≪D-Force≫拳鬼は集いて武を競う


<オープニング>


 ――その山には、一つの噂話があった。
 曰く、武術の達人の一門が己の技を鍛えようと人里離れた山奥にこもり修行に明け暮れた地があった、と。

「おいおい、冗談だろ……」
 思わず昔の言葉遣いで、ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)がこぼした。
 踏み入った時は、雰囲気たっぷりの廃村だったはずだ。しかし、既に周囲の光景はすっかりと変わっていた。
 丁寧に石畳が敷き詰められた空間――それに渕埼・寅靖(人虎・b20320)が鋭く目を細める。
「こいつは……特殊空間か」
「噂話も馬鹿にならないね」
 その隣で九堂・今日介(炎の後継・b24557)が肩をすくめた。
 そんな二人に、犬神・香琴(適合者・b71476)が呟いた。
「どうやら、ここの主のおでましのようですよ?」
 その言葉に、全員がそちらへ視線を向ける。
 そこには三体の地縛霊が立っていた。
 一体は真紅のカンフー服に身を包む、筋骨隆々とした大男。
 一体は青いチャイナ服に身を包む、妖艶な美女。
 一体は緑のカンフー服に身を包む、少年とも少女とも見える小柄な子供。
 その三体の地縛霊はジャラ……、と胸の鎖を鳴らしながらも悠々と『D−Force』の面々と向かい合う。
「……やる気まんまんみたいですぅ」
「そのようですね」
 久遠寺・絢音(もう種族めちゃくちゃ・b32745)の言葉に、緊張した面持ちで片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)が頷く。
「能力者ならば、やる事はただ一つ、です」
「――そうだな」
 イグニッションカードを手に決意の表情で言うネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)に、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)が力強く頷いた。
「いくぞ、みんな――!」
『イグニッションッ!!』
 影郎の掛け声に続き、全員がイグニッションしていく。
 それに反応してか、三体の地縛霊がそれぞれ身構え――ここに、能力者と拳鬼の戦いが幕を開けた……!

マスターからのコメントを見る

参加者
渕埼・寅靖(人虎・b20320)
流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)
九堂・今日介(炎の後継・b24557)
ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)
ネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)
久遠寺・絢音(もう種族めちゃくちゃ・b32745)
片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)
犬神・香琴(適合者・b71476)



<リプレイ>


「親分と一緒に頑張っちゃうんですからね!!」
「ああ。覆面忍者ルチャ影参上……付き合ってもらうぜ」」
 久遠寺・絢音(もう種族めちゃくちゃ・b32745)の掛け声に答え、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・b23085)が赤の拳鬼の前に立ち、名乗りを上げる。
 それぞれがすぐさま自分のあるべき立ち位置へと阿吽の呼吸で移動していく。
「俺、魔弾術士だから格闘タイプじゃないしなー。拳で語り合うのは前の人たちに任せるとして……コンビネーションに関しては負けらんないよね!」
「もきゅ!」
「……えと、その……せ、精一杯、援護させてもらいます」
 後衛で自分達の配置に付きながら、ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)は自身の使役ゴーストである真モーラットピュアのモルモと共に身構え、おどおどしながらも片瀬・斎(白蓮仙弓・b35202)がコクリとうなずいた。
「極めるという事に、終わりはありません……。ですが……こんな姿になってまで、追い求めるのは……やはり間違って、いるのでしょうね……」
 三体の拳鬼の姿にネフティス・ヘリオポリス(熱雷の巨人と流砂の花嫁・b31266)は憂いの表情を浮かべ、使役ゴーストであるフランケンシュタインFWのセト大きく頼もしい背中が中衛に立つのを見送った。
「俺は一番弱い。だから、あんたの相手は俺だ」
 自分は足止めに徹して負けなければいい――青の拳鬼の前に立ちながらどこか弱さを込めながら気を引き締める九堂・今日介(炎の後継・b24557)に、鋭い叱責が飛んだ。
「気圧されるな今日介、相手の動きを見ろ!」
「は、はいっ!」
 息を飲み答える今日介に、渇を入れた渕埼・寅靖(人虎・b20320)は内からこみ上げる強き者と立ち会える嬉しさという武術家の性に薄い微笑を浮かべながら緑の拳鬼と向かい合い、名乗りを上げる。
「渕埼流古武術師範代・渕埼寅靖。――推して参る」
 ――それらのやり取りをもっとも後衛で自身の使役ゴーストであるケットシー・ガンナーの吠音と共に犬神・香琴(適合者・b71476)は真摯に見詰めていた。
 この戦いの中で多くを学ぼう――そう心に誓う香琴は、ボソリと呟いた。
「是か……否か」
 ――いくつもの想いを錯綜させながら、能力者と拳鬼による戦いの幕が上がった。


