千鳥の誕生日 〜雛鳥館愛憎殺人事件〜


   



<オープニング>


「やっぱ古典っていいと思うんだ」
 詩条・美春(兄様と一緒・bn0007)の問いは「誕生パーティは何がいいですか?」だったはず。
「はぁ? おめぇ、国語の成績はどん底でねぇの」
 鳴子・椿(バンカラ爆砕娘・bn0270)にそう指摘されても何処吹く風で、星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)は平坦な話調で己が趣味を語る。
「時代は戦後。村は一軒の家が牛耳ってて、住む人もなんだかんだと血縁だらけ。当然その家は恨みを買っててさ。閉ざされた屋敷では色々あって……結果、連続殺人事件」
 古典は古典でも、推理小説の古典らしい。
 僅かに唇の端をあげて、無表情が常の彼にしては珍しくとっても嬉しそうだ。
 美春と椿は「やっぱりなぁ」と納得しつつも、ちょっと遠い目をする。
 ――去年の誕生日は寝台特急殺人の旅。
 ――クリスマスは豪華なパーティ、殺人事件つき。
 今年の誕生日もやはり殺人事件ごっこがしたいらしい。

 時代は戦後、昭和30年代。
 都市部が高度経済成長で華やかに様変わりしていく中、取り残されたように寂れる一方のとある山村。
 血族が多いこの村では、地主が絶大なる権力を有していた。
 西洋かぶれだった地主の祖父が建てたのは、寂れた村に不似合いな和洋折衷の豪華な屋敷。
 大金持ちだったから何でもある、そんな屋敷の名は――雛鳥館。

「昭和30年代って……よくわかんねぇんだけど」
「なんちゃってでいいよ。雰囲気雰囲気」
 携帯電話もなく、交通の便も地味に不便で、田園風景が広がる……その程度か。
「まだ着物の方も結構いらっしゃったみたいですよね」
 その辺りもご自由に。
 千鳥も言っているが、時代設定あくまで『雰囲気』。
 イメージがつかない人も『殺人事件ごっこ』がしたい、その気持ちがあるのなら迷わず参加して欲しい。
 なんとでも、なる。
 てか、する。
「配役は何がいいかなぁ……当主、妻、愛人、息子、その嫁、主治医、手鞠歌唄う少女、秘密を知ってるっぽい老婆、座敷牢に閉じ込められた謎の人物仮面つき、当主に並々ならぬ恩のある使用人頭……」
 等々。
 そこには様々な愛憎を抱える人々が日々の生活を営んでいる。
「ちなみに当主と名字が違うとかアリね。気にしないで名乗ってくれていいよ」
「皆さんお家の方なのでしょうか?」
「旅行客とかアリだよ。近場に温泉が湧いたコトにしてさ、そこに取材に来てる雑誌記者とか、利権狙いの役人とかね」
 もちろん、それに限らず様々な理由をつけてこの屋敷にやって来ればいい。
 この舞台に集うのは、誰かを殺したい【犯人】だったり、やたらと恨みを買っている【被害者】だったり、罪を着せられる【スケープゴート】だったり、はたまたただの【通りすがり】だったりするのだ。
 そうそう、忘れてはならない【探偵】役も欲しいところ。
 もちろん、それ以外の配役も思いつく限り作ってもらって構わない。
「探偵が『あ、しまったー!』とか言ってる頃には、もう死んでるんだよね」
 とか、非常に幸せそうに語る千鳥。このパーティを心から楽しみにしている様子。
「それだと『当主』役は1人、とか制限厳しいでねぇの?」
「別に『当主』が複数いたって問題無いよ」
 ……無いらしい。
「殺された後に『実はオレが本当の当主だー』とかいくらでもやりようあるよ」
 フラットに答える千鳥。
 相変わらず整合性よりはやったもん勝ちのカヲス劇場。
『閉ざされた館の中で起きる殺人事件』
 それにつながるのであれば、好きなように妄言を垂れ流し怪しい行動を取るとといいだろう。

