角を持つ戦車


<オープニング>


「お待ちしておりました」
 神奈・瑞香(中学生運命予報士・bn0246)は、おじぎをして能力者たちを出迎えた。

「皆さんのおかげで、佐世保港に進行してきた吸血鬼艦隊の撃退は成功し、影の城は海底に沈められました。作戦が成功してよかったと思いたいところなのですが、そうもいっていられない事態が発生しました。
 攻略に失敗した『イワン・ロゴフ級揚陸艦』と『シャンプレーン級戦車揚陸艦』のゴーストたちが、それぞれ海岸から上陸して、市街地に向かっているようなのです。
 この数のゴーストがいっせいに市街地に入ってしまえば、小さな町の一つや二つは全滅してしまうおそれがあります。
 ですから、皆さんには、被害が少しでも出ないために、一刻も早く、シャンプレーン戦車揚陸艦から出てきた妖獣戦車と妖獣たちを倒して欲しいのです」

 瑞香は、海岸沿いの地図を開いて、ある一点の道路を指さした。
「皆さんにいってもらう場所は、この海岸沿いにある一般道路です。
 妖獣戦車たちは、この道路を北上してきますので、皆さんはそこで迎え撃ってください。今すぐに行けば、妖獣戦車たちが来る前に道路へ辿り着けるはずです。
 妖獣戦車は、牛の上半身と戦車が一体化した、体長六メートルほどある大きな妖獣です。攻撃には、前方二十メートル範囲までとばせる角からの砲撃と、近くにいる者をはねて時には吹き飛ばしてしまうキャタピラを使ってきます。
 また、妖獣は、毛の代わりにするどいトゲを体に生やした羊の妖獣、十匹で、近くにいる者へ手当たり次第、トゲを突き刺してきます。
 一般人ついては、世界結界の影響がありますので、何も心配する必要はありませんが、決してあなどってはいけないゴーストの群です。
 くれぐれも油断をしないよう気をつけてください」
 瑞香は、能力者ひとり一人の顔を見つめた。

「皆さん。どうか、皆さんの力で一般人たちを守ってください。お願いします……!」

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参加者
河崎・統治(フレイムソルジャー・b02414)
ヒナ・ローレンス(蒼穹月佳・b19746)
諏訪・沙夜羅(不変の愛と共に生きる者・b23242)
熱田・智延(白き破断の剣神・b29725)
霧生・神楽(奔放自在な風使い・b36332)
朝日・遥日(光の皇子・b40908)
浅神・鈴(千変万化・b54869)
穂宮・乙樹(眠りを誘う霧・b62156)



