漢たちの熱い疾走


<オープニング>


 ぎしり…。
 階段を上りきり、三階廊下に足を踏み出したその女子学生は、自分が立てた音に驚き身を固くした。きょろきょろとあたりを見回し、自分一人だと確認できて、ほっと胸をなで下ろす。
「……止めとけば良かったかな」
 ここは通称サイコロ校舎。とある高校の特殊教室を集めた古い校舎だ。廊下だって板張りで、歩くたびにぎしりと鳴る。
「あーあ、教科書を忘れるなんてねー」
 恐怖を紛らわせるようにつぶやき、目的の実験教室へ向かう。幸い家は学校の近く、最近の学校にしては警備態勢も大甘だ。で、彼女はこうして学校に教科書を取りに来たわけだが、足下で鳴る板張りの音が不気味で、今更ながら後悔を始めていた。
 ぎしり……。ぎしり……。
 板張りの廊下が鳴く。その鳴き音の合間にかすかな異音。
「……えっ」
 今、何かの音を耳にしなかったか。
 立ち止まり、耳を澄ます。
 確かに聞こえる。
 とたたたた…。とたたたた。とたたた。
 弾むような音が確かに聞こえてくる。顔面が一気に蒼白となる。
 とたたたた、とたたたた、とたたたたたたた。
 音は大きく大きくなり、彼女はそれが背後に迫っている事を感じた。
 勇気を出して振り返るんだ! きっと何も無い。自分の気のせいなんだ!
 意を決して振り返る。
 そこで彼女が見た物は迫りくる一つの影だ。
「きゃーーーーーーーーーーー」
 彼女が目にしたのは、月明かりに照らされた姿。汗? のようなものを飛び散らせ、低い姿勢で迫り来る姿だ。
「いやっ、いやっ、いやーーーーー」
 影が目の前に迫り、あわや衝突というときに、彼女は意識を手放した。
 
 藤崎・志穂(高校生運命予報士)は牛乳瓶を片手にちらりと教室を見回した。
「揃いましたね。集まってくださってありがとう」
 そういいながらハンカチを取りだし、志穂は口元を行儀良くぬぐった。
 
「ある高校の古い校舎に地縛霊が現れました。幸い怪我などの被害にあった方はまだいませんが、目撃した女の子は意識を失い、踊り場に片付けられているのを発見されました」
 その一言に、能力者達は一様に首をかしげる。
 片付けられていた?
 しかし、志穂は首をかしげる能力者達を置き去りにして説明を続けた。
「現れた地縛霊は一体プラス二体。その地縛霊のうち一体の方は……、その…」
 なぜか赤面する志穂。
 ごくりと息を飲む能力者達。おい、さっきの疑問はいいのか。と一人が突っ込むが無視をされた。
「その地縛霊は、雑巾がけしてるんです。しかも、すっごい格好で!」
 雑巾がけなのか。なぜ雑巾がけ?
 だがそれ以上に、なぜ赤面? 赤面するほどのすごい格好とはいかなる物か。興味に駆られた男子が志穂に先を促す。しかし、志穂はそれを無視して続ける。
「このままでは、これから先、何人の女子学生が片付けられるのか分かりません。早急に退治してください」
 
 頬を赤く染めた志穂が話すには、地縛霊が現れたのは、とある高校の古びた通称サイコロ校舎だという。夜遅くに、その三階にある、外周をぐるりと取り巻く廊下を地縛霊はひたすら雑巾がけをするというのだ。
「廊下は幅2メートル強で、一辺が200メートルほど。真ん中の教室を囲むようにして三階を一周できるようになっています。校舎は上から見ると正方形ですから、四辺あわせて800メートルで一周することになります。地縛霊はその廊下を雑巾がけして、ぐるぐる回っています。そうですね、スピードは一般の人が普通に走るより速い程度かな」
 皆が頭の中で、雑巾がけをする地縛霊の姿を思い描く。普通に走るのと同程度のスピードとは、雑巾がけをしているにしては結構なまでのスピードだ。
「ええ、そうです。地縛霊はなぜか雑巾がけのスピードトライアルをしています。そして、その姿は……」
 再び志穂が言いよどむ。
 顔を真っ赤にして志穂は何かを皆に伝えようとするが、うまくいかないようだ。能力者達は息を飲む。いったいどんな姿なんだ。
「その…。その…、その地縛霊はぴっちりしたランニングシャツにぴっちりしたトランクスなんです。しかももっこり……」
 なんだ、もっこり、その程度か。と能力者達は落胆するが、そんなものを意にも介さず、真っ赤な志穂は叫んだ。
「し、しかも、もっこりと筋肉隆々で、背は2メートル近くもあるんです。肌も色黒です!」
 ああっ、誰かみたいだな。たぶん、皆の頭の中には一人のイメージが……。
「攻撃は体当たりだけですが、そのスピードと体格からかなりの威力です。動きは直線的ですけれど、左右には機敏に動いて攻撃を避けます」
 頬を真っ赤に染めた志穂はうつむきながらそう言うのを、意外にも皆は真剣に聞いていた。
 
