キミのために、キミをくう


<オープニング>


 働いて働いて働きづめて。
 今にも倒れるんじゃないかと。
 それでもキミのために、キミのために。
「おとうさん、かなしいの? しょんぼりなの?」
 ベッドの上からキミが言う。窓の向こうでぽつぽつと振る雨を見ていたら、キミは。
「また、おまじないしてあげようか。元気になるかも、しれないから」
 さっきかけた布団から腕を出したキミはいつもの絆創膏をはずした。
 小さな指に血がにじむ。
 あぁ、また元気になれそうだ。
 明日もまた、キミのために。
 元気が出たと言ったら、キミは涙を浮かべて微笑んだ……。

「そろそろいいかな、始めるよ」
 松本・陽生(運命予報士・bn0068)はゆっくりと教室を見渡した。
「今回の依頼はリビングデッドの退治なんだけど……」
 陽生は言葉を切ってわしわしと頭をかいた。
「いわゆる父子家庭の父親がリビングデッドになっているんだ。過労死というのかな、無理がたたって死んでしまったはずなのに、娘のことが心残りで蘇ってしまった……」
 顔色の悪い三十半ばの男で、どうやら娘の血を「おまじない」と称して与えられているようだ。彼はすでに親しくしていた知人を数人殺害していて、近頃では娘のおまじないも明らかな「食事」だと認識しつつある。
 何のために、蘇ったのか、忘れかけているのだ。
「間違いなく彼は、近い将来悲劇を起こすことになる。その前に止めてほしいんだ」

 親子はとある小さなアパートに住んでいる。今は娘の将来のためにと貯蓄していたお金で生活をたもっているようだけれど、それが尽きるのが先か、娘の将来が失われるのが先かといったところ。
「昼間仕事に出られなくなった父親を幼稚園にも行かずに手助けようとしてるしっかりものの娘さんなんだけど……」
 常に一緒にいるのが問題だ。しかも、誰か訪ねてきたら「お父さんはいません」と答えるように言われていて、それをしっかり守っている。
「戦うためにはアパートの裏にある空き地に誘い出さないといけないよ。リビングデッド自体はうまそうな相手がいれば出てきて食べるつもりはあるのだけど、接触するための障害が娘さんということになるね」
 もちろん、夜中に押し入って強盗風に片付けてもいいけれど、娘は隣のベッドに寝ているからまったく関わらないではいられないだろう。
「どのタイミングを選んでも娘さんを無視しておけないと思う。あんまり手荒なまねはお勧めしないけど、彼女の方は必死だからね」
 さらに、リビングデッドとはいえ、彼の戦闘力はあなどっていいものではない。目だった特殊攻撃はしないものの、鋭い爪での一撃が強力で、すきあらば肉をむしりとる。空き地には彼に殺された被害者のリビングデッドもいる。彼ほどの強さはもちろんないが、倒すべき相手だ。
「倒すだけなら苦戦はしないかもしれないね、だけど」
 陽生は少し目をふせた。
「お父さんがお疲れなのは、怖いジョウシって人がいじめるからだと、信じてる」
 ジョウシが何なのかはよくわかってないから、怖い人はジョウシだと思うだろう。父親を守ろうとする娘をどうするか、そこが鍵だ。
「娘さんは来年から小学生なんだよ。なのにまだランドセルもないんだ……」
 助けてあげて。彼女の将来のために。
 しばしの沈黙。陽生はふぅとため息をついた。
「誰かのために何かしてあげられるのは、お互い生きていればこそ、なんだよね。彼が存在して誰かが幸せになる選択はない、わかるよね?」
 倒すことだけが救いなんだと、陽生は言った。

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参加者
帆波・聖(曼珠沙華の泪・b00633)
渕埼・寅靖(人虎・b20320)
南・瓜(柑香のベニート・b24461)
九堂・今日介(炎の後継・b24557)
カトリーヌ・カール(ラコルネルージュ・b30797)
犬塚・沙雪(通りすがりの正義の味方・b38003)
吹雪・瑞希(いつでもどこでも迷子です・b53324)
雨辻・慧夜(紅十字の宵鏡・b54839)