<リプレイ>


 海風が吹き抜ける一本道。
 誰もいない道を塞ぐように八人は前衛と中衛、後衛の三段に分かれて陣を築いていた。
「あの戦いで手を抜いたわけじゃない……」
 朝日・遥日(光の皇子・b40908)は、遠くから聞こえてくるキャタピラの音を耳にして、苦しそうにうめいた。
 低い動力音は、戦いで上陸を許してしまったゴーストの音。
 前衛として位置づいている浅神・鈴(千変万化・b54869)は、今にも泣き出しそうな少女のような風ぼうの遥日へと振り向いた。
「朝日さんは、……精一杯がんばったよ」
 遥日の姿に胸を痛める鈴は、か細く口を動かした。
「がんばったんだよ」
「だろうな」
 熱田・智延(白き破断の剣神・b29725)は、鈴の頭に手を乗せると、髪をかき乱すようにしてなでた。
「でもな、だからこそ、悔やむことも大きいんじゃねぇかな」
「え?」
「まっ、人それぞれだけど、遥日なら大丈夫だ。あいつは悔やむだけじゃなく、前に進むことを知ってるぜ」
 鈴は、きょとんとしたままの目を遥日に向けた。
 遥日は、いつの間にか、力強い目で前を見ていた。
「ゴーストの上陸を許してしまった責任は俺たちにあるけど……でも、街の人たちは、みんなと一緒に絶対助けるよ!」
「ほら、な。いい顔してるぜ。んじゃ、後詰めといきますかッ!! 暴れてる馬鹿どもをブッ倒して、街と人を護もらねェとなッ!! 俺たちが残しちまった心残り……断ち切ってやるぜっ!!」
「うん! 佐世保でのやり残し。こいつらを片付けないと本当に終わったとはいえないからね」
 斬馬刀をふりまわす智延に、鈴は元気よく答えてから武器を両手におさめた。
 一本道の向こう側からは、巨体を揺らしてくる妖獣戦車が近づいてきていた。
 どんどん縮まる距離に、キャタピラの周りを囲む、トゲを生やした妖獣の姿も見えてくる。
 まるで軍隊のような群れに、一番後ろに控えていたヒナ・ローレンス(蒼穹月佳・b19746)が息を飲んだ。
「ある程度の予測はしていましたけれど、思った以上に数が多いです……!」
「情報と視覚では大きな差がうまれるわね。でも、ここで逃げるわけにもいかないし、なにより犠牲にしてしまった人たちのためにも、必ずここで倒すわ。そして――今度こそ守ってみせる」
 考えるより前に動こうとする穂宮・乙樹(眠りを誘う霧・b62156)の武器の先端が、妖獣戦車たちに向けられる。
 妖獣たちは、行き先を阻む能力者に気づいて、すぐに突進できるよう、姿勢を低くした。
 霧生・神楽(奔放自在な風使い・b36332)は、ぐるりとまわした首を、利き手が置いている肩で止めると、気だるそうな息を吐き、
「さてさて、状況はだいぶん、おもしろくないことになってるし、ボクもたまには真面目に行かないとね。サヤラちゃん、ボクがいるから、後ろの心配はないよ!」
「うん! 戦争の後始末、なんとしても成功させないとな! そのためにも全力で行こう!」
 真後ろに立つ神楽の明るい声に、諏訪・沙夜羅(不変の愛と共に生きる者・b23242)はうなずく。
「今回は最初から全開で行くぜ!」
 ゴーストの上陸を許してしまったことに悔いている河崎・統治(フレイムソルジャー・b02414)は、一刻も早く彼らをせん滅させようと武器を頭上に掲げた。


