闇夜の支配者


<オープニング>


「かー、夜の散歩ってのもおつなもんだねぇ。火照った体に夜風がしみるってなもんだ」
 草木も眠るような時間帯、ひとりの中年男性がふらふらと夜の街を歩いていた。
「夜になるとこの街にゃあ誰もいやしねぇからな、さながら俺が夜の支配者ってか! ひっく、こいつは愉快だ!」
 アルコールがだいぶ入っているのか足元は不安定で目もうつろだが、声だけは大きく静かな街によく響く。
「あ、なんだあれ? ん? えっ、なんだよ……」
 ふと、男性がさきほどとは違う、ひどく冷たく低い声をあげた。そしてそのまま凍りついたように立ち止まり、酔いの覚めた様子で空を見上げていた。
 翼で空を切り裂く風音をあげ、嘴の間からは独特の鳴き声が漏れ聞こえる。
「え、なんだあの、鳥みたいなの……」
 数匹の巨大なぎらついた目をしたフクロウが、夜の街へと強襲する瞬間だった。

「深夜の散歩っていいですよねー。落ち着くというか、独りっきりを満喫できるというか……」
 うっとり呟きながら教室に入ってきたのは山本・真緒(中学生運命予報士・bn0244)だ。
 彼女は集まった能力者たちに軽く頭を下げるとさっそく語り始めた。
「そんなわけで、とある田舎の街が5体のフクロウのような妖獣に襲われてしまうことがわかりました。街の人々に被害が出る前にみなさんにはこの妖獣を撃退していただきたいのです」
 妖獣がやってくるのは深夜2時頃、街に一軒のコンビニ以外はほとんどの灯りが消えてしまっているような時間帯だ。
「彼らは街の奥地に存在する山から降りてきます。時間になれば街の集落に向けて進行してくるわけですが、ルートはすでに判明しているので迎え撃っていただければ大丈夫です」
 ただ、と深刻そうに真緒が続ける。
「妖獣はフクロウの機能を有しています。夜こそ彼らが一番得意とする時間帯ですし、空を飛ぶ相手を撃退するのは中々困難かもしれません」
 しかし通常のフクロウよりも巨体なせいか、飛行能力は低下している。
 能力者たちにとってはなんとか視認でき、追走できるレベルなのが唯一の救いだろう。
 さらに、真緒は実際に街の地図を取り出し詳しい説明を付け加えていく。
「この少し離れた山から降りてくる先、ちょうど大きな河川敷があります。この河川敷を抜けられてしまうと集落はすぐそこですね。こちらの動きに気付かれると妖獣たちは散開して行動することも考えられます。第一接触ですべての妖獣を倒すことは難しいですね」
 オススメの待機場所として見通しのよい街側の河川敷が指差される。
「河川敷で数体を倒し、街側へと抜けられた相手については各個撃破するしかないですね。みなさんには頑張って走っていただくことになりますが」
 真緒は苦笑しながら能力者たちを見渡していく。
「それではみなさん。灯りを手に深夜の追いかけっこ、頑張ってきてください。くれぐれもお気をつけて」

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参加者
青神・祈赤(凶剣・b15162)
時雨・音々(玻璃の幻月影・b23295)
薬袋・一樹(青鹿毛の獏・b37760)
城段・絵梨奈(宵闇の炎姫・b61265)
ファルク・エーデンハルト(境界線上の鷹・b61354)
辻村・崇(蒼氷の牙を持つ幼き騎士・b63628)
神津木・刻(中学生鋏角衆・b70115)
アンノット・ノージンクス(無題・b70126)
イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)
蒼月・秋奈(月下ニ咲ク花・b72525)
蒼井・加奈(小学生ヘリオン・b75538)
春崎・樹(高校生シルフィード・b75584)