「誕生パーティで殺人事件、もーちぃと違うコトはねぇのか?」
 喜ぶコトをやってやりたいと思うものの、その縁起の悪さに思わず椿から零れるぼやきに、
「お芝居だから」
 ぽつり。
 紅を瞼に隠し少年は静かに返す。
「お芝居だから、本当に死んでる人はいない」
「…………」
 ――運命予報士が視るのは、人の死。夥しい数の死が、日常に侵食してくる。
「だから、殺人事件ごっこが、いい」
 現実じゃないから。
 心の底から笑い飛ばせる、泡沫のお芝居だから。
「わかったべ。皆にいっぺぇ来てもらって、盛大なのやろうな」
「ん」
 頷く千鳥の髪をぐりぐりかき混ぜつつ、どうやって人を集めようか椿と美春は考え始める。
 そんなわけで。
 千鳥の顔見知りでなくても大歓迎、人が多ければそれだけ賑やかで楽しい物となろう。
 無理に千鳥に構わなくても大丈夫。殺人劇の中で、彼は役を見つけ思う存分楽しむだろうから。
 恋人の過度なイチャイチャは役柄としてであれば。もちろん人目があるのでやりすぎには注意。

「ちなみに、こーゆーネタが好きなのは、予報士はじめる前からだけどね」
 ――そうしれっと嘯く彼と、どうか遊んでやって欲しい。

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参加者
NPC:星崎・千鳥(中学生運命予報士・bn0223)




<リプレイ>


 紅眼黒髪の雛が戻れば出迎えよ。
「お帰りなさいませ」
 沙紀は粛々と千鳥に頭を垂れた。

 逃げた千羽目に代わり幽閉された少年は言った。
「戻ってきてしまったからには、因習を滅ぼしたまえ」
 滅びの呪いを背負う者よ。
「ん」
 返事を聞きとげ、彼は凛烈な人生に別れ告げる。
 それら全て、大きな猫を被った少女が見ていた。

「あたしが当主のはずなんだ。礼儀を知らないのかい?」
 戻った千鳥に憎悪剥き出しなのは妾腹の縫。
「叔母さ…」
「あぁ?!」
 布団叩き振り上げたように見えたのは気のせい。
 数日後。
 千羽目の死体が沼からあがり騒然となる。
「ったく笑えねぇ。触れるな! 警察だ」
 公安とかち合い休職喰らった刑事朝矢は頭を掻きつつ現場保存に努める。
「私が商売繁盛っていうのも悪い傾向ですね」
 医者ウォッチャーが死者から顔をあげた。
「撲殺です」
「漬け物石が幽閉部屋にあったんだよね」
 したり顔で鈴が言えば、視線は台所づきの妾腹遥日に集中する。
 ちなみに猫は総スルー。
「ち、違います…!」
「出来っこネェよ。俺のメシ作ってたぜ?」
 胸逸らし弓矢は遥日を背後に庇う。
「でも水に沈めたらいつ死んだか曖昧…ごめん」
 病弱な緋邑は弓矢に睨まれ口を閉ざす、だが疑惑は再び遥日へ。
 ざわめく中客人縁は千鳥へ声かける。
「3日前はどうも」
 と。

 続けて縫が毒殺。
「オクタンスノクソアマ症候群です」
「本当かぁ?」
 更に遥日が刺殺。
「美しくないな。予定外の殺人、そんな焦りを感じる」
 秀一警部の見立てに、部下ジングルは心酔。
「あっ、オレが犯人だったらこうすると想うんです!」
 ズキューン!
 躊躇いなく壺を撃ち抜き破片で翼を作るジングル。
「雛鳥館、ですから!」
 得意気な部下に優しい瞳を向ける神山。朝矢は銃の乱射で追っ払った。
「私ならこうかな」
 鈴は千鳥柄を握らせ緋邑を庇うようだ。