「凍てつく風よ……雪とともに吹き荒れろ!」
 沙夜羅は、走ってくる妖獣たちを巻き込むように、辺りに氷雪を取り巻く竜巻を吹き上がらせた。
 耳をつんざく風の音と冷たい粒子が飛ぶ中で、ヒナは雪だるまアーマーをかけ、鈴は、妖獣の群れに奥義暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
「後衛にいかないように、先手を打つよ!」
 暴走黒燐弾が、鈴のかけ声に反応するように爆発すると、乙樹も魔蝕の霧で妖獣たちの威力を削ごうと霧を広げた。だが、妖獣たちは霧に臆することなく突進してくる。
「だめだったか」
 効果の威力が薄いことをわかっていた乙樹は、次の攻撃へ移るために、ミストファインダーをかけようと手を前に突きだした。すると、奥義旋剣の構えをとっていた統治が声をあげる。
「砲撃だ!」
 見れば、妖獣戦車として吠えている牛の角にまぶしい光が集中している。
 遥日は、すぐに叫んだ。
「皆さん、散って!」
「来るぞ、ペアを組め!」
 智延が声を荒げると、発射された妖獣戦車の砲撃が誰もいない地面で爆発した。
 ペアを組んでいたことが、とっさの動きにも反応できたのだろう。
 統治と遥日、沙夜羅と神楽がペアとなった、前衛と中衛組。乙樹とヒナが組む中衛と後衛組。そして、前衛同士である智延と鈴のペアが互いを対として動いていたのだ。
 陣を乱されても、動きはにぶらない。
 神楽がライカンスロープをかけると、妖獣たちは、散らばった前衛たちの元へと分散した。
「今、治すよ。がんばって!」
 移動したために、奥義ナイトメアランページで攻撃が出来ない遥日は、傷が深い鈴を白燐奏甲で癒し始めた。しかし、妖獣たちは攻撃の手を休めない。
「羊ィ、覚悟しやがれ!!」
 ペアを組む鈴と、彼女を癒す遥日を守るために、智延は奥義ダークハンドで襲いかかってきた妖獣を切り裂いた。
 沙夜羅も、智延の攻撃に続くように吹雪の竜巻を吹き荒らす。
 妖獣たちは、前衛の四人に向かって、次々とトゲを突き刺していた。攻撃もバラバラなために、数は思ったよりも減らず、前衛を担う者たちの体力は減っていく。
 妖獣戦車の砲撃に巻き込まれないよう、遠くへと後ずさっていたヒナは、群がる妖獣の中で一番攻撃を受けていない相手へ奥義光の槍を撃ち込み、一匹の妖獣を無に帰した。
「数を減らさないと……弾けろ!」
 鈴も負けずと、弱っていそうな妖獣に狙いを定めて、暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 乙樹は、仲間の怪我の具合を見て、攻撃手段をミストファインダーから治癒符へと変えて、符を飛ばす。治癒符で癒せる者は一人。一度でも回復の手が遅れれば、傷ついた者は増えていき、癒しきれない。
「ここを通すわけにはいかねぇな」
 統治は、攻撃対象からもれている妖獣を一瞬で見つけると、その相手へと近づき、奥義フェニックスブロウで斬りつけた。
 不死鳥のオーラが火柱とともに消えると、妖獣戦車が大きな音を出して突進してきた。
 キャタピラが激しい音を出して、地面をえぐってくる。
「きゃあぁぁぁ!」
「サヤラちゃん!」
 神楽は、腕を広げてキャタピラにはねとばされた沙夜羅を受け止めた。
「大丈夫?!」
 神楽はジェットウインドを吹き上げながら、立ち上がる沙夜羅を気づかった。
「平気だ! それより羊たちが――!」
「行くよ……あたれっ!!」
 沙夜羅が吹き飛ばされたことにより、沙夜羅を攻撃していた羊たちが中衛と矛先を向け始めた矢先に、馬が駆け走った。
 遥日がナイトメアランページを放ったのだ。
 智延は、羊を蹴り散らかす馬を目で負いながら、森羅呼吸法で傷の回復を図る。
 沙夜羅は、その場で吹雪の竜巻を起こした。
「私が、範囲攻撃をしかけるから、後に続いてくれ!」
 出来れば、連続して討ちたい。
 その思いに、ヒナが答えて光の槍を放つが、妖獣戦車も角に光を浮かばせる。
 鈴は急いで暴走黒燐弾を放ち、乙樹は怪我の酷い者へと治癒をほどこした。何度も襲ってくる妖獣の攻撃に、能力者たちの傷は深い。
 妖獣戦車の角から光が発射されると、乙樹を中心に爆発を起こした。
「きゃああぁぁ!」
 乙樹の足がふらつくと、統治は倒れる前に傷を癒そうと、遥日へと振り向いた。
「朝日、悪いが交代してくれ!」
 前衛に出る心構えをしていた遥日は、すぐに応じる。
 悪化する戦況に、神楽は統治と遥日が入れ替わりやすいように、ジェットウインドで一匹の妖獣を宙に留まらせた。本来なら、沙夜羅を守るべきだろうが、沙夜羅ならわかってくれると信じている。
 遥日は、白燐奏甲を統治にかけると、位置を入れ替わる。
「あと、四匹だ!」
 ダークハンドが与えた毒で苦しむ妖獣を見て、智延は叫んだ。


