≪甘味亭【雪桜】≫新メニュー開発♪ 桜と食い気とお色気満開?!


<オープニング>


「つーか、アレだよ、卒業記念ならパーティーやったらどうよ?」
 今年卒業の遠山・さくら(桜を愛でる雪女・b45918)と水無瀬を祝う為、小次郎の口から珍しく(?)飛び出したそんな良案。
 最初は女の子だけのパーティも企画に上がったが、結局は提案者の小次郎を加えたハーレム形式に落ち着いた。

「新メニュー……ですか?」
「はい、『えとがお』に続く定番メニューをみんなで作りましょう」
 甘味亭【雪桜】の新たな看板メニューを各々考え、実際に試作し、プレゼンをしながら試食会を行うのがこのパーティのメインだ。
「優秀作品を選ぶのは勿論ですけど……その逆も選んで、罰ゲームもしましょうか〜?」
 と、そんな提案で緊張感を煽るのも忘れない。
「無事新メニュー案が決まったら、皆で温泉に入ってゆっくりしましょ〜♪」
 和菓子と言えば桜、桜と言えば露天風呂(?)。
 お菓子作りに精を出した後は、桜舞う露天風呂でゆったり疲れを癒そうと言う訳だ。
 ただ1人の男子である小次郎にとっては、天国となるか地獄となるか……。

 そして当日。
「それでは、皆さん準備は良いですか? よーい、スタート!」
 荏徒の合図で、一斉にお菓子作りを始める一同。
 甘味亭【雪桜】のパーティがどういった方向に進むのか、この時点で知る者は居ない。

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参加者
天城・小次郎(雪散らす天に舞う漆黒の銃弾・b00188)
浅野・静奈(揺らめく柘榴石は姫君の瞳・b03218)
染雪・荏徒(コンルアペ・b03246)
十茅・まひる(アクアレフューズ・b06378)
暁・水無瀬(クラウニッシュ・b11208)
峰山・珠果(揺り篭の白兎・b25341)
遠山・さくら(桜を愛でる雪女・b45918)
白河・夢羽(幽谷の紫桜・b46407)



<リプレイ>


 春。
 進級、進学、卒業と、学生にとっては激動の時期である。
 甘味亭【雪桜】の一同にとってもそれは例外ではなく、長きに渡って「雪桜」の屋台骨を支え、盛り上げて来た遠山・さくら(桜を愛でる雪女・b45918)と暁・水無瀬(クラウニッシュ・b11208)の2人が銀誓館学園を卒業した。
 仲間達は、彼らの輝かしい前途を祝しつつ、銘菓(?)「えとがお」に続く新たな看板メニューを考案する為に、パーティを開催する事を決定したのだった。

「それは皆さん、早速始めましょう♪」
 そんなさくらの呼びかけを合図に、各自考案した試作菓子を製作開始。
「みんな上手そうだけど、オレはうまくできるかなぁ」
 手際よく作業を開始する仲間達を見回しつつも、浅野・静奈(揺らめく柘榴石は姫君の瞳・b03218)は型を余熱で暖め、餡作りに取り掛かる。
 彼女は料理が苦手で、これまでの成功率は3〜4割と言ったところ。この大事な場面で上手くお菓子を作ることが出来るだろうか。
「折角パーティーだから、ちょっと楽しめるお菓子を作ろー」
 おぼつかない手つきの静奈を尻目に、染雪・荏徒(コンルアペ・b03246)はどうやら苺大福を作り始める。
「ふふふっ、試食が楽しみです」
 餡のそばに置かれた大量のわさびが、危険な香りを漂わせている。
「提案したのは良いけれど、まさか実行するとは。おっさんびっくりだよ」
 一方、パーティを発案した、天城・小次郎(雪散らす天に舞う漆黒の銃弾・b00188)は実現するとは思っていなかったらしく、今更具材を見回して案を練っている始末。
 罰ゲーム最有力候補だ。
「『えとがお』に続くお菓子……あれはイチゴ大福でしたし……」
 十茅・まひる(アクアレフューズ・b06378)は、シンプルに三色団子を作ることにした。
 無論、今回も荏徒の顔を模すことには変わりが無い。
(「何だか、あっという間に卒業です。まぁ、私は残るつもりですが……」)
 水無瀬も卒業を祝われる主役の1人だが、能力者として、「雪桜」の一員としての生活はこれからも続く予定。
 そんな彼女も、能力者を引退するさくらを賑々しく笑顔で見送ろうと、桜餡を作る手に力が入る。
「雪……桜……」
 こちらも些かぎこちない手つきで、食材選びや器具の用意をしていた峰山・珠果(揺り篭の白兎・b25341)。
 どんな物を作るか暫く迷っていたが、ポンと手を叩いて何かを閃いた様子。
「真心を込めて、けっしょう丸のお菓子を作るのです〜!」
 さくらは、これまで共に戦ってきたモーラットの「けっしょう丸」を模した栗菓子を制作中。
 能力者を引退しても、けっしょう丸と共に過ごした日々の記憶が薄れてしまわない様にとの願いを篭めた菓子だ。
「撮りますよ、はいチーズ」
 菓子作りに励む一同を、頻りにデジタルカメラに収めているのは白河・夢羽(幽谷の紫桜・b46407)。
 しっかり自分のお菓子作りも同時進行しており、ぬかりはない。


