現実の厳しさを知りやがれでございます


   



<オープニング>


 メイド喫茶『あいまい☆どぉる』にて――。
 ぽよん、ぽよんぽよん♪
「神雄坊ちゃま、たゆんたゆ〜ん♪」
 メイド服のロリフェイス少女がブサ男の腹肉の上、ミニスカを危うげに翻し楽しげに跳ね遊ぶ。
『ハレムキング』黒沙樹・神雄の胴回りは大凡2m、驚異的な脂肪は女の子を軽く乗っけてしまえるのだ! だー。
「るんタンずーるーいー!」
 むぎゅっ!
 隠れ巨乳のおさげ眼鏡っ子と、
「ボクもボクも」
 きゅむっ!
 ベリーショートに洗濯板のボクっ子が、神雄を取り合うように左右から抱きついた。
「ぶひ!」
 ご満悦の神雄の鼻から生ぬるい鼻息がぶおーっと。
「あん☆」
「坊ちゃま、あたたかい……ぽっ」
「やだぁ、神クンったらはげしーよ!」
 首筋に頬に耳たぶに刺激を受けた少女達は熱っぽい瞳で振り返る。
 べきぃ!
 彼女達を威嚇するように、巨大な熊のぬいぐるみがテーブルをへし折り床に置かれた。
「……くっつきすぎ」
 光は入らぬ眼には冷淡な殺意。他人など気分で殺める――所謂サイコパスの、瞳。
「ふご? みどりキュ〜ン、妬いてるのぉ?」
 怯える少女にちゅっちゅしつつ、神雄は黒ゴスサイコパス少女・みどりキュンに満面の笑みでもって問い掛ける。
「神にーさま、ドリルの時間、だよ」
 色のない瞳に純愛宿し、みどりキュンはついっと明後日の方向を向いた。
 ドリル。
 別に女の子の両サイドについてるアレでもなく穴掘る男のロマンなナニでもなく、夏休みの宿題に良くついてるヤツだ。
 悪夢から取り出した『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』を1日3分、積み重ねって重要ですよね!
「ぶひひ! 昨日のバニーもいいけど今日の黒ゴスもサイコーだよぉ」
 椅子を倒して立ち上がるとみどりキュンの艶やかな髪を一房取り、べろべろしゃぶる。
「…………神にーさま、もっと」
 そんな光景を遠目に、長身の美女が盛大な溜息をついた。
 黒沙樹・リオ。
 某有名大学出の才女でありモデルだったのも今は昔……ぶわっと省略、駄目弟を見捨てられず今に至る。