「……皆さん、行きましょう……!」
 戦いの口火を切るように、ネフティスがエンゲージリングをはめた左手を掲げた。その瞬間、セトの巨体を深紅のオーラで構成された鎧が包む――ゴーストアーマーだ。
 そのゴーストアーマーを受けたセトが、ガコンと胸部を開放すると無骨な輝きの砲門をさらけ出した。そして次の瞬間――ズドンッ! という三体の拳鬼を巻き込むようにファイナルキャノンを撃ち放った。
「……えと。しゅ、守護精霊の加護よ、ここに……!」
 斎の祈りに答え、トーテムスピリットによって仲間達が強化されていく。
「魔弾の射手よ!」
 その少し後ろで、ユエの眼前に光で描かれた魔法陣が描かれ自己強化する。
 その瞬間、三体の拳鬼が動いた。
「……っ!」
 影郎が息を飲んだ。赤の拳鬼の岩のような重量感を持つ体が、一足で間合いを詰めたのだ。腰溜めからの右の拳打――豪快でありながらも理にかなった動作から放たれた剛の拳が、影郎のガードをくぐり抜け胸を強打した。だが、その剛の拳もかろうじてバックステップとエアシューズの車輪の回転で威力を軽減する事には成功する。
「……ぐっ!」
 今日介が瞬く間に目の前に踏み込んできた青の拳鬼に、反応する。だが、妖艶な美女の細腕はさながら一本の槍のように突き出され、その手刀による鋭の拳は今日介の右の肩口へと突き刺さる。
「お……っ!」
 緑の拳鬼の一撃をさばこうとした寅靖の動きが一瞬止まった。虎爪――指の間接を曲げる独特の掌打は的確にさばこうとした寅靖の腕に絡みつくように放たれる。そこから繰り出される衝撃――柔の拳に、寅靖が膝を揺らす。
 三者三様の拳鬼の拳に、三人の前衛がさらされた。それに対し、小さく笑みを作りながら寅靖が動く。
「奇しくも同じ虎か……!」
 虎紋覚醒により自己回復と自己強化を行いながら寅靖が吐き捨てた。それに緑の拳鬼が、口の端を持ち上げる。
「行くぞっ……!」
 今日介が低い体勢で踏み込んだ。相手の膝まで沈み込みそこから跳ね上がる勢いを利用しての拳の一撃――グラインドアッパーを叩き込む。それを青の拳鬼は自ら宙に浮き胸の前で両腕をクロスさせ受け止め、威力を殺す。
「幻夢の障壁よ!」
 香琴のサイコフィールドが、仲間達を包んでいく。それにあわせ、吠音の銃弾が緑の拳鬼へと撃ち込まれていく。
「大丈夫!? 兄貴!」
「大丈夫、受身は取った」
 赤の鬼の剛の拳を受けた影郎が、絢音の声を受けながら立ち上がった。ジャッ! とエアシューズの車輪を鳴らしながら低く影郎が赤の拳鬼の間合いに飛び込んだ。それに対して赤の拳鬼は低く身構えて迎え撃とうとするが――影郎の体勢は、更に低い。
「長椅子の下をくぐるように!」
 影郎が赤の拳鬼の股下をくぐり抜けた。通り抜ける寸前、その足首を掴めばジャッ! とエアシューズで地面を強く蹴ると右足が弧を描き――オーバーヘッド気味にクレセントファングの爪先が赤の拳鬼の背中に突き刺さる。
「アヤカシさん、みんなを癒してね。おねがい♪」
 絢音の頭とお尻にピョコンと狐耳と尻尾が飛び出した。それと同時に、ピンクの小蜘蛛やらウサギやら小妖怪の幻影が溢れ出す。
「……はぅ。……あ、だめだめ。ええと、支援。そう、支援がんばらなきゃ」
 突如として現れて自分を癒してくれるピンクのウサギに斎は心奪われそうになりながらも気を引き締め直した――ただ、めろめろなのでそれも長続きはしないのだが。
「まずは、小手調べってとこだね……」
 後衛からその攻防を見ていたユエが小さく呟く。その口元に確かな笑みを浮かべながら、動く。
「魔法だって武術に負けないって見せてあげる!」
 ネフティスと共に動いたユエが、雷の魔弾を撃ち放った。


