年忘れ☆もらっと買い出し部隊


<オープニング>


 師匠も走る月の終わり、所謂ひとつの年の瀬。
「安いよ安いよ! オマケしとくよ、これで2000円、カゴの中みっちりの鮪が2000円だよ!」
 10mもない幅の通路の左右にはぎっちりと店が軒を連ね、しわがれただみ声の親父が行き交う人々に叫ぶように呼びかける。
 ここはちょっと名の知れた問屋街。
 海鮮屋、乾物屋、チョコレートのたたき売り、衣類店に靴屋から果ては毎日閉店セールのバック、アクセサリーのお店まで……生活用品は概ね何でも揃う。
 普段から賑やかだってのに、年末で人いきれ10割増しのこんな所に、白い毛玉の奴らが現われた!
「もきゅもきゅもきゅ……」
 ほっぺたにキラキラのいくらをひっつけて、並べられた海鮮類を食い漁る1匹。
「てめ! なーにしやがるっ?!」
「もきゅっ!!」
 ハタキでべしべし追い払われたモーラットは、まん丸おめめを更に見開き人混みへと紛れていった。
「え、あ、あれ?! 焼いといたのがないぞ?!」
「もひゅぅ〜」
 焼きたてで甘い鈴カステラを鉄板からかっさらっていったのは、ハムスターのように頬をぱんぱんに膨らませたもう1匹。
 今度はチョコのたたき売りにターゲットロックオン! ふらふらと口上響く方へと向かう。

「この時期に材料買ってるようだと、お節作りも突貫だね」
 でもまだ作るだけマシかも……そう出迎える星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)の床に置かれた肩掛け鞄からは、蕎麦や鰹節が顔をだしている。
「千鳥さのとこはもう出来てんのか?」
 椅子の背に腕を回してその上に乗せる顔は色白番長乙女、鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)である。
「ん。クリスマス明けから仕込み始めてるよ……て、ああ、今回は年の瀬の買い出しでごった返す問屋街に紛れ込んだモーラットを捕獲してきてくれるかな?」
 教卓に置かれたのは掠り柄のキルティングで自作された買い物袋(チャックつき)。
 しかし中を見るとカイロを入れる袋がついていて、モラ移動用だとわかる。
 場所は様々な店が軒を連ねる問屋街。
 ぽつりぽつりではあるが、露天も出ていたりと非常に賑やからしい。
「今のところ怪我人は出てないけどね」
「追いかけられて、びっくりして『バチバチィ』なんて事になったら、大変だべっちゃ」
 椿の言葉に千鳥は頷くと付け加えた。
「なにより世界結界によくないからさ」
 モーラットにそのつもりがなくても、色々大事に発展しかねない。
「んで、白いチビ達は、能力者に寄ってくるんだっけか?」
「ん。だから好物をちらつかせておびき寄せるのは簡単だと思う」
 千鳥曰く。

 1匹は、魚介類、特にいくらが大好き。
 1匹は、甘い物全般が大好き。

 だそうだ。
 ただし歩くのも儘ならない問屋街に紛れられるとちょっと面倒だ。逃げられないように囲むなど、簡単な工夫が必要かもしれない。
「いくつか路地があるみたいだし、そこに誘導するのがいいかもね」
 千鳥は問屋街の大まかな地図を手渡して付け加えた。

「問屋街は、色んな店が出てて見てるだけで楽しいよ。モーラットを保護したら、ぶらついてみるの、オススメ」
 スーパーではお目にかかれないような量の鮪の切り身が、時間の経過と共にヤケクソ気味の値段にまで下がったり、雑多に釣り下げられた上着の中からお気に入りを見つけるのも楽しいだろう。
 個人商店なので直接値切ったりも出来て、楽しいに違いない。
 ベビーカステラやお好み焼きチョコバナナ、食べ物の露天も散見させれる。
「私も田舎のチビどもにお土産買って、新幹線乗るべっちゃ」
 椿は依頼が終わったら里帰り予定。沢山の荷物が入るように、巨大なリュックを背負っているのはそのためのようだ。
「暇だったら土産選びつきあってけさえ。たこ焼きぐれぇなら奢るべっちゃ」
 里には、中学3年を頭に数人の妹弟分がいるらしい。
「てことで、年の瀬の忙しい時期だけど、よろしく」
 ひらひらっと手を振る千鳥に見送られて、キミ達は椿と共に問屋街へと向かうのであった。

