佐世保緊急防衛指令〜暴虐の戦団


<オープニング>


「お集まりいただきありがとうございます、ご主人様」
 メイド服を身に纏い、紫崎・芽衣香(中学生運命予報士・bn0057)は、いつものように集まった能力者達に一礼する。
「吸血鬼艦隊の迎撃、お疲れ様でした。お疲れの所恐縮ですが、緊急の依頼が入っております」
 銀誓館学園はクレマンソー級空母の撃沈に成功し、影の城を海底に沈めて戦争には勝利した。しかし、イワン・ロゴフ級揚陸艦、シャンプレーン級戦車揚陸艦の両艦の迎撃には失敗し、上陸を許す事となってしまったのである。
「ご主人様方には、早速シャンプレーン級戦車揚陸艦より上陸した妖獣戦車と妖獣達の迎撃に当たって頂きます」
 長崎県佐世保市高後崎に上陸した妖獣戦車は、多くの妖獣を引き連れたまま海沿いの道路を北上している。
「その進路上にあった俵ヶ浦町……その市街地を攻撃している妖獣戦車と、その取り巻きの妖獣を、撃破していただく事になります。民家を何軒か破壊し、死者も出ているようですね」
「死者も、ですか……」
 その言葉に、グッと歯を食い縛る山神・伊織(龍虎双握・bn0002)。
「ですが、一般人の救出に関しては考えずに結構です。破壊された民家にいた一般人はすでに手遅れですし、妖獣戦車達はしばらくの間は建物の残骸を完全破壊する事に専念するようですから」
 下手に一般人の救出を考えると、その間に妖獣戦車達の被害が増す事になりかねない、と芽衣香は告げる。
「先ほどから言っているように、敵の最も強大な戦力は妖獣戦車。戦車と妖獣が融合したようなフォルムを持ち、戦車砲による爆発範囲への砲撃、近距離に吹き飛ばしを伴う轢き潰し攻撃を行います。また、守りを固めて自身の防御力を上げ、回復する事もあるようですね。戦争で出現した個体に比べて一回り以上大きいようです」
 見た目どおりの頑丈さと攻撃力。かなりの強敵になる筈だ。
「加えて取り巻きのゴーストとして、アーマードタートルが8体。こちらも通常ゴーストタウンに出現する物よりも強力とお考えください」
 アーマードタートルもまた、爆発範囲への炸裂弾による砲撃と、防御姿勢をとる事での防御力上昇を行う妖獣である。
 砲撃の嵐をいかにして凌ぐか、それが勝負の分かれ目となるだろう。
「なお……戦場は広めの平地となっているため障害物などの存在は考えなくて構いません」
 それは能力者達にとっては有利な事かもしれないが、もちろん喜べる筈も無い。平地であると言う事は、本来有った建造物は、すでに破壊されてしまったという事なのだから。
「私達がもっと頑張っていれば、この被害は抑えられたんでしょうか……」
「そうかもしれませんが、言っても詮無き事です」
 伊織の言葉に、淡々と答える芽衣香。
「……そう、ですね。今私達に出来るのは……これ以上被害を出さない事ですよね」
 決意を新たに顔を上げる伊織。そして芽衣香は、いつもと変わらぬ台詞で、能力者達を送り出す。
「それでは、お気をつけていってらっしゃいませ、ご主人様。無事のお帰りを心よりお待ちしております」

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参加者
橘・神威(碧光のアポカリプス・b00390)
霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)
レイラ・フォーティー(白銀の閃姫・b03068)
六連星・きらら(ギャラクティカエンプレス・b06096)
伊佐・銀史郎(太陽の騎士・b09209)
鈴桜・雪風(空に抱かれた憂いの焔・b19613)
スバル・ミストレス(自由を求める魔導師・b40526)
瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)
NPC:山神・伊織(龍虎双握・bn0002)




