敵は春風?


<オープニング>


 階段の踊り場を吹き抜ける、一陣の風。
 そして、捲れ上がるスカート。
「キャァァァーーーッ!」
「「「おぉぉぉーーーっ!!」」」
 その踊り場は、女子生徒にとっての地獄、そして男子生徒にとっての天国だった……。
 
「スカートめくりは男の浪漫だと言うが、みんなはどう思う?」
 王子・団十郎(高校生運命予報士・bn0019)の言葉に、ある能力者は頷き、またある能力者は眉を顰めた。
「今回の依頼だが……まあ、なんだ、単刀直入に言えば、スカートめくりをする地縛霊の退治だ」
 その学校の西階段の、2階3階の間にある踊り場を女子生徒が通ると、突如強い風が吹き、スカートを捲り上げるのだという。
 窓を閉めてみても、やはり風は吹いたのだという。
 スカートを押さえるといった自衛手段をとった生徒もいた。しかし彼女は、それが災いして上着を捲られてしまい………
「不幸な……事故だった……」
 そのため、この学校の女子達の間では、上着の下にはTシャツ、スカートの下にはジャージのズボンを着用という、なんとも色気のない格好が広まりはじめている。
 ハッキリ言って、大問題である!
 しかも、極力この階段を避けようとするため、授業を遅刻する者が後を絶たないのだという。
 これも問題である。

 地縛霊を誘き出す方法は、霊が何を求めているのかさえ分かれば、すぐに答えが出るだろう。
 このところ獲物に飢えているであろう敵は、餌を撒けばすぐに食い付いてくるはずだ。
 攻撃方法は、そう複雑なものではない。
 風を駆使しての遠距離攻撃。単体か、全体か。
 ただ厄介なことに、かなり打たれ強い上、自己を回復して更に防御力を高める術までもっているらしい。
 おそらく、長期戦となることは必至だろう。
 
 男子生徒達の夢を奪ってしまうのはしのびないが、放っておけばいずれ学校中にジャージが溢れ、結果的に夢は奪われることになってしまう。
 それなら、自然に吹く風に期待した方が、どれだけ浪漫があることか。
「おっと、大事な事を忘れていた!」
 ぽんと手を叩くと、団十郎は細い目を見開き、付け加えた。
「この学校……女子の制服はセーラー服だ!」

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参加者
三笠・瑠琉(三笠流正当後継者な白狐娘・b00006)
セリス・ゼグラット(黒猫ジジ・b00958)
霧生・楓(小学生ファイアフォックス・b01351)
祖呂部・明日太(屍銃葬・b01872)
空条・良(めざせヒップホップヒーロー・b08363)
蒼葉・マコト(銘無き勇者の剣・b10052)
馬路・真文(高校生白燐蟲使い・b16639)
速水・厚志(ぽややん魔剣士・b19409)



<リプレイ>

●セーラー服を守るため
 南風がそよそよと能力者達の頬を撫ぜる。
 ここは、とある中学校の校門前。
 目の前を、数人の女生徒達が笑いながら通り過ぎてゆく。そのスカートの裾からは、青いジャージの裾がちらりと覗いていた。
「俺の地元じゃ、あれ、埴輪ルックとかそういう名前だけどな」
 空条・良(めざせヒップホップヒーロー・b08363)が溜息混じりに呟けば、祖呂部・明日太(屍銃葬・b01872)も同意するように頷く。
「うん、やっぱりジャージよりセーラーだな」
 2人はガシッと腕を組んだ。
 そんな2人の会話を、蒼葉・マコト(銘無き勇者の剣・b10052)はポケットの中のティッシュを握りしめ、心の中で頷きながら聞いていた。
 ひとり、またひとりと下校してゆく生徒達。
 潜入の機会を窺う能力者達。
「この学校の制服があれば良かったんですが……これで大丈夫でしょうか……」
 中学生時代の制服に身を包んだ馬路・真文(高校生白燐蟲使い・b16639)が、不安げに自分の服装を確認する。スカートから覗く黒タイツに包まれた足が、なんとも色っぽい。
 その隣には、同じくセーラー服を着込んだ速水・厚志(ぽややん魔剣士・b19409)。臑毛のない、しかし間違いなく男の生足が、なんとも微妙っぽい。
「うぅ……」
 人形のあるらうねを握りしめる霧生・楓(小学生ファイアフォックス・b01351)は、その姿に些か戸惑っているようだ。
「ねえ、あそこからならどうかな?」
 セリス・ゼグラット(黒猫ジジ・b00958)が、ふと、人気のない西側の門を指差した。そこからなら、校庭を突っ切るなどという冒険をする必要もないし、現場の階段までも近い。
 「よし、行こう!」
 一行は西門へと移動すると、人影が途絶えたのを見計らい、素早く校舎内への潜入を果たした。