<リプレイ>

●贈り物
 たった二人の父娘の間を、永遠に引き裂いてしまわなければならない。その事実は仲間たちに少なからず切なさや葛藤を与えたが、彼らの行く道は決まっていた。そうするしか、ないのだから。
 ゴーストを相手にする以上、こういう仕事が重なることもあるだろう。吹雪・瑞希(いつでもどこでも迷子です・b53324)は、何度でもめぐってくる自分たちの使命に少々心を凹ませていた。
 作戦を始める前の準備に九堂・今日介(炎の後継・b24557)と連れ立ってデパートへやってきた。残される小さな女の子のために、せめて「父からの贈り物」を。真実を知るわけにいかない少女が、前に進むための「形ある現実」を残してやりたい。
 彼らが向かったのはおもちゃ屋と鞄屋。赤がいいかな、ピンクがいいかなと迷う瑞希の姿は、店員は自分のランドセルを選ぶ少女に見えただろう。小さなクマのぬいぐるみを手渡して、ランドセルの中に入れて包装してくださいと頼んだ今日介は、微笑ましいお兄さんに見えただろう。
 これはお父さんからの贈り物。そして、彼らからの、せめてもの償い、かもしれない……。

●接触
 15時。アパートの前は静かだった。近所の住民も仕事やらお買い物やらで家を開けていることも多いようだ。今日介からランドセルの箱を受け取った渕埼・寅靖(人虎・b20320)は、それらしい帽子や作業着などで宅配業者を装っている。彼の側にいるのは猫変身したカトリーヌ・カール(ラコルネルージュ・b30797)だ。彼女だけは、少し皆とは違った気持ちでいた。ゴーストは滅する。それが全てであろうと。だが、調和を乱すことはしない。ただ静かに、寅靖の指示に従うつもりだ。
 犬塚・沙雪(通りすがりの正義の味方・b38003)と雨辻・慧夜(紅十字の宵鏡・b54839)は闇纏いで姿を消し、瑞希や南・瓜(柑香のベニート・b24461)はなるべく人目につかないように身を隠す。準備が整えば、寅靖と帆波・聖(曼珠沙華の泪・b00633)はゆっくりと、父娘のいる部屋の扉へと近づいていった。部屋に間違いのないことを確認した聖はイグニッションし、作戦の準備は整った。
 しんとしたドアの向こうで、二人がどうしているかなんて想像はつかないが、もしこの時間が少女にとって幸せであったとしても、それは今日ここで終わるのだ。
 寅靖の指がチャイムを押す。ピンポンと少し古びた音が鳴った。反応がないから、もう一度押す。やがて、かすかな足音が近づいてきた。
「誰ですか? お父さんはいません」
 幼い女の子の声だ。決められた言葉を彼女は口にする。それもわかっていたことだ。宅配便ですと答え、寅靖は優しい口調で問いかけた。
「荷物を置いていくから開けてくれる?」
 しばしの沈黙、足音は遠ざかり、再び戻ってくる。
 カチャリと鍵のあく音がした。ちょっとの隙間を開けて、覗いた瞳が寅靖を見上げる。そして、そっとドアを開いた。
「これがハンコです」
 そう言って寅靖に握った印鑑を差し出す。女の子はずいぶん痩せているように見えた。父親の代わりに生活を支えるなんて、こんな小さな子が完璧にできることじゃないのだろう。それにきっと、あの「おまじない」も原因の一つだ。わずかに言葉を失った寅靖に、女の子は歩み寄った。
 少女がドアから一歩、二歩、踏み出した姿が聖の目にも見えた。迷う暇はない、彼女の手から強烈な眠りを誘う符が投げられた。
 倒れる前に寅靖に受け止められた少女はそのまま聖の腕に預けられた。隠れていた今日介が駆け寄り、寅靖と共に玄関に足を踏み入れる。聖は少女を抱えたまま、アパートの影へと隠れた。

