<リプレイ>
●暖簾 「豚頭とブーメランパンツの筋肉むっきむき……」 紅蓮・かいな(バーニングチェイサー・b50605)が考え込むようにして言う。 「な、なんだかスゴい格好だね……」 かいなの言葉につられて、ゴーストの姿を想像した太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・b59223)は、額に嫌な汗を浮かべて少々引きつりながらこぼす。 「豚頭はとんかつの屋のアピールだとしても……。あの、そのパンツは……余計に、お客さん来なくなってしまうのでは……」 赤くなりながら、小さく呟くヒャーリス・シュミット(金糸の断罪姫・b47000)。 「なんつうか……。そりゃ、帰るよね!!」 きっぱり言い切るかいな。店に入って、そんな外見の相手に出迎えられたら見なかった事にしたくなるのは当然だろう。 シェリエル・ミストレスティ(ハーミットローズ・b58094)もかいなの言葉に深く頷き、同意を示す。最も、シェリエルにとって、今回のゴーストの外見は、見なかったことにするどころか、変態を通り越して、存在を認めたくないレベルの相手らしい。 「腕が立つのに、繁盛しなかった……さぞ、無念だったのでしょうね」 シズク・ヴォルガノーティヤ(霧瘴の眠り・b72147)がしみじみ呟く。 店に入った後、テーブルを動かせればと考えているのは麻生・流華(風雪の囁き・b51834)。実は流華を含めた数名は、大事な事を忘れている。その為、後であわてることになるが、今はまだその事実には誰も気付いていなかった。
トンカツよりも味噌カツの方が個人的には好みだったりする伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は周囲を見事に女性能力者で固められ、少々気まずいと言うか、居心地の悪さを感じていた。 「なんとなく、お腹が空きましたね。……どこかで食事にしませんか?」 能力者が集まったのを確認し、ブリギッタ・カルミーン(箱入りヴァンピレス・b49307)が言う。 「もうお腹ぺこぺこだわ。どこか、美味しいお肉が食べられるお店はないかしら」 シェリエルは頷きつつ、溜息をつくように同意する。 「……ん……とっても……お腹……ぺこぺこ……なのだよ……。……美味しい……もの……食べるする……したい……です……」 時雨・音々(玻璃の幻月影・b23295)も頷く。 「美味しいトンカツを食べに行くと聞いたのだけど……違ったかしら?」 波多野・のぞみ(真紅と漆黒の淑女・b16535)は軽く首を傾げて集まった能力者達に尋ねる。 「えっと……美味しいとんかつなら、食べてみたかったです」 ヒャーリスは遠慮がちに言う。 「ハラヘッタ、ニククイタイ」 色々な意味で、自らの存在は密やかに。女性に華を持たせる意味で、ひっそりと片言で呟く洋角。 「あ〜腹減った! 肉食いてぇ肉! 動物性蛋白質! もっと具体的に言うと、衣がカラッサクッで、肉汁じゅわ〜な、ト・ン・カ・ツ!!」 かいながきっぱりと宣言する。 そうして、空腹を訴えたり肉を食べたいと言った能力者達の前に、トンカツ店の暖簾が姿を現した。
●お勧めはトンカツ? カラリ。店の入り口の扉を開き、まずはかいなが足を踏み入れる。 「へい、らっしゃい!」 勢いある挨拶に顔を上げた彼女の視界に入ったゴーストは、腐敗の始まった会社員風のリビングデッドと、豚頭のマスクをかぶり、ブーメランパンツを身につけた筋骨隆々の男地縛霊。 「豚頭の、ブーメランパンツの、おやぢ……。こいつぁ……すげぇや」 予め聞いていたとは言え、実際に見るとダメージが大きいようだ。いつの間にか流れた汗を拭いながら、かいなは小さく呟いた。 次に店へ足を踏み入れたヒャーリスはやはり、店主である地縛霊の姿にうろたえる。予め聞いていたとは言え、やはり年頃の娘さんが直視するには厳しい姿をしている訳で。 「……その格好は、ちょっと……」 顔を赤らめたヒャーリスは視線を外して、小さく呟いた。 