手作りマドレーヌに想いを託して


<オープニング>


 世間がバレンタインで賑わっている中、それは銀誓館学園でも同じこと。
 しかし、廊下で話の華を咲かせていた女子生徒達は、同時に溜息をついた。
「あたしの意中の人、チョコレート苦手なんだよね……」
「私も日々の御礼に先輩に何か渡したいけれど、チョコだと少し重く感じちゃうよね?」
 でも……。
「彼、甘い物は好きだから、何かつくって渡したいんだけど、どうしよう!」
「私も、先輩に何かプレゼントしてあげたいです!」
 ――その瞬間。
「嗚呼、悩める女子生徒達よっ! そんなキミ達の為にこれを――ぐおっ!」
 呼ばれていないのに颯爽に飛び出して現れたのは、眼鏡を掛けた少年。
 だが、何となく至近距離なのが、不味かった。
「「きゃあああ!!!」」
 同時に奏でられた悲鳴と共に、ごすんごすんと凄みをもった重い音が響く。
「て、手作りマドレーヌ教室に、誘おうとした、だけ、なのに……」
 少女達が脊髄反射の如く放った拳は、少年の眉間と鳩尾に見事にクリティカル。
 重い一撃を浴びた眞田・烈人(熱血コミックマスター・bn0142)はあえなく撃沈。
 悶絶する間もなく、沈んだのでした――合掌。
 
「チョコが苦手な人とか、ほんの少しの御礼に、という人にどうかなって思ってさ!」
 13秒で復活した烈人が2人に見せたのは『手作りマドレーヌ教室』のチラシ。
 他にも、毎年チョコレートをあげているので、今年は趣向を変えてみたい。
 チョコレートを多く貰っていそうな憧れのあの人には、別なものを贈りたい。
 そんな悩める人は一杯いると思うから、と……。
「マドレーヌの作り方も、いたってシンプルで簡単なんだ!」
 まずはボールに卵をほぐし、砂糖を入れてかき混ぜる。
 シンプルなマドレーヌの場合、ここに蜂蜜やバニラエッセンスでほんのり隠し味。
「次にふるった薄力粉と、溶かしたバターを良く混ぜ合わせるんだ」
 ここでココアや抹茶の粉末、擦り下ろした野菜や果物を混ぜれば、あら不思議。
 クリーム色の生地がみるみるうちに、温かなで美味しそうな色に衣替えをしていく。
「んで、生地ができたら、お待ちかねのトッピングで、飾り付けだぜ!」
 シンプルな生地にチョコチップやホワイトチョコ、キャラメル、紅茶の茶葉を混ぜたり、
 アーモンドプードル、ナッツ、フルーツを添えれば、彩りも一気に華やかになる。
「トッピングは他にも沢山用意されているし、マドレーヌの型も色々あるからな!」
 全ての材料を入れ終えたらシェル型の他、星型、ハート型のアルミ型に生地を流し込む。
 温めたオーブンにいれて15分程、竹串をさして生地が戻らなければ、出来上がりだ。

「マドレーヌが完成したら、失敗作や余ったもので皆で御茶会と洒落込もうぜ!」
 出来上がった自慢のマドレーヌは、特別な日に備えて、お持ち帰り。
 だけど、その前にちょっとした御茶会を楽しめるのも、作り手だけのご褒美なのだから。
「御茶会の準備は秋良先輩と和史が手伝ってくれるから、心配しなくていいからな!」
 烈人自身も当日は手伝いに参加するので、料理に自信が無くても大丈夫だと胸を張る。
「ふと思ったんだけど、眞田って……貰う側の立場だよな?」
「貰えないからって……自分で自分の分を作ろうとしています?」
 何で作り手に参加する気満々なんだ!という少女達の謎視線。
 ズバッと心の内を指摘された烈人の目は泳ぎまくり、額には汗が吹き出ていて。
「い、いや……ほら! 俺にも相棒がいて、だな!」
「実は、ペットとかじゃね?」
「まさか、2次元……!」
「そ、そんな推測ばかりしていると、余計に彼氏ができな……じゃなく、善は急げだぜ!」
「ちょっ、今何て言ったのよ!」
「口は災いの元、ですよ!」
 逃げるように手作りマドレーヌ教室に向かった烈人の後を追い掛ける少女達。
 だが、その表情は何処か楽しそうで、足取りも軽く――。
 
 何はともあれ、折角のお菓子の祭典。
 女性だけでなく、大人も子供も男性も、一緒に楽しんでみてはいかが?