 昼間だというのに、窓のカーテンは全てしまっているようで、アパートの中は薄暗かった。こんな場所で少女は一人、何をして遊んでいたのだろう。明るい幼稚園で友達と遊びたいとは思わなかったろうか。
 寅靖と今日介は小さなキッチンを抜けて、一番奥の部屋に向かった。流し台前にある踏み台と一つだけぽつんと置いてあった小さな茶碗が寂しさをあおる。そして、さっき少女が開けただろう半開きの戸を引いた。
「うう……」
 うめき声のする方をむけば、そこにはうずくまった男がいた。二人の気配を察したのか、やがてゆっくりと顔をあげる。今日介は自分の母親を思い出し、ぐっと眉を寄せた。全ての原因は、こんな姿になってしまうほどの娘への愛情だったはずだ。
「誰だ?! どうして入った?」
 男は驚いて声を上げたが、すぐに表情をなくした。徐々に低下して行く知能の中、娘を食べてしまえば食料がなくなることを意味し、そうなれば自分は生きていられないのだと、誰よりうまそうな娘をどうして食わずにいるかを考えていたところだった。ちょうどいいところに、渇きを潤す誰かが現れたではないか、こいつらを、食えばいいのか。
 黙ってしまった男に、寅靖もまた、事故で失った両親を重ねながら、精一杯の愛情を示した。彼が自分の父なのだというつもりで、優しく呼びかける。
「迎えに来ましたよ。お腹が空いたでしょう」
 あぁ、こいつは、うまそうだ……。
 姿の見えない娘の事をすっかり忘れた父親は、うまそうなやつらが言うままに部屋を出た。外に出るのも、食事のためならしかたない。
 玄関を出たところで、寅靖と今日介はちらりと視線を交わし、愛情を込めた口調が最期の始まりの合図を発した。
「さぁ……いきましょう」

●静寂
 父親を連れて仲間たちが裏の空き地へと向かった後、聖は眠った娘を抱えて部屋へと戻った。しんとした薄暗い部屋だ。ここなら絶対に戦いに巻き込まれることはないし、目覚めても人を食おうとする父の姿を見る事もない。一番安全な場所だと思う。
 少女をベッドに寝かせて、ふと気付く、この子の布団すら太陽の匂いがしないのだ。
 聖は黙って少女の寝顔を見つめた。目が覚めそうならもう一度眠らせる。そのために一人残ったのだが、こんな場所で眠る少女を見ていたら、どんな気持ちでいたんだろうと思わずにいられなかった。
 お父さんが頑張っていたのを近くで見て、お父さんが変わってしまっても信じたくなくて、おまじないでごまかして……。
 今の彼にはこの子の気持ちは届かないかもしれないけれど、本当の気持ちは娘が健やかに幸せに育ってくれることだったはずなのだ。
「ごめんなさい……」
  目覚めたとき、お父さんはもういないけど、どうか大好きだったお父さんとの楽しい思い出を忘れないで……。
 たった一言呟いて、寂しすぎる部屋の中で聖は仲間たちの無事もまた、祈っていた。