●舞い上がれ、スカート!
 件の階段近辺は、拍子抜けするほどに人の気配がなかった。放課後であることに加えて、妙な噂まで流れているのであれば、それも頷けるところだろう。
「……というわけで諸君、これは由々しき問題だぞッ!」
 階段を上りながら、軽い演説を行う良。
「そうだね、女の子に嫌な思いをさせて喜ぶなんて許せないよね」
 厚志の言葉は、良の演説の主旨とは若干ずれているような気もするが、少なくとも地縛霊を倒さなくてはいけないという一点に関しては、どちらも同じようである。

 念のために用意した害虫駆除の看板で、階段の上下を封鎖が終われば、次はいよいよ……
「それじゃ……行きます!」
 三笠・瑠琉(三笠流正当後継者な白狐娘・b00006)が、緊張した面持ちで一歩前に歩み出る。
 たん、たん、たんと慎重に階段を降りて行き、そしてついに踊り場へと到達する。
「……あれ?」
 今度は下から上へ。しかし一向に風は吹いてこない。地縛霊は、小学生には興味がないのだろうか?
「瑠琉ちゃん、どう?」
 踊り場で首を傾げる瑠琉に、厚志と良が駆け寄った。
 ーーーごうっーーー
「あ……」
「む、むぃ〜っ?」
「OH! モーレツぅ〜〜って、出たぞ!!」
 吹き上がる生暖かな風とともに、その場にぼぅっと浮かび上がる少年の霊。
「こ……こわいです……」
 声を震わせ、あるらうねをぎゅっと握りしめる楓。
 その言葉の通り、現れた地縛霊はただスカートを捲るだけの低俗なものとは思えぬほどに禍々しく憎悪に満ちた霊気を放ち、憎悪に満ちた双眸で瑠琉と厚志を睨みつけていた。
「……サマ、ら……俺に小学生のションベン臭いスカートを捲らせやがって……! しかも、赤ブルマ……だとぅ!? ブルマは濃紺……だと、3億5千年前から決定して、いるだろうがぁァァッ!! それと隣の女……! トランクスとは、何事ダァぁァあァァァッ!!!」
「くっ……臭くなんかないよっ!」
 瑠琉が睨み返すが、身長差の所為で上目遣いになってしまうため、どうにも迫力に欠ける。
「あははは。だって僕男だし。女物の下着まで着けたら、ただの変態じゃない」
「なにぃ〜〜〜っ!? 男だとぅ〜〜〜〜っ!!?」
 飄々とした態度の厚志に、地縛霊の怒りは最早頂点に達した。
「詫びろ! この俺様に死んで詫びろォオォォオォッ!!!」
 逆巻く狂風。
「ぇう……ゴーストさん、なんだかおこってます……」
「あ……やっぱりそう思う……?」
 危険を察知した能力者達はすぐさまイグニッションし、各々決められた配置について武器を構えた。
「スカートが捲れるのは嬉しいが、故にジャージが増えるのは悲しい! だからお前を倒す!」
 踊り場の下に陣取った明日太が、地縛霊をビシッと指差して叫ぶ。
「喧しい! 返り討ちにしてくれるわぁァァッ!」
 憎しみと怒りに満ちた風は無数の刃と化し、能力者達の身体を切り刻んだ。

●風と青春と下心
「むぃいぃ〜っ!」
「三笠さん、大丈夫ですかっ!?」
 真文の投げた符が、瑠琉の傷を癒す。セリスは魔法陣を描いて自らの能力を高め、厚志もまた剣を旋回させて気の充実をはかった。
 マコトの日本刀から炎の蔦が迸る。しかし地縛霊は、まるで嘲笑うかのように揺らめくと、平然とそれをかわしてみせた。
「えちなゴーストさんは燃えてください」
 階段の上から放たれた楓のフレイムキャノンは、ぽわわんとした口調からはとても想像できない破壊力を発揮し、地縛霊は忽ち炎に包まれた。
「スカート捲りは手を使ってこそ素晴らしいんだ! 風なんぞ使ってんじゃねぇ!」
 そんな情熱にかけるような行為は許さんとばかりに、良の拳が唸りを上げる。
「知った事かァァァッ!」
 まき起こる上昇風が、すぐ側にいた厚志のドレスを盛大に捲りあげ、臑毛のない白い足に傷を刻む。
「バカヤロ〜厚志!! 一瞬女子かと思って期待しちまったじゃねぇか〜!!」
「あははー!」
「笑ってる場合じゃない!」
 若干の怒りとともに、セリスが厚志に治癒符を投げる。
「セリスさんありがとう。それにしても女の子を傷つけるなんて、本当に悪趣味な霊だよね」
「キサマは女じゃなかろうがァァーーーッ!」
 白いドレスから覗く足下から、ずるりと黒い影が伸びる。腕の形をしたそれは、激しくツッコミを入れる地縛霊を捉え、毒に冒した。
「速水ナイス! 服装はともかくナイス!」
 明日太がグッと親指を立てる。続けとばかりにフレイムキャノンを打ち出すが、大きなダメージを与えるには至らなかった。
「ぬぅぅ……俺は消えん! まだ死なん!」
 緩やかな風を吹かせる地縛霊。
「死なんって、あなたとっくに死んでるでしょ……って、えっ!?」
 鋭いツッコミを入れるセリスの巫女服が、その風にフワリと袴の裾が捲れあがり……何かが見えた、気がした。
「フヌォォォォォォォォォオーーーーーーッ!!」
「こっ、こいつ元気になりやがった!」
 雄叫びを上げる地縛霊の姿に、ちょっと過剰に身を乗り出す明日太。
「祖呂部さんは持ち場を離れない!」
 ーー今なら憎しみでゴーストが殺れるーー
 そんな思いが、セリスの脳裏をよぎった。