「既に毒を飲ませてある」
 沙紀の憤懣を意に介さずハンチング帽の男カイナは続ける。
「片方は毒、片方は解毒剤。勝ったら望む物を」
 飲み干し辛さに噎せ返るのは、カイナ。
「誰が誰を殺したか、教えなさい!」

「やはり、成り代わってやがったな」
「離せ! あいつのせいで父が…!」
 もみ合う弓矢と緋邑の傍ら、千鳥に襲いかかるのは縁。
「幽霊?」
「兄さんの無念、今ここで晴らす!」
「てめぇらやめろ!」
 全てを知った沙紀と朝矢の目の前で、千鳥は縁の刃を胸に引き込んだ。
「キミも…殺っとく?」
 端から血を零し緋邑に嗤いかけ。
「例え千羽目を殺したとしても、正当な主はあ…」
「沙紀…さん。千羽目は…黒髪に紅の瞳…だよね?」
 ボクは藍髪だよ?
 縁を指さし千鳥は事切れる。

 果たして。
 彼は千羽目の雛か千一羽目の雛か。


「速達でーす」
 配達人健一はいきなり開けて中を伺う。
 …呼び鈴鳴らそうよ。

「殺人予告ですよ!」
 刑事いちるの声に女中由衣が身を竦めた。盆の紫陽花を模った和菓子が揺れる。
「本当だったんだな」
「殺人事件を解決してくれ、と届いたんです」
 瞳を光らせるシグマ。隣の助手りおんに老執事終夜は眉を顰める。
 当主の妾の1人に似ている。
「姉さん」
 俯き唇を噛むのは女中のいちご。
 彼女には当主が騙した男の面影が。
 共に謎の死を遂げ済み。要調査、主を護るために。
「殺人?」
「くろがねがおります」
 箱入り輪音の手を取る鉄、唇の片側をあげた笑みと共に。
(「お嬢様を『使わなくても』すみそうだ」)
 視線の先は、黒猫に扮する月媛と遊ぶ長男千鳥。
「怪盗ベリル」
 湯飲みを置いて寅靖が低く一言。
 カストリ雑誌記者の彼は招かれざる客、頬の傷がその印象を強くする。
「オタヌキさまの祟り」
 鞠避け月媛が逃げ現われたのは千鳥の姪さやか。
「予告なんて届いてないのですが」
 そりゃまぁ葉書は未だ玄関なわけで。
 フルオリーテの指摘に喫驚する面々の中、ジェニファーは傍観者然と茶をすする。
「おかわり」
 褐色娘ウルスラは屈託ない関西弁でねだった。
「君は?」
「外国留学中に出来た愛人の子ぉ」
 問)関西は外国ですか?
「動機には事欠かない者が多そうだ」
 シグマが話逸らした。
「なんでこんな目に」
 舞台監督縁は溜息、骨安めが台無しだと。

「猫、まてー!」
 どん、からん。
 月媛を追うウルスラは床に落ちた物に指を伸ばす。
「なんやこれ、血…」
 何者かが薄く嗤った。

「いないなら投げときますよー」
 健一の葉書束から1枚つまむのは翡翠眼の青年。
「『雄雛』を裏で欲しがっとんのは山程おる」
「あんた誰?」
 20cm差が悔しい舜の問いに、偽名彩晴を名乗れば悲鳴が響く。

 部屋の中、倒れているのは終夜。
 廊下でウルスラ傍らには遺産一部を継ぐ猫月媛。
 散らされるは、紫陽花。
「紫陽花は…千鳥様の誕生花」
 青ざめた表情で口元を覆う由衣。
「花言葉が冷淡とか酷いよね」
「!」
 千鳥さくっと墓穴掘り。紫陽花を仕込んだ犯人りおんの思うツボ。
「オタヌキさまに祟られてるのは輪音姉様よ」
「オタヌキ様はいりません、くろがねがいれば」
 無邪気なさやかに、輪音は小首を傾げる。
「部屋を覗いてましたけど面白い事でもありました?」
「白髪」
 フルリオーテの問いに答える湊はりおんを見据える。
「姉さん…」
 髪色まるっとスルーないちご。
「まさか怪盗ベリルが殺人?!」
 だが手配書に特徴が合致するとシグマは唇を噛んだ。
 犯人を捜し当てると息巻く舜と弟湊(の身長)を見比べる千鳥は、手を打つ。
「湊さんが年下だし、あってる」
 ――舜は千鳥に殺意を抱いた。