 その雑巾がけタイムトライアルをサポートする地縛霊が二体現れると志穂は言う。女子学生もそのサポートする地縛霊に片付けられたのだと。
「その二体はオフィシャル地縛霊みたいなもので、そんなに強くないのですが、戦いには積極的に介入して、皆さんを廊下から排除しようとします。皆さんなら簡単に倒せるでしょうから、まずはこの地縛霊達を倒すことから始めるのがいいでしょう」
 
 頬の赤みをさらに深めた志穂が続けた。
「雑巾がけ地縛霊は一カ所ある踊り場の前で必ず立ち止まります。そこで……、そこでなぜか自分の筋肉をアピールします。わずかな時間ですが攻撃のチャンスです」
 志穂が、はふぅ、とため息をつき、これが最後とばかりに顔を上げた。
「その高校の制服は用意できています。警備も緩いので侵入は簡単です。全部で3体の地縛霊ですけれど、倒すのは皆さんでは難しくないと思います。だけどくれぐれも注意してください」
 目は真剣だったが、手には牛乳瓶を握りしめ、頬は真っ赤なままだった。
 

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参加者
風見・玲樹(痛快ぼっちゃま・b00256)
志祭・侑(高校生魔剣士・b03506)
山南・茄矢(早口で喋れない・b04089)
御影・景紫(高校生魔剣士・b05026)
ボゥ・イングズ(攻防奏揃った武闘派吟遊詩人・b16093)
シズカ・アキ(槍兵はスーパー家政婦・b18957)
ウサ・ディストーグ(寂しくても死ねない・b19596)
神流儀・子鈴(中学生魔弾術士・b19847)



<リプレイ>

●闇に集いし
 ここは、とある学校の古びた校舎。学生達からはサイコロ校舎と呼ばれているが、実際にはサイコロの形をしているわけではない。
「なんだ、高さが200メートルあるんじゃないのか」
 ウサ・ディストーグ(寂しくても死ねない・b19596)が月の光に浮かび上がる校舎を見上げ、残念そうにつぶやく。廊下の一辺が200メートルであるから、サイコロ状になるには高さも200メートルが必要なわけだ。ちょっと期待して一番に着ただけに、派手なため息をつく。
「普通に考えれば判るだろう」
 肩を落とすウサの背後からボゥ・イングズ(攻防奏揃った武闘派吟遊詩人・b16093)が、からかうように声をかけた。
「木造で200メートルの高さ、つったらちょいとした見物だぜ」
「…だから、俺は期待してたんだよ」
 すねたようなウサの言葉を聞きながら、苦笑いを浮かべて現れたのは山南・茄矢(早口で喋れない・b04089)だ。
「僕もちょっとだけ期待してたんですけれどね」
 間延びしたような、のんびりとした口調で空気がなごむ。
「お前らはのんびりしてていいな。俺たちゃ、これからゴースト退治に乗り込むんだぜ」
 弛緩した空気に、これから初めてゴーストと対峙しようとするボゥが口を尖らせて抗議する。彼なりに強がりを装っているものの、これから初めて、命の駆け引きをするとして緊張していたのだ。あわてて取りなそうとするウサと茄矢が慌てる中、
「のんびり、いいじゃない」
 御影・景紫(高校生魔剣士・b05026)が姿をあらわし、涼しい顔で三人の間に割って入る。その落ち着いた物腰に、ボゥの気勢がそがれ、舌打ちをして顔を背けた。
「仲間内でもめてる場合ではございませんでしょう」
 四人が振り返って目にしたのは、制服の上にエプロンをつけ、頭には三角巾をかぶり、手にモップを持つ完璧な掃除モードのシズカ・アキ(槍兵はスーパー家政婦・b18957)と、その背に隠れるようにして、おどおどと顔を覗かせている神流儀・子鈴(中学生魔弾術士・b19847)だった。
 あまりのシズカの完璧な掃除姿に、全員の視線が注がれる。
 自分に注目が集まったわけではないのに、身を縮こませる子鈴。だが、子鈴とは逆に胸を張るアキ。やる気満々だ。しかし、何を?
「いいねー、シズカは戦闘準備ばっちりじゃないか」
 校舎を見上げながら、ぶらりとあらわれた志祭・侑(高校生魔剣士・b03506)が陽気な声を上げる。
「当然でございますわ。ぴかぴかに磨き上げてみせましょう」
 ふんっ、とモップをくるりと回してみせるシズカに、ボゥが、
「……いや、掃除じゃなくて……」
 と突っ込むが、聞こえている様子はなかった。それにからりとした笑い声を上げた侑が、
「ははっ、がんばれよ。応援してるぜ」
 と励ませば、はいっ、と元気に返事するシズカだった。