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参加者
NPC:眞田・烈人(熱血コミックマスター・bn0142)




<リプレイ>

●温もりに想いを込めて
 扉を開けると、温かな香りが出迎える。
 甘い香りにまじって聞こえるのは、和気藹々とした幾つもの声――。

 真剣な表情で佳菜が振う薄力粉とベーキングパウダーは粉雪のよう。
 ほんのり混ぜたココアとシナモンパウダーが深みのある香りを漂わしていた。
(「……これで少しだけ借りが返せる、と良いなぁ」)
 燐も甘くなり過ぎないよう、ほんの少しだけバニラエッセンスと蜂蜜を生地に垂らす。
 そして、手早くココアとアーモンドパウダーを混ぜて仕上げに入った。
「烈人はブレイド用に作ってんのか? 甘さ控えめ……いや、辛め?」
「独り身に聞くのはボヤ……じゃなくって、ヤボってもんだぜ!」
 贈り物というのは、あげるのも貰うのも嬉しいもの。
 割烹着姿の烈人に笑いを堪えながらも和彦は気合いを入れるように腕まくり。
 その隣で烈人の手元を覗いていた千羽耶も2人には負けないと緩く笑みを浮かべた。
「貰えんからやのうて、ホワイトデーのお返しの予行演習やよな?」
 あえて触れないのが人情。
 レシピとにらめっこしていた悟もお返し作りに来てんと笑みを浮かべて。
 空気をいれるような動きでざっくり生地を混ぜはじめた、その時。
「烈人超危ない、避けてー!」
 悟の手からするりと抜けたヘラが烈人に向かって飛んで行って――。
 それはサクっとツンツンヘアーに引っ掛かり、満面の拍手が包み込んだのでした。
「お兄様、喜んでくれるでしょうか……」
 紅実は生地を2つに分けると紅茶の茶葉と抹茶の粉末を振りかける。
 1つ1つ心を込めて丁寧に生地を混ぜた時、温かな香りがふわりと広がった。
(「何でこんなに頑張っているのだろうか……」)
 生地を休ませようと冷蔵庫の扉を開けた佳菜は、ふと思う。
 きっと、期待に答えてやりたいのだろうと1人納得すると、静かに生地を寝かせた。

「真心込めて、気を籠めてですね!」
 ゆっくり生地を休ませたらトッピングと型取りの開始!
 レティシアは慣れた手付きで猫の肉球のような型に丁寧に生地を流していく。
「むしろ余るぐらい作って自分で食べ……ゲフン、頑張って作りますよー」
 レティシアの手付きを観察しながら麻花も慎重に慎重に生地を型に流す。
 仕上げにドライフルーツを沈ませば、しっとりとさっくりのコラボレーションだ。
「チョコチップは、苦めなら入れてもいいわよね?」
 甘いものが苦手な父と弟の為に奮闘するのは【メディシンルーム】の新。
 料理はからっきし駄目なのだろう、その手付きは何とも不安なものがあって。
「抹茶は元々苦いので、余り気にしなくて良いですよー」
 逆にお菓子作りは得意だという丹羽の手付きは、実に手慣れたもの。
 バラのモールドに手早く生地を流すとバラの花のコンフィチュールを一さじ落とす。
 とろっとした甘さとふんわり広がるようなバラの香りに、春美は思わず手を止めた。
「丹羽さんは薔薇のマドレーヌですか……素敵ですね」 
 お茶ならいつも一緒に味わっているけれど、一緒にお菓子を作るのは初めてで。
 春美はハート型に流し込んだ生地の上に型より少し小振りなハートのチョコを乗せる。
 あたかも想いを重ねたダブルハート、後の御茶会でも色恋話が尽きる事はなさそうだ。
「こ、これで大丈夫かしら……」
 春美と丹羽の支えもあって新の抹茶の生地には旨くチョコチップが混ざり込んでいて。
 慣れた動作でオーブンをセッティングする丹羽に感嘆を覚えながらも新は願う。
 楽しく精一杯頑張ったマドレーヌ、きっと美味しく作れていますように――。
「千羽耶は流石だな……」
 和彦の瞳に映るのは手際良く菓子作りをこなす千羽耶の横顔。
 千羽耶も緩く笑っては時々和彦を手伝っていた。
「単に慣れの問題だと思うな」
 自身のマドレーヌに向かった千羽耶は獅子柚子の皮の砂糖漬けを添える。
 何かと世話になっている人に渡すもの、自然に気合いも入っていて。
 甘さ控えめに垂らす蜂蜜の加減も、相手の事を考えてのものだった。
「けれど、今日は俺も負けないぜ!」 
 例え不格好でも気合いと想いを籠める事には、誰にも負けられない!
 和彦は真剣な表情でビターなチョコチップをリズム良くトッピングしていく。
 1つ1つに、日頃の感謝を込めながら――。
(「……今更だけど、こういう贈り物は迷惑にならないかな」)
 先輩に好きな人や特別な人が居たら……。
 それとも、感謝の気持ちを込めた義理と言った方が良いのだろうか……。
 星型のアルミに流し終えた燐は悩みながらも温めたオーブンに生地を納めていく。
「わくわくしてしまいますね」
 雪結晶型のマドレーヌは故郷を思わせるよう――。
 紅実も焼き上がりの刻に心躍らせながら、静かにオーブンの蓋を閉めた。