 ――両者共に一進一退の攻防が続いた。
 前衛の三人は、三体の拳鬼をその場に釘付けにする事に成功した。ユエやネフティス、香琴、セト、吠音などの中衛と後衛の攻撃役、斎と絢音、モルモなどの回復役、それぞれが自分の役目を果たす事によって拳鬼を追い込んでいく。
 だが、それぞれが他者回復も可能な三人の拳鬼は適切なタイミングで回復を挟み能力者達の攻勢を耐えしのぎ発勁などの遠距離攻撃で後衛を自己回復に持ち込み火力を削いでいく。
 その両者の均衡が崩したのは――ユエの雷の魔弾だった。
「撃ち抜け!」
 ドンッ! とユエの撃ち放った雷の魔弾に緑の拳鬼が動きを止めた。ギシリ、と動こうとするが、身動きはかなわない――そこへ、寅靖が踏み込んだ。
 ほぼ、触れ合うような距離――だが、紅蓮の業火に包まれた拳は爪先から始まる動きの連動を余す事無く威力へと還元し――緑の拳鬼の胸へと突き刺さる!
『……カッ……!』
 緑の拳鬼の小柄な体が、宙を舞った。寅靖は、確かに見る――魔炎に包まれ燃え尽きる寸前、緑の拳鬼の口が満足げに笑みを浮かべたのを。
 それを見た絢音が、青の拳鬼へと視線を向ける。その青いチャイナ服に押し込められたような相手の胸をじっと見て――ボソリと呟いた。
「……ぶっ倒す!!」
 その凄まじい殺気に反応してか、青の拳鬼が身構える。アヤカシの群れ――自分に襲い掛かるピンクの小蜘蛛に身構えた彼女に、真横からその声がかかった。
「――クレセントファング」
『……っ!』
 ピンクの小蜘蛛を払いながら、青の拳鬼がそちらへ振り返った。そこには、蹴りを放つ体勢の今日介がいた。
 青の拳鬼は一歩前に踏み出し、その蹴り足の膝を抑えようとした。蹴りの基点さえ抑えてしまえば威力のほとんどが殺される――しかし。
「俺の脚技のほうが、速い」
 一連の防御の動作が、間に合わない。今日介の蹴りが、振り抜かれる――その一撃に、青の拳鬼の体が宙を舞い、地面へと転がった。
 残るは――赤の拳鬼、ただ一体。
「……武術の心得は、ありませんが……セトだって、負けません……!」
 大きなダメージを負った影郎に代わり前衛に立っていたセトが、その巨大な拳を振り上げる。ガギンッ! と明らかに肉体ではなく金属がぶつかり合うような轟音が響き渡る。フランケンシュタインFWと赤の拳鬼、両方の巨体は同じくらいに大きい。その超重量級同士の殴り合いを見ながら、斎が祖霊降臨とモルモのペロペロ舐めるが影郎の傷を癒す。
「……えと、大丈夫でしょうか?」
「もきゅ!」
「ああ、助かった」
 おどおどと問い掛けてくる斎と得意げなモルモに、呼吸を整えつつ影郎が答えた。
「穢れよ……!」
「雷よ――っ!」
 ネフティスとユエが、呪われた漆黒の弾丸と雷の弾丸を撃ち放つ。それを赤の拳鬼は受け、膝を揺らすが倒れない!
『ォオッ!』
 裂帛の気合と共に剛の発勁が放たれる。何もない宙を殴りつけた拳から衝撃が駆け抜け、触れる事無く香琴と吠音を殴打する。
「――吠音」
 吠音からの魔力供給で回復しつつ、香琴が投げ枕を投擲した。それに、赤の拳鬼は受けようと試みるが――投げ枕は胸部へと深くめり込む。
「いきましょう兄貴!」
「おう妹よ!」
 絢音の言葉に答え、影郎が勢いで答えた。しかし、絢音の放つのピンクの小蜘蛛やらウサギやらのアヤカシの群れを赤の拳鬼は回避していく。駆け出そうとしていた影郎は思わず踏み止まってツッコミを入れた。
「って何そのキモ色アビ!?」
「みんなピンクで可愛いでしょ?」
「えと……ピンクうさぎさん可愛いです……」
 ピコピコと耳を動かしつつ得意げな絢音に、意外なファンとなっていた斎がコッソリとうなずく。
「行くぞ!」
 ザン、とインフニティエアの風を身にまといながら宙を舞い、今日介がクレセントファングを繰り出した。サマーソルトキックのようなバク宙からの鋭い一撃に、赤の拳鬼が片膝をつく。
「――渕埼寅靖!」
「ああ」
 影郎の呼びかけに答え、寅靖が動く。左右から自らの利き腕を突き出す影郎と寅靖の間に、同じく利き腕を突き出した状態で今日介が着地する。
「此の身は虎と為りて――!」
「ルチャリブレ・ジ・エーンド!!」
 寅靖の虎爪の掌底が胸へ、影郎のアイアンクローが顔面へ――二つの白虎絶命拳が、赤の拳鬼の巨体を衝撃で吹き飛ばした。