「きっと今が人生の春なんだろうね……って、世間も春か」
 放課後の屋上にて。
 眼下から漂う桜の香りを纏い、星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)はダウナーな表情で頷く。
「あ、聖杯戦争おつかれ」
 このタイミング、まるで付け足したようだが彼なりに労っているっぽい。
「先の戦争だけど、逃げてる奴いるよね? その1組の足取りがつかめたんだよね」
 カタッ。
 携帯端末をスライドさせて、千鳥は続ける。
「敗走中のバビロンの獣『ハレムキング』っていたよね」
 いたいた。
 戦略上スルーしていた戦場にいた、ぶひぶひ言ってたブタ男だ。
「あいつ、地方のメイド喫茶を渡り歩いて潜伏してるよ」
 メイド喫茶?
 ん。
 予報士はさらりと頷くと普通に話を続ける。
 ……ツッコミは受け付ける気がないらしい。
「取り巻き2人のナイトメアビースト、みどりキュンと黒沙樹・リオを連れて、ね」
 みどりキュンの由来を深く聞くと負けそうなのでそこはスルーする事にした。きっと能力は後で説明してくれるよ、だって運命予報士だし。
 無言を促しと取り、千鳥は淡々と続ける。
「彼には野望があるんだ……全国のメイド喫茶の、制覇」
 敗走中なのにえっらい余裕だな、おい。
「行く先々でモテモテになってウハウハ、飽きたら次の店に移動……お陰で次に現われる場所は簡単に見つけられたよ」
 そこに先回りして迎え撃てというのが今回の作戦だ。
 千鳥が配った地図には『メイド喫茶 ぱゆぱゆ』と走り書きがされている。
「『ぱゆぱゆ』は当日臨時休業で誰もいないよ」
 一般人が巻き込まれ無くて安心だ。
「だから全員でメイドさんやって、『ぱゆばゆ☆営業中だよ♪』って感じで奴らを店内に招き入れてくれるかな」
 ――全員でメイドさんやって。
 男はどうすればいい? という問いにはきっぱりと。
「メイドさん、やって」
 繰り返した。
 執事さんとかの選択肢はないですか? 足掻く問いにはこう返る。
「2人までなら支配人とかなんとかでごまかせるかも。あ、美形男子はみどりキュンの罵詈雑言に頑張って耐えてね」
 恐るべし……人の美意識まで操ってしまうのか、ハレムキング!!
「ちなみに沢山のメイド喫茶を渡り歩いて彼の目は肥えてるから、生半可なメイド力では、勘づかれるよ」
 メイド力。
 それは主人に身を砕き奉仕する、心。
「やるなら身も心もメイドになりきって、ご主人様にご奉仕してね」
 いっそ、吹き出しながらとか憐れみながら言われた方がどれだけ気が楽だろう。
 しかし目の前の少年は普段通りのフラットさで予報士としての責務果たす。
 だから能力者達も自分に言い聞かせる。
 そう。
 これは大事な作戦なんだ。
 男なら女装したり、ブサ男にご主人様ってご奉仕したり……だとしても、だ。
「戦闘に持ち込めさえすれば、さほど苦戦はしないよ」
 彼らはナイトメアビーストとしては特に秀でた力があるわけではない。
 黒沙樹・神雄とみどりキュンはナイトメアランページ、黒沙樹・リオはサイコフィールドでそんな2人をフォローする。
 神雄はもっふり抱き心地最高なおんにゃの子投げ枕、みどりキュンは熊のぬいぐるみ型の投げ枕と惨殺ナイフの二刀流、リオは如雨露を装備している。
「……」
 メイド喫茶を制覇して移動してるだけなら放置しておけばいいのでは……? きっと誰もがそう言いたいだろう。
 だが!
「このままだと全国のメイドさんが傷物になるから。ま、傷にも色々あるよね。心の傷とか体のき……」
 ――それ以上言うな、中学生。
 とにかくメイド喫茶で働く婦女子の皆さんのために、ハレムキングを倒そう。
 そう。
 これはせいはいせんそうをしあげるための、じゅうようなすてっぷなのです。

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参加者
東雲・雛(嵐ノ花叢ノ唄・b00112)
歌彩・亜矢(レイジングファルコン・b36337)
水走・ハンナ(とある少女の吸血貧鬼・b46874)
藤野・涼太(退魔整備士・b53733)
月原・鋭司(役柄は少女型ロボットメイド・b60746)
塔間・里奈(恋する真面目な風紀委員・b61045)
八環・結伽(陽向の恋桜・b62802)
御澤・憐(凱羅戦天女・b62822)
黒須・烈人(にゃんこはかぶりものです・b64496)
天宮・風華(風詠いの巫女・b67677)