<リプレイ>

●砲火の街にて
 破壊の爪痕が刻まれた街。その中を、9人の能力者達が駆ける。
「この町の被害、先の戦争の傷なんですよね……」
 スバル・ミストレス(自由を求める魔導師・b40526)が、周囲に視線を向け呟いた。
「街をこんなにして……絶対に許せません!」
「これも、俺たちが上陸を阻止できなかったせいか……」
 霧生・颯(マンドラゴラは植物です・b01352)、瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)もまた、表情を歪める。先の戦いで揚陸艦の上陸を看過したのは、必ず影の城と空母を沈めると言う目的のためだったけれど。
「そんなの言い訳にならないよね……」
 思考が呟きとなって鈴桜・雪風(空に抱かれた憂いの焔・b19613)の口から漏れる。
「これ以上先には進ませられない……街を、守らなきゃ……」
「心を引きずられるな。焦りはミスの原因だからな」
 仲間たちに気負いを感じたのか、伊佐・銀史郎(太陽の騎士・b09209)が声をあげる。
「そうそう、あたし、この戦いが終わったら佐世保バーガー食べに行きたいな〜♪ ぐらいのつもりで良いって」
「……六連星さんは少し気楽すぎる気がしますけど」
 呑気に言う六連星・きらら(ギャラクティカエンプレス・b06096)に、思わず突っ込む山神・伊織(龍虎双握・bn0002)。
「まあ、気負い過ぎるのは確かによくないですけどね……!」
「何にせよ……これ以上、好き勝手をさせる訳にはいきませんから……」
 耳に届く爆音が大きくなって来たのを感じ、橘・神威(碧光のアポカリプス・b00390)は手にした術扇を強く握り締めた。
 程なくして視界の内に現れる、妖獣戦車の一団。
「……この事態を招いたのが僕達ならば、幕を引くのも僕達の役目、ですよね」
「そうね。戦後処理は当事者の仕事、責任持って片づけないとダメなのよ」
 神威の言葉に頷き、レイラ・フォーティー(白銀の閃姫・b03068)は己がサキュバス・ドール、イリスへと声をかける。
「あれが敵よ。戦う覚悟は聞くまでもないわよね」
 主の問い掛けにこくり、と頷くイリス。敵は新たな一団の接近に気づき、砲塔をこちらへと向けてくる。
「これ以上破壊させはしない!」
 その砲塔を真っ直ぐに見つめ、身に獣の気を纏わせながら、直哉は叫ぶ。
「ここで……俺たちが止めるんだ!」

●蹂躙の爆撃
「正面からぶつかりたくはないけど……止めるにはそうするしかないね……」
 雪風の幻夢の領域が戦場を覆う中、能力者達は妖獣達へと駆け寄っていく。
「戦車は俺が止める!」
 黒き燐光を身に纏い、双剣を構え立ちはだかるは銀史郎。右手に手にした守護者の銘を持つ長剣が、今日はいつも以上に手に馴染む。
「悪いが、ここで行き止まりだ……相手をして貰うぞ」
 サイコフィールド、黒燐奏甲、旋剣の構え。三重の護りを身に纏い、彼は一人妖獣戦車へと立ち向かう。
「速攻でいく! 合わせて行くぞ!」
「はいっ!」
 その間に、アーマードタートルに肉薄する直哉と伊織。左右から挟みこむような龍尾の双撃が、堅牢な装甲へとに皹を入れる。
「よーし、こっちも負けないよっ!」
 きららも、ホームランバットを手に別のタートルに飛びかかった。吸血の牙で噛み裂こうとするが、硬い甲羅に阻まれる。
「やっぱりきついか……でも、足止めしてる今のうちに!」
「ええ……砲弾の数を減らせば、自ずと勝機は見えます」
 豪炎を宿した真紅のルビーを胸元に握り締め、星型の杖をアーマードタートルへと向けるはスバル。杖の中心、赤い宝石へと集まった魔力が、炎弾となって撃ち出される。
「速攻です……少しでも早く、数を減らさないと!」
 神威が優美なる漆黒の術扇を動かせば、それに合わせ、気流が大地から噴き上がる。炎と風、二つの魔力に包み込まれたアーマードタートルは、苦悶するように身を捩りながら、他の妖獣と共に甲羅の上部を開いた。
「っ、来る……!」
 咄嗟に、かつて雷を宿していたと言うその剣を、身体の前に構えるレイラ。直後、8発の雷弾が豪雨のごとく戦場全体に降り注ぐ。
「ん……やっぱり狙いは甘いし、複数の間合いに迂闊に入らなければ平気ね。イリス、大丈夫?」
 こちらはある程度散開しており、範囲攻撃の常として雷弾は狙いが甘い。冷静に分析しつつ声をかければ、イリスは主に頷きを返す。
「とはいえ、それも一発ならば……ね」
 雪玉の鎧とコスモス柄のカーディガンで身を守った雪風が、呟き前衛へと駆ける。二発、三発と、蓄積すればするほど痛みは増す。
「もう、撃たせない……」
 決意の言葉と共に漏れるは、氷結の吐息。先程二本の龍尾によって入れられたヒビから吐息は忍び入り、その内部までを白く凍結させる。
「僕のキノコが真っ赤に生える!」
 颯も、麻痺をもたらすキノコで妖獣の勢いを押し留めて行く。
「ずっと僕達のターンとは行かないけれど……」
 確実に手数を減らして戦線の維持に務め、その間に確実に一体一体、アーマードタートルを葬り去って行く能力者達。それでも疲労と傷は確実に蓄積していく。
「くっ、半端無い爆撃だな……」
 獣気を纏い、雷弾の傷を癒す直哉。
「やられる前に、一撃でも多く攻撃しないと……」
 雪風の吐息がアーマードタートルの身体を氷結させ、打ち砕く。砲火は確実に減って来ており、けれど……。
「ぐぅっ……!!」
 重爆音が戦場に木霊し、爆風が吹き荒れる。戦団の要たる妖獣戦車は、傷だらけの銀史郎を睥睨するように戦場に君臨していた。