「凄くいい匂いがします……!」
 オーブンを開けた瞬間、ふわっとした温かな香りに沢山の歓声が湧き起こる。
 狐色に衣替えしたマドレーヌの香りだけで、麻花の頬は幸せいっぱいに蕩けていて。
 燐のマドレーヌも感謝の気持ちを届けようと、仄かなアーモンドの香りを乗せていた。
「綺麗な焼き色」
 温かな狐色とほのかに漂うアーモンドの香りに陸も思わず笑みが零れてしまう。
 そっとハートのチョコチップを添えた時、ふとその手が止まった。
「ほら味見役さん、よそ見しないで」
 陸は終始興味無さそうに眺めていた玖瑠の口元にマドレーヌを1つ添える。
 いわれて視線を動かした玖瑠は見た目には興味を示さず……。
 だが、香りに誘われるように、ぱくりと頬張った。
「ん、美味いじゃん」
 その味わいは期待以上。何よりも、気持ちが籠められていた。
「心配すんな、これで喜ばない奴いねーよ」
 だが、あげる宛があったなら悪い事したかもと玖瑠が気付いた時には、後の祭。
 腹に収まった分が申し訳なく、もう一個あるか?と聞くのは至極当然の成行きで。
 だが、お世辞を言わない玖瑠に褒めて貰えたのが嬉しかった陸は、つい微笑んで。
「……だって」
 どうせなら、あげる人に美味しいって言って貰いたい。
 いつも有難うの気持ちを籠めて、大切な貴方へ――。
「丁度良かった、烈人ちょっと味見してもらっても良い?」
「おお、いいぜ!」
 緋央が差し出したのは見事な狐色のハート型マドレーヌ。
 美味しそうに口を動かす烈人に、緋央もお菓子作りは得意だからと胸を張る。
「……美味しい?」
 その言葉に満面の笑みを返す烈人。
 緋央も笑みを浮かべて言葉を返せば、烈人の頬はみるみるうちに赤く染まり……。
 黄金色に輝くハートは、少し早めのバレンタイン――。
「気に入ってくれるといいなあ」
 抹茶を溶かした龍麻のマドレーヌもふんわりふっくら仕上がっていて。
 上品な緑に生クリームと苺を乗せれば、和と洋の美味しいコラボレーション。
(「心はいつでもお側にいますから……」)
 綺麗な包みでラッピングを施し終えた紅実の頬が緩む。
 遠い空の下の大好きな兄を想い、白いポンポン飾りがふわりと揺れた。