<リプレイ>

●お帰りなさいませ(マセ)、御主人様
『メイド喫茶☆ぱゆぱゆ』の真っ白なドアを開けたハレムキングこと黒沙樹・神雄を出迎えたのは、そんなメイドさん10名のご挨拶だった。
 タイミングは完璧。何しろ事前にバッチリ練習したからね!
「ぶひ?」
 鼻息フゴフゴ、分厚い眼鏡のレンズ越しに品定め。
 メイド長、確認。
 爆乳、確認。
 お姉様、確認。
 ねこみみっこ、確認。
 清楚系、確認。
 和風おっとり系、確認。
 少女ロボ、確認。
 元気系、確認。
 絶対領域ツインテール、確認。
「ご主人様、申し訳ご……」
 どんがらがっしゃーん。
 何故か転がってきたサッカーボールにつまづき盛大に転ぶ。
 ドジっ子メイド、確認!
「ぶもおおお!」
 選り取り見取りのバラエティ! パラダイスじゃねぇ?!
 ギシッギシシッ!
 有り余る腹肉の猛攻を受けて、ドアの枠が苦しげに軋んだ。
 壊れる、壊れるよ!!
「神にーさま、待って」
 むぎゅ、ぎゅぅうう、ぐいぐいっ!
 人体の神秘か、はたまた愛の成せる技か?
 黒レースに包まれた華奢な指先が、あり得ない力で腹肉を畳み押し込み異空間に収納する。
 げし! きゅっぽん。
「ぶひぃ〜ん♪」
 黒レース手袋のゴスロリ少女みどりキュンは、神雄の背を蹴り店内に押し込んだ。
「――」
 うわぁ。
 一瞬素に戻りかけたもののそこは銀誓館の選りすぐり能力者、すぐにメイドモード発動☆しゃきーん!
「はう〜、お見苦しい所を……当屋敷は貸し切りでございまして……」
 鼻をさすさす、ドジっ子メイドこと天宮・風華(風詠いの巫女・b67677)は、神雄達に深々と頭を下げる。着慣れぬミニスカを後ろでに押さえる仕草が可萌え萌えしいわけだが。
「なんだよぅ……!」
「はっ、貴方は!」
 不機嫌露わな神雄を見て、メイド長の塔間・里奈(恋する真面目な風紀委員・b61045)は何かに気がついた様子。
「えっ……あ、こ、この方が?!」
「失礼いたしました。こちらへどうぞ」
 耳打ちされた事実に驚愕する風華の代わりに頭を下げ、里奈は改めて豪奢な赤布張りの椅子を示す。
「ご主人様、ナプキンをおつけしますね」
 たゆん♪
 座ったとたん目の前には揺れる水走・ハンナ(とある少女の吸血貧鬼・b46874)の爆乳。
「ご主人様、焙じ茶でございます」
 椿飾りを揺らし和装メイド東雲・雛(嵐ノ花叢ノ唄・b00112)は、寄り添うようにしゃがみ湯飲みを置く。
 挫けそうな心、でも負けない。がんばります(何故か棒読み)
「紅茶だ」
 反対隣からはツインテールの御澤・憐(凱羅戦天女・b62822)が、辿々しく白いティカップを置いた。つっけんどん、でもそう言う属性も、アリ。
「ぶっひひーん……んー、微乳ぅ」
