戦車は街へと


<オープニング>


「みんなの活躍で佐世保港に侵攻してきた吸血鬼艦隊の撃退は成功し、影の城が海底に沈める事ができたんだよね」
 ご苦労様、と現れた運命予報士は能力者達を労った。
「ただね、作戦成功でめでたしめでたしとはどうも言ってられないんだよね」
 攻略に失敗した『イワン・ロゴフ級揚陸艦』と『シャンプレーン級戦車揚陸艦』のゴースト達が、それぞれ海岸から上陸して、市街地に向かっているというのだ。
「それでね、長崎県佐世保市高後崎に上陸した妖獣戦車は、多くの妖獣を引き連れたまま海沿いの道路を北上してるんだよ」
 どう考えてもこれを放置はできない。だからこそ、この場にいる能力者達に声がかかった訳なのだが。
「それで、みんなには海岸沿いの道路を北上してくる妖獣戦車を迎え撃って欲しいんだ。うん、大きな戦いのあとで悪いけど」
 若干申し訳なさそうな顔で、予報士の少女は手を合わせた。どうかお願い、と言うことなのだろう。
「ありがとう、それでゴーストの構成だけど」
 頷いた能力者達に胸をなで下ろして、少女が説明を始めるに、妖獣戦車が連れている妖獣はカタツムリの妖獣が全部で十体。
「カタツムリ妖獣達は本気になればみんなが走るぐらいで動けるんだけど、行軍速度はのろのろでね」
 進軍速度が遅いからか、能力者達と交戦する場所は街まではまだ距離があり、一般人に気兼ねする必要はないのだと言う。
「カタツムリ妖獣は防御力が高い上に、防御力を上昇させ、傷を癒す技を持ってるから、下手をすると戦いが長引くかも」
 妖獣戦車は体長6mくらいの大型の妖獣で、着弾点とその周囲に効果をもたらす射程20mの範囲攻撃、吹き飛ばし付きの相手を跳ね飛ばす単体攻撃、自己を癒すと同時に状態異常をも浄化し更に防御力まで上昇させる回復技を持つ。妖獣戦車だけでも充分厄介なのだが、妖獣達はこの大物を守る壁ともなりうるのだ。
 
「厄介な相手だし、危険も伴うけどここで防がないと被害が増えちゃうんだ」
 だからお願いと、もう一度手を合わせた予報士に見送られ、能力者達は新たな戦場へと向かう。妖獣戦車を撃破する為に。

マスター:聖山葵 紹介ページ
 リアルタイムイベントお疲れさまでした、聖山です。

 ご覧の通り、今回は戦いの後始末となります。
 戦闘の時間は夕方、場所は海岸沿いの道路。
残り物、しっかり片付けちゃって下さいな。

 尚、迎撃には紗夜子さんも同行します。
 指示等、何かありましたらプレイングの方でよろしくお願いします。

 では、ご参加お待ちしております。

参加者
結城・凍夜(閃光煌く魔弾の射士・b01229)
雛宿・籠姫(あかきゆめみし乙女・b05888)
皆坂・柚流(現役女子大生アイドル土蜘蛛・b18250)
白羽・命(白夜虫・b23300)
雲雀・紫衣(信じる者の幸福・b28051)
聖・りのあ(対科学人間専用最強メイドロボ・b41874)
月影・白虚(白凶・b44058)
水本・涼花(小学生魔にゃん術士・b47600)
霊門・稀(小学生貴種ヴァンパイア・b47674)
真島・太一郎(中学生鋏角衆・b58789)
NPC:石蕗・紗夜子(小学生土蜘蛛・bn0143)




