≪最果ての蒼≫夕闇のバラ園


<オープニング>


「なかなかに、まずい状況ですね」
 久瀬・透輝(蒼煌の導き手・b00306)は呟きながら、周りを確認する。
 夕暮れの空を反射させながら、バラ園は怪しく輝いていた。
「……お花綺麗でしょ」
 ふわふわなドレスを着た可愛らしい少女が、沢山花が詰まった花籠をもっている。
 人気の絶えて久しいバラ園には不釣合いな、光景だった。
 彼女自身は美しく飾り付けられていたが、人の手が入っていないバラは自由奔放に育ちきり、観賞用とはとても言えない。
 地縛霊である彼女につられ、ぞろぞろと何か嫌なものが集まってくる。
「我輩、こういったお花を見る趣味はないつもりでありますが……」
「妾もさすがに、これは美しいとは言えんのぅ」
 一条・凛(きのこ軍曹・b30800)と蒼流院・雨音(嵐を祓う蒼き雨・b01718)が視線を向ける先にあるのはバラだった。
 いや、正確にはバラと呼ぶには少々歪すぎる。
 巨大なロックンロールフラワーにも似たそれは、植物にも見えるがくねくねと自力で動いている時点でその可能性は否定された。
「ボクたちってけっこうおいこまれてたりするよね」
「そうだな。戦って倒すしかないってわけだ」
 竜胆・しゅろ(両手いっぱいの花束を・b02243)と柳生・海斗(高校生魔剣士・b03450)の手には慣れ親しんだ武器が握られていた。
 どのような変化をとげてそうなったのか、……妖獣と呼ばれる敵に向け、能力者である彼らは武器を構える。
「あれも敵だよね。うわー、バラ園の出口ふさがれちゃってるね」
「……戦って、突破する」
 フゲ・ジーニ(永遠に続く幸せの迷宮回廊・b07584)と狗煉・骸(虚の棺・b49005)の目の前でふらふらと飛び回る一匹の蝶。
 歪に巨大化したそれも妖獣であった。可愛らしくもあったが、よく見ればこちらに襲い掛からんとする殺気が滲んでいる。
「……では、いきます!」
 常夜・雨兎(硝子夜兎・b05065)があげた声に仲間達は頷きながら、眼前の敵に向かっていく。
 逃げることは難しく、敵を倒す以外に生き延びる方法はない。もっとも、こういった異端の存在を相手にすることこそが、彼らの使命なのだった。
 周りを森に囲まれた、寂れたバラ園の広場にて、人知れずひっそりと戦いが始まった。

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参加者
久瀬・透輝(蒼煌の導き手・b00306)
蒼流院・雨音(嵐を祓う蒼き雨・b01718)
竜胆・しゅろ(両手いっぱいの花束を・b02243)
柳生・海斗(高校生魔剣士・b03450)
常夜・雨兎(硝子夜兎・b05065)
フゲ・ジーニ(永遠に続く幸せの迷宮回廊・b07584)
一条・凛(きのこ軍曹・b30800)
狗煉・骸(虚の棺・b49005)