「ベリルは孤児…」
「家族の仇だッ!」
 由衣からの茶を啜るいちるに寅靖が短刀で斬りかかる、が、刃届く前にいちるは吐血し倒れた。
 険しい目でシグマは由衣を睨む。
「お、お茶は輪音様が…」
「主に罪を着せるなぞ恥を知れ!」
 鉄は輪音の先走りに舌打ち。
 千鳥誘拐→輪音跡継ぎ、婿で遺産がっぽりの計画が!
「俺も千枝の傀儡に過ぎんと言うの、か?」
「姉さんをご存じなんですか?!」
 瞳に涙を溜め縋るいちご。
 ガラ!
「兄さん…逃げ…」
「湊?!」
 襖から倒れ込む湊。
 シグマはふと助手がいない事に気がつく。
「りおん?」
「はい」
 湊を刺したりおんが何食わぬ顔で現われた瞬間…!

 ガシャーン!!

 2発の銃声と共に窓硝子が粉々に。
 現われた中華淑女、千枝は二挺拳銃を無造作に構え宣言。
「あの日の惨劇を再現」
『あの日』でりおんが『惨劇』でシグマが『再現』で寅靖が餌食に。
「する」
 狙いは輪音。
 しかし代わりに銃弾を喰らったのは咄嗟に突き飛ばした鉄。
 さやかに狙い定まった所で、いちごが体をぶつけ止める
「もうあの人は帰ってこないのよ!」
 悲劇の姉妹が争う中、千鳥はりおんシグマの残したメモにご執心。
「『びうょじんたお』『うとでめお』?」
「あーあ…遅かったか」
 親友刑事に黙祷捧げ、怪盗ベリルは『雄雛』をマントに隠し、この場より退場――。
 最後に響いた哀しき弾丸は、妹の身を蝕んだ。
「…もう…罪を重ねないで…」
「あ…何てこと…」
 画面外から全てを見ていた縁はそっと俯く。
「始めからお芝居でした、は高望み過ぎかな」
 次回の舞台は決ったけれど、と。

「くろがね、あとは千鳥だけです」
 浚われし雄雛を待つ雌雛。
「そうすれば、還ってきてくれますか?」
 ここに壱羽。


 天井より吊されし男の名は黒無。
 空を透かしたような銀髪(フレーム)も瞳(レンズ)も娘を虜にするには、十分過ぎた。

 廊下の灯りで煌めく眼鏡を千鳥はぼんやり見上げる。
 こつん。
「木彫りの人形?」
「それ…あげる」
 真っ赤な髪をたらした灯が、ぽつり。
「たんじょうび…おめでとう」
 灯の髪、銀だっけ?
 思い出す頃には息絶えていた。