 失礼な事を口にしつつ雛と憐の胸元に指を伸ばす神雄、だが!
 ちりりん♪
「にゃ〜こもぉ」
 2人の胸が触られる前に、背中からだきゅっとしてくるのは、ネコミミな黒須・烈人(にゃんこはかぶりものです・b64496)だ。
 聖乙女☆猫姫(ほ〜りぃめいど☆にゃ〜こ)って描かれたハートの名札に首輪鈴。猫口らぶりぃ笑顔を装備して、にゃ〜こ、いっきま〜すぅ!
「おお、ないちっちー。でも、みどりキュンよりはあるなぁ」
 ……男の娘よりナイ乳とか、みどりキュンどんだけ貧乳。
「どういう事なの?」
 眉を潜め警戒心露わなのは神雄の実姉、リオだ。
「他店舗から連絡を受けまして、大切なお客様なのでしっかりご奉仕しろ、と……」
 ロングスカートの清楚系、藤野・涼太(退魔整備士・b53733)はおずおずと説明開始。
 あ、実はちょっと年上の男の娘です。でも立ち振る舞いから何から違和感ありません! リコの源氏名に恥じませんよ?
 疑いの目に対して涼太が懸命誠実に説明を続ける横から、元気系の八環・結伽(陽向の恋桜・b62802)がぴょこりと顔を出す。
「素敵なご主人様にご奉仕出来て幸せ! だからお嬢様も早くぅ」
 屈託ない笑顔でリオの腕を取りつつ、林檎の頬で神雄を見てメロメロっぽさもアピール、さすがフォロー体質。
「お嬢サマ、あーんシテください」
 ロボメイド・ルナこと月原・鋭司(役柄は少女型ロボットメイド・b60746)からのパンナコッタ飲み下し、みどりキュンは「リオも、おいで」と視線で招いた。
「怪しいわよ? いつもなら入ったとたん神雄にメロメロで……」
「ばーか」
 あ、平坦ボイスで斬って捨てた。
「皆、属性を演じつつも、らぶらぶ。わからないのか、ババア」
 しかもババア呼ばわり。
「な、何を根拠に……!」
 悔しげに唇を歪めるリオ、しかしババアは否定せず。
「世間知らずのあたしに、神にーさまが、教えてくれた……」
 みどりキュンは傍らの肉塊に熱い視線を注ぎ付け加えた。
「ドリルで」
 やっぱりドリルか。
「あたし、ずっと塀の中だったから」
 どうでもいいヲタ知識をドリルでぎゅうぎゅうに詰め込まれるみどりキュン……なにげに不幸かもしれない。
「弟君が心配でいらっしゃるのですね、お嬢様」
 結伽が一般人よけのため『本日貸し切り』の札を下げたのを確認し、歌彩・亜矢(レイジングファルコン・b36337)は大人びた笑みでリオの心を解かんと語りかける。
「私にも愚弟がおります故、お気持ちお察し致します」
「わかってくれる……の?」
 一瞬で絆された。
「ええ」
 メタボな彼には言いたい事は山程ある。
 それ以上に、ダメ男を弟に持ったが故に転落人生まっしぐらのリオが不憫でならない亜矢である。