●破壊する者、護る者
「伊佐さんっ!」
「まだ……大丈夫だっ……!」
 白燐を呼び出しながら銀史郎に駆け寄ろうとする神威を、剣を支えに制止する。たった一人で妖獣戦車を押しとどめていた彼は、三重の守り、そして二重の強化が施された回復でその身体をしっかりと支えていた。
 しかし、それだけでは凌ぎきれない砲火であるのもまた事実。身に纏った武装ジャケットはボロボロになっている。
「近づけば、砲撃に巻き込まれるぞ……それよりも、早く雑魚を!」
 キャタピラを回しての轢き潰しを、ほとんど捨て身のように横跳びでかわす。降り注ぐ砲火は剣を交差させて受け止め、それでも身を焦がす爆風の痛み。
 旋剣の構えを持ってしても癒しきれぬ傷、身体を支えるのは誇りと勇気のみ。
「分かりました、でもせめて……!」
「焼け石に水……でも……」
 神威の放つ清廉なる風、雪風の展開する幻夢の領域が、その勇気を支える。雪風の言う通り焼け石に水程度の回復でも、その支えは今や生命線だ。
「ここで、負けるかっ!」
 龍撃の波が、残りのアーマードタートルを貫き通す。その波に乗って繰り出された直哉の脚が甲羅を叩き割って。
「これ以上、破壊させてなるのものか!」
 そこに注がれる猛火が、妖獣の身体を内側から焼き尽くし、霧散させる。
「雑魚はこれで最後ね……イリスっ!」
 もう一体の装甲の表面で、投げキッスが爆ぜる。僅かについたヒビから忍び入るはレイラの闇手、毒は一瞬でアーマードタートルの巨体を蝕み尽くす。
「よっし、最後は戦車だよっ!」
 全ての雑魚を倒し終え、ようやくの戦車戦。限界に近い銀史郎を庇うように、次々と能力者達が駆け寄る。
「あたし、この戦いが終わったら佐世保バーガー食べに行きたいな〜なんてねっ!」
 バットを片手に側面に肉薄するきらら。妖獣に対戦車戦闘の戦術など通用しないが、代わりに能力者として培ってきた経験が彼女を突き動かす。
「まだやられるわけにはいかないんだ!」
 正面から進軍を抑える直哉。その彼を援護するように、雪風の、白い蓮華のごとき氷輪が宙を舞う。
「これで、そろそろ終わりにする……よ!」
「ええ、終幕です!」
 氷と対を為すがごとく、炎も妖獣戦車を襲う。魔術師の服を翻し、スバルは残った魔力を全て叩きつけるつもりで杖を振るう。
「さぁ、今のうちに倒しちゃいましょう!」
 同様に炎を放った颯が、炎上した戦車を前に叫ぶ。
「今までさんざんやってくれた……お返しはさせて貰う!」
 きららとは逆の側面から、刀を振り下ろす銀史郎。月光を名に冠する太刀は、太陽の下であってもその太刀筋に狂いはない。そして。
「これで……っ!」
「トドメよ!」
 神威の巻き起こす風に車輪を取られた戦車が動きを止めたその瞬間。レイラの生み出した闇手が、戦車を呑み込んだ。

●爪痕
「……駄目ですね」
 周辺を見回ってきたスバルは、ため息と共にそう漏らした。生存者がいればと一縷の望みに賭けて探索して回ったが、この破壊の痕からは、誰一人として生きた人間は見つからなかった。猫変身を解いた颯も、無言で首を振る。
「俺たちがもっと力を尽くして、上陸を阻止できていれば……」
 懴悔の念に俯く直哉。
「最初に責任を果たすといったけどね、結局それは自己満足なのよ」
 レイラも、廃墟を眺めながらイリスへと語りかける。
「でも、ベストは尽くせた……よね……?」
 だからといって全てが許される訳ではないけれど、それはとても大事な事で。雪風が依頼を成し遂げ、妖獣達を倒したのは確かな事実。
「そう、だからあまり気にし過ぎるな。もちろん、忘れて良い訳じゃないがな」
 後悔は迷いに繋がる。銀史郎の言葉は皆に言い聞かせるものか、それとも自分に言い聞かせるものか。
「今まで、幾つも後悔をしてきました。それこそ、数え切れない位。でも……」
 呟くような、神威の言葉。すでに過ぎ去り、覆しようがないからこその過去。
「それでも、僕達は前に進むしかないんですよね……」
 その決意と思いは、能力者達の心に深く刻まれた。


マスター:一二三四五六 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/01/26
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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