●温かな香りに包まれて
「喫茶マドレーヌへようこそ!」
 調理という名の真剣勝負が終わった後は、御茶会の時間。
 黒のメイド服の裾を靡かせるレティシアの側にはメイド姿の和史がはにかんで。
 黒服執事姿の秋良にも歓声が湧いたが、レティシアは少し残念そう……。
「お二人に、俺の作ったマドレーヌの味見をお願いできますか?」
 龍麻が披露した甘い苺ホイップと上品な抹茶の味わいに和史は瞳を輝かせる。
 給仕の手を止めた秋良も「御茶の御供に良いな」と楽しそうに口に運んだ。
「武羽さん、ボクの作ったマドレーヌも食べていただけまっすか?」
 始めは普通に皆のお裾分けを摘んでいた衛も何時の間にか給仕を手伝っていて。
 ふと鉢合わせした和史に衛は微笑むと、すぐにチューリップのマドレーヌを持ってきた。
「……可愛くて、勿体ないな」
 最初は1つ、そして2つと和史は美味しそうに口に運んでいく。
「美味しい?」
 衛の言葉に和史は2つ返事で応える。
 チューリップの花言葉は『愛』、明日に沢山の愛が花咲く事を願って――。

 教室の一角にて談笑に弾むのは【天体観測同盟】の仲間達。
 秋良がいれたストレートティを片手に自慢のマドレーヌを交換しあっていた。
「……何か、この香りだけで満足しちまいそうだ」
 すらりと並んだマドレーヌに瞳を細めたキースは漂う香りに深呼吸。
 ベリィジャムでオーロラを描いたジャックのマドレーヌには自然に頬が緩みそう。
「一口サイズで沢山作ってみたの」
 ルアンの彩りある一口サイズの星型マドレーヌはどれも宝石のよう。
 千破屋の星型パンプキンマドレーヌの香ばしい味わいに音諳も瞳を輝かせていた。
「どれも実に見事な仕上がりだな」
 個性に溢れながら何処か温もりが感じるのも同盟の皆ならではのものだろうか。
 キースのビターチョコを使ったマドレーヌを摘んだジャックは直ぐに舌鼓を打つ。
 外はサックリ中はふんわり、紅茶を口に含めばマイルドな味わいが広がった。
「……ん、うまっ♪」
 ココナッツの雪が積もったロンドのショコラマドレーヌに浪漫の頬が緩む。
 まだ温かさが残る生地の中にふんわり蕩ける柔らかなショコラは実に絶品で。
 浪漫の白熊型マドレーヌを摘んでいたロンドも気に入って貰えて嬉しいと微笑を返す。
「今日はショコラ記念日に加え、マドレーヌ記念日だからね」
 中に忍ばせたショコラは、愛情の一欠片。
 甘すぎず、優しく、愛らしく、親しみやすい味わいはショコラとも相性も良い。
 きっと、世界中を探してもこれ程フレンドリーなお菓子は他に無いだろう……と。
「ぴよぴよをモデルとしたマドレーヌなの、良かったら召し上がって下さい、なの」
「少し形がいびつだが…一応、その、ぴよりのマドレーヌです」
 音諳と來諳が同時に披露したのは、何とも愛らしいマドレーヌ。
「2人とも上手…! ホントどれも食うの勿体ねぇなァ!」
 可愛らしいふわふわなぴよぴよと、何処か愛嬌のあるぴよりに千破屋は瞳を細めて。
 音諳に教えて貰いながら作ったという來諳に、秋良も良く出来ているなと頷いた。
「オレのもどうぞです♪」
 粉砂糖の雪で描かれたのは、祈りを込めたエーデルワイス。
 星型で焼き上げたジングルのココア風味のマドレーヌにロンドは感嘆の溜息を零す。
 その様子を見ていた來諳も、皆と一緒に過ごす時に嬉しさを噛み締めていた――。

「すんごく美味しく甘く出来たんだー。一緒に食べようよ!」
 所属結社全員分のマドレーヌを作りきった時人は楽しそうな笑みをみせていて。
 濃厚な甘い香りに和史は飛びつくが、半ば恒例となった秋良は苦笑を浮かべるしかなく。
「時人君のマドレーヌ、甘くて美味しいね」
 これなら、苦手なストレートティーが飲めるかもしれない。
「し、後月!?」
 ぐいっと紅茶を飲み始めた悠歌に時人は思わず目が点となって。
「……あ、おいしい」
 さらっと口に広がるのは、まっさらな紅茶の味わい。
 ふうと幸せそうに息を吐いた悠歌に秋良も甘めのマドレーヌを手に取った。
「極端な甘さは好まないが、これなら私も……」
 濃厚な甘味を口に含み、苦めの紅茶を美味しそうに味わう秋良に時人はびっくり。
 そして、ふわりと満面の笑みを浮かべた。
「ね、私が作ったのも食べてみて?」
 ホワイトチョコを混ぜた可愛らしい星形マドレーヌは悠歌の愛情に溢れていて。
 甘くて美味しいマドレーヌ、体も心もほんのり温めていく――。