<リプレイ>

●黒マントの不審者たち
「敵は山側から現れるようだから、そちらを注視しておくか」
 青神・祈赤(凶剣・b15162)が見る先に広がるのは深い闇だった。その闇の中に溶けこむようにひっそりと身を隠す能力者たちの姿がある。
 彼らはそれぞれ後衛として1、2班、前衛として3、4班として3人ずつのチームを組んでいた。このチーム分けは敵がバラバラになった際の追撃戦の役割分担としての意味合いもあった。
「ただ待っているのって眠いよ…」
 辻村・崇(蒼氷の牙を持つ幼き騎士・b63628)は目を擦りながらも、河川敷の向こうから視線をそらさない。
「…こ、こういう時間が一番緊張するの」
 物陰で布を被り隠れながら、蒼井・加奈(小学生ヘリオン・b75538)が緊張した面持ちで呟いた。
 彼ら1班の近くには2班が潜んでいた。
「用意はできたし、後は来るのを待つだけだね」
 時雨・音々(玻璃の幻月影・b23295)は電灯の準備を確認しながらいつでもスイッチを入れれるように構えていた。
「皆で協力すれば、なんとかなりますよ。きっと」
「これでごまかせるかな?」
 ぐっと拳を握り締め決意を口にするイクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)の横で、春崎・樹(高校生シルフィード・b75584)は自身の羽織る布を確認するように触っていた。
 黒いマントを羽織る姿は確かに夜の闇にある程度溶け込んでいるが、一般の目から見ると不審者以外の何者でもないだろう。
 彼ら後衛の2班から少し離れた位置に、前衛として残りの2班が陣取っている。
「夜の散歩は好きですか。今は満喫してる余裕がありませんね」
 3班のひとり、薬袋・一樹(青鹿毛の獏・b37760)が緊張した面持ちで呟いた。
「とりあえず最初は全員で待ち構えね…」
 アンノット・ノージンクス(無題・b70126)がそれに返事をしながら、戦闘準備を整えていく。前衛たる彼らは敵がやってきたときにイチ早く攻撃する必要がある。相手が空を飛んでいることもあり発見前から気が抜けないのだろう。
「とにかく、がんばるわ」
 蒼月・秋奈(月下ニ咲ク花・b72525)が小さく腕を振り上げた。あくまでひっそりと、目立たないように……。
「町に逃げ込まれないように、確実に狩りませんとね。……被害を出させる訳にはいきませんもの」
 4班が集まった地点では、城段・絵梨奈(宵闇の炎姫・b61265)が声を潜めながら仲間たちに語りかけた。
「迎撃と追撃だな。大変そうだ…後、少し眠いな」
 ファルク・エーデンハルト(境界線上の鷹・b61354)は目を擦りながらもそれに頷く。
「おい、あれ……。どうやら来たようだぜ」
 神津木・刻(中学生鋏角衆・b70115)の声に、息を沈めて待ち構えていた能力者たちが同時に空を見上げる。
 暗闇に隠れながら現れた大きなフクロウの影が目をぎらつかせ迫ってきていた。

●第一接触
「皆、目標が来たぞ。一斉に攻撃だ!」
 ファルクが叫びながら放つ暴走黒燐弾が敵の一弾を巻き込んで、爆発する。
「戒めの檻を…」
 もちろんそれだけで終わるはずもなく、秋奈の放った土蜘蛛の檻を始め、射程の長い攻撃が妖獣の動きを鈍らせていく。やがて上空でまとまって行動していた妖獣はチリチリになりながら逃げ始めた。
「初仕事です、気合入れて第一球いきます!」
 一樹の気合いの込められた導眠符が敵の一体に見事ヒットしゆらゆらと高度を下げ始める。
「これで撃墜してくださいですわ」
 それを見逃さず、絵梨奈のフレイムキャノンが妖獣を打ち落とした。
「そう簡単に、離脱させないぜ」
 刻は河川敷から離脱しようとする敵に向かいオトリ弾を使うことで妨害を心みる。
 妖獣と接触してから怒涛の攻撃が続いていた。敵が上空を飛んでいることもあり、バラバラに散開されては厄介なのだ。どれだけ河川敷で敵を倒せるか、もしくは状態異常による足止めができるかが肝心な要素となっていた。
「総てを吹き飛ばす疾風よ!」
 樹たち後衛に位置する仲間たちも攻撃の手を休めずに、敵の一団がいる位置に向け攻撃を放ち続けていた。
「出来たら逃げ出す前にしとめたいところだけど…」
 攻撃から逃げ出したフクロウを追いながら、アンノットは苦しげな表情で呟いた。範囲攻撃と、バットステータスになんとか耐え切った妖獣が動き始めたのだろう。
 その光景に後衛で援護に回っていた1、2班が素早く反応する。一歩離れた位置で動いていた彼らの方が、戦況の変化を敏感に感じ取っていたのだった。
『左と、右に一体ずつ』
 加奈はヘリオンサインを飛ばし仲間たちに報告をすませると、自らも班員に続き河川敷から離れていく。
「こちらは任せてください」
 言葉を交わしすばやく役割分担を終えると、イクスたち2班は右側の敵を、加奈たち1班は左側の敵をそれぞれ追いかけ夜の闇へと散っていった。

