<リプレイ>
● 雪のちらつくスイカ畑の中で、適当なポージングを決めてみせた御老体地縛霊達。 結社「来訪者大使館」の面々は暫しその光景を唖然と見守っていたが、やがて能力者として――いや、正義の味方としてすべき事があるのに気づく。 「ふさ吉先生久々登場! メルヘンで行くぜ! 津軽野ブラック」 高らかに宣言する津軽野・林(流浪の三味線ギタリスト・b17700)の声と共に、結社の某オデ娘の等身大……いや、巨大パネルも出現。書き割りみたいになっている。 ポーズと共に手が離されたため、若干不安定に立っている状態だ。 「落ち着けなんて聞き飽きた! 自由気ままに駆け巡る……誤字生成師・ユウキ!!」 続くユウキ・スタンッア(は落ち着けとよく言われます・b43530)も、片手を腰に、もう片方を天に突き上げポーズをとる。 「初めのキャラはどこいった、何の因果かチラ要員、節子ピンク!」 ちょっと恥じらいを残しながらも、一生懸命ポーズを決めるストレリチア・スティレット(桃色狼娘・b59811)。 今回は水着なので、チラの心配は無い……筈だが、パレオ状のスカートがあしらわれており、いまだ油断は出来ない。 「冬毛であったか、水着ではなみず。やこゴールド」 狐の冬毛で体温を維持していた七尾・やこ(珠玉の仔狐・b73876)も、人の姿になってポージング。 「なんでみんな名乗りの準備までしてやがる! 太一グレー!」 遉・太一(ファンガ種ヴァンパイア・b62890)は、次々と名乗りをあげてゆく皆にツッコミを入れながらも、乗り遅れない様にヤンキー座りでこれに続く。 「歌って呪える万能アイドル、マジカルソプラノ響香!」 筋金入りのお嬢様である鈴代・響香(高校生フリッカースペード・b74374)も例外ではなく、しっかり名乗りとポーズを決めて見せる。中々適応力がある様だ。 「番組の途中じゃがニュースを伝えるぞ、報道デスクのシルビアじゃ!」 ようやく自分の番が回ってきて、シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)はお菓子を口にするのをやめ、45度のカメラ(?)目線。 もう色とか関係なくなっちゃってるのは周知のとおりである。 「……我は悪の怪人……ダーク・エフェクト…!」 エフェクト・ディスコード(哀しき褐色の騒音・b66336)に至っては、ブロッケンの魔物を用いて背に大蛇の幻影すら出現させる。 ヒーローの名乗りに悪役まで混じってるのはどうなのかと思わなくも無いが、そもそも老人達が悪霊なのだからいまさらそれを言うのもナンセンスという物だろう。 ――グラッ。 「あっ!?」 さて、ポーズを決め返した大使館員達だったが、そちらに夢中になっている間に大きくゆらぐ巨大パネル。あろう事か、自分達の方へ倒れてくるではないか。 このままでは、昭和テイスト漂うコントオチ(しかも出オチ)が待っているばかりだ。 「ごめんなさい、しろさん! パネル蹴っ飛ばしますわっ!」 「わぁーん!? しろさん……マジごめーん!」 ――バキィンッ! ストレリチアのパンチラキックとユウキのフロストファングを受け、粉々に砕ける巨大パネル。 「よっと! ……あ、ちょっと待てな。乱暴に扱っちゃ可哀想だからな」 しかしそんな中でも、飛び散ってきたパネル(の破片)をがっしりと受け止めたのは太一。 全身図からバストアップ程度に小さくなってしまったそれを、畑の横にしっかりと安置する。 さて、パネルとの不毛な戦いを終えた一同は、ようやく地縛霊達との戦いをはじめるのだった。
● 「このスイカ泥棒どもめ! あろう事かワシらのパクリまで始めるとは許しがたいわい!」 「まったくじゃ、近頃の若いものときたら年寄りを敬う事を知らん。ワシらの若い頃はなぁ〜……」 見た目こそ老齢だが、数も多く、油断は禁物。 「寒い。すごく寒い、かも」 先ほどから寒そうに震えているやこの為にも、早期決着が望まれる所であり、能力者たちは即座に優先して狙うべきゴーストを見定める。 「死して尚畑を守る姿勢はあっぱれじゃが、何もない場所まで守り続けるのは哀れじゃ」 シルビアは、一見滑稽に見えて哀れな地縛霊達を解放すべく、太一と自分にヤドリギの祝福をもたらす。 「動いて温まるしかないな」 林は魔方陣を展開しつつ、まずは梅子に照準を合わせる。 「私がお相手致しますわ」 ストレリチアも、梅子を見据えながら虎紋を身に纏い臨戦態勢。 どちらもミニスカートから覗く白い足が艶かしい。 「ふっ、年を考えてほしいもんだな」 「視界の暴力だな」 「この小僧! ワシらのアイドルを侮辱するとは良い度胸じゃ!」 