●激走?
 ぎしり。
 校舎の入り口で茄矢が皆に配った懐中電灯で周囲を照らし、三階まで上ってきた皆を待ちかまえていたのは風見・玲樹(痛快ぼっちゃま・b00256)だった。彼は先行して廊下の地形を調べていたが、特にこれといったものは発見できず、皆が来るのを今かと待ちかまえていた。
「みんな、遅いよ」
 玲樹が口を尖らせて文句を言うが、それに相手する者はいない。侑と景紫が只今清掃中の看板を設置しに階段に戻り、ウサは腰に懐中電灯を取り付けようとして悪戦苦闘している。残った者は廊下を調べて、これから起こる戦闘の準備に余念がなかった。
 誰も相手してくれることのない中、玲樹は自分の調べた結果を得意げにしゃべっていた。
 要約すると、廊下は板張りである。それだけだった。

 窓から月の光が差し込み、十分な明るさをもたらしてくれることが分かり、茄矢はウサの腰に取り付けられた以外の懐中電灯を回収して、邪魔にならないように踊り場の片隅に片付けた。そこは奇しくも目撃者の女子高生が片付けられていた場所だった。
「……音が」
 踊り場から顔を覗かせて、きょろきょろと左右を見ていた子鈴が小さく声をあげた。
 はっ、と皆が音の方向へと視線をやる。
 軽やかな音を響かせて、こちらに何かが向かってきていた。
 月の光を反射して、きらきらと光る汗? を飛び散らかしてやってくるのは、まさしく雑巾がけする地縛霊!
「ほっ、ホントに雑巾がけしてる!」
 皆があっけにとられるなか、悲鳴のように景紫が叫んだ。
 あっという間に踊り場の前にやってきた地縛霊が、皆の目前でブレーキング。そのスピードも見事なものだが、一瞬にして停止したのも見事。
 素早く立ち上がった地縛霊が、
「はっーー、はっははははははははははははははは!」
 と笑い声を上げ、ポージングを始めた。
 むんっ、と力をこめた地縛霊のいたる所の筋肉が盛り上がり、ポーズを変えるたびに、皮膚は油を塗ったようにぬめり、てかっていた。
「ひっ、ひげーーー」
「歯、歯がまぶしい!」
「睫毛がー、睫毛がー」
 にっかりと笑い、素晴らしく光る歯と唇の上には濃いひげ。そして睫毛は瞬きのたびに風が巻き起こるかのように長い。かろうじて口のきけた者は、その圧倒的な存在感に後ずさりしつつ、顔の特徴を悲鳴にした。
 そして、なぜに、角刈り!
 混乱に陥る中、一人冷静なシズカがずいっと、前に進み出る。
「ずっと同じ雑巾で廊下を拭き続けるなど言語道断。廊下も地縛霊も、今宵私達が綺麗にして差し上げましょう」
 びしりとモップの柄で地縛霊を指差すシズカ。と、その先には、受け取った雑巾をバケツで絞っているもう一体の地縛霊。
「…って、雑巾、きれいにしてるし」
 と突っ込む侑。
 顔を真っ赤にして、モップをぷるぷるとする振るわせるシズカを押しのけたのは玲樹だ。
 ばっと、誰にも判らない方法で、一瞬にして制服を脱ぎ去った下には、何ともスプリンターとしか言いようのない格好をしていた。
「小学生時代、雑巾がけの玲樹王子、と言われていたこの僕を負かす事が出来なきゃ、真のスピード王にはなれないね!」
