<リプレイ>
● 「第二宇宙速度で航行中ッ」 「自動モードに切り替えます」 「各員半舷休息。相崎副長、操艦任せるわ」 「副長操艦します」 「巴衛砲雷長、艦の様子はどう?」 「世はすべて事もなし」 地球を発ち数ヶ月。「はやぶさ」は星の大海を航行していた。 「ミサキ航海長、次の星までどれくらい?」 「数日後には到着出来る筈です速坂さ……艦長」 司厨長の琴音とマヤが作る料理は、三ツ星級として高い評価を受けていた。その料理を求めて食堂へ向かう途中、端末のひとつが鳴り響く。 「未確認艦隊が接近中!」 「2時の方向。晶ちゃん、解析お願い」 「移民船団、です……通信回線、開けます」 真道、和奈、晶の報告を聞き、めぐる達は艦橋へ戻る。 「す、凄い」 そこに広がっていたのは、無数の船で構成された天の川。 「俺は御剣。こっちはフュリアスだ」 「速坂めぐるよ」 敬礼で応えるめぐる達。 果てなき航海を続けながら、新天地を求める船乗り同士だ。 「誰も見たこともない星を見つける……実に浪漫ではないか」 「ふみ、宇宙には無、限の可能性があ……ると聞きます」 「全くね。航海の無事を祈るわ」 「そちらも」 光速を凌ぐ速度で航行中の両者。交信が可能な時間は短く、ノイズが混じり始める。 「さあ、行くぞ? 自由気ままな旅の開始だ」 「ふみ、しゅっぱー……つ♪ な、のです!」 フュリアスが眼を輝かせつつ言ったのを最後に、画像も音も届かなくなった。 それでも両者は、互いの光が完全に見えなくなるまで見送り合うのだった。
「冥王星統合政府は地球との文化的交流を望んでいます」 翌日、艦上では冥王星の舞姫との会談が行われていた。 「しかし、地球の方々が我々の母星にネガティブな印象を持っておられることに対し遺憾の意を……」 「(この人の話、長い上に難しいわ)」 「旧支配者が棲んでいるというデマに至っては――」 「堅苦しい話はこれくらいにして、食事にしましょ!」 めぐるは強引に彼女の手を引いて食堂へ。 美味しい料理を食べさせて誤魔化す、そんな適当外交で今日も地球の平和は保たれるのだった。
● もふもふ星は、まんまるでもふもふな生物が暮らす不思議な星。 「ワタシノ ナマエハ アア・アア」 もふもふのうち1人(?)が寄ってきて、クルー達に声を掛ける。 「めぐる アア・アア トモダチ。コンゴトモヨロシク」 「わ、こちらこそ宜しくね」 もふもふの毛触りに癒される一同。 「めぐる トテモ ぷにぷに シテル。……ムネイガイ」 「……」 「艦長、落ち着いて!」 クルーの説得で何とか落ち着くめぐる。 結局嗚唖は、そのままはやぶさに同行する事になった。
「こんこん、きつね星人ですこん!」 その星の人々は、皆狐の着ぐるみの様な姿。 「宇宙きつねうどんと、宇宙お稲荷さんを召し上がれですこん」 代表のましろが尻尾を振りながら出してくれた料理は、地球の味に近い物。 「おや、お客さんはお誕生日ですかこん? だったら大サービスなのですこん」 「わ! チーズケーキ!」 めぐるの誕生日が近い事を知ると、きつね色に焼けたベイクドチーズケーキも振る舞ってくれた。 お腹も心も満足した一行は、ましろとの別れを惜しみつつ、次の星へと向かう。
「どうぞ火星名物、タコスミパスタでーす♪」 火星では、龍麻と名乗る火星人が料理を振る舞ってくれた。 出会い頭、戦闘になりかけたが、どうにか平和的な接触に漕ぎ着けた。 「地球人はランボウですねー。カルシウムが足りてないんじゃないですかー? もっとも私は骨がありませんが」 「妖しかったから、つい」 「おおぅ♪ めぐーるはもうすぐ誕生日ですか? ではお祝いのタコキッスを!」 「お隣同士、これからも宜しくね」 両星の更なる友好を約束し、はやぶさは火星を発つのだった。