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参加者
遠野・由香里(紫紺の癒し手・b15424)
桜宮・桃(緋猫の恋詩・b21221)
朝日奈・護(絶壁の小虎・b24524)
リュート・レグナ(しあわせの唄・b41973)
冷泉・香夜(月虹・b47140)
南郷・蒼羽(あおいそらのはね・b51577)
ナギ・ミサキ(大地に荒ぶる獅咬の拳・b55892)
火流真・加速(高校生月のエアライダー・b65994)
雨辻・陽向(茜陽の追複曲・b68998)
佐倉・吹雪(桜震流次期後継者・b69645)
ギンヤ・マルディーニ(トレクアリスタ・b70345)
風霧・來那(目指す先は今何処に・b71827)
NPC:鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)




<リプレイ>

●賑やか☆もら
「みなさまよろしくお願いします」
 ぺこり。
 あどけない声と共に、南郷・蒼羽(あおいそらのはね・b51577)は真っ直ぐな藍髪をさらりと揺らし、楚々とお辞儀をした。
「はい、こちらこそ」
 律儀にお辞儀で返す遠野・由香里(紫紺の癒し手・b15424)の手には、火で炙ると美味しそうなスルメ。
「年末でも、モラはいつも通りだな」
 蒼羽より50cm近く背の高い火流真・加速(高校生月のエアライダー・b65994)が苦笑いをして問屋街を仰げば、押せ押せの人混みが目に入る。
「大好物のいくらは現地調達を考えていたのですけれど、買えるでしょうか?」
 何が何処にあるのやらと、首を傾げる佐倉・吹雪(桜震流次期後継者・b69645)には、ナギ・ミサキ(大地に荒ぶる獅咬の拳・b55892)が安心しな、と笑ってみせる。
「確認しといたから大丈夫」
「携帯も準備OKだよ」
 ギンヤ・マルディーニ(トレクアリスタ・b70345)は、首からさげた携帯を示した。
 モーラットを捕獲したら思う様モフりたいと躍る心が、銀髪に蒼眼という日本人離れした端正さに、人好きのする笑みを添える。
「さーて、いたずらモラはぱっぱと捕まえて買い物に精を出しますか」
 ナギの声に、おう! と『海鮮班』はいざ出陣!

●ちょこ☆もら
 一方『お菓子班』は、先に出発して問屋街の中もらを求めて散策中。
 固まって歩いてはいたものの、弾丸のように早足でつっきるおばちゃんに突き飛ばされよろけるのはリュート・レグナ(しあわせの唄・b41973)だ。
「きゃっ!」
「大丈夫?」
 並んで歩いていた黄金色の少年、風霧・來那(目指す先は今何処に・b71827)は、慌てて駆け寄ると手を差し出した。
「來那先輩、ありがとうございます」
 ほのりとした笑みに安心を滲ませて、リュートはおすおおずと裾を掴む。
「2人のお菓子、美味しそうだねー!」
 甘く華やかな桜色を身に纏う桜宮・桃(緋猫の恋詩・b21221)は、リュートのカップケーキと來那のフォンダンショコラに、瞳を輝かせた。
 甘いお菓子は大好き! そんな彼女が手にしているのは、香ばしいクッキーだ。
「ふふ、モラさん達が、お菓子とか海鮮を、食べているの……想像すると……和みます、ね……」
 冷泉・香夜(月虹・b47140)はマフィン入りの籠を下げ、ほにゃりと色白の頬を緩ませる。
「可愛いよー」
 桃は真モラピュアのうずまきの事を身振り手振りを交えて話す。その様に香夜は更に笑みを深くした。
 うずまきは人が多いのでお留守番。リュートのルル、由香里の篝火、蒼羽のしらは……お手伝い舞台の使役さんも同様にカードの中だ。
「ふわもこしたものは、これでもけっこう好きなんだぜ」
 ガッシリとした体躯の朝日奈・護(絶壁の小虎・b24524)は、黙示録で健気に頑張るモーラットを思い出しつつ、話に加わってくる。
「賑やかだし、きっとあのおっちゃんの所にいるよっ」
 兄譲りの真紅の瞳を輝かす雨辻・陽向(茜陽の追複曲・b68998)が指さす先には『これだけ入ってチョコ1000円!』と、ど派手なのろしが下げられた店。
 問屋街名物・チョコレートの叩き売りである。
 数段上のオープンカウンターから、大仰な身振りのハチマキ親父が手にした袋にこれでもかとチョコレートを詰めていく様が見てて清々しい。
「なぁなぁ、椿も一緒に行こうぜ!」
「おう、あっこにはモラがいそうだべ!」
 興奮気味の少年に手を引かれ、鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)は黒髪を靡かせ店の真ん前へ、テンポの良い親父の口上に瞳を輝かせて聞き入る。
 あとで待ち合わせている流火がひっかかりそうだと苦笑しつつ、護は身を屈めて足下を跳ねるもふっ子がいないかと捜索開始、学ランのポケットからチョコバーを出してちらつかせる。
「んー、どこにいるかなーあー」
 來那とリュートは道の脇に避けて、きょろきょろ通り全体を見回した。
「あ、チョコバナナ……」
 買ってきていいかな、と屋台を指さすリュートに、頷く來那は一緒に移動。隣の屋台買ったベビーカステラを味見中の香夜も加わったら……。

