっている。


 長いマフラーを二人でぐるぐる巻きにして、仲良く並んで温かいお茶を飲みながら、星空を見上げる。
「今年も一緒にイブ過ごせて良かったね。青葉はなーんかふらふらしてるから気が気じゃなかったよ?」
「その、ふらふらっていうか……」
「えーっと、その……また来年もよろしくね?」
「あ、うん、こんなだけど僕の方こそよろし……んっ!?」
 菜摘から、可愛らしく、ちゅっと音を立てた不意打ちのキス。赤面した青葉も、彼女を抱き締め、一生懸命それに答えた。


「そうだ! 悩み事とかあったら、私聞くよ?」
 クッキーを広げながら、時音は首を傾げた。奏は拳を握って顔を上げる。
「あの、さ……付き合わねぇ?」
 瞬間、事態を把握し切れないのか、きょとんとする彼女に奏は続けた。
「……時沢サンが、好きなんだけど」
「……私も……」
 しばらくして、小さな声で返事をした時音を、奏は思わず抱き締めた。
 抱き締め合いながら、ありがとうと大好きを込めて。今日この日、二人の気持ちは結ばれた。


 ホカホカの肉まんを頬張りながら、二人でゆっくり星を眺めた。
「寒いだろー? マフラー半分こしようぜ!」
「ふふふっ、一緒にしてると暖かいですねー……猛臣さん、少し目を閉じてて下さいね」
 猛臣は江莉子に言われるままに目を閉じた。次の瞬間、頬に触れた、柔らかい感触。
「マフラーのお礼ですー。猛臣さん、メリークリスマスですー」
「……っ! 江莉子、メリークリスマス! 好きだー!」
 勢いに任せ、力いっぱい、抱き締めた。


 今日のために用意した、手作りのチーズケーキ。それをもぐもぐと口へ運ぶ契を見つめた若葉が、そっと呟く。
「その、お味の方は如何でしょうか……?」
「ん、美味いぞ」
 そう返して、彼女の頭を撫でてやる。
「その……名前で呼んでもいいだろうか?」
「……! 勿論どうぞ……ですよ」
 立華から若葉へ。はにかむ彼女の名前を優しく呼べば、はい、と可愛らしい声が返ってくる。
 星の魔法にかけられて、ちょっぴり前進。かもしれない。


 キョロキョロと辺りを見回して誰も見てないのを確認した満月は、カノンノの膝にちょこんと座る。
「……こーすれば……暖かいの……」
「あ、紅茶くれるんだね。嬉しいな〜」
 紅茶を受け取ったカノンノは、優しく笑って満月の頭を撫でた。
「満月くん、私、キミの事大好きだよ♪ これからも、よろしくね!」
「……大好き……なの……です……」
 お互いに、大好きと耳打ちする。ぴったりとくっついたまま星空を眺めた。きっとこれが、幸せという感情。


 ずっと一緒に過ごそうと、星に誓った。寝転がって天を仰げば、怖いほど綺麗な星空。
「……なんだか吸い込まれそう……このまま私たちも星になっちゃうのかな……」
「ん、大丈夫。真奈は何時までも傍にいるさ。だから、安心して、ね?」
 震える手を握ってくれた真奈の体温。綾香はゆっくり目を閉じる。
「一番輝いてるの……空じゃない……ここにあったの……」
 呟きながら、すう、と眠りに落ちていく綾香に、真奈は優しく笑いかけた。


「ん、ほら、膝と肩にかけておきなさい……体冷やしちゃダメよ?」
 ストールとひざ掛けをもふもふ乗せて、長いマフラーを半分こ。
 美味しい紅茶とクッキーを楽しみながら、星空の下のティーパーティーが始まった。
「みぅ、お星様綺麗なの」
「綺麗だねぇ……」
「寒いけどあったかいのです……♪」
 むぎゅ、と寄り添い、刹那とアイリスは笑い合った。
 互いの温もりで暖かくなった冬空の下。星の話をしながら、優しい時間が過ぎていく。


「良い香りです……」
「へぇ、作ったキャンドルなんだ? 雰囲気あるぜ。すごいじゃん!」
 ゆかりが手作りのアロマキャンドルに火を灯すと、辺りに良い香りが漂ってきた。感心したようにその手元を覗いていた魎夜の側に、生樹もぴょこんとやって来る。
「お、生樹、メリークリスマス! クッキー持って来たぜ♪」
「メリークリスマス! わ、ありがとう!」
 渡されたクッキーの包みを開けばパーティーの準備は完了。龍麻のフルートの演奏が、ナイトパーティーを静かに彩る。
「……どうだった? 上手く演奏出来てたかなぁ? さあ、今度はふたりの隠し芸を見せてほしいなぁ〜」
「えぇっ! いきなり振られてもなんもないよ?」
「……ですねぇ」
 ニヤリと笑ってみせた視線に、生樹と梅之介は困ったように首を傾げた。
「あ。流れ星」
 ふと空を見上げたゆかりが声を上げる。
 星の振る屋上で、楽しい夜が過ぎていった。


 珠子が頑張って運んでくれたストーブを付け、イルマが入れてくれた温かいココアと命が用意してくれた美味しいお菓子を飲み食いしつつ、子夢の望遠鏡をセットする。
 準備は万端だ。
「あ、アルデバランって、あれのことかな〜……? むぃ、金ぴか鎧じゃないの……」
「んーと、えーと……どれ……?」
「あの赤いのだね」
 不思議そうに首を傾げる珠子に、なかなか星を見つけられない命。あれだよ、と星を指すイルマの指の先には、赤く輝く星がある。
「ふむ、アルデバランはペルシャでは王家の星の一つ、とされているそうだよ?」
 子夢の解説に、皆感心したように声を漏らし、輝く星空に想いを馳せた。
 この星の海には、一体どれほどの物語が眠っているのだろう。

 屋上から眺める星空の下では、いくつもの優しい物語が紡がれた。
 今宵はそう、クリスマスイブなのだ。


マスター:海あゆめ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:75人
作成日:2009/12/24
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冒険結果:成功!
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