<リプレイ>

●三体の敵
「荒れてしまったバラ園というのは寂しいものですね」
 緊張した面持ちで目の前を見上げながら、久瀬・透輝(蒼煌の導き手・b00306)は呟いた。
 眼前に並ぶ敵に向かい、構えた武器は下ろさずに周りの仲間達にアイコンタクトを送くる。
「バラさん達とは違って、地縛霊さんや妖獣さんを、放置しておく訳には、いきません……」
 夕闇の広がり始めた空の下、常夜・雨兎(硝子夜兎・b05065)が触れるのは一輪のバラだった。手入れこそされていないが、自由に咲き乱れたバラ達は元気なようにも見える。
 そんなバラ達に囲まれた閉鎖的なバラ園の中、三体の異様な存在が出口をふさぐように立ち並んでいた。
 一体は巨大なバラのような妖獣、その傍らに並び立つのがこれまた巨大な蝶のような妖獣、それら二体の後方には綺麗なドレスで着飾った地縛霊の少女が立っている。
「ふむ、こうなってしまっては頑張るしかないのぅ。さぁ、護りは妾に任せるが良いぞ、思う存分戦うがよかろう」
 蒼流院・雨音(嵐を祓う蒼き雨・b01718)はサイコフィールドで仲間達を援護しながら、ゆっくりと呼吸を整える。
「むー。ボクてきにはすきにさいてるバラさんはすきだけどっ。さすがにうねうねするのはきらいーっ!」
 竜胆・しゅろ(両手いっぱいの花束を・b02243)が睨みつける先にはうねうねと蠢くバラ妖獣の姿があった。そして、その憤慨をぶつけるように敵に向かい水刃手裏剣を放つ。
「花を愛でるのは、そんなに嫌いでもないが……この薔薇は鑑賞する気にならない、な」
 しゅろの言葉に同意するように、狗煉・骸(虚の棺・b49005)は蝶妖獣に近づき牽制を行いながら呟いた。
「蝶々さんっぽいのもこれだけ大きいと可愛くない……」
 昆虫的な羽の動きで宙に浮く歪な形をしたそれは、蝶と言い張るにはあまりに大きい。フゲ・ジーニ(永遠に続く幸せの迷宮回廊・b07584)はそんな敵の動きに対応しながら、より有利な射撃位置を確保するために後方へと移動する。
「一体ずつ集中して、だな。まずはそのバラ妖獣からだ」
 柳生・海斗(高校生魔剣士・b03450)は透輝に合図を送り、互いに連携をとりながらバラ妖獣へと斬りかかる。
 あるものは蝶妖獣を足止めに、あるものは前衛から直接攻撃を、あるものは後方から援護と攻撃を、陣形を変化させ徐々に戦いの姿を形成させていく。
「何やらピンチな状況ではありますが、我輩達ならきっと乗り切れるであります。絶対に全員で無事に帰るでありますよ!」 
 一条・凛(きのこ軍曹・b30800)の激励に力をもらいながら、仲間達の戦いが人知れず唐突に始まったのだった。

●巨大なバラは……
「さぁ、皆さんご一緒にレッツダンス! であります」
 凛は元気いっぱいに踊りながら、敵の意識を自分に向けさせる。そして隙の生じた敵が仲間達の手によって攻撃されていく。
「隙あり! ナイトメア、蹴散らすのじゃ!」
 凛の合図をうけ、雨音はナイトメアランページで直線的な攻撃を放った。少女の地縛霊がより後方に位置し、その全面に二体の妖獣がいるという陣形だったがために、前衛の壁を突破し敵の集団へとダメージが及ぶ。
「先手必勝といきたいですね。やっかいな敵は早く殲滅しないと……」
 ラジカルフォーミュラで能力を高めながら、透輝は再びバラ妖獣への攻撃の機会をうかがっていた。
 やっかいと表された通り、バラ妖獣はその巨体故にかいくつもの攻撃になんとか耐え時折挑発することで怒りや足止めのバットステータスを振りまいていた。
 さらに後方からの地縛霊の攻撃にも注意を向けなければならない状況は中々に厳しい。まずは三体という敵の数を減らすことが先決だった。
「後が閊えてるんでな。遠慮は無しだ……」
 海斗が足止めを受けながらも放ったダークハンドはバラ妖獣を確かに弱らせていく。いくら巨大な身体と言えども倒せない敵など存在しない。
「もーっあっちいってよーっ」
 バラ妖獣と対峙していた仲間に近づきつつあった蝶妖獣に対して、しゅろは爆水掌を放つことで再び距離をあける。
「みなさん、もう少し……です。回復はまかせて、ください」
 三体を同時に相手するとなれば、敵からのダメージをすべて防ぐことは難しい。そうやって身を削りながら攻撃を繰り返した仲間達の傷を、雨兎は必死に癒していく。
「ありがと! 本当助かったー」
 フゲは感謝の言葉を述べながら、息を吐き出し一呼吸おいた。しかし、攻撃の手は休められない。相棒のケルベロスオメガである蘇に指示を与えながら敵を射程にとらえるため動き続ける。
「ふう、足止めというのも中々大変だ」
 骸は眼前の敵にクレセントファングを叩き込みながら、仲間達がバラ妖獣を倒し、増援にきてくれるのを待つために蝶妖獣を引きつけ続ける。 
 その傍らでは蘇が機敏な動きで宙に浮く妖獣に向け攻撃を放っていた。 