 ……もきゅ♪

「あ、見つけた……かも」
 ほわわんと小首を傾げる香夜の視線の先では、毛玉さんがチョコの叩き売りの人混みに今まさに紛れようとしている所だった。
「こっちだよー」
 リュートは駆け寄りチョコバナナをふりふり、來那は護達に気づいてもらえるよう手を振り合図した。
「あ、こっち来たよ!」
「お、どこだ?!」
 桃が指さすのは、チョコの叩き売りを見ようと懸命に跳ねるモラの姿だった。
 ぽよんぽよん。
 精一杯跳ねても、高くてチョコには届かない……それがせつないモラ心。
「ほら、おいでおいで〜」
「もきゅ?」
 膝をついてチョコバーを揺らめかせる譲に気がついたのか、モラは足の間を跳ねながらやってくる。
 桃の合図で陽向と椿も左右の人をそっと押してモラの道をあけてやる。
「もきゅ、きゅきゅぅ〜♪」
 なんの疑いもなくモラは甘い香りに瞳を輝かせて路地へと向かう。薄暗めの路地に入ったところで、陽向と椿は素早く逃げ道を塞ぐように立った。
 チョコバナナ、ベビーカステラ、カップケーキ、フォンダンショコラにクッキーにチョコバー……選り取り見取りのお菓子天国が待っている〜。
「……捕まえた♪」
 だきゅ☆
 桃の腕の中、捕まった事にも気がつかずフォンダンショコラとチョコバーを抱えて囓るモラ、幸せそうである。
「お、俺も触ってみていい?」
 緊張気味に伸ばした陽向の指がふれると、ぴくりっと身を固めたものの、すぐに気持ちよさそうに目をつむる。
「もふっていいかな?」
「うん、落ち着いてるし大丈夫だよ」
 桃から受け取ったモラは、來那の体に染みたフォンダンショコラの香りが気に入ったのか全身ですりすり。
「もきゅう〜」
「わたしも甘い物大好きだよ。一緒だね」
 リュートが差し出したカップケーキに輝くつぶらなおめめ。
「目の前で見ると、本当に和みますねぇ……」
 香夜がふぅふぅ冷ましたベビーカステラも、お口に。
「ちょっと狭いけど、我慢してくれな」
「怖くないよー」
 護は袋のチャックを開けると、そっと片手でモラを抱く。
 みんなで口々に優しく声をかけながら、チョコバーと桃のクッキーをばらまいた中に導いた。
 1匹目、保護完了!
 

●お魚☆もら
 お菓子班から1本左に入った通りは、今朝仕入れたばかりのとれとれピチピチの生魚が店先に並ぶ。
 海鮮班はある程度散っての捜索を選んだ。確かにこれだけ店が連ねていると、それが良策だろう。
 両手に袋をさげてかしましくも楽しげに行き交う人々に、蒼羽は瞳をぱちくりさせるも、すぐに店に駆け寄りいくらを指さす。
「お魚の匂いで一杯ですね」
「賑やかですわね〜」
 紛れてしまうかも、と手にしたスルメを振りながら、由香里とすみれはいくらを買う事に決めた。
「おぉ、こりゃモラを釣るエサには勿体ないな……」
 紅の宝石に心を鷲づかみにされながら、ナギは常に携帯からの着信に注意を払う。
「これで海鮮好きのモラをゲットだぜ」
 加速はマグロの切り身を餌に、大きな籠につっかえ棒で罠を仕掛け、待った。
「もきゅ〜ん♪」
「来た!」
 特徴的な鳴き声に糸を引くも、籠の中にはモラはおらず。マグロだけ頂戴して、人混みに紛れてしまった。
 しっかり探さないと、と眼を懲らす吹雪の腕にはいくら入りのビニール袋が無警戒に揺れている。見た目で誘う作戦だ。