冷静なコメントの太一とエフェクトだが、老体達の怒りを買ってしまった様子。 「ひのもといちのナースなら、私のこの体にきっちり狙って一発で注射してごらんなさいな!」 他方、響香はトメを挑発するように白く長い腕を晒して見せる。 血管が細く位置を特定しずらい体質で、トメを挑発しようと言うのだ。 「きゃーきゃっきゃ! 容易い容易い……注射なんてもんはどこでも良いから適当に打っておけば治るもんじゃ!」 だが、トメは響香の予想の斜め上を行くレベルのヤブだった。 「ワシのヘレン(スイカ)をたぶらかそうとは、良い度胸じゃ!」 「いや、スイカ泥棒って、スイカ無いやん!」 ユウキの正論突っ込みも空しく、平蔵は怒りをあらわにしている。 両軍は次第に距離を狭め、スイカ畑のど真ん中でついに戦いの火蓋が切って落とされた。
「お帰りなさいじゃ、ご主人様」 パステルカラーのエプロンドレスを纏った梅子は、可愛らしく一礼。しかし、スカート丈はとてもとても短い為、ちょっと身体を傾けただけでとんでもない事になってしまうのは必定。 ――ひらりっ。 一同の網膜を侵食するその光景。 「いい年をして、はしたない姿を見せるな!」 「あれ〜、ご主人様〜」 シルビアの放った数条の茨が、梅子の身体にまきついてその凶行を阻止する。 「自ら進んで見せるパンチラなど外道です。いきますわよ、梅子おばあちゃん!」 パンチラに一家言あるらしいストレリチアは、憤りをあらわにしながら繰り出すハイキック。巻きスカートがまくれ上がり、長く白い脚線美がまぶしい至高の一撃である。こちらは幾らでも鑑賞できそうだ。 「みんな、おどろっか。きっとポカポカ」 やこもこれを援護すべく、周囲の雪を巻き上げて無数の幻影を作り出す。ケットシー・ワンダラーの「タマ」もステップを踏み始め、にわかに周囲は無数の動物達が舞い踊るファンタジックかつメルヘンな世界が広がる。 これにはご老人達も、思わずつられて踊り始めた。 ――ばきぃっ。 「がふっ!?」 縛られながらも踊っていた梅子へ、太一の拳が炸裂する。絵的には宜しくないが、ゴースト相手に手加減は不要なのだ。 「やっぱり無理ですのね……このヤブナース!」 「はうわ!?」 一方、トメナースと対峙していた響香は導眠符を一発で命中させ、トメを眠りに誘う。こちらは絶妙なコントロールだ。 「食らうがいいわ、ヘレン・ダイナマイト!」 「スイカ泥棒(?)にスイカ投げるとは! そのスイカ頂きやぁ〜!」 戦いの主導権を握りに行く大使館員の中にあって、ユウキは平蔵レッドことスイカ畑の主たる平蔵と激闘を交わしていた。 ――がしっ。 投げつけられた巨大スイカを、自ら受け止めに行くユウキ。見事キャッチしたが……。 「そこの、スイ……なぁー!」 ――どかーん! 爆発したスイカに巻き込まれ吹き飛ぶ。 「ゆ、ユウキ!? 無理すんなー」 飛来するスイカの破片を避けつつ、林は懐から無数の原稿用紙を取り出す。 「ふさ吉先生のメルヘン新作! 『スイカ畑の黒猫』!」 ――ババッ! 「な、なんじゃこりゃー」 吹き荒れる紙ふぶき。そこには、スイカ畑に情熱を注ぐ孤独な老人と、飼い猫の絆。そして村人達とのわだかまりが次第に解けてゆく様子を描いた感動作品が描かれていた。……残念な画力で。 「……少々目に余る……早々に退場すると良い……」 敵が感動大作(?)に怯んだ隙を見逃さず、エフェクトは呪炎亡手【七歩蛇】に紅蓮の炎を纏わせる。 ――ゴォッ!! 「ぐはぁーっ!?」 茨に絡めとられながら踊っていた梅子へ、周囲を赤く染めるほどの焔が叩きつけられた。 その脚線美で大使館員たちを多いに苦しめた梅子だったが、ついには舞い散る雪と炎の中に消え去った。
● 畑の中で泥と雪に塗れながら戦うこと暫く。2倍の数と質でも勝る大使館員達は、戦いの主導権を握りつつあった。 「おのれ、良くも梅子ばあさんを!」 「許してはおかんぞぃ!」 だが、それでも地縛霊達は恐るべき思念の強さで食い下がってくる。しかもその攻撃ときたら、入れ歯飛ばしやスイカの種飛ばしなど、いささか清潔感を欠くものが多い。 「祟りじゃあ! 西瓜様の祟りじゃあ〜っ!」 そんな中、汚くは無いが危なっかしい足取りで舞いを続けていた妙に、大使館員達は狙いを定める。 しかし、余りにその足取りがおぼつかないので敵ながらハラハラしてしまう程だ。 「あ、危ないのじゃー! こ、転ぶぞ!? にゃああ!?」 シルビアもこれには、手を貸して支えてやるべきか否かついつい考えてしまう。 「む、そうか! 