 妖獣が全ていなくなった代償として、能力者たちの怪我は一目で危険だとわかるものばかりになっていた。
 回復が間に合わず、常に死と隣り合わせを行き来している彼らに、牛の吠える声と戦車の音が広い空間をかけめぐって、不安と恐怖をまきちらした。
「さぁ、あと少し。気合入れていこう!」
「ボクも回復にまわるよ!」
 治癒符を手に明るい声を出す沙夜羅に、鈴も黒燐奏甲で傷を癒しにかかった。
 敵は妖獣戦車だけになったが、相手の威力は強いために、回復一つをも油断できない。
 ヒナは、光の槍を立て続けに放つ。
「これを止めなければ……終わりじゃない! ぼろぼろになる前に……これで癒してっ」
 願いを込めて、乙樹が治癒符を放つと、体力が回復して、遥日と元の位置へ入れ替わっていた統治は、オーラの不死鳥とともに最後のフェニックスブロウで斬りかかった。
 妖獣戦車が砲撃を放つと、乙樹が膝を折る。
 神楽は最後のジェットウインドを吹かせると、武器を構えて、射撃に移った。
「がんばって……!」
 遥日は、白燐奏甲を仲間にかけ続け、智延は獣撃拳を斬りつけに向かった。
 沙夜羅、鈴、遥日は自分たちの傷になりふり構わず、傷の手当てに奔走する。妖獣戦車の攻撃に耐えられるは、自分たちがよくわかっているため、倒れないギリギリのラインを守って、仲間を支え続けた。
 そして、再び妖獣戦車のキャタピラが激しく動いた。
「うわあぁぁ!」
 智延が、キャタピラにはねとばされて、地面に叩きつけられた。
「熱田さん!」
 鈴は、ペアを組む智延を癒そうと後を追い、すぐに黒燐奏甲をかけた。
 ヒナは、がら空きとなった前衛のすき間を目がけて光の槍を放ち、統治は奥義フレイムキャノンを至近距離から放つ。
 燃える妖獣戦車に神楽は詠唱ライフルを撃ち込む。
 智延は、立ち上がると、獣のオーラを宿した斬馬刀を手に、妖獣戦車へと走り出した。
「いくぜ、フツノっ!! ヤツを断ち切れぇぇ!!」
 沙夜羅の治癒符が飛ぶ。
 ヒナの光の槍が輝く。
 鈴の黒燐奏甲がぼんやりと光ると、妖獣戦車は沙夜羅をひきつぶした。
 立ち上がらない沙夜羅に、神楽は悔しそうに歯を噛みしめる。
 統治のフレイムキャノンが飛び、神楽の銃弾が飛ぶ。
「鈴さん! 黒燐奏甲の残りはいくつですか?!」
「あと、二回です!」
 怪我を癒す遥日の問いかけに、鈴は答えた。
 遥日は、自分が持つ白燐奏甲が五回をきった時点で、撤退を考えた。
 鈴が持つ回復効果を失えば、残る他者回復は遥日しかできないため、どうやっても守りきれない。
 智延が獣撃拳を繰り出し、ヒナが光の槍を撃つ。
「例え……この身がどうなろうとも、お前はここで倒す!」
 持てる力をふりしぼって、統治がフレイムキャノンを放つと、妖獣戦車の顔が統治へ向いた。
 角に集中する光が統治を爆発の渦へと巻き込んで、悲鳴をあげさせる。
 神楽は詠唱ライフルを撃ち鳴らし、智延は迷いのない武器さばきで妖獣戦車を攻める。
 倒れて動けない乙樹と沙夜羅は、せめてもと心の中で強く勝利を願った。


 妖獣戦車の動く音が聞こえなくなると、沙夜羅と乙樹は目をあけた。
 そこには、朽ちていく妖獣戦車が映っていた。
「……ごめんね……どうか、安らかに……」
 遥日が誰にも聞こえないような小声でつぶやくと、統治は武器を下ろした。
「とりあえず、これ以上の被害が出るのは防げたか」
 辺りを見回した統治は、沙夜羅の腕を自分の肩にまわして、抱え上げた。
 乙樹には、すでにヒナが手を差し出している。
「ありがとう。ヒナたちのおかげで、たくさんの命が助けられたわ……」
「穂宮さんの治癒符があったからこそ、ここまで保てたのです。そう……ここにいる皆さんが一つとなったからこそ、助けられた命なのです」
「……うん」
 乙樹は、笑みを浮かべると、一滴の涙を落とす。
 神楽は、沙夜羅に手を貸しながら顔をのぞきこんだ。
「サヤラちゃん、ごめんね。痛かったよね」
「これくらい、大丈夫だ。霧生」
 神楽は、気丈な沙夜羅を抱きしめた。
 すると、体勢をくずした統治がふらつき、三人はそのまま地面に倒れ込んだ。しかし、統治と神楽が沙夜羅を守るように下敷きとなったため、沙夜羅は無傷だった。
 鈴は慌てて、三人を起こすと、智延は首から提げていたライトをつけて、仲間の方に向けた。
 そこには、全員がそろっている。
「お疲れサン!」
 誰かが、お疲れ様。と、答えた。


マスター:あやる 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/01/03
得票数:カッコいい17  知的1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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