●追撃開始
「敵の移動能力と高度はある程度把握したが……、不味そうだな」
 祈赤は一斑の班員たちと彼らから向かって左側の妖獣を追いかけていた。
 空を飛んでいる分追跡は中々に困難でライトで照らしながらの全力疾走が続く。周りに人の気配はなく人工の灯りは街の方からわずかに見える程度だった。
「ん、がんばって。逃がしちゃだめなのよ?」
 加奈の相棒のケロベロス、ウル君が人間には不可能な動きで敵との距離を詰めていく。ダメージを蓄積させている妖獣は疲れているのか徐々にその高度を下げ始めていた。
「いくよ!コーちゃん!僕らの力を見せてあげようよ!」
 さすがは、ケロベロスというところか能力者より一歩先んでた崇の相棒であるコーちゃんは敵を倒すために回り込む。妖獣にとっても獲物を狙う獣はプレッシャーにでもなるのか、ふと祈赤の放った射撃の一発が敵の羽へとヒットした。
「凍っちゃえ!」
 それに続いて崇が吹雪の竜巻を放った。動きが鈍ったところをたて続けに攻撃された妖獣は地に落ち絶命した。
「ちょっと待ってくれるかな」
 一斑の面々から少し離れた場所、上空を旋回するフクロウを追いながらイクスが言葉を漏らした。
 周りは見通しもよく敵の隠れる場所もほとんどないが、敵に上を取られている状況はあまり芳しくなかった。実際今も敵の動きに振り回されながらも彼らは走って追走するしかない。
「太っちょフクロウのクセに…!」
 樹は攻撃をしかけるが、上空に狙いを定めるのは難しく、妖獣は時々フラつきながらも街へ向けて逃走を図っていた。
「お願い、敵を追いかけてね」
 音々は使役ゴーストであるケルベロスオメガに指示を与えながら自身も狙いを定める。敵の耐久力はそれほど高くはなく、一度能力者たちの攻撃が立て続けるに当たれば耐えられはしないだろう。だが、敵をひるませる最初の一撃が難しかった。
「なら、これならどうだ!」
 敵を追いかけながらの全力疾走、狙いを定めながら跳躍したイクスは黒影剣改を振るった。攻撃は妖獣に避けられはしたが、飛行に影響を与えたようで一瞬ふらふらと左へ高度を下げ始める。
「今だ!」
「今だね」
 樹と音々がほぼ同時に声をあげ、攻撃を放つ。ある意味で三人の連携が成功し、上空を華麗に飛んでいた敵は地面へと力なく倒れるのだった。

●足休め
「やっと、終わったのですの?」
 絵梨奈が疲れながら呟いた言葉に前衛として妖獣と接触し、河川敷で交戦を続けていた3、4班の面々が頷く。
「オーロン、よく頑張ってくれたね。しかし、中々に厄介な相手だったね」
 相棒のオーロンの頭を撫でながら、ファルクはゆっくりと息を吐き出した。
 一時接触で3体の敵を拘束できたのは概ね成功だといえるだろう。しかしその後も戦闘は続き、一体ずつ別の動きで河川敷を越えようとする妖獣たちを追いまわしながら戦闘を行った彼らも、結局存分に足を使うはめになったのだろう。
「どうやら、いいタイミングで帰ってきたようだな、もう敵はいないのだろう? こちらの成果は報告した通りだ、安心してくれ」
 祈赤は河川敷に座り込んだ仲間たちを確認しながら呟いた。
 慣れない上空の敵との戦闘だったせいか、見上げ続けた首や、走り続けた足を労り、軽いマッサージを施しているものもいる。
「こちらも終わったの。みんなお疲れみたいだね」
 敵の討伐を終え、河川敷へと集まりだした仲間たちが声のした方を振り返る。追撃するべき敵が増えたという連絡もなかったので、1班に続き、音々たち2班も戻ってきたようだ。
「…さすがに疲れた。皆さんは大丈夫です?」
 イクスは仲間たちの様子を眺め回しながら、声をかける。
「流石にかけっこは疲れたなぁ」
「追いかけっこ…疲れたわ」
 イクスの言葉に頷きながら、樹や秋奈はぐったりとした様子でこたえた。さすがに能力者といえど肉体疲労には勝てないのだろう。
「(走るの苦手だし……それにしても…疲れたわ…)」
 アンノットも深く頷きながら、その場に座り込んだ。緊張感の中全力疾走したことでよほど疲れていたのだろう。
「むにゃむにゃ、みんな無事でよかったね……」
 安心して一気に眠気がきているのか、まぶたをこすりながら崇は呟いた。
「ど、ドキドキしたの…」
 緊張の糸がきれたのか、加奈はウル君に抱きつきながらぐったりと座り込んでいる。他の仲間達も疲れたような表情をしていた。
「…膝、笑っとぅ。あー緊張した…」
 一樹は緊張がとけたせいか、くだけた表情と言葉がついつい出てきたようだ。
「まあ、うまく行ってよかったぜ。疲れたけどな」
 刻は笑いながらも語尾ではテンションを下げながら仲間たちに声をかける。疲れた足を休める彼らが再び立ち上がるのはもう少し先になりそうだった。


マスター:坂本こうき 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2010/04/20
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