●集中攻撃
 集中攻撃の成果が現れたのは比較的すぐのことだった。
「バラ妖獣の方はなんとかなりましたね」
 雨兎が後方から声をあげる。能力者たちに囲まれ攻撃をなんども受けたバラ妖獣は巨体を横たえ、力尽きていた。
「回復は我輩にお任せくださいであります!」
 仲間のバットステータスをヘブンズパッションを用いて回復させながら、凛は衛生兵として戦場をかけ回っていく。そして彼女の功績もあり、調子を整えたものから次々に前線へと復帰していく。敵がまだ残っている以上休んでいる暇はないのだ。
「増援が来てくれたか……。これで一気に楽になるな」
 骸は内心安堵しながら、もう一度きつく武器を握り直す。今まで持ちこたえたいた分ダメージ量も中々に蓄積しているのだろう。
「蘇もよくやってくれたね。ご苦労様」
 骸と一緒に前衛として戦っていた蘇の横に駆け寄り、フゲは主人として優しくその頭をなでた。
「幾らなんでも、ここまで大きいと可愛くないです」
 透輝が蝶妖獣を牽制しながら、ミストファインダーで作り出したレンズに向かい攻撃を放つ。それに続くように仲間達の攻撃が次々と襲いかかる。
 前衛として激しくぶつかることになった二体の妖獣のうち、一体がいなくなったおかげで能力者達の攻勢が一気に激しくなっていく。
 その攻撃に耐えられるはずもなく、蝶妖獣は徐々に飛ぶ力を失い、地面に向かい急降下していく。 一体に集中した攻撃には、後ろで控える地縛霊の少女の回復も間に合わなかったのだろう。
「ふ……。美味しい所は譲るとするか……」
 海斗は息をつきながら、地面でよろよろと力なく羽をばたつかせていた蝶妖獣に最後の一撃を振り下ろし終えると、傍観するようにそっと距離をとった。
「さあ、あとはキミだけだよー!」
 しゅろが武器をかざした先、最後の一体となった地縛霊はじっとこちらを見つめていた。
 二体の妖獣の後ろから遠距離攻撃を繰り返していた彼女も、この状況となっては能力者の接近を許してしまう。
「今じゃ! ゆくぞ!」
 雨音が叫び、その声に応えるように仲間達が連携をとりながら、武器を振り上げ、眼前の敵に向かい振り下ろす。
 地縛霊も必死に抵抗するが、後方からの射撃攻撃を得意とする彼女には接近されてしまった今の状況は不利だと言えた。そして彼女は能力者達の攻撃に、綺麗なドレスを着たまま花籠の花を散らせながら力尽き、地面に倒れ込むのだった。

●寂れたバラ園
「ふぅー、やはりこういった戦闘は疲れるのぅ」
 雨音は体を伸ばしながら、疲れたという風にゆっくりと息を吐く。突然始まった戦闘がついに終わり、緊張の糸が途切れたのだろう。
「ふぃー、いっぱい動いたからお腹が減ったでありますなぁ」
 その場にへたりこみながら凛はお腹を押さえていた。そんな様子に他の皆も戦いが終わった達成感を噛み締めながらバラ園に腰を下ろし心を落ち着かせる。そして開放的な気分が広がったのか会話に花が咲き始める。
「バラさんたちちっちゃったりしてない? だいじょぶー?」
 しゅろは戦闘の立ち回りの中で荒れてしまったバラ達の様子を気にして、なでるように手を伸ばした。夕闇もかなり深くなってきたバラ園の中、徐々に明かりを増してきた月が能力者達の手元を照らす。バラ園は寂れていて園を形作っていた外壁しか確認することはできなかったがそのどこかしこにもバラだけはしっかりと根付いていた。
「ちょっとした好奇心で覗いたバラ園でしたが、まさか地縛霊に遭遇するとは思いませんでしたね。いつの日かバラが綺麗に咲き誇るなら、今度はお弁当でも持って遊びに来たいものですね」
 透輝の呟きに、仲間達が頷く。まさか突然こんなことになるとは誰も想像していなかっただろう。
「そうだな。こういう場所ではみんなとゆっくりしたいもんだぜ」
 生憎と今回は予想外の敵と遭遇してしまい、慌ただしい時間を過ごすことになってしまったと、海斗は自嘲気味に呟くのだった。
「野薔薇の花言葉は優しい心なんだって。折角の薔薇園だし又綺麗になれば良いね」
 フゲは優しく微笑みながらバラ達を見回した。
「しかし、ここのバラは奔放に育っているようだけれど……自然の姿と言う感じで、これはこれで良い気もする、な」
 骸の言う通り、バラ達は綺麗に整えられたとは言えない姿だったがどこか元気そうに花びらを揺れしていた。 
「そうですね。こういう姿もその分、野生的でワイルドな雰囲気で、また素敵、ですよ……」
 雨兎はうっとりとしたように頬を染め上げていた。
 仲間達はそんな姿に頬をゆるめながら、安堵の息をつくのだった。


マスター:坂本こうき 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/14
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