「鶏人だね?」 「私に聞かないでよ」 ある星のバザールで出会った勇人は、鶏人を名乗る妖しげな種族。 「ご存じだねぇ?」 「存じてないわよ」 「君の艦に転任する事になったよ」 「勝手に決めないで。お断りよ」 「認識番号は何番だと思う? チキン南蛮だよ!」 銃を抜こうとしためぐるだが、クルー達に宥められ何とか自制。鶏人は無事保護されたのだった。
ナマケ星の女王涼子の要請を受け、ツリー星人、克乙との決闘に臨む一行。 「麻雀で俺に勝てたら、開放してやろう」 そんな提案を飲んだ物の、克乙はかなりの打ち手。 初心者のめぐると陣を含むはやぶさ側は、明らかに劣勢。 「お前ら真面目にやれですぅ」 涼子の応援(?)も虚しく大差がつく。 「明日も晴れかしらね」 それでも、暢気に天気の話をするめぐるに動揺は見られない。 サイの目は2。下家莉緒も2。 「どうした。早く牌を切りたまえ」 「和了ってるわ」 牌を倒すめぐる。 「て、天和!?」 「涼子、これでこの星は自由よ!」 一同が涼子の方を振り向くと――。 「Zzz」 この星の住人は、1年の2/3はコタツで冬眠するらしく、涼子が起きることは無かった。 「危なかった……私には艦長という人が……あ、いえ、何でも無いですよ?」 この星の住人になりかけて踏み止まった陣を含め、一行はナマケ星を後にする。
● 「硝子の惑星の銀河鉄道です。接触許可を求めてきています」 「許可するわ」 接舷するはやぶさとディモルフォセカ号。 「停車時間は3時間22分です」 ずんぐりとした制服を纏ったレフ車掌が、タラップを渡す。 「やぁ、初めまして」 「あなたが『星を司る魔女』ね……本当に魔法が使えるの?」 問い掛けが終わるより早く、ヴィオレインの手から星の形をした飴玉が次々と出現。 艦内には人工重力があるにも関わらず、飴は宙に浮かぶ。 「プレゼントだよ」 そのうちの1つが、ふわふわとめぐるの掌へ。 「素敵、有り難う!」 お返しに琴音とマヤが作ったお菓子を渡し、彼女たちを見送る。 「ねぇ、僕達どこまでも一緒にいこうねぇ?」 レフが高らかに汽笛を鳴らし、銀河鉄道は再び星空を駆けて行くのだった。
「たくさん友達をつくって、アホ毛を宇宙中に広めたいです、ぴこぴこっ」 アホ毛星人は地球人に似た外見だが、本体はアホ毛の部分だけで、身体はオマケなのだと言う。 「アホ毛は宇宙を救う! アホ毛すぱいらるぅ! さあ、みなさんご一緒に!」 「あ、アホ毛すぱいらる」 「アホ毛すぱいらるぅ!」 りんねのテンションに圧倒されつつも、共に宇宙平和を願うのだった。
「この星はUTSS、のんびりした平和な星タコよ」 「ここは良い所ですしのんびりしていって下さいね、タコ」 リク、燿、和真と名乗るUTSS星人は友好的に一行を出迎える。差し出されたタコ足と握手する一同。 「良い宇宙人とそーでないのもいるから、良い人そうでもこれから注意はしないとね」 「気をつけるわ。有り難うっ」 馨から、剣を模した風船と助言を受け取るめぐる。 「僕らの事を忘れないでこれからも仲良くして欲しいタコよ」 「勿論忘れないわ。皆も元気でね!」 和やかなコンタクトの末、はやぶさは再び宇宙へ。
「うにゅ〜♪ よく遊びに来てくれたのー」 いちご星では、ピンクのドレスと苺を象った王冠を身に着けた王女、夏凛が一行を歓待してくれた。 「めぐるちゃんのお誕生日パーティを始めるの〜☆」 花火が空を彩り、ショートケーキや苺大福等、いちご尽くしの料理が運ばれてくる。 「ゆ、ゆっくりしていけばいいでしょっ」「ですぅ」 「莉緒? 涼子も!」 メイド達は見覚えのある顔だったが、決して1人2役ではない。 大量の苺大福をお土産に持たされた一行は、軽く胃もたれを感じつついちご星を後にした。