<リプレイ>

●夕暮れに待つ
(「大事の後の後始末、という感じですかねぇ」)
 包帯の端を弄びながら、皆坂・柚流(現役女子大生アイドル土蜘蛛・b18250)は首を回らせた。夕焼けに染まった海は鮮やかに、海岸沿いに作られたコンクリートの堤防の向こうで潮騒を歌っている。眼前の堤防は隠れるのにはもってこいかも知れないが、姿を現すのにも一手間かかりそうだった。
「うにゅ、紗夜子ちゃん、2ヶ月とちょっとぶりかな。今日もよろしくね」
 白羽・命(白夜虫・b23300)のかけた言葉に、こちらこそと石蕗・紗夜子(小学生土蜘蛛・bn0143)は答え、ツーペアの瞳が声に反応するように土蜘蛛の少女へと向けられた。雛宿・籠姫(あかきゆめみし乙女・b05888)にとっては、同じ結社の仲間と初めての同じ任務。霊門・稀(小学生貴種ヴァンパイア・b47674)にとっては、心を寄せる人へ良いところを見せる好機。
「無様な格好は見せられない」
 二人にとって、それは共通の認識だったかも知れない。無論、これから戦いに挑むべく敵を待ち受ける能力者達の胸中にはそれだけではない思いもある。
「うにゅ、この前の戦いでは敵に上陸を許したけど、これ以上、被害を出さないためにきっちりとやっつけないとね」
 とは、命が抱いた決意だが。
(「上陸されたのは正直な話あたしたちのミスといってもいいでしょう。なら、上陸した招かざる方々を処理するのはあたしたちの責務」)
 責任感を同行者にした債務者の一人、聖・りのあ(対科学人間専用最強メイドロボ・b41874)は前で組んだ手をぎゅっと握りしめ、前を見ていた。
(「仕方なかったとは思うけど、ボク達の作戦の結果で長崎の町に危険が迫ってるんだよね」)
(「私たちがやらなければ、町の人が危ない……ここはなんとしても止めなくては、ですね」)
 水本・涼花(小学生魔にゃん術士・b47600)にしても、雲雀・紫衣(信じる者の幸福・b28051)にしても。
「作戦としては単純ではありますけど、これ以上被害を広げる訳にはいかない重要な依頼ですからね」
 正しいことをもっともらしく口にしながら、月影・白虚(白凶・b44058)はしかめ面しい表情で妖獣戦車がやって来るであろう方向を見ている。
「ええ、ここで失敗したらいけないです」
 手に持った携帯用の懐炉を配りつつ、真島・太一郎(中学生鋏角衆・b58789)は仲間の言葉に頷いた。
「皆様が居れば、きっと大丈夫ですわっ♪」
「そうですね」
 結城・凍夜(閃光煌く魔弾の射士・b01229)も味方を励ます言葉に相づちを返し、イグニッションカードを取り出して。
「さて、油断せずにいきましょうか……イグニッション!」
 起動の声があがる。やがて道の先に何かの影が見え始め。
「敵、きましたね。皆さん準備はいいですか?」
「もちろんです」
「これで準備OK、と。……目標を狙い撃つ!」
 問に反応する声は概ね是。黒燐蟲と白燐蟲の共演が能力者達の詠唱兵器を彩り、展開された魔法陣の向こうにあった影はのんびりとした行軍速度を放棄して行く先を阻むように布陣した能力者達に向かって全力で向かってくる。
「止めなきゃ……いや、絶対に止める!!」
「此処より先は通しませんっ!」
 向かい来る妖獣達に待ち受ける籠姫達。流石に距離を詰めながらでは妖獣戦車も応射することは能わない。
「さぁお掃除開始です」
 距離の差を活かした一方的な攻撃の始まりだった。