 ……もきゅぴぃ。

 鋭利な視覚で見出したのは、加速のマグロを平らげた後で食堂へと向かうもふっ子1匹。吹雪は携帯で仲間に連絡を取るりつつ、早足に追い詰めていく。
「ワーォ! イクラが宝石みたいデース」
 モラが向かった先には、いくらぎっしり(実の値切りの結果定価!)ないくら丼を掲げて大はしゃぎのギンヤが踊るように闊歩中。
「もっきゅー!」
 ギンヤはにんまりとした笑みでいくらを頭上から下ろしてちらつかせる。
「欲しいデスかー?」
「もきゅ!」
「では、こちらで分けてあげましょー」
 吹雪からの連絡でナギや由香里が駆けつけて来たのを視線に引っかけて、ギンヤは緩急つけつつ路地裏へと誘導していく。
「加速と蒼羽は、反対から回ってくれ」
 ナギは的確に携帯で指示を飛ばしながら、脅かさないように気をつけて路地に歩を進める。
「もきゅ?」
 前を往くいくら丼についていけば、更なるいくらの香りあり。
「こちらですよー」
 息を切らした蒼羽が、入れ物からいくらを零しモラを誘う。その背後では今度は逃げられないようにと、加速が道をふさいだ。
 ギンヤが地面に置いたいくら丼を無警戒に食べるモラ……うん、逃げなそうだ。
「スルメはどうですか?」
 しゃがむ由香里のスルメにも、小さな手を伸ばし齧り付く。
 たまに漏れる『もきゅきゅ』な声に和みながら、ナギはそっと後ろから捕まえた。
「おぉ……これは噂以上のもふもふ感……」
「いくらあげるから大人しくしててね」
 捕まえられても気にせずに、蒼羽が差し出したプラの入れ物に顔をつっこんで、もきゅもきゅ。
「かわいいかわいいかわ……」
 以下、ギンヤ、エンドレス。
「ああ、可愛いですね」
 吹雪が柔らかにハグした後、開けた鞄にそっと入れる。
 2匹目、保護完了!

●問屋街、賑
 黒の敷物にシルバーアクセを並べドリルで作業している男の前で、吹雪は足を止めた。
 髑髏や薔薇のごてっとしたセンスはイマイチ、だが彫りの技術は悪くない様子。
「こちらの希望デザインで、作って頂けますか?」
「いっすけど、追加料金もらうよ?」
 銀の塊を手にする男に、吹雪は礼と共にこだわりをつげ始める。
 その背後を來那とリュートが通りすがった。
 手をつないでいいか問われ來那は屈託なく「もちろんいいよ」。
「冷たかったらごめんね」
「大丈夫」
 見上げてくる可憐な藍の瞳に來那の胸が少しどきり。
 ポップな色使いの髪留めや首飾りが手頃に並ぶ店を見つけ、2人は足を運ぶ。
「あれ來那先輩に似合いそうかも」
 碧天のダウンジャケットと似た蒼ガラスのティアドロップペンダントを手に取り、リュートは嬉しそうに笑う。
「ありがとう。リュートちゃんには……」
 ふかふかファーが揺れる髪留めはモーラットっぽくて、少女に無邪気な笑みを呼んだ。
 店を出た後手渡されたフォンダンショコラに、リュートは心からのお礼を告げるのであった。

 香夜は6種の餡が売りのタイヤキ屋を見つけた!
「カスタードにしよっかな」
 悩む横で隣に立つ親友の椋はさっくり決めてオーダー、香夜は更に悩んで、チョコに決めた。
「タイヤキさん、可愛いから……どこから、食べるか、悩みます……ね。椋は?」
「ん?」
 思い切りよく頭から囓る椋に、香夜は吹き出し尻尾からぱくり。とろりと零れ出す熱々のチョコが口いっぱいに広がり、至福。
「椋のも、食べてみたい、な……」
「それじゃあ香夜のも一口ちょうだいね?」
 ギンヤと実がクレープの屋台で足を止める。
「今日は付き合ってくれてありがとう。何か甘いものでも食べようか?」
「あ、有難うなのです」
 ボーイッシュな魅力の実だが実は甘味好き。モーラットのケーキなど可愛いものとの合わせ技には弱い。
 トッピングを色々と追加する実にギンヤは頬を緩める。まだまだ梯子出来るスイーツ屋台はたんまりだ。