「何にしようか迷いますね……。オススメはなんですか?」 店へ足を踏み入れ、ブリギッタは尋ねる。5番目に店に入るはずだった彼女は、3番目に店に足を踏み入れた。なぜなら、暖簾をくぐるための条件を満たせなかった者が3名ほどいるからだ。 「こんばんは〜。親父さん、トンカツ定食お願いね」 店主である地縛霊の姿をものともせず、のぞみはすっぱっと注文の声をかける。そのままその足で店舗の少し奥へと進み、さっさとテーブル席の椅子を引いて腰を下ろした。どうやらのぞみ、本気でトンカツ定食を食べる気らしい。地縛霊は注文の言葉を聞き、豚頭のマスクからぼたぼたと涙を流し、感動に打ち震えている様子。よっぽど嬉しかったようだ。 「入るするの……初めてする……だけど……。……全部……こんな……お店じゃ……無い……だよね……?」 店主である地縛霊の姿を入り口で確認し、おどおどしながら音々は呟く。トンカツ店の全ての店主がこんな店主だったら、怖くて二度とトンカツ店には入れないような気がするのだろう。 地縛霊の姿をある意味イカスとか、そんな風に考えていた洋角は音々の呟きに、さすがにそれはないと突っ込みを入れた模様。 店に入った入り口でイグニッションしたシェリエルは自らの使役ゴースト、ケルベロスオメガのレダを店の奥となるゴースト達の傍へ進ませる。シェリエル自身は後衛と言う事で、先に店舗へ足を踏み入れた能力者達の邪魔にならない場所を選ぶために、入り口付近で一度足を止めた。 その間にすっかりくつろいだのぞみは、トンカツ定食が運ばれてくるのを待つ。どうやら実際にお腹が減っているらしい。とは言え、店に足を踏み入れる事が出来なかった能力者以外は、予定していた大まかな配置につき終え。 「準備完了ですね。では、参りましょうか」 「ああ、そう言えば退治しに来たんだっけ」 ブリギッタがさらりと言い、ぽむと手を叩いて、本来の目的を思い出したのぞみが席を立つ。
「ブタに勝つでトンカツ!」 同時にそう言ったかいなが腕から闘気を具現化したチェーンを出現させ、地縛霊の腕にその鎖を繋ぐ。一瞬迷ったヒャーリスはしかし、眼前のリビングデッドに対し、薄紫色の刃を持つレイピアを手に華やかな輪舞曲を思わせる流麗な動きで攻撃をかける。 「はてさて、高い攻撃力にはコレが一番ってね」 そう言って、超常的な力を消し去るアビリティの霧を生み出すのぞみ。 地縛霊は怒りに我を忘れ、かいなの元へ向かおうとするがリビングデッドの存在が通路を塞ぎ、たどり着く事が叶わず。 葬送の詩文が刻まれた長剣を構え、リビングデッドへ追尾する十字架型の紋様を放ち、弾丸を叩き込むブリギッタ。反動で自らが負傷した際、傷を癒す事が叶わなくなるが、その事実を彼女は気に留めていない様子。ゴースト達を魔法の茨で覆いつくすシェリエルと同時に、レダがリビングデッドを攻撃する。 霧で威力をそぎ落とされた後で、茨で締め付けられたリビングデッドは能力者達を攻撃する事が出来ず。彼らをそのままに、音々は雪だるまを纏う事で自らの攻撃力を引き上げた。 パワーはあれど小回りはきかなさそうだと地縛霊を評価した洋角は湊洋江と銘のつく宝剣に黒燐蟲を纏わせ、攻撃力を引き上げる。 因みにその頃。暖簾をくぐる事が叶わなかった流華、千枝、シズクの3名は、何を忘れて特殊空間へ向かえないのかに頭を悩ませていた。
●店と能力者 「せめて成仏してくれよ!!」 目の前にいるリビングデッドへ、気合と共に狙い澄ました一撃を叩き込むかいな。その腕からは地縛霊へと繋がった鎖が健在で。ヒャーリスが再び踊るようにリビングデッドを攻撃し、のぞみはレッドブリンガーの銘を持つレイピアを構える。 「この距離ではコレが有効ですね〜」 そう言った彼女の眼前には、大きな霧のレンズが出現していた。 腕に巻きつくチェーンで怒りを誘発され、我を忘れた地縛霊は相変わらずリビングデッドが邪魔で、攻撃に向かう事が出来ずにいる。 ブリギッタは再びリビングデッドへ十字架型の紋様を放ち、弾丸を叩き込んだ。再びシェリエルがゴースト達を魔法の茨で締め付け、レダはリビングデッドを攻撃する。それまでのダメージが充分に蓄積されていたリビングデッドはここで仮初に得たその命を散らした。 音々は自然の慈悲に満ちた巨大な植物の槍を飛ばし、地縛霊を攻撃する。洋角は禍々しい怨念に満ちた瞳で睨みつけ、地縛霊へ傷と強い毒を与えた。 そしてやっぱり、流華、千枝、シズクの3名は現場付近の路上で、暖簾をくぐるために必要な事は何かと頭を悩ませているが答えは出ていない模様。