●執念
 アパートの隣を抜けて、裏の空き地で足を止めると、父親はなんの言葉もなく本性を現した。
 明らかに先ほどまでとは違う不自然に盛り上がった上半身と視線の定まらないような崩れた表情で、背を向けていた寅靖に突然襲いかかる。
 そうかと思えば、空き地のあちこちにある草むらから、ゆらゆらと朽ちかけたリビングデッドたちが姿をみせた。一人、二人……全てが出尽くしたとき、空き地には父親意外に六体のリビングデッドがいた。四体は人であり、二体は犬。空き地に先回りしていた仲間たちもそれには少し驚きの表情を浮かべる。
 娘を食わずに生き延びる執念は、彼にこれほどまでのことをさせたのだ。おそらく父親以外は大した脅威ではないだろうが、だとしても彼の心は思ったよりも朽ちていたということなのだ。
 しかし驚いている間もそうない。寅靖を狙う父を、沙雪と今日介が囲む。離れた位置からは瓜も攻撃の隙を狙っていた。瓜の真スカルロード、ベニートは主人から離れ、犬の方へ向かう。
 もう一匹の犬には瑞希が駆け寄り、雪だるまをまとった。慧夜は人型を狙い素早く駆け寄っていく。こうして皆がばらばらになるのは、できるだけ父親に「傷」を残さないための配慮である。
「本当に手のかかること。手加減せずに滅してしまえばよろしいのに」
 カトリーヌはそう呟きつつも、父親を避け、慧夜とは別の人型リビングデッドの前に立ちはだかる。配慮はそれだけではない、人気がないとはいえ夜中の戦闘ではないのを考慮し、皆できるだけ声を潜め、大きな音をたてない努力もするつもりなのだ。
 けれど、そんなことは壊れた父親には関係ない。彼はひたすら寅靖を狙い、簡単にはいかないとわかれば、じれったいのかうなるように言った。
「はらがへったんだぁ、食わセロぁ!」
 振り下ろされる拳は大きなハンマーと変わりない威力を発し、強烈な一撃を繰り出す。
 それでも、仲間たちは皆声高く彼に何かを訴えたりはしない。きっともう、彼の心を救うには手遅れだとわかっていたからだ。
 慧夜は数の多いリビングデッドをひきつけるように、攻撃の手を止めない。闇を纏う長剣が次々とひらめき、三体の敵をひきつけた。空き地の反対側ではベニートが三体の攻撃を受ける事になる。弱い敵とはいえ囲まれてしまった二人には瑞希の舞が心強く。カトリーヌの放つ見えない波動は確実に敵の体力を削っていく。
 頼りない敵の攻撃を避けてはガードし、切り伏せる。慧夜とベニートの「盾」は狙い通りに、父親を相手にする仲間を守り、六体のリビングデッドたちは確実に数を減らしていった。
 そして、父親を相手にする寅靖は戦いの間も彼への愛情を示し、的になることを引きうけていた。自分の父のように思いながら、自分を食おうとする相手を倒すのだ。強烈な一撃を避けきれぬこともある。それを助けるのは今日介の蹴撃だった。少しでも注意をそらせ、確実な一撃を与える。
「うぐぐ……じゃまお、するなぁ!」
 今度は怒りで今日介に腕を伸ばす。仲間はまだ、側にいた。
「……その未練、断ち切ってやる」
 もはやその未練が娘なのか生に対してなのかはわからないが、沙雪は呟いて、彼の手にしていた武器はその姿をばらばらに散らし、敵の腹を殴りつける。それと同時に瓜が放った呪いの符が打ち込まれ、父親の口からはついに言葉にならない咆哮がもれた。
 慧夜は二体目の敵を切り伏せ、少しだけ顔をあげた。瑞希の舞によって、沙雪の武器が元の姿を取り戻す。ベニートの回りにいた敵も全て倒れた。瓜を守るために戻っていくベニート。カトリーヌは攻撃の先を瑞希の前の犬にむけ、取り巻きは全て倒れた。吼える父親。
 こちらが声を抑えても、あの敵を倒さねば意味がない。慧夜は剣を構えて父親へと向き直った。
 全員の全力が一度に敵を打つ。それが平和への唯一の道。
 動かなくなった父親はとうとう一度も、娘の名を呼ぶ事はなかった。