「何だよこの荷物の量は!」
 人通りに邪魔にならぬ場所でリュックに座る妹を前に、ナギは悲鳴にも似た声をあげる。
 どうやって華奢な妹が持ってきたのか謎なぐらいの大荷物!
「兄さん、これ持ってくださいね〜」
「まだ買う物があるって? 勘弁してくれよ〜 」
 そんなナギを従えた清音が去った後、入れ代わり海鮮屋に現われたのは由香里とすみれだ。
「えっと、このお刺身も買うので……もう少し安くならないでしょうか」
「うーん」
 だみ声で頭を掻く親父に、ずずいっと指を組んで前に出る菫色の美少女。
「おじ様、お願いしますわ」
 おじ様。
 おじ様。
 おじ様。
 慣れぬ呼びかけがクリティカル! どさどさ追加される魚介に、2人は眼を見張るのである。

「このくらいなら何とかなるかな……」
 でんっと置かれた海鮮丼を前に、蒼羽はパチリと割り箸を割った。
 甘エビ、いくら、しゃけ、マグロ、エトセトラ。寿司屋で同じ物を頼めば軽く3倍は取られそうだ。
「おー」
 すると、海鮮好きモラ入り鞄を下げてやってきた加速に呼ばれ、蒼羽は口をつけるのを一旦やめた。
 ――。
「もきゅぴぃ♪」
「ほら、うまいだろ?」
 店先の人目つかぬ場所で、加速の箸から甘エビを食べるモラ。蒼羽は頭を撫でながら「はい」と、マグロのお裾分け。
 ちょっとお行儀が悪いけれど、こんなのもたまにはよかろうて。
「あら、美味しそうですね」
 すみれと食べに来た由香里には「はい! お勧めです」と蒼羽は大きく頷くのであった。

「みゅぅぅ♪ チョコが山積みになってん!」
 ねこみみねこしっぽが、ゆぅらゆら。
 業務用お菓子卸問屋に行く途中、流火がチョコの叩き売りに捕まったぞ!
「こーら。そんなとこでひっかかるなって」
「坊ちゃん! 可愛いからこれもオマケしちゃう!」
「はぁわぁあああ♪」
 口上と共に目の前で追加されていくチョコに流火の瞳が魅了された、もはや護の声は届かない。
「るーにゃ駄目だよ」
「にゃ!」
 爽やか笑顔で流火の頭をむんずと掴むのは、目が醒めるような紅髪の銀朱だ。
 声は優しいが、鷲づかみ。
「護ちゃんイチオシのお店で、アレより大きなチョコ缶買ってあげるから」
「特大の缶入りっ!」
 2人に手をひかれ、流火は上機嫌で卸問屋へと向かった。

「椿ちゃん、一緒に行こ!」
「おう!」
「弟さんですか。初めまして」
 アルトは陽向に空色の瞳で笑いかける。
「初めましてだな、あんま兄ちゃんにひっつくなよ」
「ぴと」
「あっ、てめっ」
「?」
 膨れる弟と吹き出すアルトに、当の本人は全く気がついてない様子。
 桃が苺カスタードクレープを頬張る様を見て、椿は何を食べようか思案中。何というか……クレープ、可愛すぎ。
「アルトくんも一口食べる? はい、あーん」
 クレープ屋さんの前で差し出され、いちご好きのアルトは照れながら、あーん。
「美味しいですね」
「ねーねー兄ちゃん、このお好み焼きあげるー」
「ん? まあ、お好み焼きなら」
 あーん、が羨ましくてたまらない陽向は、差し出すお好み焼きを兄が囓ったところで表情を崩しくすぐったそうに笑った。
「めんこい、しゃでっこ(弟)だねぇ」
「そうか?」
 チョコの叩き売りが欲しいとせがむ陽向に、なら全員分買ってやろうと慧夜。
「わあ、慧にぃ買ってくれるの! さすが年上!」
「ありがとごぜぇます! いい土産になるべ」
 叩き売りの前には、やはり戻ってきた流火に肩を竦める護達がいて、笑い合う。

 ――そんな絶え間ない笑顔一杯で、2009年は去っていく。
 今年結ばれた縁を絆に変え、来年訪れるであろう出会いに心馳せながら――。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/01/14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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