●奇襲
「前衛から突出をして集中攻撃を受けない」
 それは、正しい心がけだった。近接攻撃しか持たぬ身ではすることが無かったとしても。
「自己強化でございますか」
 妖獣達は遠方からの攻撃を受けつつも、身の守りを固め傷を癒しながらただ真っ直ぐに進んでくる。
「黒燐弾奥義で全体的に攻撃をお願い」
 涼花の指示に応えるように飛んだ黒燐蟲の弾丸は着弾に続いて爆ぜ、壁となっているカタツムリ妖獣達の真ん中から肉を食い破る無数の散弾となって妖獣達を貫いて行く。
「戦車もそろそろ射程圏内ですね。直は直接カタツムリに対して攻撃を」
 前方で敵を待つ蜘蛛童・爆へと指示を出しつつ、太一郎の投じた飛斬帽は妖獣の身体を削ぎ斬って、手元へと戻った。
「参りましょう」
「道をあけるのです!! というか……どっけえ〜〜〜!!」
 迎え撃つべく駆け出した白虚の背から生えた蜘蛛の足がカタツムリ妖獣の殻を貫き、虚を突かれて大きな痛手を負わされた妖獣は、傷を癒す間もなくりのあの十字闘剣・斬によって両断され、消滅する。
「こっちだぜ! 当てられるものなら、当ててみな!」
 凍夜は白いコートの裾を翻したまま不敵に笑みを浮かべた。妖獣戦車から直前にあがった咆哮は苦痛と怒りによるもの。両手にライフルを構え、撃ち出した雷光は狙い違わず妖獣戦車を貫いていた。
「皆さんきますよ、気をつけて……!」
 紫衣が警告を発したのは、凍夜の挑発が功を奏した結果でもある。妖獣戦車は乱暴なリクエストに砲撃と言う形で応じたのだ。
「ッ」
 警告と防具のおかげで、飛来する一撃に凍夜の身体は反応し、交差させたライフルが爆発の衝撃を幾分和らげる。手傷こそ負うことになったが、敵前衛に近接攻撃をしかけつつある味方のまっただ中に撃ち込まれるよりはよほどマシだったのだから結果は上々だろう。
「突破口を広げますっ!」
 籠姫の一射が妖獣を怯ませたか、精彩を欠いた体当たりは標的を掠めることも出来ず失敗に終わる。妖獣の数が一体減ったことで生じた穴は飛び込めても能力者一人分。まずは妖獣達の数を半減させ壁を取り払う必要があった。
「……ここから先は……通行止めのUターン禁止! 地獄行きの一方通行だよ!」
「霧よ!」
 カタツムリ妖獣の体当たりを受けあるいは避けつつも、稀はミルス・ペック(虹を見るもの・b50642)の生み出した霧に追いかけられるように怯んだ妖獣に向けて駆け。
「左端から二番目落ちそう!」
 一撃を加えつつ、次の標的となるべき妖獣の指示を仲間達に伝える。
「うにゅ、行くよ」
 妖獣達にとって想定外の方向から巨大な植物の槍が降ってきたのは、堤防の影から命が現れ奇襲を開始したからなのだが。
「さぁお掃除開始です」
 柚流が戦場に飛び込んだのもこの瞬間。布陣せず全員で奇襲すると言う手もあったが、どの程度の距離まで来たところでとか、どの面をと言う具体性を欠いていた為、齟齬を調整した結果、部分奇襲という形に落ち着いたのだ。具現化した炎を纏う一撃が消耗していたカタツムリ妖獣に叩き込まれ。思わぬ二人分の奇襲によって妖獣の数は再び減じることとなる。
「お願い咲花、あの子を足止めして!」
 涼花の声に応えるように妖獣戦車の身体ににょきっと生えたキノコが敵の主戦力を抑え、まるで檻の様に広がり降りてくる蜘蛛糸の網が覆い被さった妖獣達を縛め守りの加護を剥ぎ取って行く。敵の数はさほど減っては居なかったが、妖獣達は弱点を突かれ、戦いは能力者達優位のまま進んでいた。