●目覚め
 これで全てが終わったわけではない。瑞希は部屋で待つ聖に連絡し、眠った娘を連れてくるように頼んだ。
 場所は空き地の中ではなく、すぐ近くの路上である。娘が来るまでに仲間たちは父親の遺体を路上へと移動させ、まるで交通事故にでもあったかのように見せかける偽装をしていた。
 そんな中でもカトリーヌは積極的にその作業に関わろうとはしなかった。近くを一般人が通りかからないか気にかけながら、何故こんな手の込んだことをするのかと考える。彼ら父娘の尊厳を守るためには、一秒でも早く父親を黄泉路に戻すべきだと、重いながら彼女はずっと黙って仲間たちに従ってきた。
(「娘の心? 大きく傷つくことでございましょうね。でも、それが生きるということでございましょう?」)
 彼女の気持ちは声にならなかったが、決して間違ったものでもない。文句も反対もせずに強力した理由。何故かなんて聞かれたら、こう答えるしかない。気まぐれだと。

 準備が整い、聖の連れてきた娘は父の傍らに寝かされた。父が娘を事故の衝撃から守ったと思わせるためだ。
 ずっと彼女を見守っていた聖は寅靖、瑞希と共に、その場から去り、影から見守ることにしたようだ。またそうした偽装の様子を見ていた沙雪は、二人の絆を奪ったことをかみ締めて、呟いた。
「親を亡くし、この子の今後は……施設か親戚なのかもしれない。幸せに……強く生きて欲しいな……」
 少女の行く末を、自分たちが知る事はないだろうが、そうであって欲しいと願う気持ちは、多かれ少なかれ皆感じていただろう。

 準備が整い、やがて少女は目を覚ます。
「大丈夫か?」
 最初に慧夜が声をかけたが、娘はまだぼんやりとして、ゆっくり瞬きした。慧夜はそれ以上のフォローは苦手だからと、ゆっくり身を引く。原因が何であろうと父が死んだことは確かで、幼い彼女には酷だとは思う。ここに用意した「現実」を受け止めて、どうにか前を向いてくれるようにと。
 代わりに今日介が話しかけた。
「大きな音がしたと思ったら、君とお父さんが倒れていたんだ。お父さんが身を挺して守ってくれたみたいだ……」
 事故があったことを説明する今日介の声を聞いて、意識をはっきりさせた娘は、変わり果てた父の姿に気付く。
 泣くのではないかと、瓜は思った。泣けばいいと思う。悲しみを我慢する理由はなく、こんな子供が声を殺して泣く必要もない。
 そう思ったとおり、娘は泣いた。
「おとうさああああんん、うわああああん、おきてよぉぅ!」
 ただ泣くというよりは、悲痛な呼び声。迷子よりずっと寂しい、ひとりぼっちの世界を、彼女は理解していた。きっと、父が話したことがあったんだろう。自分がいなくなったらお前が一人になってしまうから、お父さんは頑張るんだと。
 瓜はハンカチで娘の涙をぬぐい、ぎゅっと抱きしめた。泣き続ける少女の声が胸に響いて、目頭が熱くなる。
 少しだけ、泣き声が小さくなると、今日介は用意していたランドセルの箱を差し出した。
「これが一緒に落ちていた。プレゼントみたいだけど、お父さんからかな?」
 本当ならもっと声をかけてあげたいけれど、それ以上言葉は見つからない。
 娘は抱えた箱に聖の張りつけたメッセージカードを見つけた。

 ――おめでとう。お父さんより。

 短い言葉の脇にはブルーレースフラワーのイラストがあった。花言葉は「無言の愛」。少女はいつか大人になって、その意味を知るだろうか。
 このままいつまでも一緒にいてあげることはできない。すぐに他の大人がきてくれるからと話して、今日介は立ち上がった。どうか、幸せになってほしいと願いながら。

 影で見ていた瑞希もこれが最後の仕事として、警察に事故だと通報する。そうなってはもう長くはいられない。仲間たちも各々にそっと現場を立ち去っていき、少女はまた一人、動かない父の傍らでプレゼントを抱いたまま泣いていた。
 考えないようにしていたのに、全てが終わって、少女に背を向けたら、悲しみがこみ上げて、瑞希は寅靖の背に抱きついて泣いた。寅靖は黙って瑞希の頭を撫でる。
 いつまでもいつまでも、泣き続ける娘の声を聞きながら、彼らは二度と、振り返ることはなかった。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/02/07
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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