 ――時間は遡る。
「ご当主様誕生日おめでとうございます」
「とーさんまだ死んでないけどね」
 雛鳥館に桃野組現る!
 記者の鼻で嗅ぎつけた悟。だがより目を惹くのは…。
「おめでとうございまーす!!」
 けらけら笑う恐ろしく長い髪の涼太。
「ありがと。そっか『お外の日』か」
 千鳥も無邪気さと悪意携え微笑む。
「土地の返済期限はとうに過ぎているのだけれど」
 咳払いと共に、櫻子がじろり。
「けれど離れの座敷牢はああですよ」
 居候の学生裕也の指さす先では、涼太が墨で『嫁』と連ねていた。
「私の所有物を汚すとは、言語道…げほっ」
「櫻子様?」
 嗚呼。
 執事孝政は肩を落とす。
「雛鳥館は変わらないのですね…」
 孝政の両親をボロ屑のように捨てたあの日から一切。
 唖然とする学友ラクスに、千鳥の従姉妹撫子が言いつける。
「警察を」
「はい!」
 学生服の金ボタンを光らせてラクスが立てばシャッター音。
「ククク実に良い被写体だ」
 滞在していた刑事九竜。さっそく鑑識を始めようとす…。
「犯人はあなたね」
 る手首に手錠がかかる。
「美玖さん何でここに?」
「ブタ箱にぶち込んでおきますので」
 九竜を引っ立て美玖退場。
 ……。
「貴方達が犯人に決ってるわ!」
 微妙な空気をぶったぎり、撫子が指さすは姐御・香。
「おぅおぅ、姐御に容疑を掛けるなんざ、いい度胸してんじゃねぇかよ!」
 黒留袖の香の隣凄みを効かせるテオ。
「くわばわくわばら」
 シャッターを切りながら、悟は全員の立ち位置を観察する。
「テオ、うちらには何の証拠はないんや言わせてあげ」
 余裕綽々で紅茶を口に含む香の表情が歪む。
「ッ…げほっ」
「だ、誰が姐御をやりやがった! その執事か?!」
「上がってしまった幕は、もう降りないのですよ」
 孝政は首を振る。
「わ、私じゃないわよ?!」
 あ、撫子ヘタレた。
「誰がこんな事したん」
 ざわめく周りを探偵みゆは必死で宥め、傍らの龍麻に視線を向ける。
「書生はん、気づいた事ある?」
「えー…何も見てません」
 誰が犯人か知ってるけど言えないの、親友なんだもん。
「あいつあの時…」
「不謹慎です、撮影をやめてください!」
 何かに気づいた悟のカメラを振り払う裕也。明らかに気を逸らした。
「坊ちゃま…た、大変…わーぁ!」
 泡喰ってつっこんだ弾みで畳みで鼻擦るのは料理番のユウキ。
「ゆーきさぁん。どくちゃ、おいしかったってー」
 一気に疑惑がユウキに集まる。
「う、うちは千鳥がカツラやって知っ…」
「へー」
 にこ。
 珍しく千鳥がはっきり微笑んだ。
 ――凶兆だ!
「ちゃうねん、当主様が死んどるんや!」

「この花瓶…撲殺には最適じゃないかね?」
「血飛沫柄が見事ですなー」
「赤い血が…って使用済みかい!」
 撲殺された当主は躍動感溢れるポーズに改変済み。ばいアルト探偵&桃助手。
「何現場改竄してんだてめぇら!」
 チンピラのテオもつっこまずに居られない。
「それは素人の言う事だよ」
 飽きた千鳥が書斎に行って…冒頭に続く。

「眼鏡だ」
「これは黒無お兄さんであります!」
 ぷらんと揺れる眼鏡をつつく2人の前で、解決編。
「残念です。まさかあなたが犯人だなんて、沙希さん」
「えっ、私まだ何もしてないです!」
「「まだ?!」」
 可憐な大正ハイカラ娘に集中する疑惑の視線。
「私が犯人なんてそんな!」
「犯人は皆そう言うんだ」
「ですよね〜」
 滝涙で諦める少女。
 仇を殺してくれた腹違いの弟千鳥が罪無き状態で墓に入れるように、裕也は沙希に罪被せる。
「眼鏡…黒無を殺したのは…」
「ボク。モテモテに嫉妬」
「櫻子さんを殺した…」
「ボク。返すの面倒かった」
「紅茶に毒を…」
「ボク。ヤクザ怖い」
「当主を撲…」

「ボク」

 はーい。
 血まみれの手をあげて宣言する千鳥。
「折角親友の僕が庇ったのにー」
「借りを返したかったのですが」
「や、もう死んでるし」
 気遣い台無し。
「――雛鳥館、相変わらず底が知れないね」
 涼太の笑いが響く中ラクスが推理物らしく締める。
 ちなみに。
「…?」
 灯の血まみれの口元は誰も指摘しなかった。