 戦いは長引き、能力者達に疲れの色が浮かんできた。
 一方地縛霊はというと、攻撃を受けはするものの致命的なダメージは尽く避け、危険になったら即回復。そのたびに女性陣のスカートは揺れ、ついでに厚志のドレスも揺れ……
「チクショウ!」
「あはは、明日太くん残念!」
「だから祖呂部さんは持ち場を離れないッ!」
 叫ぶセリスの横を、ひゅんっと鋭い風が吹き抜けた。
「ぇう………?」
「かっ、楓ちゃん!?」
 楓の小さな身体が、風に煽られてころんころんと階段を転げ落ちる。
「きゅ〜っ……」
「きっ、霧生さんっ……!」
 真文が慌てて駆け寄り、抱き起こすが、目を回した楓は、あるらうねを抱えたまま気を失ってしまっている。このままでは奏甲も治癒符も効果を発揮できない。
「霧生さん、暫く待っていて下さいね……」
 真文は楓を抱きかかえ、風の届かぬ階段の下まで退避した。
「むぃ〜っ! 楓ちゃんの仇です〜!」
 白い戦装束をはためかせ、瑠琉が激しい蹴りを放つ。
「う……うぐぅっ……!」
 派手なダメージを被り、すぐさま回復をはかろうとする地縛霊。しかし、それよりも早く……
「くらえ! 正義の鉄拳!」
 青龍の力(とスカート捲りの応用術)が込められた、良の鮮烈なアッパーカットが、地縛霊の顎を粉砕する。
 地縛霊はキラキラとした軌跡を描きながら吹っ飛び……消滅した。
「恐ろしいヤツだったぜ……死んでも女のコに手を出すなんてな」
 未だ燻る拳をおろし、良がぽつりと呟いた。

 かくして、女子の平和と男子の夢は無事守られたのだった……

●敵は春風……より、寧ろ……
 能力者達が学校を抜け出す頃、辺りはすっかり夕焼けに包まれていた。
「これで、女の子達の平和と男のささやかな幸せは守られたって事か」
 茜色に染まる校舎の壁を見つめ、良がうんうんと頷いた。
「疲れました……」
 厚志に背負われていた楓が、ようやく意識を取り戻す。
「お疲れ様。ゆっくり休んで下さいね」
 風で絡まった楓の緑の髪を、真文が優しく手櫛で梳い……た、その時、正真正銘の春風が、真文とセリスのスカートをふわりと上方に揺らした。
「やっ……」
「きゃぁっ!」
「「「なにっ!?」」」
 鼻から健全な男子たる証の血を滴らせながら、マコトが「春だな……」と呟き、微笑む。
 涙目でぎゅっとスカートを押さえる真文。
「羽交い締めで記憶が消せるって本当か……なっ!」
 セリスが、ギリギリとマコトを締め上げる。

 ーーーがしゃん。
 マコトの服の中から、望遠鏡が滑り落ちた。
「これは、何かな?」
 両腕に更なる力を込め、ものすごくいい笑顔で尋ねるセリス。
「い、いや……これは……」
「蒼葉! キサマって奴は……!」
 狼狽えるマコトに詰め寄る明日太。

 ーーーがっしゃん。
 明日太の服の中から、カメラが滑り落ちた。
「な〜に、特に深い意味は無いよ」
 にっこり微笑む明日太へと向けられる、女性陣の冷たい視線。

 その視線は真冬の北風よりも冷たかったと、後日、居合わせた能力者達は語った。


マスター:大神鷹緒 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/03/23
得票数:楽しい2  笑える15  えっち2 
冒険結果:成功!
重傷者:霧生・楓(小学生ファイアフォックス・b01351) 
死亡者:なし
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