かいなが再び闘気を具現化したチェーンを出現させ、地縛霊の腕に巻きつけ、自らと地縛霊とを繋ぐ。余裕が出来た事を感じたヒャーリスは自らの武器へ白燐蟲を纏わせ、攻撃力を引き上げる。 「食べ物を粗末にする人にはお仕置きです!」 眼前の霧のレンズを通し、目にも止まらぬ一撃を放つのぞみ。彼女が振るった刃は一瞬の間をおき、地縛霊を切り裂く。 再び腕に巻きついたチェーンで怒りを持続させた地縛霊は、チェーンを繋いだかいなに向かってその拳を振るい、攻撃する。 ターゲットを地縛霊へ変えたブリギッタは追尾する十字架型模様の中央を打ち抜き、魔法のヤドリギで空中にハートマークを描いたシェリエルはかいなを癒す。レダは地縛霊へ噛み付き、音々は再び巨大な植物の槍を飛ばした。洋角も再び地縛霊を睨み、傷と毒を与える。 能力者達との距離を詰めた地縛霊を満足そうに見たかいなは、地縛霊へ気合と共に狙い澄ました一撃を叩き込む。ヒャーリスは再び流麗にダンスを踊るような動きで地縛霊を攻撃した。のぞみは再び、超常的な力を消し去るアビリティの霧を生み出し、地縛霊の攻撃力を奪う。 ようやくチェーンを振りほどき、霧の影響力からも逃れた地縛霊は能力者達に対し、トンカツをばら撒いてダメージと魔炎を与えてきた。髪手の銘を持つ呪髪でトンカツをガードした洋角は、呪髪が燃えてないかと少々心配そうに、自らの頭上へ視線を向ける。 「ごめんなさい……私、カツレツの方が好きなんです♪」 傷を負ったブリギッタは傷に構わず、きっぱりと笑顔で言い切り、地縛霊へクロストリガーを放つ。シェリエルは地縛霊へ魔法の茨を放って締め付け、レダは噛み付く事で地縛霊の傷を深める。 「食べ物は……武器する……違う……の……だよ……?」 こんな事に使っては、バチがあたると地縛霊に言う音々が再度植物の槍を飛ばす。洋角は体力的に最も厳しいシェリエルを癒すべく、符を放った。 いつまでもしつこく倒れずにいた地縛霊はもう一度放たれたかいなのインパクトで沈む。そうしてようやく倒してみれば、彼らは暖簾を潜る前の道路に戻り。
「お疲れ様」 にこやかに告げる洋角の台詞で、彼らは戦いが終わった事を実感した。 肩に入った力を抜いて息を吐いたヒャーリスは、出来れば店が営業していた頃に足を運び、トンカツをいただきたかったと残念そうに呟く。彼女の言葉には流華や千枝も残念そうに同意し、頷いた。 「店主の供養の意味でも皆でトンカツ食べに行きませんか? 美味しいお店が近くにあるんですよ♪」 にこにこしながら、能力者達に誘いの声をかけるのぞみ。のぞみの誘いにシェリエルは少々引きつった笑みを浮かる。地縛霊のせいで、食傷気味と言うか、トラウマ気味らしい。 地縛霊の冥福を祈る者もいるが、食べ物を粗末にした報いと言い切るシズクもいて。 ともあれ彼らは、露出過多としか言いようのないトンカツ店の店主らしき地縛霊を無事に倒し、その仕事を終えている。この後どこかの店へよって、何か食べて帰るかについては、相談の余地がありそうだった。
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参加者:10人
作成日:2010/03/31
得票数:楽しい8
笑える2
カッコいい8
知的1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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