「……えと。みんな、大丈夫ですか?」
 斎がおどおどと仲間達へ問い掛けた。
 それぞれがダメージは残っているが、それも致命的なものではない。それよりも、戦闘の緊張から開放され自覚していなかった披露の方が大きい。
「はい、疲労回復にいい飴ですよ〜」
「ああ、ありがとう。それにしても……この地縛霊探したの誰よ……んぐっ!?」
 絢音が受け取った飴を口に含んだ影郎が、鼻から一気に駆け上がったえぐい味に息を詰まらせた。ちなみにハバネロキャンディです――疲れ以外のものも一気に吹き飛ぶ味であった。
「なんか、いつもとは違う、達成感があるのはなんでだろ……?」
 肩で息をする今日介に、好敵手に一礼と黙祷を捧げ終えた寅靖が言った。
「……己が見えて来たのだろうよ。みんなもお疲れ様、飯でも食いに行こうか」
「ご飯、ですか……ご一緒、しますです。そうですね……今日はやっぱり、中華でしょうか……?」
 寅靖の言葉にこくりとうなずき、ネフティスは微笑をこぼす。
 そんな仲間達に、一人沈黙を保っていた香琴が口を開いた。
「あの拳鬼の存在は……是か否か。どうだったのでしょうか?」
 その香琴の言葉に、全員が沈黙する。能力者としては、地縛霊という存在は否だ。しかし、力を持って戦う者としてはどうだろう?
「僕らの道も、研ぎ澄ませた先に鬼が待っているのかな……?」
 香琴の呟きは、問い掛けとなってそこに残された。
 その答えは、これから先――彼等が至る場所に待っている……。


マスター:波多野志郎 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/02/26
得票数:楽しい3  カッコいい13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。