●今宵はハレムナイト!
 つっても真っ昼間。
 いや、神雄は飽きるまで昼夜居座り続けるつもりなわけだが――。

 ギクシャクと整然と相反する気配を纏い、ロボメイドルナは苺パフェを置き下がる。鋭司、バレないように基本裏方な作戦である。
「学校でお漏らしするわ、私のカステラ饅頭勝手に食べるわ……」
 ぐだぐだ。
「それでも弟様が可愛くて仕方ないので御座いますよね?」
 ティーカップから琥珀の液体を注ぎつつ、亜矢が穏やかに口を挟む。
 神雄には一杯メイドさんがついてるし、自分はリオに目一杯ご奉仕しちゃおう……せめてたまった愚痴を吐かせてラクにしてあげよう。
「あんなバカ弟……でも見捨てられないわ、血のつながった姉だもの」
 で、そのバカ弟ですが。
「はい、あーん」
「あ〜ん」
 メイドさんパラダイスを満喫中。
「熱いと火傷しちゃうにゃーの。ふぅーふぅー」
「カレーよりぃ、にゃ〜こタンの唇ぅ、たぁべちゃいたいぶひ!」
 間際で震える華奢な唇に、およそ5倍はあろうたらこがひっつきに行く、寸前。
 ぐいっ。
「もうっ、他の人ばっかり見てたらだめなんだからね……!」
 ぷんぷん。
 雛がほっぺを膨らませつつ肩を引き寄せた。
 実は他の人に心理ダメージがいかないように、役者魂を駆使して自分に引きつけていた烈人、ホンの一瞬「大丈夫?」と雛を気遣いアイコンタクト。
 雛はハレムキングには喜んでいると見えるよう、小さく微笑み応える。
「ぶひぶひ、全員可愛がってあげるんだな」
 と、雛の髪の毛を舐めるべくつまんだ所で、後ろからすんなりした指が伸びる。
「マッサージさせていただきます」
 もみもみ。
「おぁ、ぶひっぶっひー」
 あははぁ、あははぁ……。
 メイド長に的確にツボをほぐされて、思わず垂れる涎。
「お召し物が汚れてしまいますわ」
 たゆゆん♪
 ささっと現われたハンナがナプキンでぬぐう。大胆に開いた谷間は視線のまさに直下。
「ぶひ! いい眺めなんだな」
 わきわき動く指先にたわわな果実がつつかれる寸前で、ハンナはさっと身を引く。
「あまりそんな目で見ないでほしいです……」
 しなを作って胸元を隠す恥じらい乙女、このギャップがたまらない。
「ぶひぃーー!」
 ますますそそられ神雄から生暖かい鼻息がぶおーっと。
「「「あん♪」」」
 湿った空気が気持ち悪い。でもみんな耐えた、懸命に耐えたよ!!
「ぼっきゅんの髪の毛も、梳かしてぶひ」
 手で招くは、みどりキュンの御髪を整える涼太。
「え、私で御座いますか……?」
 穏やか笑顔を貼り付けて、肉に埋もれがちな神雄の瞳を捕らえ、
「ええ、喜んで!」
「リコタンは、お淑やかさんぶひ」
 抑えた中に潜む喜びを見出して、嬉しいご様子。
(「ふふふ」)
 涼太は様々な情感で胸を高まらせつつ、薄くなった頭頂部を櫛で丁寧に叩いた。
「デザートのチョコレートパフェでございま……ふわっ!」
 ぺれれ〜ん、すってん、ずざーっ。
 風華、体を張って顔面で床に突っこみ転ぶ。足元には今度は何故か降ってきた金だらい。
「はわ〜」
「大丈夫?」
 宙に舞ったチョコレートパフェを受け取りつつ、結伽は風華に手を差し伸べる。
「ドジっ子とボクっ子の友情コンボ、なんだな……」
 ええっと……と、突然ドリルを取り出して開いたページにふごふごと視線を落とす事しばし。
「2人とも、妹系……と。お兄ちゃんのお腹に、おいで」
 だゆんん。
 広げた腕の間、嫌な音立てて揺れる腹肉に顔を見合わせゴクリとつばを飲み込むも。
「わぁい、ご主人様ぁ、大好きだよ♪」
 結伽、思い切りよくいった! テーブルにパフェを置きつつ、神雄の腹肉にダイブ。
「私も……きゃっ!」
 すってん。
 お約束に転ぶ風華。
「ぶひっ、トーランポリィン」
 だっゆんっ、だゆん。
 腹で結伽「にゃ〜こもぉ」と、甘える烈人を跳ね遊ばせる喧噪の中、
 かたん。
 震える指でチーズケーキが置かれた。ラズベリーソースで描いたうさぎさんが崩れてるのがご愛敬。
「こ、これ、私が作ったんだ」
 内心の嫌な顔を悟られぬよう、ツンっと明後日の方向を見上げ憐は続ける。
「た、食べて、くれるよな?」
 本来持たないツンデレ属性、しかし今店内には圧倒的に足りていないツンデレ属性。それを懸命に演じ応えようとするその姿勢! なんと、美しきご奉仕魂か!!
 ……と、神雄には映ったらしい。
「も、っももっ、もちろんだよぉぉ」
 激しくツボってます。バタバタと腕を伸ばしこっちに来いとご所望です。
「ご主人様、憐ちゃんばっかりやぁにゃーの!」
 ぐいっっと烈人が腕を取り、
「私も……あの……その……」
 ぽぽっと涼太が頬を染め、
「ボクもいるよー」
 きゅきゅっと結伽が後ろからハグ、
「ご主人様、パフェが溶けてしまいますわ」
 でもってむにっとハンナが肉薄すれば、パシャリと店内にフラッシュが瞬いた。
 デジカメ撮影サービスでスと、ロボメイドのルナが一分のずれ無く口角を対称にあげた顔でニッコリ。
「何て素敵ナお姿、私めノ歯車も熱で軋んでおりマス」
 キュイーン。
 耳につけた受信装置がメカメカしい音を立てて、よりロボ感を加速させた。