●再起するもの
「皆様、好機にございます」
  身体を独楽の様に回転させ、妖獣達を切り刻んだ直に続き、両腕の赤手を操りつつ、白虚は次のカタツムリ妖獣に取りかかった。縛められた味方が邪魔で能力者に反撃できず、迂回に回る妖獣達が陣形を崩し、敵陣は無秩序に左右へと伸び広がっている。
「無茶、しないようにですよ……」
「まだまだ行くよ」
 紫衣が凍夜へと白燐奏甲を施し、動きを縛められた妖獣戦車へと涼花はマジカルロッドを向けて言った。
「戦車が」
 妖獣達は主力を封じられ、このまま一方的な戦いになるかと思われたがそうはいかないらしい。仲間の声を耳にして視線を向けた能力者達が見たのは、キノコの縛めを自力で破った妖獣戦車の姿と。
「結城先輩!」
 律儀にリクエストを覚え続けていた戦車の砲火だった。しかも、タイミングの悪いことに白燐奏甲を施した紫衣はまだ凍夜の側を離れていない。
「やったわね」
 砲撃の着弾点が爆ぜるのを目の端に捉えつつりのあは妖獣戦車に斬りかかる。丁度籠姫の撃ち出した『雷の魔弾』に焼けこげた妖獣が崩れ落ち、斬り込む隙間が生まれた所だった。
「近接戦はあたしの土俵なのです」
 闇のオーラを帯びた一太刀はたしかに妖獣戦車の身体を傷つけた。
「相手が有機物だろうが無機物だろうが無茶だと言われようが一歩も引く気は……」
 そして、動きを縛められていなかった妖獣達が自陣に斬り込んできた能力者へと殺到する。
「紗夜子さん」
 稀の声に紗夜子は言わんとすべき事を察した。土蜘蛛の檻の反動を振りほどき、撃ち出した暴走黒燐弾を吸血蝙蝠の群れが包み込みながら広がって行く。密集した妖獣達は範囲攻撃の良い的だったのだ。幾体かには相性故に黒燐蟲達は甲高い音を立てて弾かれたが、吸血蝙蝠相手ではそうもいかない。
「うにゅ、これもあげるよ」
 だめ押しとばかりに落ちかかる森王の槍が連続する範囲攻撃に消耗した妖獣達の戦力をごっそりと削り取る。
「風よ!」
 巻き起こった風に技の反動を解かれ、柚流は赤眼の夜鴉・弐式で斬りつける。
(「この手ごたえ、気魄型のようですね」)
 甲高い音を立て弾かれた一撃と、仲間達の攻撃に対する反応、双方を考慮すればおそらくは。そして、太一郎の飛斬帽があっさり命中するところから見て、弱点は。
「……皆さんを傷つけないでください」
「長旅ご苦労様ですがここが終着です」
 紫衣が口ずさむ癒しの唄に力を受けつつ、りのあは身体を丸めて飛翔し妖獣戦車へと体当たりをしかける。
「ステキな魔法をプレゼント、だよ」
 柚流の推測通り、ローリングバッシュには反応できても、涼花の撃ち出した魔弾に戦車は反応できなかった。巨大な体躯に穿たれた穴からまるで燃料が漏れるかのように流れ出した炎はそのまま妖獣戦車の身体を包んで行く。
「余興はここまでですね。一気に行きますよ!」
 残るカタツムリ妖獣の掃討と妖獣戦車の撃破、光のオーラを身に纏った凍夜は二重の意味で言い放ち、ライフルを再び妖獣達に向けた。
「お手伝い、致しますわ」
 撃ち出された魔弾が一つでないのは、籠姫の魔弾がほぼ同時に放たれたから。動けない味方を避ける為迂回して、能力者達の攻撃射程外に居たカタツムリ妖獣からすれば、これが初めてのダメージだった。もっとも、戦況を見るにこの妖獣に残された時間もそう長くはないだろう。
「今、行きます! ガンバって!」
 稀が最後の一体と対峙しつつ味方に声をかけたのは、実際この二十秒ほど後のこと。
「これで最後です、直」
 回転する飛斬帽に殻ごと身体を両断された妖獣は、太一郎から指示を受けた蜘蛛童・爆の攻撃を受けるまでもなく崩れ落ち、消滅して行く。残されたのは妖獣戦車のみ。
「焼却処分にしてあげますよ」
「さぁ、海にお還りなさいっ!」
 叩き込まれた紅蓮撃にひしゃげる身体へと数発の魔弾が撃ち込まれ、たまらず妖獣戦車は傷を癒すが癒えた傷よりも増える傷の方が多い。もはや戦いの趨勢は決していた。
(「『原初ごとき』が何を企もうとも、僕ら銀誓館は……」)
 負けはしない。
「終焉にございます」
 燃えあがりつつ蹌踉めいた巨体を白虚が生やした蜘蛛の足に貫かれ、横倒しになった妖獣戦車はその動きを止め輪郭をぼやけさせながら消滅して行く。

●勝利を飾って
「皆さん、お怪我はありませんか?」
 巡らせた視線で砲撃やら何やらで路面に空いた穴を目に留めつつも、凍夜は振り返って仲間に問うたが、大きな怪我をしたという報告は特になく。
「もう動けないのですよぅ」
 約一名、死地にみを投じかけたりのあがオレンジに染まったアスファルトの上に大の字で転っているぐらいだろうか。疲労困憊、と言うことであるらしい。「こんどこそ、終わったんだよね……?」
「そうですね。ようやく、戦争が終わったきがします」
 ともあれ、この場での戦いは終わったのだ。
「みんな、お疲れ様、だよ」
 太一郎の相づちに涼花は、よかったと安堵の息をついてから労いの言葉を仲間達にかけた。
「まったく、厄介なものを残していってくれたものですね」
 柚流は手で身に纏った詠唱兵器の埃を払い落としつつ呟いた。イグニッションを解けば払う必要もないが、ツッコむのも無粋かもしれない。
(「アレと同類には思われたくないけど」)
 稀は一つため息をついて、首を回らせる。道の先、日が沈みはじめたことで明かりがつき始めた辺りが市街地なのだろうか。
「うーみゅ、この前の戦いは勝てたけど、敵の首魁は逃がしたし。これから大変なことが起きそうな予感」
 命は一人夕日を眺めつつ呟いて、この迎撃戦は幕を閉じる。市街地への被害を未然に防いだ成功という形で。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/01/05
得票数:カッコいい20  知的1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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