「出来た!」
 若干苦戦していた静奈もいよいよお菓子を完成させ、全員の試作菓子が出揃う。
「それじゃ、早速試食タイムかなー?」
 荏徒は早々と全員分のお茶を用意。
「嫌なことは最初に済ます的な意味で、最初は静奈のから食べるか?」
「どう言う意味だ……今回のは、我ながら上手くできたと思う」
 じろりと小次郎を睨みつつ、静奈が皆の前へ差し出したのはこんがりと香ばしい香りを放つ回転焼き。
「今回作ってみたのは名付けて『さくら焼き』だ。見た目は回転焼きなんだが、一般的な黒餡や白餡の代わりに桜をイメージして中身の餡を桜色にしてみようと思ったんだ」
 見た目は上々だが、肝心の味はどうだろうか……皆が口に運ぶのを、緊張の面持ちで見守る。
「美味しい、です」
「ええ、焼きたては格別ですね〜♪」
「うん、普通♪」
「普通って……」
「普通に美味しいですよ」
 珠果やさくら、荏徒が口々に言う様に、味の方も合格点だった様だ。

「皆一緒に食べるのが良いので、一つ爆弾入りですー」
 2番手は荏徒の作品。
 苺大福が皆の前に運ばれる。
「なぁ荏徒、明らかに緑色が透けているんだが」
「いっせーの!」
 小次郎の訴えも鮮やかにスルーし、一斉に大福を頬張る一同。
「ごふぁっ!!」
「あ、美味しいですね」
「うんうん」
 悶絶し号泣する小次郎と他所に、餡と苺の絶妙なコラボレーションを楽しむ一同であった。

「こ、これは」
「中には桜あんを詰めてあり、雪桜っぽさが出てるといいな、と思います」
 まひるが披露したのは、三色団子。
「えとがお」に続くメニューというコンセプトに則り、今回は団子に荏徒の顔が描かれている。
 上の荏徒が下の荏徒を食べようとしている、遊び心に満ちたデザインも魅力的な一品だ。
「名称は……どうしましょう。『えとだんご』とか?」
「……あ、本当だ。中にあんこが」
「うん、味は美味しいですね」
 実物大スケールだった「えとがお」と比べても食べやすく、こちらも中々の好評。

「定番どころからモナカを選びました。中身が普通だとつまらないので雪桜っぽく、私も桜餡を使ってみました」
 続いて水無瀬が披露したのは、桜の葉を模し、桜色をした最中。
「名前の通りさくら『三昧』に、ですね」
「……あっ!?」
「これって……中に白玉が」
「ふふっ。ちょっとした、遊びを加えてみましたよ」
「とても美味しいです♪」
 さくらのけっしょう丸をモチーフとした白玉は、柔らかな最中に意外なアクセントを加える事に成功している。

「けっしょう丸繋がりと言うワケではないのですが……私も大切な友達、けっしょう丸の姿に練り上げました」
「わ、可愛い!」
 続いて作品を披露したのはさくら。
 勝ち栗菓子『けっしょう丸』と名付けられたそれは、勝負事の前に食べれば縁起担ぎにももってこいだ。
「殻と渋皮とを取り除いたものを使用しています。搗ちが勝に通じるから出陣や勝利の祝い、正月の祝儀などに用いられていた製法なんですよ〜♪」
「な、なるほど……」
 非常に勉強にもなるさくらのプレゼン。
 携帯しやすいように腰に提げられる竹籠も付いており、いたれりつくせりと言った所だ。

「私のは、桜の花の形をした淡雪かんですね」
 さて、次は夢羽の番。
 ほんのりと桜色を帯びた生地と卵白のコントラストも可愛らしい。
「結社の名前を意識して……といいますかそのままになってしまいましたね。いかがでしょうか。桜の時期には桜の花を乗せてもよさそうですね」
「わ、ふわふわで美味しい!」
「和菓子だけど、コーヒーとも合うね」
 上品な甘さと見た目の可愛さも手伝って、こちらも好評価。

「味は……保証、できないけど、がんばった、の」
 珠果の作った桜大福は、雪兎を象った可愛らしいデザイン。
「なんだか食べるのが勿体ないですね」
「あ、凄く柔らかい」
 塩漬けされた桜の花が、桜餡から上品な甘みを引き出している。
 珠果らしさが良く出ており、秀作と言って良いだろう。

「さて、次は俺の番かな」
 満を持して登場した小次郎。皆の前に並べられたのは、バナナの形をした飴。
「さぁ遠慮せずに食べてくれ」
 満面の笑みを浮かべつつ、一同に勧める小次郎。
「……甘い」
「うん」
 皮に見立てた包装紙を剥がし、バナナ飴を舐め始める一同。味は意外にも、上品な甘さのバナナ味だ。
「もっと大胆にどうぞ」
「あっ……中に何か」
 飴の中には、更に甘い練乳が仕込まれていた。
「違う違う、そうじゃなくてこう!」
 上品にバナナ飴を食べる女性陣に痺れを切らした小次郎は、自ら飴を手にして頬張り始める。
「さぁ、皆も……」
「よし、それじゃ審査に入りましょうか」
「そうですね」
 尚も詳細にバナナ飴の食べ方を指導する小次郎を他所に、女性陣は最終審査に移行してゆくのだった。