●お還り下さいませ、御主人様
 デザート皿が片付けられたタイミングで、里奈は静逸な声で語りかける。
「今日はご主人様に私達から特別サービスがございます」
 期待に満ちた眼差しで手を叩く神雄から、すすっと離れるメイドさん達。
 ――窓際入り口、退路を防ぐように。
 店内は事前に細かくチェック済み。暴れても備品を壊さぬよう、必要ない椅子とテーブルは最初から避けてあるし。
 そう。
 暴れても、ね。
「な、なんで離れるぶひ?」
「まだ内緒ですにゃーの」
 気を反らすため、にゃ〜こはぐいっと顔を自分に向けてすーりすり。
「? なんなの」
 泣きはらして鼻をかんでいたリオは、傍らの亜矢を見上げる。
「お嬢様……」
 亜矢はただ一言、後は憐れみだけを唇に刻む。
 配置、強化OK。
 里奈は冷酷とも言える声で宣言した。
「それは……貴方の夢の終わりよ」
「散って!」
 続くは張り詰めた鋭司の声、そして。
「メイド(冥土)の土産だよ――……イグニッション!」
 闊達な結伽に続き、方々で力の起動! 間髪を入れず風が一閃、亜矢の後ろ蹴りでリオが突っ伏した。
「女の子を弄ぶのもこれで終わりね」
 畳みかけるように店内に巻き起こる里奈の吹雪。
「銃器は重い分、浪漫とやらが詰まっていると伺いました。撃ち抜いて差し上げますよ?」
 涼太の銃撃に重なるように、警備員姿のペンテが拳をリオに叩きつけ沈めた。
「ッ……神にーさま」
 みどりキュンがクマさんを取り出すが、遅い。
「悪く思わないでねご主人様」
 くるり舞うハンナに裂かれ咲く血花。
 ガウ!
 雛が指さす少女に容赦無く饕餮が歯を立てて、追いすがるように破魔矢が刺さる。
「現実の厳しさを知りやがれでございます」
 にっこり。
 微笑む和メイドの背後から舞い散るは、風華の放つメイド漫画。
「オシオキの時間ですよ〜ご主人様」
「あああ、痛いよ、にーさま」
「み、みどりキュ〜ン」
 お気に入りへと手を伸ばす神雄目掛け、鋭司には眠りに誘う符を放った。
「起きたらツケを全部払ってもらうよ!」
 目覚めれば、そこは恐らく彼にとっての悪夢。更に縛り上げるは憐より放たれし炎の蔦。
「く……お前ら、お前らお前らああ、赦さなイィ!」
 かろうじてみどりキュンのナイフが饕餮にかすり傷を負わせるもそこまでだった。
「さよなら」
「あ、あんたなんかに……デカ乳女なんかに……」
 猛攻に耐えきれず、亜矢の三日月の軌跡であえなく撃沈。
 みどりキュン、最期の感触は願っても叶わなかった形良い巨乳。せつねぇ事この上無し。
「ぶひっっひぃぃ?!」
 バチィ!
「ボクの魅力にシビれちゃった? なーんてねっ」
 お目覚めは結伽からの痺れるようなサービスだ。
「あはは♪ 未来のイケメンにぼろくずのように蹴散らされてどんな気持ち?」
 がっがっがっ!
 何度も何度も踏みしめて、烈人は上機嫌で高笑い。
 黒ぇ、小学生男子、半端無く黒ぇ!
「ぶひー、ぶひひー、痛い、痛いぶひぃいいい」
 涙を流して転げ回る神雄の前にさす、影。
「さあ、私の奉仕はこれからだ! その脂肪、たっぷりと搾り出してやる!」
 ごっ!
 渾身の怒りを乗せて、憐は烈火の拳をハレムキングに見舞った。
 ちーん☆
 ――ご主人様はそれっきり、動かなくなりました。

●夢の後始末
「全て消去……っと」
 鋭司は、デジカメを操作した。メイドさんは華やか綺麗だったけど、ご主人様がアレだから。
「あんな事までして……彰人先輩に謝らないと……」
 俯きどんよりする里奈を励ますように、雛は声をあげる。
「お疲れ様でした。あとはお掃除だけです」
 感謝を篭めて来た時より綺麗に! そんな気持ちが生真面目な里奈を奮い立たせる。
「やっぱりこの恰好が一番いい」
 ワンピにジャケットに着替えた憐は、机を定位置に。
「メイド喫茶のお仕事も、悪くないわよね」
「今年の学園祭は、メイド喫茶やろうかな」
 あの狂乱の後にそう言えるハンナと結伽に、尊敬の眼差しが集まった。
 けれど。
「メイドはしばらくこりごりですぅ」
 そう言う風華もにこにこ顔。

 ここは夢のお屋敷。
 今日だけはある人のためだけの、お屋敷。
 そうそう。
 人に夢で儚いって読むよね。
 うん。
 ハレムキングは皆の手により無事儚くなったよ。
 全国メイドさんのほにゃららも、もう大丈夫!
 ホント。
 お疲れ様です――。


マスター:一縷野望 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/04/20
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