「我が星始まって以来の素敵な天使を接客させて頂く事が出来て、ボク超感動してるよ」 その星では、巴達イケメンが一行を歓迎してくれた。 「もうすぐめぐる姫の誕生日だってさー! 皆で乾杯しようよー!」 「飲め飲め姫様! 飲め飲め姫様!」 しかも、めぐるの誕生日が近いと聞いて一層大騒ぎ。 そして数時間に渡るどんちゃん騒ぎの末……。 「今日は楽しかったよ〜☆ それじゃあ250万G請求させていただきます☆」 「えっ」 コモノホスト星。またの名をボッタクリ星。 以後、はやぶさは緊縮財政を迫られる事になった。
「ほら、無害獣ふなーです。なでてあげてみてください?」 「ふなー」 「凄く人懐っこいわね」 まりん星の女王、まりんの勧めで碎花もといふなーと戯れていると、何やら不穏な気配。 「うぉぉお! な、なんとかわいい子!」 現れたのは淑女な獣、佳楠。 「あ、あれはいけません! 小さい女の子が好きな『ロリコン獣佳楠』です!」 「なにそれこわい」 「今日の獲物決定だぜ♪ うぉぉぉお!」 「ここはわたしに任せてめぐるさんは逃げてっ」 「ちょっ邪魔スンナ惑星主! めぐるんをこっちにわたせぇぇ! くぅ、しょうがない……この2人を頂いていくぜ」 「あっー!」「ふなー」 唖然とする一同の目の前で、佳楠は2人を連れて行ってしまった。 一行は命からがら、まりん星を脱出するのだった。
● 「エンジンにトラブルが発生した模様!」 唐突に、弥勒がエマージェンシーを告げる。 「3時間くらいは掛りそうだね」 機関長の優生が言うには、さほど重大な故障でも無い様だ。 だが、悪い事は重なる物。 「未確認の小型艦艇が多数接近中!」 「所属不明。通信傍受したよ」 「我が配下たる宇宙ロリコンの精鋭共よ! あの宇宙船を制圧し、幼女たちとキャッキャウフフな素敵ライフを手に入れるのだぁぁ!」 「あれは宇宙ロリコンを自称する変態集団です」 データを照合したのは立体映像の少女。はやぶさの頭脳である次世代人工知能「サーシャ20XX」だ。 「一命賭するはこの時ぞ! 我に続けぇい!」 襲い来るロリコン達。 アラームが鳴り響き、パイロットスーツを纏った2人が格納庫に走る。 「デューテ・ハルトマン! いっきま〜っす!」 「正和、出る!」 デューテは戦闘機で、正和は人型のロボットでスクランブル発進。 「ヒャッハー! 野郎は消毒だー!」 「クロストリガー!」 ――ガガガガッ!! マシンガンを放つ正和。一瞬のうちに数機のロリコンが撃墜される。 「お返しだ!」 ――バババッ!! 凄まじい数のホーミングミサイルが、一斉にデューテ機を襲う。 「この船は、あたしが守るからねっ!」 激しくバレルロールをするデューテ。 ミサイル群が無数の火球を咲かせる。 「対空システム稼働率68%」「左舷副砲塔被弾!」 「三式レーザー充填!」 「主砲充填率72% 発射可能まであと36秒だよ!」 雲霞の如く敵が押し寄せる中、クルーは必死にはやぶさを守る。 「てーっ!!」 ――バッ!! 無数の光線が広がり、小型艇を次々に飲み込んでゆく。 「ぅゎょぅじょっょぃ」 ロゥリィ機も大破し戦闘不能。捕獲されて艦内へ。 「ど、どうかこの素晴らしい幼女達もとい宇宙船に同乗させてはもらえないだろうか。どうか!」 「野放しにしておいても危険だしね」 「艦長! 大型艦が接近してきます!」 だが、息つく間もなく新たな未確認艦が接近してくる。 「接近中の艦艇は所属を明らかにされたし!」 「俺に所属はない。俺の縄張りに入ってきた宇宙船は積み荷を渡すか、撃ち落とされるかだ」 相手は宇宙海賊。 しかも激しい戦闘の直後で、応戦出来そうに無い。 ――ビシュンッ! 一筋の光条が艦橋を掠める。 「抵抗すれば次は当てるぜ」 「乗組員全員の生還確率は0、0012%です」 「……あの手を使うわ」 奥の手を選択しためぐる。 