「やれやれ、なんで俺が後片付けを全部しなくちゃいけなかったんだ」
「罰ゲームだからな。第一、オレが手伝った時点で『全部』じゃないだろう」
「年寄りは敬うもんだぜ」
 見事罰ゲームになった小次郎と、無理矢理手伝わされた静奈のそんな遣り取りを他所に、荏徒は舞い散る桜を見上げる。
「まだこんなに残ってるとは思いませんでしたねー」
「間に合って良かったです〜♪ こうして皆と一緒に歩いていると、色々な思い出が蘇ってきます」
「桜を見ると卒業シーズンだと実感しますね。そう言えば、みんな、進路はどうするんでしょう?」
 高校生も多い「雪桜」の面々。まひるは興味ありげに皆を見回して尋ねる。
「進路か……オレは自宅警備員がいいな」
「でもなんだか……みんな、和菓子屋さんが似合いそうです」
 冗談めかす静奈の答えに微笑みつつ、言うまひる。
 確かに先ほどの試作菓子のできばえを考えれば、この中の誰かが将来的に菓子職人になったとしても不思議は無いかも知れない。
「はい、撮りますよ。皆さんこっちを向いて下さいませ」
 けっしょう丸の縫いぐるみを抱きながら、夢羽のデジカメに視線を向けるさくら。
 何気ないスナップの数々も、時が経てば宝物になるだろう。

 桜をバックに無数の写真を撮る内、目的地の温泉へと到着。
「絶対覗かないでよねっ」
「見ませんよ」
 脱衣所で小次郎と分れ、女性陣は持参した水着を着用。
 桜の花びらが浮かぶ露天風呂へと移動する。
「綺麗!」
「凄いですね!」
 広がるのはさながら桃源郷の様な光景。広い湯船を貸し切りと言うのも魅力的だ。
「珠果ちゃん。ナイス、スク水」
 親指を立てつつ言う荏徒自身もスク水姿。
「水無瀬……凄いな」
 バスタオル姿の静奈は、白のビキニを纏った水無瀬を見て思わずそう呟く。
 隙あらばサイズを測ってやろうと、後ろ手にメジャーを隠しつつ。
「どうかしましたか?」
「い、いや……背中流そうか」
「そうですね、それじゃあ皆で洗いっこしましょう」
「いいね、賛成ー」
 結局、皆で仲良く背中を流し合う事に。
「こうして皆さんとゆったり過ごす時間も、掛け替えのない宝物ですね」
「そうだ。小次郎さんもひとりじゃ可哀想ですし、こちらにお呼びしましょうか?」
「……皆水着着てますし、平気かな?」
 さくらの慈悲深い提案で、独り男湯に浸かる小次郎もこちらへ呼ぶ事に。
「小次郎さん」
「きゃーえっちー!」
「一緒に入りませんか?」
「……いや、俺は独りで静かに温泉を満喫するよ」
「そう言いながら右手に持ってる防水カメラは何だ?」
「いやぁ、偶然偶然。ほら、探偵のお仕事で使うからうっかり持ってきてしまっただけであってだね?」
「じゃあ、その、望遠鏡は?」
「望遠鏡? 望遠鏡も一緒だよ、偶然。うっかり持ってきちゃっただけであって何もやましい事は無いんだってば」

「いいですねー、桜見ながら露天風呂ー、心安らぐー」
「くろたん、しっかり、見てて、ね」
「(……これじゃ兎と混浴してるみたいだ)」
 紆余曲折を経て、結局仲良く温泉を満喫する「雪桜」の面々。
 猫姿になった小次郎は、荏徒の用意した桶の中にくろたん(珠果のぬいぐるみ)と一緒に入り、湯船の上に浮かんでいる。
 猫なら女性陣と一緒に入っても問題ない……筈である。
「小次郎さん」
 そんな小次郎を抱き上げて、声を掛けるのはさくら。
「ありがとうございます♪ 今日の楽しい思い出を胸に卒業します。今日だけは思い出になるくらい私の胸を見ても怒りませんよ♪」
 見て良いと言われると、かえって見づらい気もするが。
「そうだ……改めてさくら、水無瀬、卒業おめでとう!」
「「おめでとう御座います!」」
「それでは皆さん、さくらさんと水無瀬さんの傍に集まって下さい。集合写真を撮りましょう」
 夢羽が岩の上にカメラを置き、セルフタイマーのスイッチを押す。

 ――パシャッ。
 咲き誇る桜をバックに、各々ポーズを決める「雪桜」の面々。
 月日が流れ、皆を取り巻く環境が変わって行くとしても、仲間達と過ごした日々の記憶が薄れる事は無く、いつまでも色褪せない思い出として残り続ける事だろう。


マスター:小茄 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/05/21
得票数:楽しい4  ハートフル10 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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