 そして、両手で広げるはネーム刺繍の入ったシルク製の雑巾だった。
 そんな、高笑いをあげる玲樹の肩をボゥがつついた。
「いや、もう奴は行ったぞ」
 あっと、振り返った玲樹はすさまじいスピードで遠ざかる地縛霊と、いつの間にかイグニッションして、背中に青竜刀を背負い、雑巾がけしつつ追いかけるシズカの姿だった。
「見てなよ、新記録を出すのはこの僕に決まっているのさ。しっかりスピードを記録するがいいさ」
 バケツを片付けている地縛霊二体にウインクする玲樹。
「勝負するなら、行った方がいいぞ」
 そんなウサの突っ込みに、玲樹はびしりとサムアップを返してクラウチングのポーズをとった。
「いくぜ!」
 そう一声叫んだ玲樹が、とてててててと廊下の雑巾がけを始めた。
 のんびりと進んでいく玲樹の後ろ姿を見送りつつ、
「なんで玲樹さんはイグニッションしないんだ」
「……きっと、あれで勝てるんですよ」
 と茄矢のつぶやきにウサが返事をしていた。
「がんばれなのですー」
 子鈴の応援が空しく廊下にこだました。
 玲樹を見送っていた景紫がはっと翻る。そこにはバケツを片付け終え、廊下にしたたり落ちた汗? をモップで拭いている地縛霊達がいた。
 雑巾がけした廊下をモップがけするというシュールな光景に、一瞬気が遠くなった景紫だが、何とか踏みとどまってイグニッションを行った。それにやっと、自分達の置かれた状況を思い出した皆が続いてイグニッションを行った。
 ようやく戦いの風景らしくなった廊下の中、地縛霊達は黙々とモップがけ。
 奇妙な対峙が始まった。

 先を行く地縛霊を追うシズカ。基本通り、アウト・イン・アウトでコーナーを回ったシズカの目が、直線を行く地縛霊を捉えた。背後から迫るシズカの気配に気づいたのか、それとも競う者があらわれたためか、地縛霊のスピードがぐんと上がった。離されまいと懸命に雑巾がけするシズカ。
「コーナーを制した者が勝負を制するのです! このシズカ・アキ、容赦いたしません!」
 体力に劣るシズカはコーナーに勝負を賭けていた。
 そして、次のコーナーが二者の目前にあらわれた。しかし、地縛霊はスピードを落とさない。にやりとシズカは笑みを浮かべて、
「ふふっ、悪あがきですわ」
 追われる地縛霊が、あせって限界以上のスピードでコーナーに突っ込んでいくとシズカは思っていた。
「遠心力という渦に巻き込まれて……。って、あれ?」
 次の瞬間、コーナーに飛び込んだ地縛霊が、直角に姿勢を変えたかと思うと、壁を蹴って遠心力を殺し、スピードを全く落とさずに次の直線に消えていくのをシズカは目の当たりにした。地縛霊の笑い声が廊下に響く。
「って、なんでー」
 そう叫び、追うのに夢中で自らのスピードを落とし忘れていたシズカが、大音響を立てて壁にぶつかった。
 勢いを殺せず、逆立ちの状態で壁に張り付き、ずるりと落ちたものだから、うつぶせにおしりをあげた姿勢で目を回しているシズカの後ろから、とててててててという音とともに玲樹がやってきた。
「なんだ、シズカさんはリタイアか!よし、仇は僕が討つ!」
 と言い残し、とててと再度雑巾がけで地縛霊を追い始めた。