 雛鳥館。
 銀羽赤目の雛が弱々しく囀っていた事が名の由来。
 先々代の娘のひさめは銀髪に赤瞳の儚げな娘。
 彼女は見合い前日に姿消し、二度と戻らなかった。

「ひさめさんの幽霊が出るって噂を聞いて来たんだけどね!」
 怪音波ザーザー。鞄から伸びる苺シロップ入り試験管を撫で舞皇は屈託ない。
「んんっスクープの匂いがするぞぉ」
 ペンくるり。
 記者マサトの言葉にますますご機嫌だ。
「変な機械!」
 エプロンぎりり。
 壁際から舞皇を睨むのはメイドの雛。
「父…当主様を殺したのは彼!」
「とーさん病死なんだけど」
「騙されてはいけません!」
 きっぱり。
 澄んだ瞳で言われた。

 ロンド座長の舞台が幕をあける――。
「此処には沢山の呪いが渦巻いています…」
 陰陽師ことのはの言葉に、館の人間は青ざめる。
 死せるシンディに女官の紅綺が儀式具を差し出す所で…第一の事件。

「みみみなさん落ち着いてください!」
 あんぱんの毒らしき物で倒れた雛の前で新米警部のあずきがわたわた。死体怖いから目を覆って見ません。
「病死かぁ。手洗いの呼びかけを」
「へ?」
 舞皇が検死する前に、言い切ったよ花火警部。
「藤井警部、撲殺なら?」
「熊の仕業」
「刺殺は?」
「りんごの皮をむいてる時の事故だね」
「なるほどー、流石の見識ですね!」
 ぽむっとあずき、得意げな花火。
 …だめだこの人達。
「あんぱんは克乙さんが焼いたんですよね?」
「わ、私は塩漬け桜をのせただけです!」
 マサトに問い詰められ必死に言訳をする克乙は、口元を抑え倒れ込んだ。
 第二の殺人、か?!
「あれ? これって…」
 首をひねる舞皇が千鳥の耳元でこしょこしょ。

 ――その間も芝居は続く。
「あなたはこの悲劇を止めねばなりません…」
 ことのはの手により蘇るシンディ。
「これも…」
 紅綺からは可憐な包みを託される。

「雛鳥館の雛は雛さんにちなんだんだってさ」
「やっぱり私が隠し子です…!」
 がばっ。
 雛覚醒、原因は桜のしょっぱさでした。
「おはよ…?」
 横からシンディの苺ケーキ。
「わ、苺ケーキ!」
 役を忘れて指を伸ばす舞皇を制しスプーンを挿したロンドが味見…して、悶絶。
「死神が命を戴きに参りました」
 そこを克乙が鎌をあてずんばらり! 更なる悲劇が?!
「おめでとう」
 バースディケーキと共に龍麻登場。克乙も相好崩し紅茶をテーブルに。
 雛鳥館に集いし名優達も合流し、部屋一杯!
「お誕生日おめでとうございます」
 マサトは手帳に挟んでいた手作り栞を笑顔で。
「ありがと…」
「何処に行っても、幽霊にならず戻ってくるからな?」
「何度でも還って来ようじゃないか。信じてくれるね?」
 紅と蒼の2人に頭を揺らし、千鳥は改めて全員に視線を向ける。
 ――言いたかった、コト。
 能力者の皆が予報に立ち向かい還ってきてくれるから――夥しい死を視るばかりの自分が、この世界にいてもいいと信じられる。
 どれだけ救われているか。
 どれだけ赦されているか。

「ありがと…!」

 だから。
 パーティを締めくくるのは、昔は出来なかった手放しの笑み。
 


マスター:一縷野望 紹介ページ
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いまいち
参加者:63人
作成日:2010/06/24
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