海賊船が横付けされ、海賊達が乗り込んでくる。 「その肌の色、BWAT星人ね」 「ふふふふ……宇宙人が友好な人ばかりだと思うのは大間違いだぜぃ!」 乗り込んできた一団のリーダーはラプラス。 「きゃとるみゅーなんとかをしてくれるわー!」 ――みみみみー。 光と音の出る銃を放つが、特に別状は無い。 「修理完了!」 伝声管から優生の声が響く。 ――ダダダッ! これを合図に、クルー達の隠し持ってた銃器が火を噴く。 「ばっ、ばかなっ。この催眠銃が聞かないなんて。みぎゃー」 倒れるラプラス。 「ちっ、距離を取って魚雷をぶち込む」 雅之はすぐさま船を始動し間合いを測る。 「エンジン全開!」 はやぶさは、離れようとする海賊船の横腹目掛け急発進。 ――ゴァァン!! 激しい振動と轟音。 大きな損傷を受けた海賊船は、酸素を宇宙空間に放出しながら誘爆を繰り返す。 「両舷全速後進!」 アノマーシェが指示を出し、沈み行く海賊船から離れる。 ――ドォォ……ン! 「船は失ったが、それ以上のものを見つけた。逃がしはしないぜ」 雅之は船の爆発に紛れ、小型艇でその姿をくらませる。リベンジを固く誓いながら。
● 最低限の修理を終えたこの日、艦内では総出でパーティの準備が進められていた。 めぐるもマヤのコーディネートですっかりおめかし。 しかしお祝いムード一色のはやぶさに、思わぬ電信が届く。 「貴艦ハ惑星同盟ノ領宙ヲ侵シテイル……繰リ返ス。貴艦ハ……」 電子機器の破損で、知らずのうちに領宙を侵犯してしまっていたのだ。 「海賊との戦闘で計器が故障してしまったの。領宙侵犯の意志は無いわ」 恭順の意を示すが、すぐに連絡艇が臨検にやってきた。 「宇宙空間でパーティでもするつもりか?」 黒いマントを纏ったミキノ。威圧的に艦内を見回し、無感情に言う。 「まぁ、いい。我ら同盟軍からのメッセージだ」 ミキノは相変らずの口調で言うと、指を鳴らす。 次の瞬間、大艦隊の砲門が一斉に火を噴いた。 ――バババッ! 炸裂する色とりどりの花火。 「ハッピーバースディ、めぐる艦長。同盟は貴女達を歓迎するぞ」 「有り難うミキノ!」 ゲストを迎え、パーティも最高潮に達しようと言う頃、また新たな船が近くを通りかかる。 「デザート星から遠路遥々、ずーっと旅してきたんだ」 煌びやかな電飾を施した船に乗っていたのは、弥琴と司の2人。 「アイスにケーキ、プディング、スフレもありますよ」 「よかったら一つ……や、二つ三つくらいどうかな」 割烹着姿の2人が取り出すスイーツに、生唾を飲む一同。 「お金はお気になさらず。私達の星の通貨は心です」 「タダ!?」 ざわめく艦内。 「ん、もしかして何かの記念日? なら、あれかな」 「はい。よろしければこちらも」 誕生日である事を知った2人が差し出したのは、七段重ねの桜ケーキ。デザート星でも特別な一品だと言う。 「凄いわ、有り難う!」 「さあ、星空の恵みをご賞味あれ!」 丁度、琴音とマヤが完成した料理を運んでくる。天の川岸の星砂糖や星の海の塩、光の花の夜露、宝石の森のルビーのジュース、わきたつアンドロメダ魚、銀河鉄道の雁等々。豪華絢爛だ。 「皆、本当に有り難う。これからも宜しくね!」
かくて、頼れる仲間と共に新たな友人との出会いを繰り返し、めぐるとはやぶさの旅はこれからも続いて行くのだった。
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参加者:42人
作成日:2010/04/29
得票数:楽しい25
笑える2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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