 一息いれようとした秋良を手招いたのは【タケミカヅチ】。
 とって置きの紅茶を秋良に振舞う亜璃砂の側には少しいびつなマドレーヌ。
 少しだけ香ばしく仕上がっているのがあるのも、手作りの御愛嬌です♪
「俺のと交換でどうだ?」
 ユリアの宝石のようなマドレーヌに心が躍ったアウラも幸せをお裾分け。
「アウラさんのはナッツの歯ごたえがよいですね」
 紅茶のマドレーヌを秋良に勧めていたユリアもその味わいに笑みを浮かべる。
 少し固めでいびつだが、口の中に広がるココアが柔らかい。
「色んな種類を食べれるのって、幸せね」
 菓子作り中は回りが見えなくなる程真剣に打ち込んでいた朔もほっと一息ついていて。
 亜璃砂がいれた紅茶に蜂蜜を垂らして甘みを付けると、マドレーヌを1つ手に取る。
 口に広がる仄かな甘さと、ココアの風味をゆっくり噛み締めるように――。
「私にも、将来このマドレーヌをあげたくなる人が、できるのじゃろうか?」
 皆の話を楽しく聞いていた亜璃砂はふと自身のマドレーヌを見つめる。
 あげる人がいないのは気にしないと想っていても、思わず愚痴が零れてしまって。
「朔は当然彼氏に、だな」
 朔が黙秘権を発動させる前に口を開くアウラさん。
 照れと驚きで紅茶が喉に詰まって咳き込む朔の背を慌てて亜璃砂がさする。
「そういえば、椎名さんは進路決めてますか?」
 もう卒業も近い。
 ふとユリアは訪ねてみて。
「今は、この時を楽しみたいがな」
 自身の事を語ろうとしない彼は、何時もと変わらぬ様子で紅茶を口に運ぶ。
 亜璃砂も秋良に『コイバナ』を振ってみるが、珍しい花だなとはぐらかされて。
「そういうファラウはどうなの?」
 話に耳を傾けていた朔も先程のお返しにとアウラに訪ねる。
「俺は世話になってる人に……む、多いな」
 これだけでは足りぬと、むうっと眉をよせるアウラ。
 今度は紅茶の葉やハーブ入りにも挑戦しようと手元の包みを見つめた。

「皆出来たマドレーヌを誰にあげるか気になるねぇ〜♪」
 御茶会も終盤を迎えて、何だか怪しい笑みを浮かべる浪漫。
 ジャックは神妙な面持ちで構えてしまうものの、内心は興味津々で。
「贈りてぇのは……家族とかダチとか……あと、ここの皆……とか」
 特定の相手がいなくても特別な贈り物をしたいと思う仲間はすでにここにいる。
 みるみる内に頬を赤く染めたキースにルアンは不思議そうに首を傾げて。
「みんなのことを好きになるのは駄目なの? 恋ってよく分かんないや」
 ――恋。
 突然降って来た言葉に千破屋は思わずジングルに視線投げて、照れ笑い。
 千破屋からの視線に気付いたジングルも、熱くなる頬を押さえて頷いて。
(「コイツは幻覚か何かか……?」)
 2人の世界に入ってしまった千破屋とジングルの周囲には花畑が見えるよう。
 思わず頭を抱えたジャックと2人に交互に視線を移した來諳も何とも不思議そうで。
「矢車先輩は、恋をしているのですか?」
「……て、照れるな!」
 恋の仕方は人それぞれ。
 気付けば好きになっていて自分で驚く事もあると、千破屋ははにかんで。
「浪漫先輩は誰かに渡すの?」
「ん? 俺? 俺は最近お世話になってる子に渡すぜ」
 一所懸命聞いていた音諳に浪漫は爽快な笑みを浮かべて。
 和みながら話に聞き入っていたキースも「頑張れよ」と囁かなエールを贈った。

 恋は冒険。
 誰もがきっと、素敵なパートナーに巡り会える――。


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:31人
作成日:2010/02/13
得票数:楽しい17  ハートフル5 
冒険結果:成功!
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