 シズカがリタイアし、玲樹が激走? する中、踊り場前では戦いが繰り広げられていた。
 二刀を舞うように景紫が振るい、地縛霊は手にしたモップでそれを捌くが、圧倒的な技量差に追い詰められる。そして、その地縛霊の隙を見つけては、ボゥが後方からヒュプノヴォイスで援護を行った。
 そんな戦いの中、茄矢が飲料水とタオルを用意し、子鈴が魔弾の射手を発動させているが、攻撃に入るタイミングが見いだせず、一人わたわたとしていた。
 追い込む景紫をウサが援護して、巧みに地縛霊達を廊下の壁に押し込み、動きに制限を与えていく。
 そして、初陣のために動きの固かった侑の一撃があたり始め、圧倒的となった形勢に茄矢がとどめのブラストヴォイス改を見舞い二体の地縛霊が倒れる中、再び軽い音を響かせて雑巾がけしつつ地縛霊が戻ってきた。
 またもや始められるポージング。ぬめり光る皮膚に、輝く歯。そして奇妙にうごめく筋肉達に響き渡る笑い声。
「い…あ…あれ、いやーーー!!」
 見慣れぬ姿に、子鈴が炎の魔弾を放つが、ひらりと避ける地縛霊。そして、怯える子鈴をかばおうとして、景紫が前に出て直視してしまった。
「クッ…ククッ…アハハハハハッ、しぃいぃぃねぇえええ!!!」
 あまりのおぞましさ? にキレた景紫が手にしていた一刀を地縛霊に投げつけ、残った一刀で斬りつける。あまりの形相に皆は狂気を感じるが、すぐさま援護に入る。ボゥのブラストヴォイスが炸裂し、茄矢が得物を振るう。
 地縛霊は雑巾がけに向かおうと、クラウチングの姿勢に入る。それを阻止せんとして侑が目前に立ちふさがるが、あっけなくタックルで弾かれてしまった。しかし、幸いにも侑の後方で援護の体勢にいたウサが鎖剣で斬りつけ、その衝撃で地縛霊の動きが止まった。そこへ渾身の力を込めた茄矢の歌声が響く中、不利を悟った地縛霊がくるりと向きを代えた。
 逆走して逃げるのか。
 そう感じたウサが追おうとするが、一瞬遅く、地縛霊が雑巾がけを開始する。そしてその先には正気に戻り、あわてて自分で投げた日本刀を拾いに行く景紫の姿があった。
 タックルをくらい、もんどりをうって倒れた景紫を尻目に、逃亡のチャンスとばかりスピードを上げていく地縛霊。誰もがこのままでは逃げられると思った時、現れたのは、やっとイグニッションした玲樹だ。雑巾がけでコーナーから姿を見せた玲樹に、振り返って雑巾がけしていた地縛霊は気づかない。
「あっ……」
 と子鈴が声をあげた後、乾いた音を立てて両者が正面衝突した。そしてそれが地縛霊の最後となった。

●終わりよければ…
 奇しくもとどめを刺すことになった玲樹は、得意げに自分がいかに活躍したかを語っていた。廊下に座って戦闘の余韻を落としていた皆はそれを聞くとも無しに聞いている。
 コーナーで大破? していたシズカは幸い怪我もたいしたことなく、皆のところに戻っていたが、さすがに少し恥ずかしげにしている。雑巾がどうのとつぶやいているが、誰も気にしていない。
 それよりも、見た目以上にダメージを受けているのが景紫だった。筋肉なんて忘れろ、忘れろと盛んにつぶやいている。ウサがそれをみて、学園には筋肉隆々がたくさんいるのに、大丈夫ですかねー、と茄矢に話しかけていた。
 一人、廊下をぶらついていた侑が、
「見事なまでに、廊下が綺麗になったなー。暫く、掃除しなくてもいいくらいじゃないのか」
 と、あまりきれいになったとは言えない廊下を見てつぶやいてた。
「やれやれ…何をどう間違って死んだらあんな地縛霊になれんだよ…?」
 とボゥがつぶやけば、皆が一斉に頷いた。
「雑巾がけにも、魅力があったんですよ、きっと」
 と茄矢が言うと、皆は一斉に反対の声をあげた。
 しばらく、雑巾がけはごめんだと、皆の意見が一致し、笑い合うのだった。


マスター:河井晋助 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/03/23
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