茨で締め付けておけば、安定するな! それに節子も巻き込めば、安定度が上がるな!」 妙案を閃いた彼女は茨の領域を展開し、妙の身体を固定(?)しにかかる。とばっちりを受ける様にストレリチアにまで蔦が忍び寄る。 「な、何で私まで……きゃんっ!」 辛うじて茨の拘束を逃れた彼女だったが、その拍子に足を引っ掛けて転んでしまった。 別に水着なので問題は無い筈なのだが、捲くれたスカートから水着のボトムが覗く様は、思わずどきどきしてしまう光景だ。 「これで、おわり」 再びアヤカシの群を出現させるやこ。子狐達の群れがゴースト達に飛び掛る。 「お布施を……祟りじゃぁ……」 瀕死状態で辛うじてとどまっていた妙巫女も、ついには倒れた。 「良くも綺麗どころを2人も! 許せんわぁっ!! ププププッ!!」 まるで軽機関銃の弾のように、昭夫の口から放たれる無数の種。能力者たちに降り注ぐそれは、物理的ダメージよりも精神的ダメージのほうが大きいようで。 「ふっ、そんなもの効かぬ……って傘が滅茶苦茶汚れてるじゃねぇか……」 折りたたみ傘で攻撃を防いだ太一も、その嫌悪感から思わず激昂。 「貴様許さん!」 びしっと突き出された太一の指先。 「ぬぐわぁあぁ!」 昭夫の身体から血が吸い上げられ、見る見るうちに枯れ細ってゆく。ついには、畑に突っ伏し跡形も無く消え去った。 「注射してやるわぁー!」 ダメージを受け眠りから覚めたトメは、再び注射器を振り回して暴れまわっている。 とどめは仲間に任せようかと考えた響香だが、結局自ら引導を渡すことにした。 「この小娘がぁ! 腕を出せーぃ! ごぶあっ!?」 「本当のひのもといちのナース……いつか出会えるでしょうか」 空を見上げる響香。彼女のナース探しの旅(?)はまだ終わらない。 「今度こ……のぁー?」 そして、平蔵のスイカアタックを受け止めようと苦心していたユウキだが、もう何回目か分からないキャッチ失敗を受け、ひとつ深呼吸。 「スイカで全身べたべたやぁ……キャッチは、やめや! おじいさん畑はうちに任せて、少しゆっくりするとええよ!」 「ほざけこわっぱがぁっ!」 氷気を纏った天衣無縫・誓理剣を振り上げ、一気に間合いを詰めるユウキ。平蔵もこれを迎え撃つべく、巨大なスイカを頭上に構える。 ――ザシュッ! 「ば、ばかな……」 スイカ諸共、袈裟斬りにフロストファングを受け、崩れ落ちる平蔵。 「残るはひとり、いくぞエフェクト!」 「……どの者も……目に余るな……」 林が空中に描き出したのは、種を噴出す昭夫のイラスト。画力に関しては相変わらずだ。 「ちょざいなぶわはぁっ!?」 エフェクトも赤手を繰り出し、尚も種を吐き出そうとする昭夫の顔面を殴りぬく。 きりもみしながら宙に浮いた昭夫の身体は、地面に落ちると同時に霧散した。 まるで春の雪が大地に解けてゆくように……と言うのは少し美化しすぎか。
● 「あんなに元気なご老人がいっぱいで、高齢化社会でも安心ですわね、ある意味……」 「……で、本当にスイカ泥棒が目的だったのか?」 戦いが終わり、すっかり静けさを取り戻した畑。しかし荒れ果てた畑にスイカの姿は無く、虚無感のみが漂うばかり。響香と太一はそれぞれに思う所がありつつも、イグニッションを解いて一息つく。 「次は風呂じゃ風呂」 「あぁ〜近場に銭湯あったかなぁ?」 水着姿と比べれば遥かにマシだが、雪は依然として降り止まない。温かい温泉にでも浸かりたいところだ。シルビアの提案に、今度ばかりはユウキを始め皆も大賛成。 「……水着でないとはいえ……やはり寒いのは苦手だ。……故郷の砂漠が恋しくなる……。……まあ夜は恐ろしく寒いが」 水着でないエフェクトですら寒いのだから、皆は言うに及ばない。 「それまで狼変身で寒さを凌ぎますの。良ければもふります? わん!」 「温泉、素敵。みんなで、ぬくぬく」 言うが早いか、毛皮姿に返信するストレリチアとやこ。 「じーさんたち、成仏してくれなー」 去り際に、空を見上げて弔いの言葉を贈る林。
かくして、スイカがたわわに実る季節を待ち遠しく思いながら「来訪者大使館」の一行はスイカ畑を後にするのだった。
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参加者:8人
作成日:2010/03/06
得票数:楽しい14
笑える3
怖すぎ1
知的1
せつない1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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